FJニュース 2015.9月号

<2015.9 月号> 株式会社フォーラムジャパン
東京都千代田区神田小川町 3-20 第 2 龍名館ビル 6F
労働契約申込みみなし制度が施行されます!
~2012 年(平成 24 年)改正法で施行が猶予されていた制度が 10 月 1 日に施行!~
2012 年(平成 24 年)10 月 1 日に派遣法改正法(現行法)が施行され、違法派遣に対する迅速・的確な対処を目的と
して「労働契約申込みみなし制度」が導入されました。このような制度はそれまで日本には無く、他の条文と同時期に施
行すると混乱が予想されたため、3年間施行が猶予されていました。
それが、今年の 10 月 1 日から施行されることになります。
<この制度が導入された理由>
①
派遣先への法違反に対しては、行政指導中心で派遣元に比べ制裁が弱い。
②
法 40 条の 4 に定められた派遣先による労働契約申込み義務は実効性に欠けるとの声も。
③
派遣元への行政処分は、派遣労働者が失職する可能性がある。
(1)労働契約申込みみなし制度とは?
派遣先が、違法派遣を受け入れた時点で、派遣先が派遣労働者に対して、当該派遣労働者の派遣元事業主における
労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす制度。(法 40 条の 6)
※派遣先が違法派遣に該当することを知らず、かつ、知らなかったことについて過失がなかったとき(善意無過失)
は、適用されない。
【労働者派遣法第 40 条の 6】
労働者派遣の役務の提供を受ける者(中略)が次の各号のいずれかに該当する行為を行った場合には、その時点において、当該
労働者派遣の役務の提供を受ける者から当該労働者派遣に係る派遣労働者に対し、その時点における当該派遣労働者に係る労働条
件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。ただし、労働者派遣の役務の提供を受ける者が、その行
った行為が次の各号のいずれかの行為に該当することを知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときは、この限りで
はない。
一
第 4 条第 3 項の規定に違反して派遣労働者を同条第 1 項各号のいずれかに該当する業務に従事させること。
二
第 24 条の 2 の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
三
第 40 条の 2 第 1 項の規定に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること。
四
この法律又は次節の規定により適用される法律の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結
し、第 26 条第 1 項各号に掲げる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること。
【労働契約申込みみなし制度のイメージ】
(2)違法行為の類型
① 派遣労働者を禁止業務に従事させること(知らないということはほとんど考えられません)
② 無許可事業主又は無届事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること
許可証を確認すればわかること。許可証を偽造するなどの場合は、善意無過失と認められる。
③ 期間制限に違反して労働者派遣の役務の提供を受けること
過半数労働者代表の意見聴取をせずに、派遣受入期間を超えて派遣労働者を就業させている場合等
④ いわゆる偽装請負等
いわゆる「偽装請負」とは、労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で
契約を締結し、必要とされる事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けることをいいます。この場合、派遣先
等の主体的意思が介在する、つまり法の適用を「免れる目的」が必要となります。
(3)申込みを行ったとされる時点
① 法 40 条の 6 第 1 項各号に該当する違法行為を行った時点
労働契約は、派遣労働者が承諾の
意思表示をした時点で成立します。
② 原則として、違法行為が行われた日ごとに申込み
※ 施行日時点で違法行為が行われている場合はその施行日で申込みしたものとする。
(4)申込みの内容となる労働条件
申込みの内容となる労働条件については、違法行為の時点における派遣元事業主と当該派遣労働者との間の労働契
約上の労働条件と同一のものとします。この労働条件には、当事者間の労働契約のみならず、口頭の合意や就業規則等
(派遣先の就業規則の条件を上回っている場合は、それを適用する)に定めるものも含まれるとされています。尚、恩恵的
な給付等(クリスマスに派遣労働者にプレゼントをあげる等)については対象となりません。
◆労働条件が派遣元事業主に固有の内容である場合
労働条件が当該派遣元でしか提供できない内容などについては派遣先との契約内容となっても履行できないのではないか
(保養施設の利用など)との指摘があります。この場合、使用者が変わっても承継されることが社会通念上相当であるものが
申し込む「労働条件」の内容とされています。つまり、賃金等の基本的な労働条件は通常含まれると考えられています。
◆申し込んだとみなされる労働契約期間
みなされる労働条件は、派遣元との契約内容がそのまま「申し込んだ」とみなされるため、労働契約期間に関する事項(始
期、終期、期間)も、労働契約に書かれた内容がそのまま適用されます。この場合、労働契約法第 19 条との関係に留意す
る必要があります。
<行政解釈に示された労働契約法第 19 条との関係>
みなし制度の適用により成立した労働契約の雇止めに関し、その効力が争われた場合、当該効力の雇止めに関し、その効力
が争われた場合、当該効力の有無については、労働契約法第 19 条に基づき個別具体的に司法判断されるべきものである。
(5)派遣先が善意無過失の場合は、この制度の適用を受けません
労働契約申込みみなし制度は、派遣先に対する民事制裁であり、派遣先に責めを負わせられないような場合にまで
適用することはできないため、派遣先が善意無過失の場合は、労働契約申込みみなし制度の提供を受けることはありま
せん。
<「善意無過失」とは?>「善意」とは、法律関係の発生・消滅・効力に影響のあるような事実を知らないこと。
「知らない」とは、調べてみたがわからなかったこと。つまり、
「善意無過失」とは、派遣先が知らないことに過
失がないことをいいます。
この制度は、悪いことをやっている派遣先を制裁するものであり、調べてみたがわからなかった派遣先まで制裁するこ
とはできないと考えられるからです。
尚、26 業務と思っていたが、実際は、自由化業務だったというケースについては、法律の不知つまり調べようと思えば
調べられた法解釈を調べなかったために知らなかった(調べようと思えば調べられる)だけにすぎません。このように法
解釈を知らなかった、いわゆる法律の不知は、善意無過失の抗弁に使うことはできません。
法律に関するページ
派遣法改正法の概要
派遣法改正法が、9 月 30 日に施行されます。2 週間程度の短い準備期間で対応しなければなりません。
先月に引き続き、派遣法改正法の概要として、派遣先の意見聴取に関するルールについて説明したいと
思います。この意見聴取のルールに従わなかった場合、期間制限違反に問われることがありますので、
十分ご注意ください。
派遣先は、同一の事業所において 3 年を超えて継続して派遣労働者を受け入れてはならないとされていますが、
派遣先が、事業所における派遣労働者の受入開始から 3 年を経過するときまでに、当該事業所における過半数労働
組合等から意見聴取した場合には、さらに 3 年間派遣労働者を受け入れることができ、その後さらに 3 年が経過し
たとき以降も同様とされています。
【派遣法改正法案に定められている意見聴取に関する内容】
1.派遣先は、派遣可能期間を延長しようとするときは、意見聴取期間に、厚生労働省令で定めるところにより、
過半数労働組合等(当該派遣先の事業所に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働
組合、当該過半数労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表とするものをいう。以下同じ。)の意見
を聴かなければならないものとすること。
(第 40 条の 2 第 4 項関係)
2.派遣先は、1 により意見を聴かれた過半数労働組合が異議を述べたときは、当該事業所その他派遣就業の場所ご
との業務について、延長前の派遣可能期間が経過することとなる日の前日までに、当該過半数労働組合等に対し、
派遣可能期間の延長の理由その他の厚生労働省令で定める事項について説明しなければならないものとするこ
と。(第 40 条の 2 第 5 項関係)
1.意見聴取のルール
①過半数労働者代表に意見聴取すること
労働者の過半数を代表する者(労働組合がある場合はその組合)への意見聴取にあたり、派遣先は、当該事業
所における派遣労働者の受入開始時からの派遣労働者数と無期雇用労働者数の推移に関する資料等、意見聴取
の参考となる資料を提供する必要があります。
【過半数組合の組織率推移】
年度
S.44
S.49
S.54
S.59
H.1
H.6
H.11
H.16
H.21
H.26
組織率
35.2%
33.9%
31.6%
29.1%
25.9%
24.1%
22.2%
19.2%
18.5%
17.5%
過半数労働組合の組織率は、全体で 17.5%(平成 26 年度)まで低下しています。労働者数が 1,000 人未満
の企業における組織率は 10%、100 人未満の企業では 1%といわれています。そのため、組合のない事業所の方
が多く、その場合、適正な過半数労働者代表者を選出している必要があります。その手続に不備がある場合は、
期間制限違反に問われる可能性があります。
<労働者の過半数代表者について>
労働者の過半数代表者は、管理監督者以外の者とし、意見を聴取される者を選出することを明らかにして
実施される投票、挙手等民主的な方法による手続きにより選出された者であることとされています。
②適正な意見聴取のための手続き
反対の意見が表明された場合、一定期間内に対応方針を説明する必要があります。
<予想される対応方針項目>
1)派遣で受け入れようとする業務内容
2)期間 3)組織 4)人数 5)派遣活用の考え方
等
2.記録の保存
派遣先は、意見聴取及び対応方針等の説明の内容についての記録を一定期間保存するとともに、派遣先の
事業所において周知するものとしています。
3.労働契約申込みみなし制度の適用について
派遣先が、過半数労働組合等の意見を聴取せずに同一の事業所において 3 年を超えて継続して派遣労働者を
受け入れた場合は、労働契約申込みみなし制度の適用の対象とされます。