設計上のアイデア リモート負荷におけるケーブル・ドロップの補償 Philip Karantzalis 出力分散システムでの共通の問題は、レギュレータと負荷の間のワイヤ電圧降下によるレギュレーション 性能の低下です。ワイヤ抵抗、ケーブル長、負荷電流のいずれかが増加すると、配電線間の電圧降下が 増加し、負荷での電圧とレギュレータによってプログラムされた電圧との間の差が増加します。リモート 検出では、負荷までの配線を追加することが必要です。LT6110 ケーブル / ワイヤ電圧降下補償器を使用 すれば、余分な配線は不要です。この記事では、レギュレータと負荷の間の広範囲の電圧降下を補償す ることにより、LT6110 がどのようにレギュレーションを向上できるかを示します。 LT6110 ケーブル / ワイヤ電圧降下補償器 1 線式補償回路のブロック図を図 1 に示しま す。遠隔負荷回路がレギュレータのグランドを 共有していない場合は、 2 本のワイヤが必要 です。1 本は負荷線でもう1 本はグランド帰線 です。LT6110 ハイサイド・アンプは、検出抵 抗 RSENSE 両端の電圧 VSENSE を測定すること により、負荷電流を検出し、負荷電流 ILOAD に比例した電流 IIOUT を流し込みます。IIOUT の換算係数は、RIN 抵抗を使用して 10µA∼ 1mA の 範 囲でプログラム可 能です。ワイヤ 電 圧 降 下 VDROP の 補 償 は、 帰 還 抵 抗 RFA に IIOUT を流してレギュレータの出力電圧を 下補償の設計は簡単です。IIOUT と RFA の積 降圧レギュレータ向けのケーブル電圧 がケーブル / ワイヤ電圧降下の最大値と等しく 降下補償 なるように設定します。 LT6110と 3.3V、5A 降圧レギュレータで構成 LT6110 は、 最 大 3A の 負 荷 電 流 に 適した 20mΩ の RSENSE を内 蔵しています。このた め、ILOAD が 3A より大きい場合は、外付けの RSENSE が必要です。外付けの RSENSE は、検 出抵抗、インダクタの DC 抵抗、または PCBト レースの抵抗の場合もあります。LT6110 の IMON ピンは、IIOUT シンク電流の他に、ソー いる遠隔負荷の電圧を安定化します。降圧レ ギュレータの 5A 出力には、外付けの RSENSE を使用することが必要です。 最大 5A の ILOAD が 140mΩ のワイヤ抵抗と 25mΩ の RSENSE を 流 れると、825mV の 電 電流基準リニア・レギュレータを補正します。 圧降下が生じます。0A ≤ ILOAD ≤ 5A の範囲 で負荷電圧 VLOAD を安定化するには、IIOUT • RFA が 825mV に等しくなければなりませ 実現します。LT6110 ケーブル / ワイヤ電圧降 追加のワイヤは不要です。 ステムを図 2 に示します。このシステムは、20 フィートの 18 AWG 銅線を介して接続されて ス電流(IMON)を供給して、LT3080 などの VDROP に等しい量だけ大きくすることによって 図 1.遠隔負荷までのワイヤの電圧降下を補償するのに される完全なケーブル / ワイヤ電圧降下補償シ ん。以下の 2 つの設計オプションがあります。 VIN IN OUT REGULATOR FB ILOAD VREG VFB I+IN RFA + – +IN V+ RSENSE 20mΩ RG IIOUT CLOAD VSENSE RIN RFB RWIRE IOUT IMON LT6110 RS VLOAD REMOTE LOAD –IN + – V– 2014年10月: LT Journal of Analog Innovation | 29 負荷レギュレーションの精度を高めるには、電源と負荷の間の抵抗を正確に推定することが必要 です。ケーブル・コネクタと PCBトレースをワイヤと直列に接続したときの抵抗、RWIRE、RSENSE を 正確に推定できる場合、LT6110 は広範囲の電圧降下を高精度に補償することができます。 VIN 5V TO 40V 10µF VIN OUT EN BOOST SS SW LT3976 100k PDS540 VREG 2Ω 100µF 10k 470pF RT 0.01µF VISHAY IHLP4040DZE 6.8µH 0.47µF FB SYNC GND VFB 1.197V 180pF 340k 200k 8 1 +IN NC 2 7 EN V+ LT6110 3 6 IMON RS 4 GND –IN 1.5k 0.1µF 5 VISHAY VSL2512R0250F RWIRE 140mΩ 20 FT, 18AWG VLOAD 3.3V 220µF LOAD 5A 図 2.大電流の遠隔負荷レギュレーションの例:LT6110 ケーブル / ワイヤ電圧降下補償回路を付加した 3.3V、5A 降圧レギュレータ IIOUT を選択してから RFA 抵抗を計算するか、 高精度の負荷レギュレーション まとめ 電流が非常に少ない場合のレギュレータの LT6110 を使用して負荷レギュレーションを適 LT6110 ケーブル / ワイヤ電圧降下補償器は、 度に向上するには、RWIRE の推定値を適度な このデバイスを使わなければ大電流、 長い 精度で決めるだけで済みます。負荷レギュレー ケーブル、および抵抗がレギュレーションに大 帰還抵抗を設計してから RIN 抵抗を計算して IIOUT を設定します。通常は IIOUT を 100µA に設定します(IIOUT の誤差は 30µA∼300µA の 範 囲で は ±1% で す )。図 2 の 回 路で は、 帰還経路の電流は 6µA(VFB/200k)であり、 RFA 抵抗は 10k です。また、RIN 抵抗は IIOUT • RFA = 825mVと設定されるように計算する 必要があります。 IIOUT = VSENSE/RIN IIOUT • RFA = VDROP および RSENSE RIN = RFA • RSENSE • R WIRE したがって、 RFA = 10k、RSENSE = 25mΩ、 および RWIRE = 140mΩ の場合、RIN = 1.5k です。 ケーブル / ワイヤ電圧降下補償なしの場合、負 荷電圧の最大変化量 ∆ VLOAD は 700mV (5 • 140mΩ) になります。これは 3.3V 出力では 誤差 21.2% に相当します。LT6110 では、 ∆ VLOAD が 25 ℃でわずか 50mV(誤差 1.5%) に低下します。これは負荷レギュレーションの 値で 1 桁の向上です。 30 | 2014年10月: LT Journal of Analog Innovation ションの誤差は、2 つの誤差(ワイヤ / ケーブル きく影響するような遠隔負荷の電圧レギュレー 抵抗による誤差と LT6110 補償回路による誤 ションを改善します。正確なレギュレーション 差)の積です。たとえば、図 2 の回路を使用す を実現するのに、検出ワイヤの追加、ケルビン ると、RSENSEと RWIRE の計算誤差が 25% で 抵抗の購入、銅使用量の増量、ポイントオブ ある場合でも、LT6110 は VLOAD の誤差をな ロード・レギュレータの実装を行う必要があり お 6.25% まで低減します。 ません。これらは、他のソリューションにはよく 負荷レギュレーションの精度を高めるには、 電源と負荷の間の抵抗を正確に推定するこ とが必要です。ケーブル・コネクタと PCBト レースをワイヤと直列に接続したときの抵抗、 RWIRE、RSENSE を正 確 に推 定できる場 合、 LT6110 は広範囲の電圧降下を高精度に補償 することができます。 LT6110、RWIRE の正確な推定値、高精度の RSENSE を使用することにより、 ∆ VLOAD の補 償誤差を低減して、ワイヤの長さにかかわらず レギュレータの電圧誤差に一致させることがで きます。 ある難点です。対照的に、補償器ソリューショ ンは必要なスペースがわずかであり、その上、 設計の複雑さや部品のコストを最小限に抑え ています。n
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