平成27年1月~3月 - 在ホンジュラス日本国大使館

1.社会・治安情勢
(1)ホンジュラス国家警察の統計によれば,今年1月1日から3月中旬までの殺人事件
による死者数は1,065人であり,1日平均に換算すると約13.83人となる。この
数字を1年間維持すれば2015年の殺人事件死者数は推計で約5,047人となり,昨
年比で大幅に減少する可能性がある。これは治安機関による各種オペレーションや軍警
察・国家警察による各種警察活動の成果によるものと思料されるが,他の中米の諸国と比
べて高水準の殺人件数であることには変わりなく,依然として厳しい治安状況と言える。
(2)刑務所に囚人として収容されているマレーロス幹部が携帯電話等を利用し,配下の
部下に犯罪指示を出している現状を打破するため,政府はこれら凶悪囚人を厳重管理下に
ある刑務所へ移送する作業を順次進めている。しかし,一部刑務所において囚人が暴徒化
して銃撃戦になる等の事件も発生している。
(3)犯罪組織同士の抗争は依然として多発しており,当国の殺人率を押し上げる要因と
なっているが,この多くが縄張り争いや,麻薬利権争いが原因と考えられる。相変わらず
都市部(テグシガルパ市,サン・ペドロ・スーラ市,エル・プログレソ市等)における発
生が顕著である。
(4)南米産コカインの中継基地となっている当国であるが,コカインの精製工場も摘発
されており,コカイン原料やコカイン精製のための化学薬品も北部地域において大量押収
されている。これは,麻薬密輸組織が精製品であるコカインを押収されるリスクを避ける
ため,他国に比して薬物犯罪に対する捜査能力が低いホンジュラス国内に精製拠点を設け
たためだと思料される。
2.一般犯罪・凶悪犯罪の傾向及び対策
(1)コレクティーボと呼ばれる乗り合いタクシーやラピディートと呼ばれる乗り合いバ
スの運転手に対する襲撃事件は後を絶たたず,その原因はみかじめ料の未払いトラブルが
原因と思料される。これら事件に関し,日本人が直接のターゲットとなる可能性は少ない
が,犯人は銃器を使用するので,銃撃の跳弾や流れ弾には十分に注意するとともに,安全
な交通手段を選択する必要がある。
(2)比較的安全とされていたショッピングモール店内において,日本人女性が窃盗(す
り)に遭うという被害も発生している。よって,警備員が配置された場所においても油断
することなく,財布等の貴重品やバッグ等からは目を離すことのないようにする。また,
万が一被害に遭遇した時は被害拡大を防ぐため,むやみに抵抗しないことが重要である。
(3)銀行で大金を下ろした後に強盗に襲われる事件が発生しており,過去には日本人も
被害に遭っている。従って,特に銀行等金融機関から帰宅する際は,不審者がいないか,
後を付けられていないか等,十分に注意する必要がある。
(4)徒歩で移動する際は,最も強盗に遭遇するリスクが高いと言える。よって,都市部
においては夜間に限らず昼間においても徒歩での移動は避け,短距離でも安全な交通機関
を利用するように心掛ける。
3.邦人及び邦人以外の被害事案
(1)邦人被害
3月8日,日本人女性がスーパーマーケット店内において買い物途中,何者かに肩
掛けカバン内の財布をすり盗られた。
(2)邦人以外の被害事案
●1月4日,テグシガルパ市内ロマス・デ・ギハロ地区に居住する中国系ホンジュラス人
2名が中国人の男に撃たれて死亡した。
●1月5日,テグシガルパ市内のマヤ・ホテル付近で乗り合いタクシーに乗車していた女
性が強盗遭遇し,銃で殺害された。
●1月27日,銀行に行く途中のレストラン経営者男性と従業員が車両で移動中に銃撃を
受け,従業員が死亡した(サン・ペドロ・スーラ市)。
●2月5日,プロサッカーチーム会長が車両にて移動中に銃撃を受け,同会長及び従業員
また付近を走行していたタクシー運転手も死亡した(ビジャ・ヌエバ市)
。
●2月19日,テグシガルパ市内の銀行で大金を下ろした親子が帰宅途中に強盗に遭遇し,
現金を強奪された(トンコンティン国際空港付近)
。
●2月21日,カヌーを利用し,対岸へ渡ろうとしていた家族が何者かに銃撃され,5名
が死亡した(テラ市)
。
●3月7日,酒場兼ビリヤード店内に武装した犯人が押し入って店内にいた客を銃撃し,
5名が死亡,3名が負傷した(テグシガルパ市コマヤグエラ地区内)
。
●3月11日,サン・ペドロ・スーラ市の刑務所内において,凶悪囚人の移送に反対する
囚人らと治安機関の間で銃撃戦となり,囚人3名が死亡,治安機関側にも負傷者が出た。
●3月15日,テグシガルパ市内において,複数名のファッションモデルが乗車した車両
が襲われ,乗車していた内の3名が銃で撃たれ死亡した。
4.テロ・爆弾事件発生状況
特になし。
5.誘拐・脅迫事案発生状況
日本人に対する被害はなし。
6.日本企業の安全に対する諸問題
(1)これまでのホンジュラスに対する日本の各種援助が周知されていることもあり,ホ
ンジュラス人の対日感情は良好で,日系企業をターゲットとしたテロの発生可能性は低い
と考えられる。しかし,一般的に裕福なイメージのある日本人企業家を対象とした恐喝・
強盗等の事件は過去に発生しており,一般犯罪に対する十分な防犯対策を実施する必要が
ある。
(2)首都テグシガルパ市内,北部商業都市サン・ペドロ・スーラ市内等においては犯罪
組織同士の抗争が主原因と考えられる銃器(自動小銃等)を使用した大量殺人事件が依然
として発生していることから,それら事件の巻き添えとならないため,特に当該地域にお
いて業務予定がある場合は,現地治安機関及び日本大使館等から十分な治安情報を収集し,
万全の対策を図ることをお勧めする。