和声の基礎 10 - 減三和音の転回形

和声の基礎 10 - 減三和音の転回形
減三和音では、基本形よりは第一転回形の方が使い勝手が良い。というのは、減三和音は第一
転回形において、上二声部がバスに対して三度と六度となり、実質的に協和音として扱えるため
である。
減三和音の基本形では、和声第一音と第五音が減五音程となるので不協和音である。また、減
三和音の第二転回形は著しく耳障りな響きになるため、ほとんど使われない。
減三和音の第一転回形を用いる場合には、(1) 次に I が来る場合と、(2) 次の I 以外が来る場合
とを区別する必要がある。I が来る場合、典型的には減三和音として VII の和音を考えれば良い。
このとき VII は導音であるから、重複させたはならない。すなわち、このような減三和音では根
音の重複に注意する必要がある。(第五音の重複は普通である。第三音の重複もあり得る。)
ここで、導音は必ず主音へ解決するから上行進行である。このため平行五度の禁則を保つには、
減三和音の和音第五音は上行進行してはならないことに注意すること。
長調における VII に加えて短調における II も減三和音となるが、連結における注意事項は同じ
である。
減三和音は非常に多く I に連結されるのであるが、先に(2)とした I 以外の和音が連結する場合
もある。この場合、根音は導音ではない為、重複させても大丈夫である。