白色雑音入力に関する出力パワーに基づく適応ノッチフィルタの 性能比較

2015 年電子情報通信学会基礎・ 境界ソ サイ エ テ ィ 大会
A-4-13
白色雑音入力に関する出力パワーに基づく適応ノッチフィルタの
性能比較
Performance Comparison of Adaptive Notch Filters With Respect to the Output Power Due to the White Noise
Input
宗像宏幸
Hiroyuki Munakata
越田俊介
Shunsuke Koshita
阿部正英
Masahide Abe
川又政征
Masayuki Kawamata
東北大学大学院工学研究科電子工学専攻
Department of Electronic Engineering, Graduate School of Engineering, Tohoku University
まえがき
適応ノッチフィルタは,広帯域信号に混入した狭帯域
信号を適応的に検知し除去することができる.近年,さ
まざまな適応ノッチフィルタの手法が提案されているが,
多くの手法が Constrained Poles and Zeros に基づくノッ
チフィルタ(CPZ-NF)[1,2] あるいは 2 次のオールパス
フィルタに基づくノッチフィルタ(AP-NF)[2, 3] の伝
達関数を用いている.広帯域信号が得たい信号である場
合,適応ノッチフィルタによって狭帯域信号が除去され
た後の出力信号の品質が重要となる.しかし,CPZ-NF
と AP-NF について,出力信号の品質に着目した性能比
較は未だ行われていない.そこで本稿では,この 2 種類
のノッチフィルタについて,広帯域信号として白色雑音
を用いて白色雑音入力に関する出力パワーの観点から比
較する.
1
2
3
Y
1 + (2 − a2 )r2 + r4
=
(1 + (1 − a )r + r + r )
2
2
0.5
ω0/ π
1
E[y2v(n)]
AP-NF における平均 0 の白色雑音入力に関する出力パ
ワーは以下の式で与えられる [2].
E[yv2 (n)] = σv2
1 + sin θ2
2
(6)
上式より,AP-NF の E[yv2 (n)] は θ2 つまりノッチ幅に
は依存するが,θ1 つまりノッチ周波数には依存しないこ
とがわかる.
性能比較
CPZ-NF と AP-NF それぞれにおいて,白色雑音入力
に関する出力パワーを理論値と実験値それぞれの観点で
評価する.ただし,狭帯域信号として正弦波を仮定し,
ノッチ周波数が正弦波周波数と一致し,ノッチフィルタ
によって正弦波が完全に除去されていると仮定する.入
力信号を平均 0 分散 σv2 = 1 の白色ガウス雑音とし,ノッ
チ幅 B = 0.8797 [rad] とする.
白色雑音入力に関する出力パワーを各ノッチ周波数に
対してプロットしたものを図 1 に示す.図より,CPZ-NF
についてはノッチ周波数が 0 あるいはナイキスト周波数
に近いとき大きくなる傾向が見られる.一方 AP-NF で
はノッチ周波数に依存せず一定の値となる.
3
(3)
3 2
1
図 1 白色雑音入力に関する出力パワーとノッチ周波数
の関係
(1)
=
1.5
0
0
ここで,r はノッチ幅 B を制御するパラメータであり,a
はノッチ周波数 ω0 を制御するパラメータである.CPZNF における平均 0 の白色雑音入力に関する出力パワー
は以下の式で与えられる [2].
µ
¶
(1 − r)
Y
2
2
2
2
E[yv (n)] = σv + σv
a +
(2)
(1 + r)(1 + r2 )
X
X
2
0.5
白色雑音入力に関する出力パワー
CPZ-NF の伝達関数は以下の式で与えられる.
1 + az −1 + z −2
Hc (z) =
1 + arz −1 + r2 z −2
CPZ-NF
CPZ-NF(Simulation)
AP-NF
AP-NF(Simulation)
2.5
(4)
ここで,σv2 は入力白色雑音の分散である.上式より,
CPZ-NF の E[yv2 (n)] は r と a つまりノッチ幅とノッチ
周波数のいずれにも依存することがわかる.
次に AP-NF の場合について述べる.本稿ではラティス
構造をもつ AP-NF を用いる.ラティス構造をもつ APNF の伝達関数は以下の式で与えられる.
1 + 2 sin θ1 z −1 + z −2
1 + sin θ2
2
1 + sin θ1 (1 + sin θ2 )z −1 + sin θ2 z −2
参考文献
[1] A. Nehorai, IEEE Trans. Acoust., Speech, Signal
Process., vol. 33, no. 4, pp. 983–996, Aug. 1990.
(5)[2] P. A. Regalia, Mercel Dekker, 1995.
ここで,θ2 はノッチ幅を制御するパラメータであり,θ1
はノッチ周波数を制御するパラメータである.このとき
[3] P. A. Regalia, IEEE Trans. Signal Process., vol. 39,
no. 9, pp. 2124–2128, Sept. 1991.
Ha (z) =
72
2015/9/8 〜 11 仙台市
( 基礎・ 境界講演論文集)
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