16.人間生活の基本は安全、安心であることは不変、不安や恐怖はどこから? 最近は、食品をはじめとして、安全安心に関心が集まっている。とうことは、今まではあ まり意識しないで信頼していたことが、様々なことが明らかになって急に不安になってき ているということであろう。 自然災害も、起きるまでは何も不安がないというか何にも関心を持たずに、忙しい日常の 中で突発的に発生するわけで、災害があって初めて、急に不安を感じるものの直接の被害が ないと、いつの間にかその関心も薄れてしまっていく。特に自然災害は、長い時間で見ると 繰り返し、類似のものが発生しているのではあるが、その間隙にいると、極めて穏やかなも のに感じ、想定すらできないでいる。わが国でも地震による大きな災害が近年続いてはいる が、その前のいわゆる経済成長のころにはほとんどなく、あればその経済成長へも影響が出 たのかもしれない。そんなこともあって、どこかで大災害があっても、一時は関心を持つが それ以上の危機感はなくそれを契機に備えるということはあまりないようである。つまり 対岸の火事としか見てなくて、災害は一過性のものという認識かもしれない。 もちろん、自然災害、特に水害や地震、土石流といった人命にかかわるものに対しての恐 怖はどこかで認識しているものとは思われる。しかし、発生時によく聞く言葉に、想定外と いうことがあり、知ってはいたがまさか自分のところには関係がないということであった と推認される。そのために避難が遅れたり、逆に犠牲になるような条件を自ら作ってしまっ たという例も、実際、東日本大震災では見られたし、以前から類例は多い。それは正常化へ の偏見とか、決めつけというような心理的な要素があるといわれている。 いくら情報が豊富で、実例が豊富であっても避けられないことらしい。それを少しでも解 消するには、自然のメカニズムに対する正しい理解が必要で、トピックスとしては知り得て も、その素因や誘因などの背景までに至らないために、一過性の情報になっているのではな いかと思われ、積み重ねがないところでは、実践での行動力に結びつかないということでも ある。 実は、安全安心を得るということは、正しく恐怖を感じることでもあって、その感性が極 めて大事なことになると思われる。その感性の一つは、地域知であり、その地域の地形地質、 災害になるリスクを文化、風土、歴史から学びとることである。自然災害もいくつかの種類 があって、それぞれ発生する場があることや、発生する要因などが大まかに知ることができ るわけで、予知や予測まではできなくても、何がどんな時に、どのようなことが発生するの かは推定できる。そうすればどのような備え、自分に合った避難すべき要件を選択しておく ことが可能である。 何もなしで、その時勝負が利かないのが、自然災害の特性でもあるのだが、完璧なものは 望まずに、基礎的なことを身に着けて、発生時にはその応用力を発揮するということが大事 である。地域や家族で、ときどき話題にして、地域への関心力を高めていくことこそが、安 全安心につながる方策である。モノで安心を得るよりも、人間力が大事なことを大震災では 学んだような気がする。
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