J P M A 2015年9月号 No.169 N E W S L E T T E R Comment|解説 製薬協の会合における 適正な競争に関するガイドラインの制定について 日本製薬工業協会 常務理事 松原 明彦 国際製薬団体連合会(以下,IFPMA)において 「適正な競争に関するIFPMAガイダンス」が策定されたことを踏まえ、 IFPMAの加盟協会である製薬協は、自ら主催する会合において適正競争を促進するためのガイドラインを策定しました。 1. 経緯 製薬協では、製薬産業に共通する諸問題の解決や医薬品に対する理解を深めるための活動、国際的な連携などさまざま な取り組みを実施しています。それらの活動を進めるために会員会社が参加する会合が多く開催されますが、競争関係に ある会員会社による会合・協議は、常に独占禁止法やその他適用される競争法規(以下、競争法)に関するコンプライアンス 上のリスクをはらんでいます。 IFPMAは、2014年11月、 「適正な競争に関するIFPMAガイダンス」を採決し、加盟する団体に対して、当該ガイダンスに沿っ て各国の競争法に則したルールの導入を指示しました。このような経緯から、製薬協は、競争法を遵守し、適切に団体活 動を行うための手引きとして、以下のガイドラインを策定しました。 2. ガイドラインの内容 (1)ガイドラインの名称 「日本製薬工業協会の会合における適正な競争に関するガイドライン」 (以下、本ガイドライン) (2)目的および適用範囲 製薬協の役職員および会員各社が、製薬協が主催する会合において、競争法を遵守し適切に団体活動を行うために本ガ イドラインを策定しました。したがって、本ガイドラインの適用範囲は、製薬協が主催する会合になります。 (3)主要な指針 製薬協が主催する会合においては、競争法を遵守するための行動レベルの指針として、議題の事前回覧、製薬協の役職 員による会合出席、議事録の作成・回覧、競争法上懸念のある議題がある場合には、製薬協の顧問弁護士への相談または 出席を要請することなどが規定されています。 また、会員会社間で価格やコスト、販売数量等に関する事項を討議したり、情報交換等を行ったりすることを禁止してい ます。 (4)会合内容に関する禁止事項 会員会社および製薬協の役職員は、会員会社が販売、購入、提供等を行う製品や役務に関し、次に掲げる事項について、 他の会員会社と討議、情報交換等を行わないこと。 a. 会員各社の価格、価格戦略、価格構成、値引き、クレジット条件、販売コスト、生産コストなど b. 会員各社の販売数量、販売能力、生産数量、生産能力、在庫量など c. 会員各社の販売地域、生産地域、販売先など d. 会員各社の投資計画(設備の投資・廃止、新技術の開発を含む)、販売計画、生産計画、需要予測、需要動向など JPMA NEWS LETTER 2015 No. 169 Comment|解説 製薬協の会合における適正な競争に関するガイドラインの制定について 1/2 J P M A N E W S 2015年9月号 No.169 製 薬 協 の 会 合 にお ける適 正 な 競 争 に 関 するガイドラインの 制 定 に つ いて L E T T E R Comment|解説 e. 供給制限、顧客・販売地域の配分、特定の供給業者・顧客に対する不買(売)、再販売価格の拘束など f. その他競争法に抵触する恐れのある事項 (5)施行日 2015年7月1日 (水) 3. 本ガイドラインの運用について 製薬協の会合においては、従来から会議に先立ち議題の事前回覧、会議終了後の議事録の回覧、保管が実施されてい ます。本ガイドラインの策定にあたり、新たに導入されたプロセスは、議題の事前回覧の際に、競争法に抵触する恐れが あると懸念される場合に備え、製薬協の法律顧問を選定し、法律事務所に相談できる体制を整えたことです(図)。また、 会議中に競争法に関する懸念が発生する場合は、議長は討議を中断し、法律顧問に相談することが求められます。 図 ガイドライン運用フローチャート ③ GL運用責任者(松原) ⑤ ④ ② 委員会・会議担当役員 ⑤ ② 会議主催者 (委員長・事務局) ⑥ ① ② その他会合 ⑥ ① ② 指定会議 指定会議: (常任) 理事会、 総会、 企画政策会議 西村あさひ 会議開催前に懸念表明があるケース ①議題連絡 ②懸念表明 ③事前相談 ④回答:書面回答、出席要請 ⑤回答内容の連絡 ⑥議事録作成・保管 会議中に懸念表明があるケース ▶議長は議事進行停止 ▶弁護士と相談 ▶回答:書面回答、出席要請 従来通り:議題連絡、 議事録作成 新規追加:①議題の事前チェックと懸念表明、 ②GL運用責任 者を通して顧問弁護士との相談、③会議中に競争法に抵触 する恐れのある議論があれば、議長判断で議事進行を停止 し、 顧問弁護士と相談。 4. 他産業での具体的な違反事例(ワイヤーハーネス事件) 2000年から2010年の間、自動車メーカーからの強力な値下げ圧力に対抗し、価格の低下防止のため、ケーブルメーカー が受注調整や価格操作を行っていました。ある日突然、日本のみならず、欧米でも同時立ち入り調査が行われ、自動車部 品カルテルが摘発されました。 アメリカにおいて、A社は罰金2億ドル(約246億円)の司法取引に合意し、日本人幹部3名が最長1年半の禁固刑に服しま した。B社は罰金7800万ドル(約95億9400万円)、幹部4名が1年2ヵ月から2年の禁固刑。C社は罰金4億7000万ドル(約578 億1000万円)、日本人幹部1年2ヵ月の禁固刑と2万ドル(約246万円)の罰金。日本においても総額128億円の課徴金、欧州 では総額1億4000万ユーロ(約194億6000万円)を超える制裁金が科されました[1]。 製薬協はこのガイドラインを遵守し、適切な団体活動を行っていきます。 [1]1ドル=123円、1ユーロ=139円(2015年6月30日現在) で換算。 JPMA NEWS LETTER 2015 No. 169 Comment|解説 製薬協の会合における適正な競争に関するガイドラインの制定について 2/2
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