2015 年 10 月 13 日 4.5. 公共財供給問題 ペグニッツ川の橋建設 n 人からなるザックス村で「ペグニッツ川に橋(公共財)を架けるか否か」 配分集合 A {0,1}: 建設費用 C 0: a 0 (橋を架けない) a 1(橋を架ける) n 人で分担 1 村民 i N のタイプi [0, ) : 橋からの便益 vi (0, i ) 0 C vi (1, i ) i n 建設費の n 分の 1 を負担 パレート最適は? f ( ) 0 (建設せず) f ( ) 1(建設する) if iN if iN i C i C 2 「建設するか否か」はどのように決まる? たとえば… 「多数決ルール(Majority Rule)」 政治的最終決着によく使われる しかし どの程度橋を好むのか(嫌うのか)は全く反映されない たとえば「橋からの私的便益」は考慮されない そのため概して パレート最適な決定はできない 3 例: n 11人 C 110 各村民の評価を i 11 for all i {1, 2,3, 4,5,6,7} i 0 for all i {8,9,10,11} とする。橋建設がもたらす総余剰は 11 7 110 33 0 である。よって、「建設しない」がパレート最適になっている。 ところが、多数決では 賛成 7 人 反対 4 人 i 1, 2,3, 4,5,6,7 i 8,9,10,11 橋建設が決定されてしまう! 4 村長があらかじめ状態 (i )iN を知っていれば 各 i N に対して、建設費を便益に比例して負担させよう!つまり i C j jN この時、各 i N の橋建設による利得は総余剰 ( jN j C ) に比例することになる i i C ( j C ) i j j jN jN jN 私的便益と社会的便益が一致 「満場一致(Unanimity)」ルールによって パレート最適達成 しかもデフォールト(非建設)時の利得(ゼロ)以上が保証:参加制約もOK 5 問題点:村長は状態 を知らないはず 各村民は嘘をついて費用負担を軽減しようとする:利得 i i i j C j i i C j ( i )近くまで嘘をつけば j i 橋は供給されるも負担軽減 ∴ グローブスメカニズム ( g , x) の登場は不可欠 6 g is efficient: グローブスメカニズム ( g , x) [ i C ] [ g ( ) 0] iN [ i C ] [ g ( ) 1] iN xi ( ) v j ( g ( ), j ) hi ( i ) j i よって、 xi ( ) hi ( i ) n 1 xi ( ) j C hi (i ) n j i if g ( ) 0 if g ( ) 1 とすれば、Incentive Compatible in Dominant Strategy 成立 7 公共財供給固有の問題: 支払ルール x は「収支均衡(Budget-Balancing)」をみたすことが望ましい x ( ) 0 iN i for all オークションの場合: 収入は売り手が使うことになる 赤字の場合は売り手が負担することになる 公共財の場合: 収入は村民(国民)が使うことになる 赤字の場合は村民(国民)の負担になる 8 インセンティブのためには グローブスメカニズムをくずしてはだめ!! 財政黒字( x ( ) 0 )の場合: iN i お金を村民に返金できない 村民のため以外のことに使わないとだめ 財政赤字( x ( ) 0 )の場合: iN i 村民を債務者にしてはダメ 債券発行して将来村民に負担させる、など 大問題点: 一般的に、収支均衡するグローブスメカニズムは存在しない! 9 例: n 2 としよう 仮にグローブスメカニズム ( g , x ) が収支均衡をみたしているとしよう x1 (0,0) x2 (0,0) h1 (0) h2 (0) 0 より h1 (0) h2 (0) 0 for all iN としてOK(by lump-sum transfer) 村民1の任意のタイプ1 C について C C x1 (1 ,0) h1 (0) 2 2 が成立。この時、状態 (1 ,0) にて橋建設。収支均衡より C C x2 (1 ,0) (1 ) h2 (1 ) 2 2 つまり h2 (1 ) 1 C 0 でないといけない。 10 同様に、村民2の任意のタイプ2 C について C C x2 (0, 2 ) h2 (0) 2 2 が成立。この時、状態 (0, 2 ) にて橋建設。収支均衡より C C x1 (0, 2 ) (2 ) h1 (2 ) 2 2 つまり h1 (2 ) 2 C 0 でないといけない よって状態 (1 , 2 ) においては x1 ( ) x2 ( ) (1 2 C ) h1 (2 ) h2 (1 ) (1 2 C ) (2 C ) (1 C ) C 0 収支均衡してない~! 11 公共財供給問題における 収支均衡しないメカニズムの問題解決方法 様々な公共財供給問題の解決のため に共通の「資金プール」を作っておく 赤字の場合はこのプールの資金を使う 黒字の場合にはこのプールに資金提供する 注意すべき運用上の問題:以下はご法度! 「俺が以前資金提供したから今度は優先的に使わせてもらうぞ!」 「あなた(省庁)に余剰資金があるなら、その資金を使いなさい」 日本政府?(後述の予定) 12 宿題5(来週月曜 5 時まで、宿題4といっしょに提出) 問:橋の建設についての公共財問題再考。 n 2 とする。VCGメカニズムをもとめよ(追 加の仮定がなりたたないので、もとの定義に即してもとめよ)。VCGメカニズムにおいて、 赤字になる状態、黒字になる状態、の範囲を示せ。 次回 ベイジアン・アプローチ 13
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