第65回 全国高等学校 PTA 連合会大会【報告】 ■報告者/前城充(総務委員長) ■日 時/平成27年8月19日(水)~21日(金) ■メーン会場/岩手産業文化センター(滝沢市) ○メインテーマ/未来圏からの風をつかめ! サブテーマ/新時代を担う君たちと共に ---------------------------------------- 今大会へは、写真の 右から神谷校長、宮城 副会長、私、そして城 間先生、高江洲さんの 計5名で参加しました。 大会へは2日目とな る20日(木)からの参 加となりましたが、そ の日の基調講演をされ た芝浦工業大学の村上 雅人学長の話に会場は 釘付けとなりました。 ■大会会場に設置された撮影用パネル前で記念撮影 まず、学長はご自身の 経験から学生の留学を勧 められていました。留学することで得られた友人関係は今でも続いていて、公私ともに役 立っていること。そして若いうちに海外に出て多様性を肌で感じることで人間の幅が広が る事も指摘されました。その際、「英語はコミュニケーションのツール」である点も強調 されていました。 私の心に大きく響いたのは次です。「教育において重 要なのは、よい教師との出会いとされています。各分野 で活躍している多くのひとが、教師との出会いで人生が 変わったと言っています。将来の進路を決めるのに教師 の助言が決定的な役割を果たすことが多くあります。私 も小学校、中学校、高校に、それぞれ尊敬すべき素晴ら しい先生がいて、その先生方の影響を大きく受けて育っ てきました。そして、いま、私は先生方に心から感謝し ています。(事実に基づく)よい教育と、よい教育者、 -1- ■村上雅人学長/写真はネットから これらが大切です。」と述べた後、アメリカの作家で、教育者のウイリアム・アーサー・ ワードの言葉を引用しました。 The mediocre teacher tells. The good teacher explains. The superior teacher demonstrates. The great teacher inspires. 凡庸な教師はただ話す 良い教師は説明する。 優れた教師は自らやってみせる。 偉大な教師は学びの心に火をつける。 テンポの良い先生の語りは時間の経つのを忘れるくらいでした。先生は続けました、 「学 生の心にいかに学びの火を付けるか、これがとても重要な課題です。」「これからの社会 は学生に何を教えたか、ではなく、学生が何を学んだか。というアウトカムが求められる 時代。これが今のトレンドなので、パラタイムシフトが必要です。」と。いわゆる問題解 決型の授業が必要だと言われていました。アメリカでディベート型の授業を体験された経 験から、このような考えが導きだされたのでしょうか。 最後は、 「人類は、未知に挑戦できる。あなたの力は宇宙に続く空のように無限大です。」 と締めくくり、会場が割れんばかりの大きな拍手が鳴り響きました。本当に琴線に触れる 素晴らしい内容でした。村上学長をぜひ知念高校に招へいし、学生、先生、保護者、そし て教育関係者に聞かせてあげたい、そのような熱い思いがこみ上げてきました。 ■村上雅人学長のプロフィール -2- ○特別第1分科会【ホテルメトロポリタン盛岡ニューウイング】 さて、次は特別第1分科会です。テーマは「情報化社会と教育」です。ここは、事前に パネルで現役の高校生と大学生が登壇する情報がありましたので、大いに興味をもってい ました。また、岩手県立伊保内高等学校生徒会が、ワークショップを経て「スマートフォ ン利用マナーアップ宣言」を行った点もとても興味がありました。 基調講話を行った大谷良光氏(弘前大学教育学部 前教授)は、 まず LINE などのコミュニケーショントラブルとネットいじめ問 題について、各種データで説明しました。次にネットの長時間使 用によるネット依存傾向とデジタル・デメンチア(思考力を奪う 認知障害)に触れ、過剰利用が脳に及ぼす悪影響を説明しました。 続いて今回のテーマである「主体者としての生徒の自覚を育て る取り組み」として、国内の各種事例を紹介してくれました。 大谷氏は 2014 年3月で弘前大学を退職され、現在は「子ども のネットリスク教育研究会」で活動を続けられています。 ■大谷良光氏/写真ネットより 講話の中で、全国 PTA 連合会と京都大学の木原雅子准教授の調査 結果として 2014 年度の高校生のスマートフォン所持率は 95.1%に 及び、中でも注目すべきは「ラインの利用が 96 %に上ること。やりとりに管理者がいな いラインはさまざまな問題を抱えている。」と指摘されました。特にライン初心者の高校 1年生にトラブルが多いそうです。 このような課題については当事者の高校生からも、「友人が顔も知らないのにラインで 関わって直接会う寸前まで行ったが、危険な人と知って難を逃れた」、「ネットでなにげ なくつぶやいた事が他の生徒の反感を買いトラブルになった。ネット発言は取り消すこと が でき な い 。 モ ラ ルに つ いて 生 徒自 ら 考 え 、 行 動す る 必要 がある。」などの発言がありま した。 また大学生からも、「今、ラ イ ンバ ト ン と い う 遊び が 流行 っ てい る 。 答 え な いと 仲 間は ず れに さ れ る と い う強 制 感が あ る。 個 人 情 報 が 漏れ る 危険 性 をは ら ん で い る ので 注 視が 必要」、「高校生 だけではなく 大学生もラインで疲れている。 ■高校生も堂々と自分の意見を述べていました。驚きました。 -3- 既読機能があるため返信につい て気にしてしまう。そのため信頼関係が壊れるのはいやだと思っている人もいるが、個人 では解決できない。互いに話し合い、解決する場が必要」と発言しました。 これらの基調講演と、パネラーの発言を受けて本題の「主体者としての生徒の自覚を育 てる取り組み」へと流れていきました。結論から言えば平成26年11月に伊保内高校の 生徒会が下記の宣言をしたことにつながります。 スマートフォン利用マナーアップ宣言 岩手県立伊保内高等学校 生徒会 私たち伊保内高等学校生は、在学期間において以下の定めを守り、スマートフォンの適 正な利用につとめることを誓います。 1. ネットワーク上において、人を中傷誹謗することをしません。 また、伊高生は主体的 に使用する権利を有していることから、すぐに返信をしなければ仲間外れになるなどのこ とが無い等、全校生徒すべてがスマートフォンに支配されるような生活はしません。 2. 特別な許可なく校内では使用しません。 3. 安易な個人情報の開示はしません。 4. フィルタリングを利用します。 5. チェーンメールや迷惑メールを冷静に判断し拡散させません。 ここで重要なのは、最初に書かれている「ネットワーク上において、人を中傷誹謗するこ とをしません。 また、伊高生は主体的に使用する権利を有していることから、すぐに返信を しなければ仲間外れになるなどのことが無い等、全校生徒すべてがスマートフォンに支配され るような生活はしません。」という文言を、生徒が何度も議論し、白紙の状態から慎重に吟 味し考え抜いて作り上げ、それに先生と保護者も関わったと言うことです。その作り上げ るプロセス(学び合い、気づきあい)こそがとても重要なのです。大谷氏はそれを、「民主 主義の原点は、話し合いです。」とまとめてくれました。 さらにこの事は、最初に触れた芝浦工業大学の村上学長が言われた、「学生の心にいか に学びの火を付けるか、これがとても重要な課題です。」「これからの社会は学生に何を 教えたか、ではなく、学生が何を学んだか。というアウトカムが求められる時代。これが 今のトレンドなので、パラタイムシフトが必要です。」にもつながります。課題解決型の 教育です。今回の伊保内高校生徒会の宣言は立派なアウトカムです。 これまた最初に触れた、アメリカの作家で、教育者のウイリアム・アーサー・ワードの 言葉にもつながります。「教師」を「保護者」に置き換えると私たちの事になります。当 -4- 然私たちも当事者ですから、主体者である子どもたちに“気づき”を与える存在にならな ければいけないと思いました。パネルの高校 凡庸な教師はただ話す 生たちも、この課題解決に大人が関わって欲 良い教師は説明する。 しい、力を貸して欲しい、話し合いの「場」 優れた教師は自らやってみせる。 を作って欲しいと切実に訴えていました。私 偉大な教師は学びの心に火をつける。 たち保護者の出番が必要になってきたようで す。 大会3日目の朝、岩手日報が参加者全員に配られました。2日目に開催された行事の記 事が4面を割いて報告されていました。素晴らしいですね。特にネット問題についてはそ のうちの半分、2面も割いて伝えられていました。私は、その分科会に参加できて本当に 良かったです。 特別第1分科会にパネル登壇し た伊保内高教諭の川袋康史さん は、「宣言を生徒主導で作ったこ とで、生徒の中に意識が浸透して いる。新一年生を迎える際は、入 学式で宣言文を在校生が読み上げ て伝えた。在校生にとっては宣言 文を再確認することができた。今、 生徒、保護者、教員の協力体制、 信頼関係の強みを実感している。」 と述べていました。 ■3日の朝に配られた岩手日報では、特集が4面を使って組まれた。 知念高校は今年70周年を迎えます。記念事業も11月に開催されます。それを機に生 徒、保護者教員がさらに連携を深めることができたら素晴らしいですね。 今回の全国大会参加は私にとって大きな“気づき”を得る場となりました。昼間の研修、 夜の情報交換会、いずれも普段の生活の中では得ることができない事ばかりでした。その 中で意見交換したアイディアなどを一つずつ実行に移していきたいと思います。 ■参加者:神谷孝校長、城間正和(教諭) 宮城雄一(PTA 副会長)、前城充(PTA 総務委員長)、高江洲千春(PTA 進路委員長) -5-
© Copyright 2024 ExpyDoc