S-02 人工呼吸モードの ABC 坂本成司 鳥取大学医学部附属病院麻酔科 人工呼吸の目的は換気の補助と酸素化の改善である。麻酔中で筋弛緩薬を使 用して自発呼吸が全くない時には調節呼吸、ICU 患者など自発呼吸のある患者 では自発呼吸に合わせた補助呼吸で換気を行う。酸素化の改善の目的では、吸 入酸素濃度(FIO2)を調節したり、なるべく多くの肺胞が開いた状態を保つた めに呼気終末陽圧(PEEP)を付加したりする。人工呼吸管理の方法としては気 管挿管をして気道確保を行い、陽圧をかけて肺に空気(酸素)を送り込む。強 制換気の方法には従量式換気(VCV)と従圧式換気(PCV)がある。従量式換 気の利点としては換気量を保証できる点がある。従圧式換気では患者の肺や胸 郭の状態により換気量が変化するが、必要以上の圧力を制限して圧外傷を防止 できる利点がある。強制換気を自発呼吸と関係なく行う場合を IMV、自発呼吸 と合わせて行う場合を SIMV という。また、自発呼吸に合わせて吸気に圧を加 えるプレッシャーサポート(PS)も用いられる。ICU 患者は呼吸不全から離脱 し、最終的には気管チューブを抜管できることが目的であり、なるべく自発呼 吸に同調した呼吸モードが選択される。以前の人工呼吸器は自発呼吸との同調 性が悪く、患者を人工呼吸器に合わせるために筋弛緩薬を使用することがあっ たが、現在は人工呼吸器が自発呼吸を感知し、強制換気を行うときの制御がき め細かくコントロールされるようになり、自発呼吸を温存した呼吸管理が行わ れることがほとんどである。しかしながら、人工呼吸を行うための標準的な気 道確保法である気管挿管はかなり侵襲的な処置であり、人工呼吸中は適宜、鎮 静薬や鎮痛薬を使用するのが一般的である。最近の呼吸管理の流れとしては陽 圧換気による圧外傷を防ぐために最高気道内圧を制限し、低一回換気量としな がら、肺胞の虚脱を防ぐために高めの PEEP を付加する肺保護換気が行われる。
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