(第5章)略解

2015 年 7 月 13 日
solution phys5
『工科系の物理学基礎 I』問題略解
第 5 章 質点系の力学
5.1-1 地球から重心までの距離を `,地球から月までの距離を L,地球の質量を mE ,
月の質量を mM とすると,式 (5.13) より
`=
mM L
L
3.844 × 105 km
=
=
= 4.671 × 103 km
mE + mM
mE /mM + 1
1/0.0123 + 1
これは,地球の半径よりも小さい(約 0.73 倍).
5.2-1 ばねが最も縮むときには,2 つのブロックの速度は等しくなる(なぜそうなる
か考えよ).その速度を v とすると,運動量保存則により,
m1 v1 + m2 v2 = m1 v + m2 v
が成り立つ.また,ばねの最大の縮みを a とすると,エネルギー保存則により,
1
1
1
1
1
m1 v12 + m2 v22 = m1 v 2 + m2 v 2 + ka2
2
2
2
2
2
が成り立つ.これら 2 つの式から v を消去して a を求めると,
√
a=
m1 m2
(v1 − v2 ).
k(m1 + m2 )
5.2-2 ばねの自然長を `0 ,自然長を基準にしたばねの伸びを x とすると,
(床から測っ
た)上の円板の高さは h = `0 + x と表される.したがって,下の円板が床の上に静止い
ているならば,この系のエネルギーは
1
1
E = ẋ2 + kx2 + mg(`0 + x)
2
2
で与えられる.
上の円板がつり合いの位置で静止しているとき,ばねは自然長よりも mg/k だけ縮ん
でいる.この位置から円板を a だけ下に押し込んで,手を放したとしよう.仮に,下の
1
円板が床から離れないとして,上の円板の位置が最も上昇したときのばねの伸びを xmax
とする.手を放す直前のばねの伸びは x = −a − mg/k であり,手を放す直前と円板が最
も上昇したときには ẋ = 0 なので,エネルギー保存則により,
(
1 (
mg )2
mg ) 1 2
k −a −
+ mg l0 − a −
= kxmax + mg(`0 + xmax )
2
k
k
2
が成り立つ.これより,
xmax = a −
mg
k
を得る.ばねの伸びが xmax になったとき,下の円板にはばねによる上向きの力 kxmax =
ak − mg が作用する.この力が,下の円板に作用する重力 mg よりも大きければ,ばね
の伸びが xmax になる前に,下の円板は床から離れる.したがって,下の円板が床から離
れるための条件は
ka − mg > mg
⇒
a>
2mg
.
k
5.2-3 質点が筒から飛び出す瞬間の質点の速さを v ,台車の速さを V とすると,運
動量の保存則とエネルギー保存則により,
0 = mv − M V,
1 2 1 2 1
ka = mv + M V 2
2
2
2
が成り立つ.これより次の結果を得る.
√
Mk
,
v=a
m(M + m)
√
V =a
mk
.
M (M + m)
5.2-4 (a) エネルギー保存則より
1
1 2 1
ka = m(vx2 + vy2 ) + M V 2 + mga sin α.
2
2
2
運動量の水平成分が保存則するので
0 = mvx − M V .
また,台車に乗った観測者から見ると,質点が飛び出す瞬間の質点の速度は筒に平行であ
るから,
vy = (vx + V ) tan α
2
という関係が成り立つ(台車から見た質点の速度の水平成分と垂直成分はそれぞれ vx +V ,
vy だから).これら三つの式を V ,vx ,vy について解くと,次の結果が得られる.
√
ka2 − 2mga sin α
V = m cos α
,
m(M + m)(M + m sin2 α)
√
ka2 − 2mga sin α
vx = M cos α
,
m(M + m)(M + m sin2 α)
√
(ka2 − 2mga sin α)(M + m)
vy = sin α
.
m(M + m sin2 α)
ここで α = 0 とおくと,問題 5.2-3 の結果に一致することを確認しておこう.
(b) 筒から飛び出した質点は放物線を描いて運動する.地面から筒先までの高さを無視
すると,質点の飛行距離は簡単な計算により,l = 2vx vy /g で与えられることが分かる.
これに小問 (a) の結果を代入して
l=
M (ka2 − 2mga sin α) sin 2α
mg(M + m sin2 α)
を得る.
(補足)ばねが十分に堅くて,ばねの弾性エネルギー 21 ka2 に比べて重力によるポテン
シャルエネルギー mga sin α が無視できるときには
l=
M ka2 sin 2α
mg(M + m sin2 α)
と近似できる.この飛距離を最大にする仰角 αmax は
αmax =
1
m
arccos
2
m+M
で与えられる.台車が無限に重い場合(台車が固定された場合に相当)には,よく知られ
た結果 αmax = 45◦ になる.そうでない場合には 0 < αmax < 45◦ である.m/M が小さい
ときには αmax は 45◦ に近く,m/M が大きくなると αmax はゼロに向かって単調に減少
する.
5.2-5 質点が斜面の下端に達したときの質点の速度の x 成分を vx ,y 成分を vy とす
る.運動量の x 成分の保存則とエネルギー保存則により,
0 = mvx + M V,
1
1
mgh = m(vx2 + vy2 ) + M V 2
2
2
3
が成り立つ.また,三角柱といっしょに動く観測者から見ると,質点の速度は斜面に平行
であるから,
vy = (vx − V ) tan α
という関係が成り立つ(動く観察者から見た質点の速度の水平成分と垂直成分はそれぞれ
vx − V ,vy だから).これら 3 つの式から vx と vy を消去すると,次の結果が得られる.
√
2gh
V = m cos α
.
(M + m)(M + m sin2 α)
5.3-1 式 (5.29) の ri に,式 (5.34) の関係 ri = R + qi を代入すると,
(
)
∑
∑
∑
∑
qi × pi
(R + qi ) × pi = R ×
pi +
L=
ri × pi =
i
i
i
i
となる.この式変形では,ベクトル積の分配法則 (4.7) を利用した.さらに,質点系の運
動量 P の定義 (5.11) と重心を基準にした質点系の角運動量 L0 の定義 (5.35) を使うと,
上の式は
L = R × P + L0
となる.同様に,式 (5.30) と (5.34) と (5.9) と (5.35) から,N = R × F + N0 が得ら
れる.
式 (5.36) を (5.31) に代入すると
左辺 = Ṙ × P + R × Ṗ + L̇0 = mṘ × Ṙ + R × F + L̇0 = R × F + L̇0 ,
右辺 = R × F + N0
となる.したがって,L̇0 = N0 ,すなわち式 (5.37) が成立する.
5.3-2 式 (5.39) の右辺に,ベクトル積の分配則を適用すると,
( N
)
N
∑
∑
N0 =
qi × (mi g) =
mi qi × g.
i=1
i=1
ここで qi に式 (5.34) を代入すると,
N
∑
i=1
mi qi =
N
∑
i=1
mi (ri − R) =
N
∑
mi ri −
i=1
( N
∑
i=1
4
)
mi
R = M R − M R = 0.
したがって,式 (5.39) の右辺はゼロになる.
5.4-1 冥王星の質量を m1 ,カロンの質量を m2 として,式 (5.50) を適用すると,
a3
m1 + m2 =
G
(
2π
T
)2
(1.964 × 107 m)3
=
6.674 × 10−11 m3 · kg−1 · s−2
= 1.471 × 1022 kg.
これは,地球の質量の 0.00246 倍である.
5
(
2π
6.3872 × 60 × 60 × 24 s
)2