太い末梢静脈路を確実に確保 するための穿刺針の開発

太い末梢静脈路を確実に確保
するための穿刺針の開発
信州大学
医学部 麻酔科蘇生科
助教
井出 進
背景

救急・麻酔領域におい
て、末梢静脈路確保は
重要である。

大動脈瘤破裂などの疾
患では、急速輸液・急
速輸血のために太い静
脈ルートを確保する必
要がある。
なぜ太いルートなのか
ゲージ数
外径 mm
流量 ml/min
22G
0.9
32
18G
1.3
85
16G
1.7
179
5倍!
Poiseuille(ポアズイユ)の法則
単位時間当たりに流れる流量は、管の半径の4乗に比例する。
流量を確保するためにはルートの太さが大事!!
ニーズ

太い末梢静脈ルートを確実に確保する
方法があれば・・・
◦ 救急現場での初期対応の向上
◦ 救命センターでの救命率の向上
◦ 手術麻酔での安全性向上
特に有効性が高いと考えられるケース

太い血管がない血管

確実にルートを確保したい場合

穿刺に適した静脈がない場合
◦ 蛇行していないこと
◦ 分岐、合流していないこと
◦ 下流部で点滴確保されていないこと
現時点での問題点

細い血管に16Gなどの太い静
脈ルートを確保するのは困難。

血管は体表で良く見えるため、
超音波装置(エコー)を使って
も成功率は上がらない。

現状は、確実性の高い22Gな
どの細いルートで血管確保する
しかない。
課題
 22Gゲージで血管確保を行い、その
ルートを利用して16Gに入れ替え
ることで、太い末梢静脈路を確実
に確保する方法を確立する。
入れ替えを可能にする
セルジンガー法

ガイドワイヤーを使えば、22Gの静脈
路を16Gゲージに入れ替えることがで
きるのでは?
ガイドワイヤー
皮膚
皮静脈
なぜこのような製品がないのか?

末梢静脈は細く壁が薄いた
め、血液の血管外漏出によ
る血腫で容易に虚脱・狭小
化してしまう。
◦
ダイレーターを用いた2段階の手
法では、血腫ができやすい。
→より迅速な穿刺方法が求
められる
ダイレーター
(プラスチック製)
戦略
ダイレータタイプではなく、セルジン
ガー法に適した穿刺針(金属針)を開
発する。
ダイレーター
(プラスチック製)
穿刺針
(金属針)
穿刺針の問題点
現状ではガイドワイヤーと針先先端とのギャッ
プ(●ー●)により、ガイドワイヤー刺入経路
と針の刺入経路にずれが生じてしまう
通常の針では失敗が多く、
新たな穿刺針の開発が必要
失敗例
成功例
ガイドワイヤーと穿刺
針先端が正しく一致し
ている
試作品の開発
通常の内針
試作品の内針
ガイドワ
イヤー
内針
肉厚なため内腔が狭くなり、細いガイドワイヤーに密着している。
穿刺手順
A
D
22Gで静脈路を確保
B
ガイドワイヤーをガイドとして、
本研究16G針を穿刺
E
ガイドワイヤーを挿入
C
ガイドワイヤーと内針を抜去し、
カニューラを点滴ルートに接続
22Gカニューレは抜去
実証実験① 直接穿刺法との比較

ラット大腿静脈での検討
成功
失敗
成功率
直接穿刺
2
9
18%
セルジンガー法
10
4
71%
第41回日本集中治療医学会学術集会
実証実験②

通常針との比較
マネキンモデルで、セルジンガー法に
よる成功率の検討
成功
失敗
成功率
通常針(既製品)
30
10
75%
試作穿刺針
39
1
98%
日本麻酔科学会 第62回学術集会
実証実験③ 臨床研究


人を対象とし、直接穿刺法と比較
全ての血管
血管径3㎜以下
直接穿刺
(n=22)
77%
66%
セルジンガー法
(n=22)
91%
88%
セルジンガー法では、細い血管であっ
ても高い確率でカテーテル留置に成功
した。
実用化に向けた課題

各種パラメータの最適化
※詳細は面談時に。
企業への期待

実用化へむけた共同(臨床)研究

改善と改良

製品化
本技術に関する知的財産権

発明の名称:穿刺針及び穿刺針キット

出願番号:PCT/JP2014/055700
※JST特許出願支援制度に採択

出願人:国立大学法人信州大学

発明者:井出進、川真田樹人
産学連携の経歴

国内複数穿刺針メーカーに試作品製作
依頼
お問合せ先
信州大学 産学官・社会連携推進機構
 医工連携コーディネータ

◦ 和田 健嗣 (ワダ ケンジ)
TEL:
0263-37-3446
 FAX: 0263-37-3425
 E-MAIL: [email protected]