C-26 瀬戸内海の広域水循環・物質循環青井一・〇池淵周一・吉野文雄 1 はじめに水資源の立場から陸域と海域を含んだ広域水循 800 River Flow Rain Grand Water Evaporation Sea Flow 環の把握・評価が強く求められている．そこで，本 600 研究ではその代表的な瀬戸内海を対象にして，水量的把握の後，物質循環の把握・評価を試みる．本研究の背景と目的 mm 2 400 200 水循環を捉える空間スケールとして地球規模水 0 循環から都市域水循環まで大小さまざまなスケールがあり，それに応じた水循環モデルが構成されよう．ここでは河川流域を含む陸域と海域を相互に含む，ある広がりを持つ領域を対象に水循環を -200 -400 91/01 91/04 91/07 91/10 92/01 92/04 92/07 92/10 93/01 93/04 93/07 93/10 year/month 図-1 大阪湾水収支 1991-1993 捉え，それに適合する水循環モデル構築を目指したい．そこには海域での海水交換流だけでなく，河川流域での人間の営みが水循環を介して河川や図 1 に大阪湾の水収支を示すが，瀬戸内海全域地下水として，いわば淡水としての水質負荷を伴での水収支による残差流量を地下水流入量とみないながらの海域への流入があり，これが海域でのすと，それは河川表流水の１０％前後となった．ま水質汚濁を進め，環境基準の達成率の悪さや，そた，海域によって成分が異なるが，海水移動にはの改善の困難を呈しているのが現状である．その河川供給量や降雨が影響しており，陸域および大意味でも，水循環を陸域と海域を一つの循環系と気から海域へ及ぼす影響は大きい事がわかった．して捉える事が重要であり，陸域から海域までを１つの循環系であると言う観点に立ち、陸域から 4 結論陸域および海域を含む広域な循環系として瀬戸内海を選定した．まずはその水量的把握の水環境が海域にどのような影響を与えるのかとから水収支を取る事を検討して，そこから海水移いう事についてまず水量的側面から把握しておき動に影響を与える水収支成分について検討した．たい結果，海域および季節ごとに，影響される成分が 3 瀬戸内海循環モデル海水移動の算定に当たっては，瀬戸内海をいくつかの海域に分割し，分異なる事がわかった．今後，さらに物質を考慮に割海域間に潮位差がある場合は潮位を打ち消しあらす広域な物質循環の把握について検討したい．う方向に海水が移動する潮位差流と摩擦速度のせまた，講演時には，物質循環を含んだシミュレーん断応力によって生じる吹送流の合計として算出する．計算時間は 1 時間とする．蒸発量について入れたシミュレーションを行い，海水移動がもたション結果について発表する予定である．参考文献は，観測された海上データより逆算出したバルク平成 11 年度瀬戸内海の環境保全:瀬戸内海環境保係数を決定し，バルク式によって月単位での算出全協会を行った．その他，水収支成分データについては，石崎廣，斎藤実：瀬戸内海における蒸発量につい河川供給量については，一級河川においては流量て，沿岸海洋研究ノート第 16 巻，第 1 号，1978 年表，それ以外は一級河川の流域面積比を用いて気象研究ノート：日本気象学会，2001．3 日単位でデータセットを行った．降雨データにつ藤原建紀：瀬戸内海における物質の輸送と収支，いては，沿岸域の地点を選定して，日単位での値東京大学農学部学位論文，1986. を海域ごとにデータセットを行った．以上を用いて，瀬戸内海の水収支を行った．計算の際には，各成分とも月単位での把握とした．