有田町橋梁長寿命化修繕計画(PDF)

有田町橋梁長寿命化修繕計画
平成 25 年 10 月
佐賀県有田町
建設課
目
次
Page
1.長寿命化修繕計画の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
2.対象橋梁の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
(1)町内の橋梁数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
(2)橋梁の年齢構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
(3)適切な修繕の必要性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
3.長寿命化修繕計画の取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
(1)長寿命化修繕計画取り組みの流れ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
(2)橋梁点検の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
(3)橋梁の健全性評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6
(4)中長期投資計画の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
7
(5)長寿命化修繕計画の策定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
表紙写真:福石橋
1. 長寿命化修繕計画の背景と目的
①
背景
現在、有田町が管理する橋梁で橋齢 50 年を超える橋梁数は 11%程度であるが、30 年後には
80%以上と急激に高齢化が進行するため、従来のように大規模な補修や架け替えを続けると維持
管理コストは膨大となります。
さらに、近年の低成長経済や少子高齢化による税収の減少や、社会構造の変化により土木施
設への予算は高度経済成長期と比較して大幅に減少しました。
適切な修繕を先送りすると・・・
従来の事後保全的な管理方法を続けると近い将来に維持管理に関する予算が不足し、大規模
損傷の補修・補強に伴う交通規制による社会的損失や崩落に至るような事故による人命の危険
は極めて大きいものとなります。
【計画的な維持管理】
・財政支出の抑制
②
目的
・道路網の信頼性確保
今後、有田町が管理する橋梁は高齢化とともに老朽化が急速に進むことから、従来の事後保
全的な維持管理では財政的に無理が生じます。このため、長寿命化修繕計画に基づく予防保全
的な維持管理へと政策の転換を図ることによって、橋梁の長寿命化並びに橋梁の補修・補強お
よび架け替えに係わる費用の縮減を図りつつ、地域の道路ネットワークの安全性・信頼性を確
保することを目的とします。
③
計画の策定
・
「H25 年度有田町橋梁長寿命化修繕計画」は有田町が管理する橋梁 281 橋(橋長 15m以上の橋
梁 42 橋、橋長 15m未満の橋梁 239 橋)について計画を策定します。
・計画期間は今後 10 年間(H25∼H35 年度)です。
2.対象橋梁の現状
(1)町内の橋梁数
管理橋梁 281 橋の橋種別内訳は、橋長 15m以上はPC橋が最も多く全体の 62%を占めており、
RC橋の 12%と合わせると、全体の 74%を占めています。一方、橋長 15m未満はRC橋が最
も多く全体の 72%を占めており、PC橋の 22%と合わせると、全体の 94%を占めています。
以上のように、有田町が管理する橋梁の多くはコンクリート橋であります。
橋種別橋梁数一覧表
対象橋梁数
鋼橋
橋長15m以上 : 42橋
10橋 (24%))
橋長15m未満 : 239橋
合 計
: 281橋
RC橋
PC橋
木橋
5橋 (12%))
26橋 (62%))
6橋 (2%))
171橋 (72%))
54橋 (22%))
1橋 (1%))
16橋 (6%))
176橋 (62%))
80橋 (28%))
1橋 (1%))
橋種別の橋梁数(橋長 15m以上)
-
混合橋
1橋 (2%))
1橋 (1%))
石橋
7橋 (3%))
7橋 (2%))
橋種別の橋梁数(橋長 15m未満)
(2)橋梁の年齢構成
架設年次が不明な橋梁は全体の 59%であり、既知(残りの 41%)の架設年次より 281 橋に対
する供用年数を割合で推定しました。建設後 50 年以上を経過した橋梁数は 31 橋(11%)です
が、10 年後には 129 橋(46%)
、20 年後には 180 橋(64%)
、30 年後には 227 橋(81%)と急
激に増加します。
供用年数 50 年以上の橋梁数の増加(推定)
50年以上
31橋
11% 対象橋梁
281橋
50年以上
50年未満 対象橋梁 129橋
281橋 46%
152橋
54%
50年未満
250橋
89%
現在:31 橋(11%)
10 年後:129 橋(46%)
50年未満
101橋 対象橋梁
36%
281橋 50年以上
180橋
64%
20 年後:180 橋(64%)
50年未満
54橋
19%
対象橋梁
281橋
50年以上
227橋
81%
30 年後:227 橋(81%)
■:50 年以上 ■:50 年未満
(3)適切な修繕の必要性
定期的な点検により早期に損傷を発見し、損傷が顕在化する前に適切な修繕を行うことによ
り、橋梁の長寿命化が図られます。仮に、適切な修繕を行わず放置しておくと劣化は進行し、
場合によっては安全な交通を阻害する事態に陥る可能性があります。
① 重大な損傷が生じた事例(県外事例)
【床版が抜け落ちた事例】
②
適切な維持管理が成されずに大規模な損傷に進行した事例(県内事例)
【コンクリートが広範囲で剥落した事例】
③ 落橋に至った事例(県外事例)
【適切な維持管理が行われず落橋した事例】
3.長寿命化修繕計画の取り組み
(1)長寿命化修繕計画取り組みの流れ
長寿命化修繕計画の策定フロー
管理橋梁の点検実施
橋梁点検の実施(橋梁の状態把握)
橋梁の健全性評価
点検結果の整理および橋梁の健全性評価
維持管理目標の設定
中長期投資計画の検討
維持管理目標を満足する投資予算の検討
長寿命化修繕計画の策定
定期点検の年度別計画
年度別対策橋梁の計画(補修・補強等)
(2)橋梁点検の実施
有田町の管理橋梁は、通常点検(道路パトロール)と概ね5年に1回実施する定期点検によ
って橋梁の健全性を確認します。なお、定期点検は佐賀県長寿命化修繕計画にて作成された「橋
梁点検マニュアル(案)」に従って実施します。
また、災害時や部材に異常が発見された場合は、異常時点検を実施して橋梁の安全性を確認
します。
有田町の橋梁点検の体系
点検の種類
橋 梁 点 検
点検の役割
日常的な点検として,主に橋面(高欄,伸縮装置
等)の状態を把握
通 常 点 検
概 略 点 検
路上は全範囲,路下は代表径間を選定し,地上から
遠望目視(橋長15m未満の橋梁を対象に概ね5年に
1回実施し橋梁の状態を把握)
定 期 点 検
詳 細 点 検
足場や点検車を使用しない範囲で近接および遠望目
視(橋長15m以上の橋梁を対象に概ね5年に1回実
施し橋梁の状態を把握)
詳 細 調 査
異常時点検
損傷状態に応じた調査を行い,損傷原因等を把握
地震や台風等の災害時や部材に異常が発見された際
に橋梁の安全性を確認
※1 「5年に1回実施」とは、5年間で全てを点検するように管理橋梁の1/5を毎年実施するも
のです。
※2 排水施設(排水桝、排水管)の土砂詰まりや支承部の土砂蓄積は、比較的対応が容易(清
掃等)であるため、通常点検(日常の維持管理)で対応を行い、橋梁を良好な状態にし
ます。
(3)橋梁の健全性評価
1)橋梁の健全性の評価手法
橋梁の健全性は、定期点検(外観目視)より確認された損傷の程度を基に数値化した「健全
度」という指標を用いて評価します。
健全度は 0∼100 で表現します。損傷がなければ 100 点であり、発生している損傷の状態に応
じて減点されます。計画策定にあたっては部材ごとの健全度を指標として用います。
損傷程度のイメージ(鋼桁)
※県外事例
健全度
HI≧80
80>HI≧60
60>HI≧20
HI<20
対象区分
A、a
B、b
C、c
D、d
損
傷
状
況
架替え等の対策が必要な橋梁
(通行に影響が生じる)
緊急の対策が必要な橋梁
(通行に影響が生じる可能性有)
予防的修繕が必要な状態
(通行に影響はない)
当面は修繕の必要がない状態
2)対策方針
今回の点検結果より算出した健全度より以下の4つの対策区分に分類し、対策区分 C、D につ
いて優先的に対策を実施します。
・対策区分A、a:当面の修繕は不要 【部材健全度 80≦HI】
・対策区分B、b:予防的な修繕が必要【部材健全度 60≦HI<80】
・対策区分C、c:緊急の対策が必要 【部材健全度 20≦HI<60】
・対策区分D、d:取替え(架替え)を含む検討が必要【部材健全度 HI<20】
※対策区分 A∼D は橋長 15m 以上、a∼d は橋長 15m 未満
対策区分別のフロー
管理橋梁
対象橋梁281橋(15m以上42橋,15m未満239橋)
定期点検
15m未満
概略点検
(239橋)
15m以上
詳細点検
部材 80 ≦ HI
4橋
10橋
5橋
20橋
31橋
206橋
当面の修繕は不要
(42橋)
2橋
3橋
予防的な修繕が
緊急の対策が
取替え(架替え)
望ましい
必要
検討が必要
部材 60 ≦ HI<80
部材 20 ≦ HI<60
部材 HI ≦ 20
※上段:15m以上の橋梁数
下段:15m未満の橋梁数
(4)中長期投資計画の検討
1)維持管理目標
H21 および H23 年度の定期点検結果を踏まえ、各部材の健全度が 60 点以上(維持管理目標)
を維持する予防的な修繕への移行を目指します。
2)検討結果
1∼5 年の年間投資額を 3,000 万円、6∼22 年を 1,000 万円、23∼33 年を 4,300 万円、34∼50
年を 1,400 万円とすると、最小部材健全度は 4 年目で目標管理水準 60 点まで回復し、その後も
60 点以上を推移する。また総投資額は最も経済的となった。
ただし、H25 年度以降の修繕状況と次回定期点検結果を踏まえて何年後かには年間補修対策
費(投資シミュレーション)を見直す計画であります。
中長期の投資シミュレーション(今後 50 年)
【総投資額】
目標管理水準 60 点
103,439 万円
4,300 万円/年
3,000 万円/年
1,000 万円/年
1,400 万円/年
※1 上記補修費は、部材の健全性を回復する修繕費用であり、耐震補強費や日常の維持管理
費(付属物の補修費、舗装の補修費、調査費・点検費)などは含まれていません。
※2 本シミュレーション結果は、H21およびH23年度の点検データ(目視)を基にしたもので
あります。予防的修繕への移行にあたり、今後のデータ蓄積・反映とともに新技術工法
に伴う投資額の変動が考えられます。
(5)長寿命化修繕計画の策定
長寿命化修繕計画は、今後 10 年間について各橋梁の具体的な補修内容や時期、定期点検時期を
策定するものであります。年間の計画補修費は、前章(中長期投資シミュレーション)で設定し
た金額とし、長寿命化修繕計画(案)を策定するものとします。
1)点検計画
定期点検は、概ね 5 年に 1 回全ての橋梁に対して行うことを基本とします。
定期点検の点検頻度イメージ
グループ
1年目
2年目
3年目
グループ①
4年目
6年目
5年
点検
7年目
9年目
5年
5年
点検
5年
点検
5年
点検
11年目
点検
点検
グループ③
10年目
5年
5年
点検
グループ④
グループ⑤
点検
※
8年目
点検
グループ②
対象橋梁
(281橋)
15m以上: 42橋
15m未満:239橋
5年目
点検
5年
点検
定期点検は、上図に示すように対象橋梁を5グループに分割し、5年周期で管理する全て
の橋梁に対して毎年実施することを基本とします。
2)長寿命化修繕計画(案)
補修を実施する橋梁は、部材健全度の低い橋梁から優先的に行うことを基本とします。
対策優先順位の設定
高
優
先
順
位
低
対策区分
対策優先順位の決定
D,d
橋長に関係なく部材健全度が低い橋梁から優先
C,c
橋長に関係なく部材健全度が低い橋梁から優先
B
橋長15m以上で部材健全度が低い橋梁から優先
b
橋長15m未満で部材健全度が低い橋梁から優先
A
橋長15m以上で部材健全度が低い橋梁から優先
a
橋長15m未満で部材健全度が低い橋梁から優先
3)長寿命化修繕計画の効果(コスト縮減効果)
予防保全を基本とした長寿命化修繕計画を実施すると、損傷が進行した段階で補修を行う(事
後保全型修繕)よりも 50 年間で約 108 億円のコスト縮減が見込めます。
a)ライフサイクルコスト縮減の修繕シナリオ
損傷が軽微な段階で補修を行うと、健全度を高い水準で維持できるだけでなく、小規模な補
修で済むため、トータルコストの縮減にもつながります。
ケース1:損傷が軽微な段階でこまめに補修を行う【予防保全型修繕】
ケース2:損傷が進行した段階で補修を行う
【事後保全型修繕】
評価期間におけるコストの合計
評価期間における健全度評
経年変化により構造物の健全度が
低下→補修により健全度が向上
健全度
小規模
な補修
評価期間におけるコストの合計
コ
小規模
な補修
コスト
ケース2
ケース1
ケース1
大規模
な補修
ケース2
T1
T2
T3
経年
T1
評価期間
T2
T3
経年
評価期間
b)コスト縮減効果の比較
予防保全型修繕を基本とした長寿命化修繕計画の実施により、従来の事後保全型修繕と比較
し、大幅なコスト縮減が可能となります。
1)事後保全型修繕の概算事業費 →→→ 50 年間の総事業費:約 118.0 億円
2)予防保全型修繕の概算事業費 →→→ 50 年間の総事業費:約 10.3 億円
3)コスト縮減効果 →→→
118.0 − 10.3 = 107.7 億円
1400000
140
補修・部材取替え事業費(億円)
1200000
120
事後保全型修繕
予防保全型修繕
事後保全累計
予防保全累計
118 億円
1000000
100
予防的修繕への移行!
約 108 億円のコストが
縮減可能である!!
800000
80
600000
60
32 億円
400000
40
200000
20
1 億円
00
1
0∼10年
6 億円
16 億円
6 億円
3 億円
2
11∼20年
3
21∼30年
8 億円
4
31∼40年
10 億円
5
41∼50年
4)学識経験者への意見聴取
本計画は「佐賀大学 理工学部都市工学科 石橋孝治教授」に計画の策定方針や維持管理の
方向性に関する意見を踏まえて策定しています。
「有田町長寿命化修繕計画」意見聴取風景(H25/9/27)