詳細(PDF:365K)

TBR ECONOMIC OUTLOOK
2015・2016年度日本経済見通し(2015 年 6 月改訂)
景気回復基調が続き、2 年連続 1%台後半の成長率に
2015年6月10日
東 レ 経 営 研 究 所
● 実質GDP成長率予測: 2015 年度 1.7%、2016 年度 1.6%
(前回 2015 年 5 月時点の予測: 2015 年度 1.6%、2016 年度 1.6%)
2015 年 1~3 月期 GDP(2 次速報)の公表(6 月 8 日)を織り込んで、東レ経営研
究所は日本経済見通しの改訂を行った。
15 年 1~3 月期の実質 GDP(2 次速報)は設備投資の上方修正を主因として、前期
比 1.0%、同年率 3.9%へと上方修正された(1 次速報:前期比 0.6%、同年率 2.4%)。
個人消費と輸出の回復が続いているほか、企業の設備投資の回復も確認できる結果とな
った。在庫投資が成長率を大きく押し上げている点は留意が必要だが、意図的な在庫積
み増しが多いとみられ、それほど心配する必要はないだろう。
2 次速報の結果を受けた成長率の発射台調整や最近の経済指標を踏まえて、2015 年
度の実質 GDP 成長率の見通しを 1.7%と、前回予測から 0.1%ポイント上方修正した。
設備投資を上方修正したが、4~6 月期の個人消費と輸出を下方修正したため、全体で
は小幅の上方修正にとどまった。
景気の現状認識および先行きの景気シナリオに大きな変更はない。2016 年度の成長
率は 1.6%と、前回予測を据え置いた。
● 原油安、賃金上昇、政策効果などの追い風を受け、2015 年度も回復基調が継続
15 年 4 月以降の経済指標は、生産、消費関連を中心にやや弱含んでいるが、先行き
景気の回復基調は維持される見通しだ。
その理由は、15 年度には次のような複数の景気押し上げ要因が見込まれるためであ
る。①原油安が企業収益を押し上げるとともに家計の購買力を高めること、②企業収益
増加と人手不足を背景とする賃金上昇が消費を下支えすること、③企業業績改善を背景
に、これまで先送りされていた維持・更新投資や競争力確保のための設備投資が実行さ
れること、
④14 年度補正予算による経済対策の効果が 15 年度の内需を下支えすること、
⑤円安定着を背景に輸出が緩やかに増加すること、⑥訪日外国人による旺盛な消費が
GDP のサービス輸出を押し上げること、といった景気の追い風が吹く。
この結果、15 年度の日本経済は、個人消費、設備投資、輸出の増加に支えられて、
潜在成長率(0%台半ばとされる)を上回る成長率(1.7%)が実現する見通しである。
● 2016 年度後半は消費増税前の駆け込み需要が景気を押し上げ
16 年度も景気の緩やかな回復基調が続く見通しだ。
16 年度前半は原油価格下落の恩恵の剥落と円安を通じた物価の再上昇による実質所
得の伸び悩みを受けて、成長ペースの鈍化が予想される。しかし、年度後半には 17 年
4 月の消費税率再引き上げ(8%→10%)前の駆け込み需要が景気を押し上げるため、
通年では 1.6%と、15 年度並みの成長率になると予測する。
● リスク要因は不安定な海外情勢
今後の景気下振れリスクとしては、中国景気の急減速、米国の利上げを契機とした新
興国経済や金融市場の混乱、ギリシャ問題の深刻化、等に注意を払う必要があろう。
株式会社 東レ経営研究所
Toray Corporate Business Research, Inc.
〒101-0041 東京都千代田区神田須田町 2-5-2 須田町佐志田ビル 3 階
TEL:03-3526-2901 FAX:03-3526-2938 URL:http://www.tbr.co.jp/
2015・2016年度日本経済見通し 総括表
(2015年1~3月期GDP2次速報反映後)
(前年度比、%)
【 前 回 予 測 】
(2015年5月22日)
2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度
(実 績)
実質GDP
(実 績)
(実 績)
(予 測)
(予 測)
2015年度 2016年度
(予 測)
(予 測)
1.0
2.1
△ 0.9
1.7
1.6
1.6
1.6
個人消費
1.8
2.5
△ 3.1
1.5
1.6
1.6
1.6
民間住宅投資
5.7
9.3
△ 11.7
1.8
4.9
1.5
4.9
民間企業設備投資
1.2
4.0
0.4
3.7
3.5
2.8
3.7
民間在庫品増減〈寄与度〉
0.0
△ 0.5
0.5
△ 0.1
0.0
△ 0.1
0.0
政府消費
1.5
1.6
0.4
0.7
0.7
0.7
0.7
公共投資
1.0
10.3
2.0
△ 2.9
△ 1.8
△ 3.1
△ 1.6
財貨・サービスの輸出
△ 1.4
4.4
8.0
5.8
4.5
6.2
4.0
財貨・サービスの輸入
3.6
6.7
3.7
5.4
5.2
5.7
4.8
1.8
2.6
△ 1.5
1.5
1.6
1.4
1.6
民間内需寄与度
1.4
1.8
△ 1.7
1.5
1.5
1.4
1.5
公的内需寄与度
0.3
0.8
0.2
△ 0.0
0.1
△ 0.0
0.1
△ 0.8
△ 0.5
0.6
0.2
0.0
0.2
0.0
0.1
1.8
1.6
2.8
1.9
2.7
1.9
GDPデフレーター
△ 0.9
△ 0.3
2.5
1.1
0.3
1.1
0.3
鉱工業生産
△ 2.9
3.2
△ 0.4
2.2
2.8
3.1
3.7
89.3
98.7
88.0
91.1
94.8
91.0
94.3
国内企業物価(2010年=100)
△ 1.1
1.9
2.8
△ 1.4
1.0
△ 1.2
1.0
消費者物価 (生鮮食品除く総合)
△ 0.2
0.8
2.8
0.2
1.1
0.3
1.2
(△0.2)
( 0.8)
( 0.8)
( 0.2)
( 1.1)
( 0.3)
( 1.2)
完全失業率 (%)
4.3
3.9
3.6
3.4
3.3
3.4
3.4
名目雇用者報酬
0.1
1.0
1.7
1.8
1.4
1.7
1.5
経常収支 (兆円)
4.2
1.5
7.8
12.9
13.4
12.5
13.3
貿易収支 (兆円)
△ 5.2
△ 11.0
△ 6.6
△ 2.1
△ 1.9
△ 2.3
△ 2.0
82.9
100.0
109.8
123.5
125.0
120.5
120.5
114.0
109.9
94.0
65.5
71.5
65.5
71.5
米国実質GDP成長率 (暦年)
2.3
2.2
2.4
2.2
2.8
2.5
2.8
中国実質GDP成長率 (暦年)
7.7
7.7
7.4
6.9
6.7
6.9
6.7
内需寄与度
外需寄与度
名目GDP
新設住宅着工戸数 (万戸)
(消費税要因を除く)
円レート (円/ドル)
原油価格 (通関、ドル/バレル)
(注) 2015年10月に消費税率引き上げ(8%→10%)が実施されることを想定。
2
年度ベースの実質GDP成長率と需要項目別寄与度
3.5
(前年度比、%)
2.1
予測
3.0
個人消費
2.5
2.0
0.4
設備投資
1.7
1.0
1.6
住宅投資
1.5
在庫投資
1.0
公需
0.5
外需
0.0
実質GDP
-0.5
-1.0
-0.9
-1.5
-2.0
-2.5
11
12
13
14
15
16
(年度)
(注) 数字は実質GDP成長率。
出所 : 内閣府経済社会総合研究所 「四半期別GDP速報」、2015・2016年度は当社予測
3.0
2.0
(前期比、%)
四半期別実質GDP成長率と項目別寄与度(前期比)
予測
1.1
1.3
個人消費
1.0
0.7
0.3
設備投資
0.8
0.5
1.0
縦長版
0.2
0.4 0.5 0.5
0.2
住宅投資
0.5 0.3
在庫投資
0.0
公需
-0.2
-1.0
外需
-0.5
実質GDP
-2.0
-3.0
-4.0
-1.7
17/1Q
4Q
3Q
2Q
16/1Q
4Q
3Q
2Q
15/1Q
4Q
3Q
2Q
14/1Q
4Q
3Q
2Q
13/1Q
-5.0
(暦年・四半期)
(注) 数字は実質GDP成長率。2017年4月に消費税率引き上げ(8%→10%)が実施されることを想定。
出所 : 内閣府経済社会総合研究所 「四半期別GDP速報」、2015年第2四半期(4~6月期)以降は当社予測
お問い合わせ先
東レ経営研究所 産業経済調査部門
チーフエコノミスト 増田 貴司
TEL :03-3526-2925
E-mail :[email protected]
3