資源の概念 内堀基光「資源人類学の導入」『資源人類学』(放送大学教育振興会、2007年)より 1 「持続可能な開発」という考え方 • Sustainable development • 1980年代半ばから注目を浴びた。 • 開発と環境保全を両立させようとする考え方。 • 最も権威ある定義 「将来の世代が自らの欲求を充足する能力を損な うことなく、今日の世代の欲求を満たすこと」。ブル ントラント報告(1987年) 佐藤 仁2002 『稀少資源のポリティクス:タイ農村にみる開発と環境のはざま』東京大学出版会、p.2-3、29 通常語られる「資源」 • 「地球上の資源問題」=資源の枯渇可能性 の問題 • この問題設定の中で語られる資源=ある種 の天然資源 – エネルギー資源、熱帯林、生物多様性 3 「資源」と呼ばれうる多様なもの 資源の分類の仕方 • ひとつの分け方 – 再生可能資源(renewable resources) – 非再生可能資源(non-renewable resources) ※資源の性質による規定。天然・鉱物・生物という規定と同じ。 • もうひとつの分け方 1. ~である資源 2. ~のための資源 (性質による規定) (目的による規定) • 資源の規定には、二つの系統がある。 5 さまざまな資源を考えるときに、どのような 問題領域があるか。 • 「資源」についての一つの考え方 • 人間との関わりにおいて、 1. 資源とされるものは一体いかなるものなのか 2. どのようなものがどのような状況下で資源となる のか 3. あるいは、どのような状況で資源とはならないか 「資源」ということば • 資源という概念は無定義で使われることが多い。 • 経済学の一つの広い定義 – 「資源配分についての学問である」 「資源」の語源と定義 • • • • 英語のresource (s)の訳語。 「富源」(大正期まで) 限定的、固定的な意味合い。 英語のリソースの語源:résoudre(古いフランス語方言) 「ふたたび立ち上がる」「復活する」という意味合い。 • 資源: • 「人間の活動の中で動的であるとともに、人間の生活に 動的な力を供給するもの」(内堀 2007) • 「働きかけの対象となる可能性の束」(佐藤 2008) 8 人間活動の連鎖構造 • 生産活動、消費生活、暴力を伴う闘争、商業 交渉、政治交渉、日常生活、非日常の祭りや 儀礼、宗教活動… • 家族、親族、村落、国家、国家を超える組織 • 動的な力の供給としての資源にも連鎖がある。 資源をめぐる連鎖 • あるものがそのままの形の資源であり続けることはない。 • さまざまな種類の資源が連鎖する。 10 資源になるということ • あるものが資源になっていくことを「資源化」と いう概念で呼ぶ。 – 資源化=資源の形成 • それまで資源であったものが資源であることを やめる、資源が完全に枯渇する、より良いもの が資源としての位置を獲得することがある。 – 代わりとなる資源、代替資源が形成される。 11 代替資源の例 人糞 下肥 1960年代初めまで専門業者。 化学肥料の開発。 ⇒下肥の肥料を作る資源としての役割終了。 • 理由:衛生、都市住民の生活変化。 • • • • 資源の循環過程 • 資源化から資源の終わりまでを、資源の循環 過程と呼ぶ。 – 資源の再利用(リサイクル)と誤解されることが多 い。 =再資源化 – 人類史的なタイムスケールで考えられる。 1. 人類の生活をとおして、一貫して資源であり続けたもの 2. 一定の歴史的条件下でのみ資源となったもの、なって いるもの • 空気は資源か? • 人間の生命活動に必要。 資源をめぐる競争 • 資源は多くの場合、競争の対象であり、政治 の問題である。 • その前提には、資源は少ないものだという事 実認識がある。この前提は、資源の希少性、 稀少資源をめぐる競争と表現される。 15 • 政治の問題としての資源の配分 – 国内政治、国家間の政治問題、南北問題 – 商品化 – 途上国と先進国のもつ資源の違い • 天然資源や生物資源を持つ開発途上国 – 熱帯林、固有の生物種 • 知識資源を持つ先進国 – 知的財産、知的所有物、知的所有権 資源カテゴリー • 生態系:資源材料の 提供 • 象徴系:意味の付与 1. 人間社会は、これら の資源の配分のあ り方の組み合わせで 成り立つ。 2. 多くの資源は生態資 源であると同時に象 徴資源でもある。 17 まとめ 1. 資源の多様性 2. 資源の分類の仕方 1. ~である資源 2. ~のための資源 3. 4. 5. 6. 資源の概念 資源化 資源の循環過程 資源カテゴリー (性質による規定) (目的による規定)
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