1 幾何学入門第2回 平面曲線の曲率(1) 名城大学理工学部情報工学科 山本修身 2 幾何学入門で扱う内容 • 幾何学入門では図形の性質について勉強する. • 図形とは,ある集合(空間)の部分集合のことであ る.図形自体も空間といえる. • 「空間」は単に集合と いうだけではなく, 「距離」とか「位相」 など付加的な性質(構造)を もつものを考えることが多い. S X S X 3 ユークリッド空間 • さしあたり,ここで用いる空間はユークリッド空間 である.(nは次元) 実数の集合 R = {(x1 , x2 , · · · , xn ) | xi n R} • ユークリッド空間の2点の間には距離が定義される. n d(x, y) = i=1 |xi yi |2 x = (x1 , x2 , · · · , xn ), y = (y1 , y2 , · · · , yn ) 4 講義の前半のテーマについて • この講義の前半の部分では,曲線と曲面の微分幾何的性質に ついて扱う.後半では曲面の位相的な性質について考える. 前半の最初の部分では「滑らかな」曲線について考える. • 「滑らかな」曲線とは連続で微分可能な曲線のこと. 5 曲線をどのように定義するか?(1) • 平面(2次元ユークリッド空間)の中の曲線について考える. • 曲線を定義する一番簡単な方法は,一変数関数 y = f (x) 3 によって定義する方法が考えられる. 2 • しかし,これでは,円環状の曲線などは表現できない. 4 3 1 2 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 1 表現可 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 -1 4 5 表現不可 6 曲線をどのように定義するか?(2) • 陰関数で表示することが考えられる g(x, y) = 0 • 色々な曲線が定義できそうだが,複雑すぎたり,連 3 結でなかったり,色々なことが起こり解析が困難. 2 1 x +y =1 2 -5 -4 2 -3 -2 -1 0 -1 -2 1 2 3 表現可 4 7 曲線をどのように定義するか?(3) • 連結でないような曲線も出現する • これでは扱いづらい y =x 2 3 x 1.6 A+B 1.2 楕円曲線 0.8 A -2.4 -2 -1.6 -1.2 0.4 -0.8 -0.4 0 B -0.4 -0.8 -1.2 -1.6 0.4 0.8 1.2 1.6 2 2.4 8 曲線をどのように定義するか?(4) • パラメータ表示.ここではこの方法を採用する. x = y = • 個別の関数が連続であれば連結性が保証される. • しかし,微分可能であっても特異点が存在する場合がある. f (t) g(t) 3 1.5 = = x y -2.4 -2 sin 4 cos 8 -1.6 -1.2 -0.8 2 1 x y = = cos sin 0.5 1 -0.4 0 -5 0.4 -4 0.8 1.2 -3 1.6 2 -2 2.4 -1 0 1 2 -0.5 -1 特異点 -1 表現可 3 9 ここでの曲線の定義 2次元ユークリッド平面上の曲線は, x y = = f (t) g(t) と表されるものであると定義する.ただし,tはパラメ ターである.ここで,f(t)やg(t)は連続かつ微分可能である と仮定する. (x(t), y(t)) (x(t), y(t)) 10 ここで注目することがら • 良く考えれば当たり前だが,実は曲線のパラメータ表 示にはいくらでも違った表現方法がある.以下の2つパ ラメータ表示は同じ直線を表現している. x y = = t t x y = = 3t 3t 1 1 • 回転や平行移動させて同じものは同じ曲線であると考 えたい.円はどこに置かれていても円であるし,放物 線もどちらを向いていても放物線である. 4.8 4 3.2 • 座標系は人間が決めた便宜的なものであって,ここで は曲線そのものの形に注目したい. 2.4 1.6 0.8 -4.8 -4 -3.2 -2.4 -1.6 -0.8 y=x 0 -0.8 0.8 1.6 2.4 2 3.2 4 11 曲線の局所的な性質を調べる (1) • 0からt0まで動かしたときの移動距離(長さ)を測ってみる. tがどのような L= パラメータか によって曲線 の表現方法は dx dt i t0 L(t0 ) = 0 dx dt 2 + 2 + dy dt dy dt 2 ti 2 t = t0 dt 色々考えられ る.これを唯 一にするため には工夫が必 要である. t=0 x y = = x(t) y(t) 12 曲線の局所的な性質を調べる (2) • 0からtまでの長さをs(t)とおいて,sでx(t), y(t)を表現する ことを考える.t = 0の点を決めておけば,長さによって 曲線上の唯一の位置を指定することができる. x(t) y(t) = = X(s(t)) Y (s(t)) とおく. t=0 dX dX(s(t)) dt dx(t) dt = = = ds dt ds dt ds t s(t) = 0 dx dt 2 + dy dt 2 dt ds = dt s(t) = 2 t = 0から曲線に沿った 距離がちょうど2の点 dx(t) dt ds dt dx dt 2 + dy dt 2 13 曲線の局所的な性質を調べる (3) • 上の2つの結果を用いて,以下の結果を得る. ds = dt dx dt 2 + dy dt dX = ds dY = ds 2 dX = ds dx(t) dt ds dt dx(t) dt dx 2 + dt dy(t) dt dx 2 dt + dy dt dy dt 2 2 14 曲線の局所的な性質を調べる (4) • sによる接線ベクトルの長さを測ると1となる.sを一定の速 度で大きくすると,曲線上の速度はいつも1である. dx(t) dt dX = ds dX ds dx 2 dt 2 + dY ds dy dt + 2 = 2 dx 2 dt dx 2 dt dy(t) dt dY = ds + + dy dt dy dt dx 2 dt dX(s) dY (s) , ds ds 2 2 + dy dt 2 =1 (X(s), Y (s)) 15 曲線の局所的な性質を調べる (5) • この長さ1のベクトルの直交方向のベクトルを考える dX = ds dx(t) dt dx 2 dt + dy dt 2 dx 2 dt + e1 = 2つベクトルe1とe2の dy dt 2 dX(s) dY (s) , ds ds (X(s), Y (s)) 関係について調べて みる. dY = ds dy(t) dt e2 = dY (s) dX(s) , ds ds 16 曲線の局所的な性質を調べる (6) e1 = dX(s) dY (s) , ds ds • (X(s), Y (s)) e2 = dY (s) dX(s) , ds ds e1 e1 = 1 2つのベクトルの直交関 係から以下の関係が得ら れる e2 e1 e1 e2 = 0 e2 e2 = 1 微分する 微分する 2e2 e2 = 0 微分する 1 e1 e1 + e1 e1 = 2e1 e1 = 0 これより,e1’とe2は平行である. e1 = e2 e1 2 e2 e2 = e1 e2 + e1 e2 = 0 = (e2 e2 ) + e1 e2 = e1 + e1 e2 e1 = e2 e2 = 17 e1 曲線の局所的な性質を調べる (7) • すなわち,どのような曲線でも, e1 e2 = 0 0 e1 e2 が成り立つ.κのことを,この曲線の曲率 (curvature) と呼ぶ.また 1/κ のことを曲率半径と呼ぶ. 平面曲線の場合には,2つの長さ1のベクトルによっ て,曲線の性質を記述するが,後に,3次元空間中の 曲線の場合,もう1次元追加して互いに直交する3本 のベクトルによって曲線を定義する. dx(t) dt dX = ds dx 2 dt dy dt + ds = dt 2 dx dt 2 dy dt + 2 曲線の局所的な性質を調べる (7) • 実際,パラメータ表示の曲率を計算してみる. d dX(s) = ds ds 2 = d x dt2 dx 2 dt dt ds + d dX(s) dt ds dy dt 2 dx 2 dt 2 = d x dt2 dy dt dx 2 dt 2 + + 2 dx dy d y dt dt dt2 dy dt 2 3/2 dx d2 x dt dt2 dx dt dy dt dt = ds 2 + dy d2 y dt dt2 3/2 dY ds 2 d dx y dt dt2 dx 2 dt + dt ds 曲率 d2 x dy dt2 dt dy dt 2 3/2 18 19 曲線の局所的な性質を調べる (8) • 結局,曲率の公式は,以下のようになる. = 2 dx d y dt dt2 dx 2 dt = + dx dt d2 x dt2 dx 2 dt + d2 x dy dt2 dt dy dt 2 3/2 dy dt d2 y dt2 dy dt 2 3/2 20 放物線の曲率 • y = x2 の曲率を求めてみる. x = t, y = t t = 0 における曲率は2である. 2 すなわち曲率半径は1/2である 4.8 dy dx = 1, = 2t dt dt 2 2 d x d y = 0, 2 = 2 2 dt dt 4 3.2 2.4 = 1 2t 0 2 {12 + 3/2 2 (2t) } 1.6 = 2 {1 + 3/2 2 4t } -4.8 -4 0.8 -3.2 -2.4 -1.6 -0.8 0 -0.8 0.8 1.6 2.4 21 3次曲線の曲率 • 3次曲線 y = x3 の場合,原点を境にして曲率が変化す る t = 0 における曲率は0であり, x = t, y = t3 すなわち平らになっている 1.5 2 2 dx dy d x d y 2 = 1, = 3t , 2 = 0, 2 = 6t dt dt dt dt 1 3t 0 6t 2 = {12 + 3/2 2 2 (3t ) } -2 6t = (1 + 9t4 )3/2 1 0.5 -1.5 -1 -0.5 負の曲率 0 -0.5 -1 -1.5 正の曲率 0.5 1 1.5 22 まとめ 平面曲線をパラメータ表示し,さらに,曲線上の距離s(t) によって表現することにより,曲線を唯一の方法で表現 することができる.この場合,回転や平行移動による影 響はなく,曲線 自体の形のみに 注目している. すなわち,形が 同じであれば, e2 = 同じ曲線であ る. e1 = dX(s) dY (s) , ds ds (X(s), Y (s)) dY (s) dX(s) , ds ds 23 第2回課題 1. 以下のようにパラメータ t で表現された曲線の曲率 を計算せよ. x = t y = t 2. 上記の曲線の曲率と曲線y = x2の正の部分の曲率を比較 して,これら2つの曲線が同じ曲線であると言えるか? 説明せよ. 出題:9月23日の講義 提出:9月30日の講義の開始時に集めます
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