講義スライド6 2015年10月26日

2015年度開講 基礎化学(担当︓阿部⼆朗)
2015年10⽉26⽇(⽉)
第6回「シュレディンガー⽅程式」
1
【シュレディンガー⽅程式(Schrödinger equation)】
粒⼦の波動関数を求めるための⽅程式。
ボーア理論では、⽔素原⼦に含まれる電⼦の運動が、ある不連続の、正確に定義
された軌道に制限されていると仮定した。しかし、この描像はハイゼンベルグの不
確定性原理に反している。1926年、シュレディンガーは、後に科学において最も
有名な⽅程式の⼀つになったシュレディンガー⽅程式を提案した。
この⽅程式は量⼦論の中核をなすものであり、粒⼦の波動性とも、またハイゼン
ベルグの不確定性原理とも⽭盾しない⽅程式である。さらに、ボーア理論とは異な
り、この⽅程式によって多原⼦分⼦や分⼦の性質を予測することができる。
シュレディンガー⽅程式を解くことで、粒⼦のエネルギーと波動関数(運動状
態)が求められる。
2
【演算⼦(operator)】
を⼀定の規則に従って別の関数
に移す操作を表す記号を⼀般
ある関数
に演算⼦という。例えば変数 に関する⼀次微分を表す演算⼦は / であり、関
に作⽤することで関数
に移ることは以下のように記される。
数
あるいは、以下の様に記してもよい。
普通、量⼦⼒学で使われる演算⼦は⼤⽂字の上に∧(ハット)を付けて表す。例え
ば、 のように記す。関数
に演算⼦ を作⽤させて新しい関数
を得るこ
とを⽰すためには、以下のように記す。
3
【例題1】 次の演算を実⾏せよ。
1 2 ,
2 ,
3 ,
4
【線形演算⼦(linear operator)】
量⼦⼒学では、線形演算⼦だけを取り扱う。ある演算⼦が
を満たすならば線形であるという。ここで、 と は定数(複素数を含む)であ
る。例えば、微分や積分の演算⼦は線形である。
⼀⽅、2乗演算⼦
5
は⾮線形である。
2
【固有値問題(eigenvalue problem)】
与えられた演算⼦ について、以下の条件満たす⽅程式を固有値⽅程式(あるい
は固有⽅程式)という。
に演算⼦ を作⽤させると、単に定数倍された関数
が再
ここで、関数
び得られる結果になるだけである。
関数
を演算⼦ の固有関数(eigenfunction)といい、 を固有値
と を求める問題を
(eigenvalue)という。与えられた演算⼦ について
固有値問題(eigenvalue problem)という。
【⾏列の固有値問題】
⾏列 の固有値を と固有ベクトルを とすると、
【例題2】⾏列
6
8 1
の固有値と固有ベクトルを求めよ。
4 5
【例題3】 を変数とする関数
が演算⼦ ̂
⽰せ。また、固有値はいくつになるか。
7
の固有関数であることを
【固有値問題としてのシュレディンガー⽅程式】
上式の
の中の演算⼦を とおくと、
となる。これは、シュレディンガー⽅程式が演算⼦ の固有値問題に帰着す
ることを⽰している。演算⼦ をハミルトン演算⼦(ハミルトニアン: Hamiltonian operator)という。
すなわち、波動関数
とエネルギー は、それぞれハミルトン演算⼦の
固有関数と固有値である。
8
【古典⼒学変数から量⼦⼒学演算⼦への変換】
古典⼒学では、⼀次元運動する質量 の粒⼦の全エネルギーは運動エネルギー
とポテンシャルエネルギーの和として表される。
1
1
2
2
2
ここで、
は粒⼦の ⽅向の運動量、
は粒⼦が受けているポテン
シャルエネルギーである。すでに、みてきたように量⼦⼒学的には、以下のよ
うに表される。
2
エネルギーの古典⼒学表⽰とハミルトン演算⼦ を⽐較すると、運動量につい
て、以下の対応があることがわかる。 を運動量演算⼦という。
→
なぜならば、 ̂ を2回作⽤させると以下のようになるからである。
2
9
→
̂
2
1
→
2
1
2
2
【古典⼒学変数から量⼦⼒学演算⼦への変換】
三次元空間を運動する系については、 ⽅向、 ⽅向の運動量についても同
様に演算⼦表⽰にする。
→
→
→
, , は受けて運動する粒⼦のハミ
ここで、三次元空間をポテンシャル
ルトン演算⼦を考えてみる。エネルギー は古典⼒学では、
2
2
, ,
2
となることから、ハミルトン演算⼦は、以下のように求められる。
̂
̂
̂
, ,
2
2
2
1
2
1
2
2
2
2
10
1
2
, ,
2
, ,
, ,
【三次元空間で運動する粒⼦のシュレディンガー⽅程式】
三次元空間をポテンシャル
⼦は以下のように導かれた。
, ,
は受けて運動する粒⼦のハミルトン演算
2
, ,
したがって、シュレディンガー⽅程式は以下のようになる。
, ,
2
11
, ,
より、
, ,
, ,
, ,
【⾏列の固有値問題】
⾏列 の固有値を と固有ベクトルを とすると、
⾏列
8 1
の固有値と固有ベクトル( ではない)を考える。
4 5
単位⾏列を とすると、
は
となる。さらに、
より、
題意から、これは不適当なので、
に逆⾏列が存在すると、
には逆⾏列は存在してはならない。
したがって、⾏列式がゼロになることから、
8 1
4 5
8
1
0
5
0
1
8
4
4
したがって、固有値は⼆つ求まり、
12
となる。
5
13
0 である。
1
36
4, 9 である。
4
9
0
4 の場合
4
8 1
4 5
4
1
4
したがって、
9 の場合
はゼロでない任意定数
9
8 1
4 5
したがって、
9
1
1
はゼロでない任意定数
⾏ 列の⾏列 では、 組の固有値 と固有ベクトル が存在する。
ただし、
13
【量⼦⼒学における状態(波動関数)の概念】
われわれが古典物理学で測定の対象とする古典物理量はエネルギーの他にも運動
量、⾓運動量などいろいろある。エネルギー の運動量 , , を運動量演算⼦
̂ , ̂ , ̂ に変換することで、エネルギー に対応する演算⼦であるハミルトン演
算⼦ を得たように、古典物理量である⾓運動量に対応する⾓運動量演算⼦を得る
ことができる。同様に、全ての古典物理量 に対応する演算⼦ が得られる。
演算⼦ の固有⽅程式を解くと、固有値 と、固有値 に対応する固有関数 が得られる。 と はセットである。
1, 2, 3, ⋯
このことは、量⼦論では次のことを意味している。
「古典物理量 を測定すると、粒⼦の状態が の時は が、粒⼦の状態が の
時は が、、、、粒⼦の状態が の時は が得られる。その他の値が得られる
ことは決してない。」
⋮
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【量⼦⼒学における状態(波動関数)の概念】
「古典物理量 を測定すると、粒⼦の状態が の時は が、粒⼦の状態が の時は が、、、、粒⼦の状態が の時は が得られる。その他の値が得られ
ることは決してない。 」
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【シュレディンガー⽅程式】
これまでにみてきたように、シュレディンガー⽅程式は固有値⽅程式であり、
⼀般に、固有関数 は無限個存在する。これは、電⼦が取り得る状態(軌道)
が無限に存在するということに他ならない。
⽔素原⼦のシュレディンガー⽅程式の固有関数は原⼦軌道を、固有値は原⼦
軌道の軌道エネルギーを表している。軌道エネルギーは連続値ではなく、不連
続な値をとる(離散的)。添字の を量⼦数(quantum number)という。
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【⽔素原⼦の原⼦軌道】
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【ボルンの解釈と波の収縮】
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