平成 26 年度活動報告 - 工学部 2015 年 3 月 16 日 石川雄一 事業最終年度である 26 年度に工学部で実施した項目は、次の1~5の項目である。 1. おおいたサポステ(佐藤氏、多々良氏)による新入生のグループワーク 2. 城下町に位置する西日本最大規模の味噌醤油製造業の工場見学とその風土社会調査のグ ループワーク 3. 産業界ニーズ事業のインターンシップ班に対して「企業にとって利点があるインターン シップ」に役立つ視点(考え方)を佐賀大学と連携して提示 4. 学生の汎用力(コンピテンシー)の数値評価 5. 多様な人材を活用しているグローバル企業の女性管理職による、女子学生を意識した企 業が求める人材についての講演会実施と振り返り これらについて、以下に具体的にまとめる。 1.おおいたサポステによる新入生のグループワーク 応用化学科が新入生の導入教育としている必修科目の「応用化学入門 (前期・後期)1 単位」 において下記のグループワークを、おおいたサポステ(佐藤氏、多々良氏)を主、応用化学科の 教員を従としたファシリテーターが実施した。 この「応用化学入門」は、新入生に対し教授・准教授が 10 名前後の学生相手に隔週で開く導入 教育である。これまでの具体的な内容としては、 (1) 次のトピックスに関するグループ討論「「立ち位置、環境問題、勉強と留年、日本語の文 献読解、先端材料、身の回りの化学品」、 (2) コミュニケーション能力向上 (3) 英語とインターネット を展開してきた。これらの取組におおいたサポステによるグループワークを組み込んだ。その内 容とその評価について以下の表にまとめている。 取組時期とその内容 1 回目(4/18,4/25 61 名のクラスを二つに分けて各々1 回実施) ・フルーツバスケット(椅子取りゲーム) ・名刺交換(名刺作成・交換) ・アウチ(人差し指同士を接触させる) 実施後の判断 顔見知りがほとんどいない 入学直後の時期に、強制的に 会話を導入することで、学生 同士が知り合うきっかけと なり、学生間の距離が近くな ・バーズデーション(ジェスチャーで意思疎通) っている。出会いに積極的に ・アイコンタクトレッスン(ペアアイコンタクト) なる効果が非常に強く有意 ・総当たりインタビュー(ペアで話す聞く) 義である。 2 回目(10/6,10/20) ・4、5名のグループに分かれて ・よかったこと、7年後の自分,オリンピックに向けてや 盛り上がりに欠け、学生がの ってくる 「お題」ではなか った。また、化学や就業力を りたいもの 意識したテーマは、専門科目 ・ディスカッションと雑談、オリンピックに向けてやり たいことなど を履修していないので学生 が考え出したものは表面的 である。時期尚早である。 「自分とは・・・」の自分史 を振り返り、それをマンツー マン型の対話で相手に言語 化して伝える作業を行った。 3 回目(1/19,1/26) この課題は、短時間でも容易 ・ライフラインの作成・発表 に入っていける。学生も活発 に動いていた。極めて良いお 題であり、今後も利用してい きたい。 この おおいたサポステ(佐藤氏、多々良氏)のグループワークを参観していた応化教員のほ とんどは、 「議論しやすい“お題”の必要性、即ち、学生が自ら相手に伝えたいと思えるものをひ きだせるかがポイント」であることを体験した。また、小中高と守られて与えられてきた教育の 中で育った新入生に対して、大学を卒業した後の自分を考える課題は、壁が高過ぎ、距離が空き 過ぎて無理である。 「教えてもらわないと学べない、教えないと学べない」学生が、自分が好きな こと、嫌いなこと、出来ないこと、やりたいことなど、自分と向き合うことから導入教育を開始 する必要があると判断している。 2.城下町に位置する西日本最大規模の味噌醤油製造業の工場見学とその風土社会調査のグルー プワーク 後期が始まる直前の夏休みの最後に、応用化学科の複数教員が見守る状態で、臼杵市にあるフ ンドーキン醤油(株)のドレッシング工場の見学(企業分析)を午前中に実施し、午後からは臼杵市 の歴史と産業のグループ調査を行った。後日、企業分析と工場で作業する社会人として求められ ることをレポートにまとめ記述報告させる取組を行った。学生同士の心の距離を縮める目的もあ った。臼杵市で何を調べるかなどの事前学習をさせて臨んだが、提出されたレポートの多くが似 通っており、ネット上のコピーペースト作業に過ぎない面もあった。しかし、食品工場におれる 真剣な品質管理のための厳しさを肌で感じ、また、その工場を生み出した城下町を調べるグルー プワークで学生感の連帯感は向上した様子である。 3.産業界ニーズ事業のインターンシップ班に対して「企業にとって利点があるインターンシッ プ」に役立つ視点(考え方)を佐賀大学と連携して提示 産業界ニーズ事業のインターンシップ班のメンバーである大分大学(石川)と佐賀大学(岡島) が共同して別添えの表「地域の中小企業におけるインターンシップで事前に学生と受入企業が意 識すべき具体的なポイント」をまとめてインターンシップ班に提示した。この目的は、これまで のインターンシップを社会貢献とする認識を越えて、現在の社員では展開できないことを実施す る「企業の成長エンジンとしての実践型インターンシップ」を強く意識したノウハウ的な提示で ある。大学と学生にとっては、企業が本当にやりたい課題を PBL として取り組むアクティブラー ニングに相当する。 ※ 資料1 IS プログラム ver6 このような、企業がビジネスとして展開したい課題を学生に中長期インターンシップの PBL 課 題として能動的な学習として展開するには、やる気があり、コンピテンシーとリテラシーに富む、 リーダーシップ教育注)を受けた学生が必要なことに加えて、大学としても ① 企業/地域、産業界の正しいニーズと成果目標を把握すること ② 企業/地域、産業界の課題に大学として共感できる点を明確にすること ③ 大学側の教育に対する想いを企業/産業界に共感してもらえるよう伝えること これら ① ~ ③ の コ ー デ ィ ネ ー タ ー 能 力 を 大 学 が 持 つ 仕 組 み が 必 要 で あ ろ う 。企業や、中小 企業の取りまとめ団体に丸投げでは解決できないはずである。この活動は産学連携ともつながる ため、先端研究活動を展開している研究室が、企業が本当にやりたい課題を PBL として取り組む アクティブラーニングの視点を持つと効果的に展開できる可能性がある。 注)ここでの「リーダーシップ教育」は、大きな成果を成し遂げたカリスマ性がある人物 の行動パターンを分析教育するものではない。権限、役職、カリスマ性とは関係が無いリ ーダーシップを対象とし、 「目標共有、率先垂範、同僚支援のための環境整備」を第一とし、 粘り、倫理性、人を時にはキルなどの厳しい決断を次の行動目的とする教育である。 「不満 を苦情として伝える消費者ではなく、不満を提案に変えて展開させるようにすることがリ ーダーシップ教育」である。グループワークで全員の理解を最大化しようと全員が支援し あう環境整備もそれに含まれる。わかりやすい例では、終電後の駅でタクシー待ちをして 列に並んでいる多数の見知らぬ方に、 「同じ方向の方で相乗りをしませんか」と目的を共有 する投げかけを最初に行い、自分がタクシーに乗った後も、この取組に列の最後の方も参 加できるように「次の方にお願いする」ことを伝える行為などをリーダーシップ教育と判 断する。 4.学生の汎用力(コンピテンシー)の数値評価 河合塾がジェネリックスキル(リテラシーとコンピテンシー)を数値化して自己評価する PROG 評価を開発し、全国の多くの大学で試用されている。この PROG 評価では、コンピテンシーが「対 課題力、対人力、対自己力」に分類され、各々が 7 段階の数値評価される形式になっている。一 方、産業界ニーズ事業(九州、沖縄地区)の「学修評価方法の検討」班は、九州沖縄地区の企業 アンケート調査から企業が汎用力(社会人基礎力)を学生に求めていることをつかんだ。これを 踏まえ、コンピテンシーを「対課題力、対人力、対自己力」の視点から独自のメタルーブリック をたたき台として「学修評価方法の検討」班は作成した。 「キャリア科目の授業改善」班と「イン ターンシップ高度化」班は、その母体ルーブリックから各々の活動に特化したルーブリックを試 作し、実際に運用評価された。 ここでは、応用化学科 1 年生の全員に、 (1) 河合塾が開発した PROG 評価(2014 年初冬に実施)と、 (2)「キャリア科目の授業改善」班が 2014 年 12 月に最終版としたルーブリックを一部改良し た添付のルーブリック(2015 年 1 月末実施)を自己評価させた。 この産業界ニーズ事業で作成したルーブリック表による自己評価は、同じ印刷紙を卒業研究に 配属される直前の 3 年生になるまで継続して活用する計画である。学生本人に変化の度合いを理 解してもらい、それを、進路決定に活用してもらいたいと考えている。 ※ 資料2 コンピテンシー応化ルーブリック 5.多様な人材を活用しているグローバル企業の女性管理職による、女子学生を意識した企業が 求める人材についての講演会実施と振り返り 「ダイバーシティー経営」を推進している日本アイ・ビー・エム(株)の50代前半の女性部長か ら、学生(特に女子学生)に対して、グローバル企業が求める人物像を説明してもらった。 「育児 している女性の単位時間当たりの生産性は極めて高い」ことから女性の積極的登用については 1998 年から「辞めない、泣かない、覚悟を決め」て自 律 、自 立 、自 覚 の 3 J ができる社内の女 性を集め、女性のキャリアアップを阻害している要因分析を踏まえ、改革をトップダウンで展開 している組織である。その人事評価は、仕事の業績に加えて、いま、大学の教育改革でも指摘さ れている「コンピテンシー」との二つの軸の視点から実施されることを直接学生に伝えてもらっ た。特に、 「仕事を自分の主戦場と覚悟できるか?、困難な仕事に腹を括って挑戦できるか?、女 性同士のつながりで相互作用を生み出せるか?」など働く全ての方に重要な心構えを、自分の母 親と同じ世代の女性幹部から説明を受けることで、就活への心構えに強く影響を受けたと判断し た。一例として、振り返りの学生の声を次に示す: A さ ん : 男 性 に 埋 も れ ず 、仕 事 を こ な し て い る 女 性 は か っ こ い い と 思 い ま し た 。 働きたいとは思っていても自分に自信がなく、志済さんは輝いて見えました。今、就職活 動をするにあたって自分と向き合っているところであり、仕事を主戦場にできるか、困難 な仕事に腹をくくって挑戦できるか、今自分に問われた時にどう答えるだろうかなど自分 の考え方と照らし合わせながら聞くことで、将来設計を考えることのできる有意義な時間 となりました。人生の幸せは、自分が生きている世界が輝いて見えるかどうかであると思 うので、一人の人として会社に、社会に必要とされる人材になり魅力を増すことができる のであれば幸せであると思いました。自分はどうなりたいかをよく考え、勇気を持って行 動すること、今更自分には何も能力がないと思うのではなく積極的に勇気を持てるように 努力をすることを怠らないようにしたいです。また、自分の知らない世界を知ることも忘 れず常に前進できる女性になりたいと思いました。このような講演で男性に比べ女性の方 から働かれている話を聞く機会はあまり多くないので、今回の講演はとてもいい機会にな りました。ありがとうございました。 6. 学内報告会資料 ~これからのインターンシップの在り方について~
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