「大学生の自己開示と自己受容および信頼感の 関連」 安井 1. 愛香 目的 本研究では、対人関係において重要視されている自己開示と自己受容およ び信頼感がどのように関連しているのかを明らかにすることを目的に研究を 行った。また、自己受容、および信頼感が自己開示にどのように影響してい るのかについても明らかにした。さらに、自己開示において、開示内容が肯 定的内容のものか否定的内容のものかによって、開示の程度に違いがある か、また開示相手が母親か友人とで開示に変化があるのかについても調査し た。 2. 方法 1)研究対象 大 学 生 132 名 (男 性 69 名 、 女 性 63 名 )で あ っ た 。 2)方法 質問紙による調査を行った。質問紙には、肯定的自己開示尺度、否定的 自己開示尺度、自己受容尺度、信頼感尺度を使用した。因子分析の結果、 母 親 に 対 し て の 肯 定 的 自 己 開 示 尺 度 に は 1 因 子 (肯 定 的 自 己 開 示 母 親 版 )が 抽 出 さ れ た 。 ま た 友 人 に 対 し て の 肯 定 的 自 己 開 示 に お い て も 1 因 子 (肯 定 的 自 己 開 示 友 人 版 )が 抽 出 さ れ た 。 否 定 的 自 己 開 示 尺 度 (趣 味 ・ 困 難 な 経 験 ・ 決 定 的 で な い 欠 点 や 弱 点 ・ 否 定 的 な 性 格 や 能 力 )、 自 己 受 容 尺 度 (自 己 への好感や満足、他者への貢献・自己へ失望しないこと・自己への自 信 )、 信 頼 感 尺 度 (不 信 ・ 自 分 へ の 信 頼 ・ 他 人 へ の 信 頼 )は 、 先 行 研 究 で 用 いられた因子構造を、そのままで使用した。 3. 結果・考察 1 ①自己開示と自己受容の相関関係の結果、自己受容が高いほど、自己開示をす るという関連が見られた。しかし自己受容の因子である「自己へ失望しないこ と」と自己開示の間には負の相関が認められたことから、自己受容が高くなる と自己開示をしないという関連も見られた。 ②さらに自己受容から自己開示への影響について重回帰分析を行った結果から は、自己受容の因子「他者への貢献」が高いと自己開示を高める方向に影響を 与 え る こ と が 明 ら か に な っ た 。ま た 、自 己 受 容 の 因 子「 自 己 へ 失 望 し な い こ と 」 が高いと自己開示をしなくなる方向に影響を与えることが明らかとなった。 ③以上の結果については、自己受容が自己開示に影響を与える要因であること が示唆された。しかし自己受容が必ずしも自己開示に対してプラスに働くとは 限らないことが考えられる。 ④ 自 己 開 示 と 信 頼 感 の 相 関 関 係 の 結 果 よ り 、「 信 頼 感 が 高 い ほ ど 自 己 開 示 を す る」という関連がみられた。 ⑤ 信 頼 感 か ら 自 己 開 示 へ の 影 響 に つ い て 重 回 帰 分 析 を 行 っ た 結 果 、信 頼 感 の「 他 人 へ の 信 頼 」が 高 い と 、自 己 開 示 を 高 め る 影 響 を 与 え る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ⑥この結果から自己開示へ影響与える要因として信頼感も示唆され、信頼感が 高いほど自己開示もよくすることが考えられる。 ⑦開示内容の違については、内容の違いによる自己開示の違いはあまり認めら れなかった。⑧この結果については、開示内容の質が異なっていても自分の個 人的内容を話すことであることに変わりはないためであると考えられる。同様 に、開示相手の違いでも開示相手によって自己開示の傾向が変わらないことが 示唆された。 2
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