小学校体育授業におけるボール運動ベースボール型の 学習内容の妥当

小学校体育授業におけるボール運動ベースボール型の
学習内容の妥当性の検討
谷
貴彰 (生涯スポーツ学科 学校スポーツコース)
指導教員 南島 永衣子
キーワード:ベースボール型,学習内容,成功率
1.緒言
2.方法
私は,教育実習等を経験する中で,児童の運
本研究では,守山市 K 小学校 6 年生 34 名を
動能力差を感じた.運動を苦手とする児童は運
対象とし,実施時期は,2013 年 10 月上旬か
動ができないことで,課題を避け,学習意欲の
ら中旬に行われた 3 回の体育授業であった.バ
低下もみられた.このような経験から,体育授
ッティング動作をビデオカメラで撮影をし,表
業において,運動の苦手な児童の技能を保障す
1 の分析カテゴリー(蔵内,2011)に従って,
ることは重要な課題であると感じた.
分析した.その後,研究室に持ち帰りスイング
授業をするうえで重要な役割を担っている
の成功率を求めた.スイングを施行とし,バッ
学習指導要領(文部科学省,2008)は時代に
トに当たり前にボールが飛んだものを成功と
合わせて定期的に改訂され,指導内容の改善の
した.この際,データの信憑性を高めるため,
要点がまとめられている.今回の改訂において,
観察者 2 名の成功基準の一致率が 80%以上に
体育科あるいは保健体育科では,球技がこれま
なるように訓練をした.
での種目ベースから型ベースへと領域が改め
られた.また,4-4-4 の発達段階のまとまり
で系統的な学習指導が求められた.そのため,
新たな領域及び学習内容をどのように発達段
階のまとまりとして学習指導していくかが極
めて重要であると言える.
表 1 バット操作に関する分析カテゴリー
学年
小学校
高学年
技能・動作
止まったボール,
コンタクト
易しいボールを打つ
成功と判断する基準
フェアグランド内に
打ち返すことができ
3.結果
施行回数,成功回数,成功率はともに向上し
たが,次の課題に進んでもよいとされる成功率
これまでの先行研究では,ゴール型やネット
80%(French et al.,1991)は越えなかった.
型において,小学生及び中学生を対象に,学習
しかし 2 回目以降,成功率 40%以上の児童の
内容に関する研究は行われてきた(鬼澤,
割合は増えた(表 2)
.
2008)
.しかしながら,ベースボール型の学習
表 2 授業ごとの施行・成功・成功率の変移
もののみであり(蔵内,2011)
,小学校を対象
授業回数(人数)
1回目(n=30)
2回目(n=32)
3回目(n=15)
とした研究は見られず,4-4-4 の発達段階の
4.まとめ
内容の妥当性に関しては,中学生を対象とした
施行 成功 % 40%以上成功者
175 103 58.9%
70.0%
203 129 63.5%
81.3%
254 162 63.8%
86.7%
まとまりを考慮するのであれば,小学校高学年
小学校体育授業のボール運動ベースボール
から中学校段階につなげることが重要である
型の学習内容は難しい課題だといえるが,児童
と考えられる.
の成功率が向上したため,技能が向上したと考
そこで本研究では,小学校高学年を対象にベ
えられる.施行回数も増加したため,児童が意
ースボール型の学習内容の妥当性を検討する
欲的に取り組むためには,基礎的技能を身につ
ことを目的とした.
けることが重要ではないかと考えられる.