TBR ECONOMIC OUTLOOK 2015・2016年度日本経済見通し(2015 年 2 月改訂) 原油安・円安などの追い風を受けて景気は拡大へ 2015年2月18日 東 レ 経 営 研 究 所 ●実質GDP成長率予測: 2014 年度 ▲0.8%、2015 年度 1.9%、2016 年度 1.6% (前回 2014 年 12 月時点の予測: 2014 年度▲0.7%、2015 年度 1.7%) 2014 年 10~12 月期 GDP(1 次速報)の公表(2 月 16 日)を織り込んで、東レ経営 研究所は日本経済見通しの改訂を行った。 14 年 10~12 月期の実質 GDP は前期比+0.6%と 3 四半期ぶりのプラス成長となっ た。7~9 月期を底に景気が上向いていることが示されたが、同時にその回復テンポが 鈍いことも確認された。これを踏まえ、14 年度の実質 GDP 成長率の見通しを▲0.8% へと下方修正した。 一方、前回予測時点と比べて原油価格の想定を大幅に引き下げたことに伴い、15 年 度の成長率見通しを 1.9%に上方修正した。16 年度は成長テンポがやや鈍化するが、後 半には消費増税前の駆け込み需要も加わり、通年で 1.6%の成長率になると予測する。 ● 2015 年度の日本経済には追い風が集中 14 年度通年では 2009 年度以来 5 年ぶりのマイナス成長になる見通しだが、景気は既 に(14 年秋以降) 、緩やかな回復軌道に乗っている。 海外経済動向をみると、新興国の成長鈍化や資源国経済の落ち込みがみられるものの、 米国を中心とする先進国経済の堅調が世界経済を下支えする構図となっている。 15 年度の日本経済には、いくつもの追い風が吹く。それは、①昨年後半以降の大幅 な原油安の恩恵(企業のコスト削減と家計の購買力上昇)、②日銀の追加緩和を背景と する円安・株高基調による景気の押し上げ効果、③14 年 4 月の消費増税に伴う物価上 昇を通じた購買力低下の影響がなくなることが個人消費にプラスに働くこと、④14 年 度補正予算による経済対策の効果が 15 年度半ばの景気を下支えすること、などである。 こうした中、良好な企業収益に支えられた設備投資の増加基調、家計の所得・雇用環 境の改善を背景とした個人消費の持ち直し、米国を中心とした海外経済の回復に伴う輸 出の増加などにより、景気は底堅さを増していく見通しである。 ● 2016 年度後半は消費増税前の駆け込み需要が加わる 続く 16 年度は、民間需要の増加傾向は持続するが、原油価格下落の影響の剥落と円 安を通じた物価の再上昇による実質所得の伸び悩みを受けて、成長ペースは鈍化すると 予想される。しかし、16 年度後半には 17 年 4 月の消費税率再引き上げ(8%→10%) 前の駆け込み需要が景気を押し上げるため、通年では 1%台半ばの成長率を維持できる 見通しである。 ● リスク要因:不安定な海外情勢に要注意 日本経済の回復に水を差しかねないのが、不安定な海外情勢である。景気の下振れリ スクとして、①中国やユーロ圏の景気下振れ、②米国の利上げを契機とした金融市場の 混乱、③原油安の悪影響や地政学的リスク、等に注意を払う必要がある。 加えて、日本の経済政策への信認の低下が「日本売り」(株・国債・円の同時売り) を誘発するリスクも依然として存在していることを忘れるべきではないだろう。 株式会社 東レ経営研究所 Toray Corporate Business Research, Inc. 〒101-0041 東京都千代田区神田須田町 2-5-2 須田町佐志田ビル 3 階 TEL:03-3526-2901 FAX:03-3526-2938 URL:http://www.tbr.co.jp/ 2015・2016年度日本経済見通し 総括表 (2014年10~12月期GDP1次速報反映後) (前年度比、%) 【 前 回 予 測 】 (2014年12月10日) 2012年度 2013年度 2014年度 2015年度 2016年度 (実 績) 実質GDP (実 績) (予 測) (予 測) (予 測) 2014年度 2015年度 (予 測) (予 測) 1.0 2.1 △ 0.8 1.9 1.6 △ 0.7 1.7 個人消費 1.8 2.5 △ 3.1 1.6 1.7 △ 2.9 1.5 民間住宅投資 5.7 9.3 △ 12.1 0.3 4.2 △ 11.1 0.9 民間企業設備投資 1.2 4.0 △ 0.0 4.1 3.6 0.4 3.5 民間在庫品増減〈寄与度〉 0.0 △ 0.5 0.5 △ 0.1 △ 0.1 0.5 △ 0.1 政府消費 1.5 1.6 0.3 0.8 0.8 0.4 1.0 公共投資 1.0 10.3 1.8 △ 4.3 △ 1.6 △ 0.4 △ 3.5 財貨・サービスの輸出 △ 1.3 4.7 7.2 4.9 4.1 6.2 4.5 財貨・サービスの輸入 3.6 6.7 2.9 3.6 4.5 2.3 3.5 1.8 2.6 △ 1.5 1.6 1.6 △ 1.3 1.5 民間内需寄与度 1.5 1.8 △ 1.6 1.6 1.5 △ 1.4 1.5 公的内需寄与度 0.3 0.8 0.1 △ 0.0 0.1 0.1 0.0 △ 0.8 △ 0.5 0.7 0.3 0.0 0.6 0.2 0.1 1.8 1.5 3.1 1.7 1.1 2.4 GDPデフレーター △ 0.9 △ 0.3 2.4 1.2 0.1 1.8 0.7 鉱工業生産 △ 2.9 3.2 △ 0.5 3.2 3.9 △ 1.0 3.1 89.3 98.7 88.1 90.8 94.3 87.8 91.0 国内企業物価(2010年=100) △ 1.1 1.9 2.7 △ 1.5 1.4 3.5 1.0 消費者物価 [生鮮食品除く総合] △ 0.2 0.8 2.8 0.1 1.1 3.1 1.1 (△0.2) ( 0.8) ( 0.8) ( 0.1) ( 1.1) ( 1.0) ( 1.1) 完全失業率 (%) 4.3 3.9 3.5 3.4 3.3 3.6 3.5 名目雇用者報酬 0.1 1.0 1.9 1.6 1.5 1.7 1.3 経常収支 (兆円) 4.2 0.7 6.4 12.3 13.1 3.5 6.0 貿易収支 (兆円) △ 5.2 △ 10.9 △ 6.8 △ 1.9 △ 1.4 △ 9.6 △ 8.0 82.9 100.0 109.5 120.5 122.0 110.0 120.5 114.0 109.9 94.5 65.5 71.0 98.8 85.5 米国実質GDP成長率 (暦年) 2.3 2.2 2.4 3.2 2.9 2.3 3.0 中国実質GDP成長率 (暦年) 7.7 7.7 7.4 7.1 6.9 7.3 7.1 内需寄与度 外需寄与度 名目GDP 新設住宅着工戸数 (万戸) (消費税要因を除く) 円レート (円/ドル) 原油価格 (通関、ドル/バレル) 2 年度ベースの実質GDP成長率と需要項目別寄与度 3.5 (前年度比、%) 予測 2.1 3.0 個人消費 2.5 2.0 0.4 設備投資 1.9 1.0 1.6 住宅投資 1.5 在庫投資 1.0 公需 0.5 外需 0.0 実質GDP -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -0.8 -2.5 11 12 13 14 15 16 (年度) (注) 数字は実質GDP成長率。 出所 : 内閣府経済社会総合研究所 「四半期別GDP速報」、2014・2015・2016年度は当社予測 四半期別実質GDP成長率と項目別寄与度(前期比) 3.0 (前期比、%) 縦長版 予測 1.3 個人消費 2.0 1.4 0.5 0.8 0.6 0.4 1.0 0.8 設備投資 0.5 0.4 0.4 0.4 0.4 0.3 0.5 住宅投資 在庫投資 0.0 公需 -0.4 -1.0 外需 実質GDP -0.6 -2.0 -3.0 -4.0 -1.7 17/1Q 4Q 3Q 2Q 16/1Q 4Q 3Q 2Q 15/1Q 4Q 3Q 2Q 14/1Q 4Q 3Q 2Q 13/1Q -5.0 (暦年・四半期) (注) 数字は実質GDP成長率。2017年4月に消費税率引き上げ(8%→10%)が実施されることを想定。 出所 : 内閣府経済社会総合研究所 「四半期別GDP速報」、2015年第1四半期(1~3月期)以降は当社予測 お問い合わせ先 東レ経営研究所 産業経済調査部門 チーフエコノミスト 増田 貴司 TEL :03-3526-2925 E-mail :[email protected] 3
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