「膝およびシミに施したクレイテラピー」

「膝およびシミに施したクレイテラピー」
概
近
藤
知
子
要
本研究では、エステコース、プロコースで学んだ、グリーンクレイ、ホワイトクレイ、レッドクレイ、
イエロークレイ、ピンククレイ、モンモロナイトの中から、吸収力が一番よく効果度10と一番高い、
グリーンクレイを用いて、膝の疾患を長年もつ 56 歳女性 にパックを 20 日間、一日 2 回、一回一時間を
目安に行った。痛みのきっかけには膝をはしごで打った経験もあったが、以前に検査をしたところリウ
マチ反応もでたことがあったとのことで、グリーンクレイを選択した。間接に良いといわれているイエ
ロークレイの使用も考慮したが、引き続きイエロークレイのみでの施術との比較も考えられたため一種
類のみに限定した。グリーンクレイでは、カルシウム、マグネシウムが多いため、自律神経失調症の持
病、また顔パックのエステ目的以外では初めてのことである女性に精神安定も期待できた。一方、ペー
ストつくりのベースとなる水分は、数々の治療を試み、コルセット装着など、この何年も痛みを和らげ
ることに余念がなかった患部に、クレイの力をさらに発揮させるべく、漢方で扱われている当帰(トウ
キ)を煮出したものも取り入れることにもした。この際、初めの 10 日間は低ミネラル水によるペースと
で、残りの 10 日間はトウキの煮汁によるペーストで湿布を行った。当帰(トウキ)は香りのきつい薬草
のため、気分が悪いと申し出る日もあり残りの 10 日の中でも低ミネラル水でのペーストと併用した。ま
た、左手の甲にある直径やく5ミリのシミにも湿布をしてみた。結果、膝においては、今までの試みで
痛みがなくなる経験がなく全くの半信半疑であった女性は、日常生活において、少し走っても痛みがな
いという快挙と表現するほどの改善が得られた。また、ついでと称して行った、手の甲のシミにおいて
は、推定 0.5 ミリの突出が確認された。これは手で触るといぼのような感触が得られるほどであった。こ
の結果は、クレイの持つ強力な吸収力、ミネラルの作用が人体に何らかの影響を及ぼしていることが考
えられた。
目
1章
目
的
2章
経過報告
2−1.施術条件および施術方法
次
・・・・・・・ 4
・・・・・・・
4
・・・・・・・
4
2−2.経過記録
・・・・・・・ 5
3章
・・・・・・・ 7
考
察
3−1.当帰(トウキ)について
3−2.膝について
3−3.手の甲のシミについて
4章
近
藤
結
言
知
子
・・・・・・・
7
・・・・・・・ 7
・・・・・・・
8
・・・・・・・ 9
1
1章
目
的
約一年に渡り、クレイの識別の仕方や作用を学んできた。その中で、クレイ特有の効果が高いといわ
れるグリーンクレイについて、実体験で得られる作用に最も興味を持った。身近に膝の痛みを抱える女
性(筆者の実母)がいたことから、是非その効果の結果を得て、日常生活が少しでも楽になるようにと
いう願いも込めて、レポートに踏みきった。かねてから、漢方の原料ともなる野草を扱う環境にいると
いうことから、中でも強力な作用があるといわれる当帰(トウキ)もクレイと合わせて使用してみると
いう試みを考え、日本におけるクレイテラピーを発展させていく第一歩にしていきたい、また将来クレ
イテラピーに携わる希望を持つ者として、さらにこれを継続、進展させて東洋医学の好きな日本人にク
レイテラピーを身近にしていくきっかけとなる道を探って行きたい、このような切望を叶えるべく、ま
ずは「膝の痛みの軽減」を数字や感想をもって明らかにしていくことを目的とした。
2章
経過報告
2−1.施術条件および施術方法
・ 右膝に、2∼3センチ程の厚さの、グリーンクレイの湿布。
・ 手の甲のシミに、1 センチほどの厚さの、グリーンクレイの湿布。
・ ペーストに使う水分は当帰(トウキ)を煮出した汁および低ミネラル水。
・ 右膝は一日 2 回一時間、手の甲は 30 分間の湿布。
朝晩の日もあれば、夜に一時間あけて行う日もある。
・ 乾燥し過ぎないように、湿ったガーゼをクレイの上にかぶせ、
湿布後は、右膝には植物オイル(アボガドオイルとアプリコットカーネルオイルにレモンユーカリと
シラカバの精油を混ぜたもの)を擦りこんだ。
・ 膝周りの計測は1回目の湿布前、2 回目の湿布後に行った。
・ 2 月 25 日と 26 日の一回目は施術者高熱のため行えなかった。
・ 2 月 21 日までは低ミネラル水で、22 日からはトウキの煮汁で湿布。
・ これは、湿布を初めてするとのことで、まずクレイだけに慣れてもらうためである。
・ 参考資料(次ページ写真)
<当帰(トウキ)を煎じる過程>
(一度に多めに作り冷蔵庫に保管しておく。パセリの様な強い香り。)
近
藤
知
子
2
<湿布の様子>
(ひざの裏が気持ちが良いとのことで、ひざ周り一周の湿布です。手の甲はシミの位置確認。
)
2−2.経過記録
<手>
2 月 12 日(開始)
2 月 24 日(浮き上がってきた日)
3 月 3 日(終了)
<足>
2 月 12 日(開始)
2 月 16 日
2 月 21 日
2 月 24 日
2 月 28 日
3 月 3 日(終了)
近
藤
知
子
2 月 22 日(2 回目塗り始め)
3
2月12日より3月3日までの記録
日
膝周り
付
施術後の感想または見られた変化
減少率(%)
湿布前
湿布後
①2 月 12 日
40.6
40.4
クレイを乗せ始めてすぐから気持ちが良いとのこと。
0.49
②2 月 13 日
40.5
40.5
湿布中に寝るのでエステの様だという。心の変化。
0
③2 月 14 日
40.6
40.6
湿布後以前の傷跡が 2 箇所浮いていた。
0
④2 月 15 日
40.7
40.5
手の甲の血管が浮いている。始めも若干浮いていたが、さらに浮いた。
0.49
5 分後には元に戻っていた。
⑤2 月 16 日
40.6
40.6
クレイをのせると大変気持ちいいと何度も言う。
0
⑥2 月 17 日
40.5
40.3
手のシミは気休めにおく。あまり変化はなし。
0.49
⑦2 月 18 日
40.4
40.2
湿布後に一時間は寝ている。リラックス充分のようだ。
0.50
⑧2 月 19 日
40.5
40.5
何かが違うといい始める。
0
⑨2 月 20 日
40.4
40.3
歩いていると左の半月盤が痛かったのに、なくなっている。左の腰から
0.25
くる痛みがない。かなりの効果にびっくりし始める。
⑩2 月 21 日
平
40.2
40.0
慣れ始め自分から湿布を要求。自分で湿布を落としてくれる。
40.50 40.39
均
⑪2 月 22 日
40.3
40.2
0.50
0.272
塗り始めに両足の色の違いに気づく。左が白く右が赤い。この変化には
0.25
驚き他人にも見てもらう。写真では分かりにくいが。
⑫2 月 23 日
40.1
40.0
トウキが気分悪いと入れずに行う。
0.25
⑬2 月 24 日
40.5
40.3
この日は足より手のシミが浮き出ていて驚き、触ってもいぼの感触。始
0.49
めよりは間違いなく茶色が濃くなった。
⑭2 月 25 日
なし
なし
熱のため行えず。
⑮2 月 26 日
なし
なし
一回のみの湿布。
⑯2 月 27 日
40.6
40.4
手のシミはすこし浮いたままで色の変化はなし。
0.49
⑰2 月 28 日
40.0
40.0
足の膝にある紫色のあざが湿布後ほぼ消えている。不思議だとのこと。
0
ただ今日は右が白く、左が赤い。22 日と反対だった。
40.1
⑱3 月 1 日
40.0
アロマのマッサージみたいだという。トウキ入りを忘れての発言だが、
0.25
理にかなっていたため、感心する。
40.0
⑲3 月 2 日
40.0
走ったら痛くないのだと訴える。階段を登るのも痛くないという。今ま
0
でにはないとのこと。
40.5
⑳3 月 3 日
40.1
写真より、足は始めと比べてすっきりしているのが分かる。
0.99
湿布後足の腫れが見ても分かるくらいに引いていた。
手も色が確実に濃く、盛り上がりが確認された。
ちなみに次の日から湿布をやめると痛くなってきたという。
平
近
藤
40.26 40.10
均
知
子
0.340
4
3章
考
察
3−1.当帰(トウキ)について
グリーンクレイについては、ここで皆が学んでいることを前提に、特性の説明は省略する。この実験の
目的である漢方を用いるためになぜこれが選択されたかというと、以下のような特性があるといわれて
いるからである。女性の膝には痛み、特にかなりの水が溜まっていることから、血流を良くする、鎮痛
を備えた効用を備えたのもを煎じて使うのがより効果を発揮すると考えた。ゲンノショウコも興味のあ
るものであるが次の機会に試してみたい。
(付録①参照)
3−2.膝について
① クレイパックが頑固な膝の痛みを和らげるとは、ほとんど期待をしていなかった者が、「何故かわか
らないが痛みが楽だ」
「小走りしても痛くないからびっくりした」
「一日しないとまた痛い」と言うよ
うになった。ここまでの、感想を得られるとは全く予想していないことだったが、この結果は、間違
いなくクレイテラピーの効果が得られたと断言してよいと思われる。
② 膝周りの測定結果は日によって、違うが、一つ言える事は、湿布をした後にむくみが増している日が
一度もなかったことは事実である。膝のむくみをとったのは、中でも一番の吸収力を持つグリーンク
レイの効果が影響したと思われる。またカリウムの含有も多いため、体内の老廃物排泄を促進させる
ために、さらにむくみ改善に相乗効果があったと思われる。カオリンではここまでは期待できないだ
ろう。
全体的な膝周りを少なくしていくことは、膝の炎症を抑え、溜まった水を減らしていくことだ。こ
の湿布の継続では、当帰の抗炎症、血の流れを良くする作用がさらに期待できる。結果を見て分かる
ように、後半の 10 日間の膝周りの平均は、前半の 10 日間(二日間未計測)に比べると、湿布前で
0.24cm、湿布後で 0.29cm 減少している。結果では、膝回りの平均は、初めのころよりも細くなって
おり、20 日間でむくみもしくは腫れが少しは軽減されたと言える。これはただの偶然と考えるかど
うかは個人の自由ではあるが、我々としては、ミリ単位での変化はかなり大きいと考える。湿布の継
続は明らかにむくみを減らしていくのである。また、膝回りの湿布前→湿布後の減少率はすべてプラ
スであり、また、前半と後半で平均をとっても、当帰を用いた後半の減少率が高くなっている。これ
もたまたまともいえるかもしれないが、実験をしたものとしては、当帰を使用してからのプラスの要
因としたい。当帰の抗炎症作用、抗凝血作用が膝内部の炎症による潤滑液の補充である水をわずかに
でも減らしたのではないかと予測する。
③ この女性は、15年間は階段の昇り降りと走ることは苦痛であり、数万円の装具を買うなどし、痛み
を柔らげてきたとのことである。20 日間という短期間の湿布により、かつ、外科的には何もしてい
ないのにもかかわらず、できなかったことが楽にできるようになった。クレイというものの驚くべき
エネルギを我々は目の当たりにした。事情により一日半、湿布ができずにいた事は、痛みが再び現れ、
クレイの効果を再認識する機会となった。これは、クレイの持つ吸収吸着力だけでは説明できず、ミ
ネラル分の補給によるものとしても効果が短期間に現れるなど、それのみにしてはなかなか納得いく
説明がつかないのである。地球の奥深い地質より得られる火山の溶岩が何億年もかけて巨大な圧力も
受けながら変化し、その眠っていたエネルギを詰め込んだクレイだからこそ得られるものだとつなげ
近
藤
知
子
5
たい。なぜなら、これの確信にせまるために「石の薬効」という資料を探した。そこで得られた内容
が今回のわずか 20 日間という湿布で効果を得られた残りの理由となると確信している。
(付録②参照)
④ 11 日目に足の色が左右変化していた。これは施術しているほうの右足が全体的に赤くなっていた。
クレイ湿布によって、含有成分の鉄分が皮膚の血色をよくしたことと、当帰(トウキ)の煮汁による
ペーストで湿布を開始したことによって、トウキの最大の特徴、血流を良くする効果が顕著に現れた
と思われる。17 日目のことについては、考察できかねて悩んでいる。
3−3.手の甲のシミについて
① 結果の表からもあるように湿布開始後 6 日目に、変化が現れた。始めはうす茶色が見える程度のシ
ミで、石に埋まった模様のようであったのが、6 日目に膨らんでいたのである。ちょうど、シミの中
にすこし水分が入ったような、皮膚表面は湿っていてしわが寄る状態で触るとやわらかかった。シミ
の部分だけ、周りの皮膚とは質感が違い、レザー生地のような感触になっていた。これは、クレイの
みの効果であり、まさに吸収力のなせる業であると分かった。またアルミニウムの瘢痕形成作用が短
期にしてシミを浮き上がらせたと思われる。効果がはっきりと得られたものであるが、あいにくカメ
ラで接写ができずうまく残せてないのが残念である。このまま続けてどうなるかが楽しみの一つであ
る。グリーンクレイを使用したので、早く結果が得られてと思われる。
4章
結
言
膝および手の甲のシミに施したクレイテラピーで得られた結果をまとめる。
・ クレイテラピーにおいて、吸収力、効果度の高いグリーンクレイは、患部の痛みを和らげるのに即効
性があることが示された。また、ミネラルの中でも、カリウム(老廃物排出)、鉄分(抵抗力上げる、
疲労防ぐ、血液に影響)、カルシウム(骨の形成、細胞活性)が膝の痛みの原因と思われる、血流不
足、代謝不足、骨の老化、細胞の活性低下に良き影響を与えたと思われるデータを得た。またクレイ
中に含まれるカルシウムとマグネシウムとの相乗効果により、リラックス効果をえられ、自然の精神
安定剤の役目が発揮され、想像以上の患部の痛みの和らぎを得られた。
・ 漢方の原料である当帰(トウキ)を用いることにより、血流が増し、新しい酸素も運ばれ、膝内部の
代謝、細胞の活性化がなされて、溜まっている水が少しでも軽減されたと思われるデータも得られた。
・ 手の甲のシミにおいては、沈着した色素が組織ごと浮いてきたという結果を得られ、さらに継続する
ことにより、更なる改善が得られるかも知れないという可能性を残してくれた。グリーンクレイの吸
収力が実験にて、理解することができた。
近
藤
知
子
6
<付録>
①当帰についての資料
当帰(トウキ)セリ科 Umbelliferae 当帰 Angelica sinensis (Oliv.) Diels
鎮痛、抗炎症、中枢鎮静作用、抗凝血作用、血小板凝集能抑制作用など血に関わる
多くの働きが証明されている。名前の由来はこの薬
草を飲むと、血の巡りが良くなり病気が早く治るので「当に(まさに)血が帰って
くる」ことに由来したそうだ。婦人産後病や、
血の道
の薬としてまさにこれ以
上無いほど良く使用される薬草で、漢方薬の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
や加味逍遥散(かみしょうようさん)などの重要な漢方薬の主原料として配合され
ている。日本で栽培され、歴史は古く江戸時代には近畿以北で産出されていた。中国の漢方医学が渡来
する前から民間薬として利用されていたと思われる。
参考資料:馬場薬局 HP 薬剤師 木下崇 など
②石の薬効
『宝石といえば装身具という常識はそれほど古くはないかもしれない。おしゃれで身に着けることは最
近のことでないかという意味である。近代以前の階層社会では売買の可能な商品ではなくて、王家のよ
うな一家族に結びついた権威象徴であった。もともとはしかしその意味もこめた魔除けの護符である。
石は当事者をつけねらう魔や邪視から身を護ってくれる。そのために肌身につけた。ではどんな魔か
ら身を護ってくれるのか。様々の魔が脅威の的であったには違いないが、とりわけ病魔が魔除けの対象
だった。宝石は医療器具としてつちかわれたのである。たとえばエメラルドはてんかんに特効がある。
琥珀は胃痛に効き、ダイヤモンドは狂気から身を護ってくれる。古来のこうした宝石医療の処方箋は、
石の治療効果など誰も信じなくなっている現代のような時代にも、ひょっとすると無意識のうちに温存
されていないともかぎらない。緑柱石がめがねレンズとして実用化されるのは中世の修道院においてで
ある。緑柱石は視力増強に効くと考えられたので、そもそもは視力の弱い人が首飾りなどにして護符と
してぶら下げていた。さらに視力増強だけでなく、性交能力の増進にも効いたし、悲しみをしずめ、幸
福をもたらす力もあった。とりわけ解毒剤として用いられた。十二世紀の女子修道院長ビンゲンのヒル
デガルトは、その処方を次のように述べている。「毒を食べたり飲んだりしたら、すぐに緑柱石を少々
けずって泉の水かそれ以外の水に投じ、ただちにそれを飲むがいい。五日間空腹時の朝食前に毎日一度
飲めば、その人は嘔吐によって毒を吐き出すか、それとも毒のほうが人間の身体の中を通りぬけて尻か
らでていく」。
「緑柱石はあたたかく、毎日第三時と真昼時の間に、太陽が水の泡に強い光線を放射するとその水の泡
から成長する。その力の発生源は、火よりは空気と水からくるが、それでいていくぶん火の性質がある」。
かなりあいまいな表現だが、「水の泡」から鉱物が生成するというビジョンが、かりに宝石の結晶化に先
立って母岩が熱溶解して乳濁し泡立つ減少を意味しているとするならば、今日の鉱物学でも宝石の太古
の精製現場では似たようなことが推定されている。イーリー・コウリムスキーの「色彩における鉱物界」
によれば、宝石は大地の噴火でできた割れ目のなかにできるが、その際「噴出岩の諸要素が熱い鉱水に
よって分解され、その結果いくつもの空洞ができて、そこに他の晶化軟塊が入り込んで結晶化する」の
だそうである。
近
藤
知
子
7
ヒデルガルトのテクストでは、火、水、空気、土の四大元素が激しい勢いでぶつかり合いながら鉱物
を生成させる始原の光景が幻視されている。しかし表現こそ異なるが、近代鉱物学も別の手続きによっ
て始源の現場に接近しようとしているともいえる。
石の治癒力というのは、そもそもが小宇宙である人間の肉体をも含む、世界の衰弱、病気を前提とし
た危機の乗り越え策である。…』
参考文献:「不思議な石のはなし」種村季弘
近
藤
知
子
8