1 社会・治安情勢 (1)国家警察統計局(SEPOL)によれば,今年上半期の殺人事件による被害者数は 2,580人(1日あたり平均14.25人)であった。昨年同月の数字が3,050人 (1日あたり平均16.85人)であることから,マイナス470人となる。被害者数の 減少傾向は続いているが,連日多数の殺人事件が報じられており,高水準の殺人被害者数・ 殺人発生率であることに変わりはない。 (2)殺人事件の多くは犯罪組織間の抗争やみかじめ料不払いによるものであり,イデオ ロギー的な無差別テロ事件の発生はない。最近では,家庭内暴力から殺人事件に及ぶケー スや未成年による犯罪組織加入が問題となっている。 (3)ベネズエラやコロンビア等の南米地域から北上するコカインの中継地としての位置 付けは変わっていない。多量の精製前のコカインペーストも通過しており,流通量にあま り変化はないと思料される。 (4)毎週金曜日に開催されるアントルチャ(灯火)行進は現在も多数が参加して続けら れている。一部の過激派学生グループが治安部隊に対し投石等に及んだ事案も発生したが, 基本的にデモ行進は平和裡に行われている。 2 一般犯罪・凶悪犯罪の傾向及び対策 (1)正確な統計はないものの,銃器を使用した路上強盗事件は至るところで発生してい る。特に都市部において外出する際は,徒歩での移動は避け,安全な交通手段を利用する ことが重要である。 (2)都市部で多く見かける乗り合いタクシーや乗り合いバスの運転手等に対する襲撃事 件は依然として多発している。犯罪組織によるみかじめ料未払いに対する報復措置が原因 であり,日本人が直接のターゲットとなる可能性は低いものの,同乗していた乗客が流れ 弾等の巻き添えで死亡する例も発生している。よって,これら危険な交通手段の利用は避 けるよう心掛ける。 (3)銀行で大金を下ろした後に襲撃される事件が多発しており,過去には在留邦人も被 害者となっている。よって,銀行本店の利用はできるだけ避け,ショッピングモール店内 のATM等を利用する等,十分注意する必要がある。 3 邦人及び邦人以外の被害事案 (1)邦人被害 特になし。 (2)邦人以外の被害事案 ア 7月2日,ロアタン島において,女性が刃物で頸部を切られ死亡した。 イ 7月12日,テグシガルパ市内において,警察官とその息子が自宅前で襲撃され,両 名ともに死亡した。 ウ 7月17日,サン・ペドロ・スーラ市内において,飲食店にいた男性3名が犯罪捜査 局の服装をした複数人に銃撃され死亡した。 エ 7月26日,ラ・パス市内において,銀行から出てきた親子が強盗に遭遇し,金品の 支払いを拒否したところ両名ともに射殺された。 オ 8月3日,トンコンティン国際空港近く所在するレストラン店内において,従業員男 性が複数の男に銃撃され死亡した。 カ 8月4日,ダンリ市内において,刑務所をオートバイで走行していた男性警察官が銃 撃され死亡した。 キ 8月12日,サン・ペドロ・スーラ市内において,勤務中の警備員が複数人の犯人か ら携帯電話を要求されたが,拒否したところ銃撃され死亡した。 ク 8月23日,サンタ・クルス・デ・ヨホア市内において,都市間を結ぶバスに5人組 の強盗が乗り込み,居合わせた海軍士官と銃撃になったところ,海軍士官が死亡,犯人1 人も重傷を負った。 ケ 9月5日,サン・ペドロ・スーラ市内において,企業家男性とそのボディーガードが 覆面をした複数人に銃撃され両名ともに死亡した。 コ 9月16日,テグシガルパ市内のメトロポリスタワー内(外交団も入居するオフィス ビル)において,弁護士男性が口論の末に刺殺された。 4 テロ・爆弾事件発生状況 特になし。 5 誘拐・脅迫事案発生状況 日本人に対する被害はなし。 6 日本企業の安全に対する諸問題 (1)日本による援助活動が周知されていることもあり,ホンジュラス人の対日感情は良 好で,日系企業をターゲットとしたテロ等の発生可能性は低いと考えられる。しかし,一 般的に裕福なイメージのある日本企業家を対象とした恐喝・強盗等の事件が過去にも発生 しており,一般犯罪に対しては十分な警戒が必要である。 (2)犯罪の大半に違法銃器が使用されており,犯罪組織は殺傷能力の非常に高いアサル トライフルを使用する場合も多々見受けられる。犯罪の巻き添えにならないためにも,危 険地域の把握が重要であり,当該地域で業務予定がある場合は,現地治安機関及び日本大 使館から十分な治安情報を収集する必要がある。
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