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ナレッジ・マネジメント・ワークショップ
社員教育についてのナレッジ
OJT ∼On the Job Training∼
リーダーが伸びると
部下も伸びる!
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効果的なOJT
効果的な
OJTに必要なこと
に必要なこと
◎部下・後輩の指導でお困りのあなたへ
OJT
仕事をされていらっしゃる方なら、誰もが一度は聞いたことがある言葉だと思
ます。
います。
ご存知のとおり、「OJT」とは、「On the Job Training」の略で、直訳すれば、実
務を通じた訓練であり、能力開発の方法のことです。
このセミナーを始めるにあたって、一つ質問をしたいと思います。
あなたは、部下や後輩に対し、きちんとした「OJT」を行っていますか?
「いざ聞かれると困るなぁ
「いざ聞かれると困るなぁ・・・・・・」という方が大半ではないでしょうか?
」という方が大半ではないでしょうか?
もちろん、「やってるよ!」という方も大勢いると思います。そういう方にもう一
つ質問です。
あなたの部下や後輩は、成長して成果を出せていますか?
こうなると、おそらく「う∼∼∼∼ん」という方がたくさんいるのではないでしょう
か?
もしそうなら、きっとこのセミナーの随所に、いまの仕事に役立つ新鮮な情報
や、誤解していたことに対する答え、悩みに対するヒントが見つかるはずです。
ここでは、OJTの基本から応用まで、実際に何をどうすればよいのか、事例を
ご紹介しながら深くお伝えしたいと考えています。
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効果的なOJTに必要な
効果的なOJT
に必要なこと
こと
◎理屈よりアクションを起こそう
書店に行けば、OJTに関する書籍はたくさんあります。中には、非常に理論的で難しそうな内容のものも
あります。もちろん、ときと場合によってはそういった本も必要ですが、ここではわかりやすさとすぐに行
動に移せることを最優先にしています。
なぜならば 理論や理屈を知っているに越したことはありませんが 部下や後輩は理屈や理論を振りか
なぜならば、理論や理屈を知っているに越したことはありませんが、部下や後輩は理屈や理論を振りか
ざしても動かないからです。
あなた自身がアクションを起こさなければ、何ひとつ成果につながりません。
また、「うちの会社では十分に研修をしているからだいじょうぶ」。
こんなふうに思っている人も多いかもしれません。
こんなふうに思っている人も多いかもしれません
しかし、研修というのは、そこで学んだことを実務で発揮できてこそ意味があるものです。実務で成果を
出すには、実地で経験を積み、能力を身につけていくことが必要であり、研修はそれを補完する位置づ
けです。
だから 私は人材育成の基本はOJTだとあらゆる場面でお伝えしています
だから、私は人材育成の基本はOJTだとあらゆる場面でお伝えしています。
日本メンタルヘルス協会の衛藤信之先生の言葉で、印象的なものがあります。
「人は理論や理屈で動くことはなく、何かを感じた時に動く。だから感動という言葉はあっても理動という
言葉はない」
これは 部下や後輩だけでなく OJTを担当するあなた自身にも言えることです
これは、部下や後輩だけでなく、OJTを担当するあなた自身にも言えることです。
OJTを行うのは誰のためか?
言うまでもなく、部下や後輩といった、育成される側のためです。
しかし、ここでは視点を一段上げた目線でお伝えしていきます。OJTを受ける側ではなく、「する側のあな
たのため」の目線です。
たのため」の目線です
OJTのスキルを高めることで、あなた自身が成長する。そして、その成果として部下や後輩も成長する。
そんなスタンスでお伝えしていこうと思います。
OJTはOJT担当者の成長のための仕組みでもある。積極的に活用しよう。
は
担当者 成長 ため 仕組み もある 積極的に活用しよう
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OJTはあらゆる階層で行われている
OJTはあらゆる階層で行われて
いる
◎「OJT
◎「
OJTリーダー」とは、実際に人材育成を行う人
リーダー」とは、実際に人材育成を行う人
この研修を受けられたということは、あなたはおそらく、部
下や後輩がいる。もしくはこれから、入ってくる予定がある
のではないかと思います。
のではないかと思います
なかには、部下や後輩を初めてもつ人もいるでしょう。
そこで まずOJTの仕組みを簡単に説明します
そこで、まずOJTの仕組みを簡単に説明します。
実はOJTをする側にも、次の2つのレベルの方がいます。
z OJT責任者
z OJTリーダー
「OJT責任者」とは OJT対象者に対する育成の責任をも
「OJT責任者」とは、OJT対象者に対する育成の責任をも
つ人、「OJTリーダー」とは、実際にOJTを推進する人です。
仮に、OJT対象者が新入社員であれば、直接OJTを行う
「OJTリーダー」は先輩や直属上司(主任・係長担当)で
しょう。一方、「OJT責任者」は、OJTリーダーの上司であ
る管理職相当の方がその役割を担うのが一般的です。
る管理職相当の方がその役割を担うのが一般的です
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OJTはあらゆる階層で行われている
OJTはあらゆる階層で行われて
いる
◎「育成のスパイラル」を回せ!
ここでは、OJTを推進する立場のOJTリーダー向けに話をしていきます。
それは、話を聞いていただく方を絞っておかなければ、話し方や内容までぶれて、結局
何が言いたいのか伝わりにくいからだ。
また、話がぶれないために、OJT対象者は一番多いと思われる新入社員をイメージし
てお伝えしていきます。もちろん、2年目でも3年目でも基本は同じですので、あなた自
身
身が応用して頂ければどのような階層でも役立つはずです。
用
頂
う 階層
役
ず す。
「それじゃあ、OJT責任者である私には役立たないじゃないか!」と思う方もいるかもし
れませんが、そうではありません。第一に、OJT責任者は当然、OJTリーダーのことを
理解しておく必要がありますし、第二にOJT責任者もまた、OJTリーダーのOJTを行う立
場にあるからです。
場にあるからです
OJTは、新入社員だけではなく、すべての階層を育成するための手法なのです。
新入社員の育成を主任 係長クラスが行い、そのOJTを課長が行い、課長のOJTを部
新入社員の育成を主任・係長クラスが行い、そのOJTを課長が行い、課長のOJTを部
長が行う。
このようなことが世代ごと、階層ごとに行われることを、私は「育成のスパイラルが回っ
ている」と言っています。その状態こそが、人材が成長し続け、組織の強化、会社への
貢献 社会への貢献へとつながるのです
貢献、社会への貢献へとつながるのです。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、いよいよ具体的なお話に入っていきます。
階層が上がるたびに苦労しなくていいよう、OJTスキルは今回のステップアップで習得
階層が上がるたびに苦労しなくていいよう
OJTスキルは今回のステップアップで習得
しておこう。
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このOJT
この
OJTの連鎖で、継続的な人材育成が可能となる
の連鎖で、継続的な人材育成が可能となる
OJT
責任者
OJT
管理職
OJT
リーダー
係長
主任
先輩
OJT
OJT
対象者
この研修では、ここの
方を中心に話を進めて
いきます。
新入社員
後輩
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OJTにおいて、仕事は「能率向上の手段」」
OJTにおいて、仕事は「能率向上の手段
◎「目先の仕事を教えること」が目的ではない
OJTとは、ただ目先の仕事のやり方を後輩に教えることではありません。
「OJT=仕事を教えること」という誤った理解をしているOJTリーダーが、非常に多いの
ではないでしょうか?
「仕事を教えなきゃ、仕事ができないじゃないか!」
ごもっともな意見です。
しかし、「必要事項をひととおり教えたら、それでOJTは完了」と思っているなら、少し考
えを変えていただく方がいいと思います。
えを変えていただく方がいいと思います
経営者から見た事業運営の目的は、利益の創出、事業の発展、社会貢献、社員の生
活水準の向上
活水準の向上・・・・・・とさまざまありますが、つまるところ、社員に求めるのは「成果」で
とさまざまありますが、つまるところ、社員に求めるのは「成果」で
す。
その実現のための方法のひとつとして、社員に能力をあげてもらうことがあります。
これは現場から見た場合も同じです。「成果を出すために必要なことはなにか?」と考
えたときに やはり社員の能力向上を考えます
えたときに、やはり社員の能力向上を考えます。
だからこそ、能力向上と成果を結びつけるために、OJTという手法がとられるようになっ
たのです。
「仕事を教えること」もOJTの一貫ですが、実際にはもう少し範囲が広く、「OJT=能力
向上+成果」ということです。
部
部下に確実に仕事を覚えさせることは前提として、実務能力を高め、段階に応じた成果
確実 仕事を覚
前提
、実務能 を高 、段階
成果
を出せるようサポートしていくのが、OJTリーダーに求められる役割なのです。
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OJTにおいて、仕事は「能率向上の手段」」
OJTにおいて、仕事は「能率向上の手段
◎「基礎から順番に」トレーニングを積み上げよう
OJTとは「仕事を通じて能力を高めること」ということは先にお話ししましたが、多くの現
場では「目の前にある仕事を教えているだけ」というケースがよく見られます。
しかし、OJTにおいて、仕事を覚えることは部下や後輩の能力を伸ばすための「手段」
に過ぎません。
ぎ
これは、OJTをスポーツのトレーニングにたとえると、わかりやすいと思います。
試合に備え、選手は日々トレーニングを行い増す。一流の選手であれば、きちんとした
トレ ニングメニュ があり そのひとつひとつに意味があります 間違っても日々の思
トレーニングメニューがあり、そのひとつひとつに意味があります。間違っても日々の思
いつきで練習したりはしません。
野球で言えば、基礎トレーニング、筋力トレーニングなどの体づくりから、キャッチボー
ルに始まり、守備練習、打撃練習・・・・・・。それは計画的に、段階的にステップアップす
るようにト
るようにトレーニングメニューがつくられています。
グメ
が くられ
ます
一方、職場における仕事のトレーニングの実態はどうでしょうか?
計画はない、段階的でない、場当たり的に目の前の仕事のやり方を教えるだけでは、ト
レーニングとはとても言えません。
レーニングとはとても言えません
野球で例えるなら、バットを持ったこともない人に、いきなり「ホームランを打て」と言うよ
うなものです。
あな
あなたは部下や後輩を育てて行くにあたり、計画性がありますか?
部下や後輩を育
行く あ り、計画性 あります
今のレベルを把握していますか?
3ヶ月後、1年後、どのような人材になっているか想像していますか?
部下・後輩に「いつまでにどうなっていてほしいか」を考えて、着実に実力をつけさせる
のが目的。
のが目的
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損得以上に深刻な「失敗のリスク」とは?
損得以上に深刻な「失敗のリスク」とは?
◎モチベーションのダメージは、簡単に取り戻せない
人が成長する過程には、必ず段階があります。
しかし、「それぞれの段階ができるようになったら次に進む」という当た
り前の とが、仕事においては置き去りにされている とが往々にして
り前のことが、仕事においては置き去りにされていることが往々にして
あります。
たしかに、いきなり難易度の高い仕事を与えられて、失敗を繰り返しな
たしかに
いきなり難易度の高い仕事を与えられて 失敗を繰り返しな
がら成長する人もいます。
それは方法として必ずしも間違いではありませんが、成長に時間がか
かってしまうこと そして 失敗のリスクがあることを忘れてはいけませ
かってしまうこと、そして、失敗のリスクがあることを忘れてはいけませ
ん。
ここで言う失敗のリスクとは、ビジネス上の損得だけに留まりません。
ここで言う失敗のリスクとは
ビジネス上の損得だけに留まりません
より大きなダメージとなるのは、部下や後輩の地震や達成感を奪い、モ
チベーションを落とし、挙句の果てには「いきなりやれと言われて
も
も・・・・・・」と反発を生むことです。
と反発を生む とです
損得に関しては上司や先輩が責任を負えますが、それ以外のリスクに
ついては、取り戻すのに倍以上のパワーと時間が必要になります。
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損得以上に深刻な「失敗のリスク」とは?
損得以上に深刻な「失敗のリスク」とは?
◎「最初からデキる
◎「最初からデキ
る部下」も、万能ではない
もちろん、部下がそれまでの人生経験から理解していることは、あらためて指
導することもないでしょう。とくに専門知識などは、学生時代の専攻によって
は、すでに十分なモノを持っていることもあります。
また、勘がよく、置かれた状況に応じてうまくルールを推測できる人もいます。
こういった場合も確認程度で済ませてもよいでしょう。
ただし、そういった人材があなたの目の前に現れる可能性は、限りなくゼロに
近いと言えます。また、そのような有能な人材であっても、やはり成長過程の
どこかで OJTを必要とするときが来るはずです
どこかで、OJTを必要とするときが来るはずです。
ですから、部下や後輩を育てるためには、あなた自身がきちんとした育成方法
を知り 実行することがとても大切になるのです
を知り、実行することがとても大切になるのです。
急がば回れという言葉があるように、結局は計画的、段階的に一歩ずつ能力
を身につけてい たほうが 部下や後輩の成長は早いのです
を身につけていったほうが、部下や後輩の成長は早いのです。
「いきなりやらせる」のは、うまくいかなかったときに打撃が大きい。
部
部下・後輩の能力に合わせた指導で、一歩ずつ進めていこう。
後輩 能力 合わ た指導
歩ず 進め
う
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「失敗の繰り返し」で成長できる人ばかりではない
段階を経ず、後輩にいきなり、本番の仕事を任せると・・・
①失敗してビジネス上の損失を被ることがある
②成長に時間がかかる
③モチベーションが低下し、反発を生む
全然
できない
また失敗
するかも
部下・後輩
なんで最初に教
えてくれないの?
一旦こういう状態になると、元の状態を取り戻すのに、
かなりの時間とパワーを要する
かなりの時間とパワ
を要する
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「自分の教え方に、疑問をもったことはないか?
「自分の
◎仕事ができることと教えることは別物
ここまで、OJTの基本的な考え方についてお伝えしてきましたが、偉そうなこと
を言っているわたしも、昔は「目の前の仕事をできるようにすること」がOJTだと
ずっと思っていました。
私が最初に入社した会社では、超高圧電線のジョイント部分の開発から現場
監督までを行っていました。
仕事は、奥が深く、幅広い知識が必要で、新入社員の私にとってはかなり難易
度の高いものでした。
それでも、たくさん失敗し、たくさん叱られたり、ときにはイヤミを言われたりし
ながらも一歩ずつ勉強し、気がつけば2年が過ぎていました。
3年目、後輩が入ってきて、指導を担当することになりました。OJTリーダーです
(もちろんそんな言葉など、当時は知る由もなかったのでしたが・・・)。
当時の私は、ただ、目の前にある仕事のやり方を、それまでの経験で新入社
員
員に一生懸命教えていました。しかし、それは私が先輩から学んできたものと
生懸命教
ま た か それは私が先輩から学ん きたも と
は何かが違いました。
明らかに後輩の成長が私の時よりも遅かったのです。
3ヶ月後、半年後、私が取り組んでいた仕事のレベルに、後輩はとても追いつ
月後 半年後 私が取り組ん
た仕事
ベ
後輩はと も追
いていませんでした。
私が優秀だったわけではありません。どちらかと言うと、後輩のほうが頭は良
かったぐらいです。
かったぐらいです
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「自分の教え方に、疑問をもったことはないか?
「自分の
◎部下が入ってきたら、苦労が増えて当たり前
私が初めてOJTリーダーとして後輩の育成を任されたときは、見事なくらいにうまくいき
ませんでした。
思うように育たない後輩を見ては、イライラしたり、ときには大きな声をあげたりとどんど
んマイナスのスパイラスにはまっていきました。
んマイナスのスパイラスにはまっていきました
その状態は、後輩にとっても辛いことだったと思いますが、OJTリーダーである私にとっ
ても何一つプラスにはなっていませんでした。
後輩が入ってきて 戦力が増えた分ラクになると思っていたのに ラクになるどころか苦
後輩が入ってきて、戦力が増えた分ラクになると思っていたのに、ラクになるどころか苦
労が増えるばかり。
当の後輩にそんな悩みを打ち明けるわけにもいかず、上司に相談したこともありまし
た。すると、上司はこう言いました。
「ラクにならないのは 教えるほうにも原因があるんじ ないか?
「ラクにならないのは、教えるほうにも原因があるんじゃないか?」
自分自身の教え方に疑問を持ったことはないか?
教え方が悪いと、どんなやつでも育たないんだよ。
ラクになりたか たら 早く戦力になるように教えることだな
ラクになりたかったら、早く戦力になるように教えることだな。
お前が入ってきたときも最初は大変だったけどな。いまはだいぶラクになってきたよ」
最後はなんだか慰められたような気持ちにもなりましたが、結局のところ、戦力になって
もらうには、戦力になるように育成がされなければならないということでした。
しかし、このときはまだ、どうすれば後輩が戦力になるのか、全くわかりませんでした。
後輩を戦力にしないことには、負担は減らない。いまのやり方がダメなら、「教え方」を
後輩を戦力にしないことには、負担は減らない。いまのやり方がダメなら、
教え方」を
見直してみることも必要。
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「いきなり成果
いきなり成果を求めない」
を求めない」のが最短ルート
のが最短ルート
◎部下をいったん「納期」から切り離せ!
後輩が思うように育たない。
半年経っても「まだこんなこともできないの?」と思うことがたくさんありました。当時、私はその後輩の覚
えが悪いのだと思っていました。
えが悪いのだと思っていました
しかし、実はそうではありませんでした。自分の指導の仕方に問題があるということに気づいたのは、半
年ぐらい過ぎたころでした。
その日、私はいつものように「今日は後輩にこれとこれをやってもらおう」と自分なりに計画を立てていま
した。
ところが、私の上司がその後輩にまったく別の指示を出したのです(具体的に書くと専門的すぎるので、
あえて抽象的に書きます)。
私は納期もあったため、「〇〇くんには、今日はこれをやらせないと・・・・・・」と上司に言いましたが、上司
の答えは その仕事はお前がやれ」でした。
の答えは「その仕事はお前がやれ」でした。
私としては、後輩に難易度の高い仕事を教えるよい機会だと思っていたので、納得ができませんでした。
そして、そのあともしばらく私の思いとは別の指示が、上司から後輩に直接されるようになりました。
するとある日、後輩が、私がまだ教えていないはずの難易度の高い仕事を、自分ひとりで仕上げ、私に
「これでいいですか?」と聞いてきたのです。
私は上司が指導したのだと思い、上司に「あの仕事教えてくれたんですか?」と聞きました。
すると、上司は「いや。ただ、○○と、○○と、○○は教えたけど」と言いました。
上司が後輩に教えたことは、その難しい仕事をするための前提となる知識や、経験になる仕事のやり方
でした。そして、その難しい仕事のやり方については、特別な指導はしていなかったのです。
後輩は、基本的なことしか教えてもらっていないにも関わらず、それでも自ら考え、その難易度の高い仕
事をやり遂げました。
私はこのとき、「いままで後輩が育たなかったのは自分のせいではないか?」ということに、初めて気づい
たのです。
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「いきなり成果
いきなり成果を求めない」
を求めない」のが最短ルート
のが最短ルート
◎教えた「つもり」の勘違いが生まれる仕組み
私は後輩に、とにかく目の前にある「今やらなければならない仕事」ばかりを教
えていました。後輩の育成や成長よりも、納期に間に合わせること、つまり「成
果」ばかりに目を向けていたのです。
しかし、成果を求めて求めて仕事の難易度を上げても、そのために必要な基
礎知識や、その前提として必要なスキルのないまま仕事を行うことになるため、
時間もかかり、理解も不十分で、1から10まですべてを手とり足とり教えること
になります。
こうなると、教える側はかなりの労力が必要になりますから、「じっくり教えた」
「十分教えた」「すべて教えた」つもりになりやすくなります。
そして、「この仕事は教えたからもう大丈夫」「今回できたんだから次からはひ
とりでできるはず という大きな勘違いが生まれます
とりでできるはず」という大きな勘違いが生まれます。
実際のところ、後輩は理解が不十分ななか、言われるがままに動いているだ
けな
けなので、結果的に何らかのアウトプットが出たとしても、全く見についていな
結果的 何らか
ウ プ が出たと
も 全く見
な
いのです。
私がいくら「この前教えただろう!」「この前出来たことがなぜできないんだ!」
と叱責しても 後輩ができるようになるはずがなかったのです
と叱責しても、後輩ができるようになるはずがなかったのです。
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「納期
納期」」に合わせて
合わせて仕事
仕事を教えて
を教えていません
いませんか?
か?
もう納期に
間に合わない!
OJTリーダー
部下・後輩
部下・後輩
後輩に、あれを教えて
これも教えて、すぐや
らせないと・・・・・・
なにかいろいろ
教わったけど、
よくわからない・・・・・・
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「いきなり成果
いきなり成果を求めない」
を求めない」のが最短ルート
のが最短ルート
◎ゴールと道筋を教えれば自ら応用する
一方で私の上司は、後輩にいきなり難しい仕事をさせようとはしません
でした。
上司は後輩に、 の難しい仕事の最終的なイメ ジを事前に話しては
上司は後輩に、この難しい仕事の最終的なイメージを事前に話しては
いましたが、その仕事をいきなり教えるのではなく、そのために必要な
仕事の知識やスキル、手順を基本から順番に教えていたのです。
後輩に着実に仕事をまかせていくためには、その場しのぎで「今やらな
ければならないことから教えていく」というやり方は不親切です。
OJTは 明確な意図をもって 計画を立て 段階的に指導 育成を継続
OJTは、明確な意図をもって、計画を立て、段階的に指導、育成を継続
していくことで個人の能力を上げていくのが基本です。
人は目指す目的地とその方法がわからなければ、ゴールにはたどりつ
人は目指す目的地とその方法がわからなければ
ゴ ルにはたどり
きません。
その代わり、段階的に仕事を教えていけば、基本を身につけた時点か
ら先は 自ら応用して取り組んでいけるようにもなるのです
ら先は、自ら応用して取り組んでいけるようにもなるのです。
段階的に 本当に教える きこと」を教えていれば、1から10まで面倒
段階的に「本当に教えるべきこと」を教えていれば、1から10まで面倒
見る必要はなくなる。
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あなたが伸びると、部下も伸びる理由
あなたが伸びると、
部下も伸びる理由
◎ほとんどの人は上司に恵まれていない
結果的に、私は上司から、実務に必要な能力のみならず、人を育成す
結果的に
私は上司から 実務に必要な能力のみならず 人を育成す
るということを身をもって教えてもらうことになりました。
しかし、私のように上司に恵まれた人というのは、もしかしたら少ないの
かもしれません と言 ている私も 上司は何人もいましたが この人
かもしれません。と言っている私も、上司は何人もいましたが、この人
だけでした。あなたが新入社員だったとき、あなたの指導をしてくれた
先輩や上司はどうだったでしょうか?
OJTリーダーは 私のように計画的 段階的に育成された方か 失敗と
OJTリーダーは、私のように計画的、段階的に育成された方か、失敗と
挫折を繰り返し自分で這い上がってきた苦労人のどちらかだと思いま
す。
そして おそらく後者に属する方のほうが圧倒的に多いでしょう
そして、おそらく後者に属する方のほうが圧倒的に多いでしょう。
自分自身が新入社員時代にOJTに恵まれなかった人はとくに、自分の
後輩にも同じように的を射ないことをしがちです。
z OJTとは何なのか?
とは何なのか
z OJTの目的は何か?
だれも教えてくれなかったので、後輩にも教えることができないのです。
しかし、そこで止まっていては、自分も後輩もなかなか成長できませ
ん。
たとえ教えられてこなくても このような場で学んで実践するなど方法は
たとえ教えられてこなくても、このような場で学んで実践するなど方法は
たくさんあります。
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あなたが伸びると、部下も伸びる理由
あなたが伸びると、
部下も伸びる理由
◎OJT
OJTリーダーが乗り越えるべき心の壁とは?
リーダーが乗り越えるべき心の壁とは?
後輩を育てるには、「後輩に成長してほしい」という思いの強さが必要です。
合理的にOJTを行うと、後輩は、自分が新入社員だったころより数段早いス
長
ピードで成長していきます。
それを見ていて、「もしかしたら、新入社員を育てることで自分のポジションが
危うくなるんじゃないか?」「先を越されてしまうのではないか?」などと不安に
なることもあるかもしれません。
けれども、それを乗り越えることでしか、あなた自身の「育成力」は育たないの
です。
管理職の仕事は、部下を使ってより大きな成果を出していくことです。部下や
後輩の成長が早いほど あなたの次のステ プ の扉は早く開きます
後輩の成長が早いほど、あなたの次のステップへの扉は早く開きます。
そう考えると、後輩を育てることはあなた自身を育てることにほかなりません。
後 が
後輩が育つ→成果が出る→会社が成長する
が
が
、
長
このサイクルが回るたびに、あなた自身も成長していることを忘れないでくださ
い。
後輩を見ればOJTリーダーの実力がわかる。次のステップを視野に入れて人
後輩を見ればOJT
リーダーの実力がわかる。次のステップを視野に入れて人
材育成を
材育成をしよう。
う
20
まず
「目的がハッキリした計画」
を立てよう
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OJTの基本はPDCA
OJTの基本は
PDCA
◎職場に散見されるOJT
◎職場に散見される
OJTという名の放置プレイ
という名の放置プレイ
ここまでで、「OJTとは何なのか?」についてご理解いただけたと思います。
同時に、「これまでイメージしていたOJTとはなんとなく違うなぁ?」そんな印象をもたれ
た
たのではないでしょうか?
はな
し うか
成長は小さな疑問から始まり、ひとつずつ理解・解決していくことで力となり、身につい
ていきます。その違和感を大事にして次に進んでいきたいと思います。
さて OJTの話に入る前に ビジネスの基本とも言うべきことをおさらいしておきます
さて、OJTの話に入る前に、ビジネスの基本とも言うべきことをおさらいしておきます。
それは、「PDCA」です。
PDCAとは、一般的には新入社員教育で最初に教えられる、仕事の進め方の基本です。
ビジネスパーソンであれば誰もが知っている仕事のマネジメントサイクルですし
ビジネスパ
ソンであれば誰もが知っている仕事のマネジメントサイクルですし、OJT
OJT
リーダーのあなたにとっては「いまさら・・・・・・」と思うようなことかもしれません。
ところが私がある企業の中堅社員に、
「うまくいかないのはPDCAができてないからですよ。PとDだけでは仕事の質は上がりま
せんよ」というような、話をしたら、
んよ と うような 話を たら
「PDCAってなんですか?」と思いもよらぬ返答が来たことがありました。
このように、企業によっては十分な社員教育をしないまま、OJTという名のもと放置プレ
このように
企業によ ては十分な社員教育をしないまま OJTという名のもと放置プレ
イが行われているケースも少なくはないと思われます。
基本をおろそかにした応用ほど危険なものはありません。基本がなければ小手先のテ
ク ックによるごまかしが増え、結局それは仕事の質を落とすとともに、能率向上の妨
クニックによるごまかしが増え、結局それは仕事の質を落とすとともに、能率向上の妨
げになってしまいます。
22
OJTの基本はPDCA
OJTの基本は
PDCA
◎そもそも最初の「プラン作成」からつまずく人が大多数
前置きが長くなってしまいましたが、念のために確認しておくと、PDCAとは、「Plan=計画」「Do=実行」
「Check=評価」「Action=改善」のことで、この繰り返しによって継続的に業務の質を上げていく仕事のマネ
ジメントサイクルです。
OJTもこのPDCAのサイクルで進めていくのが基本です。
OJTもこのPDCAのサイクルで進めていくのが基本です
①
②
③
④
OJTは、計画を立てることから始まります(Plan)。
その計画に基づいて、仕事をアサインし、経験をさせ、さまざまな能力を身につけさせていきます
(Do)。
(Do)
計画通りに成長しているかどうか定期的に確認し、身についた能力と、身についていない能力を
明確にしていきます(Check)。
計画通りに身につかなかった能力を、身につける処置をとります(Action)。
そして、次のステップで必要な能力をどのように身につけさせていくのか、これまでの計画を見直して次
の計画を立てるのです(Planに戻る)。
あらためて確認すれば当たり前のようですが、実際にできているかは別の話である。
あらためて確認すれば当たり前のようですが
実際にできているかは別の話である
私はこれまでたくさんのOJTリーダーから話を聞いてきましたが、まず、計画(Plan)が立てられている人が
ほとんどいません。
Planがありませんから、当然、Doも方向が定まりにくくなります。
ましてや能力の棚卸などやったこともなく Checkができず 次のActionにもつながりません
ましてや能力の棚卸などやったこともなく、Checkができず、次のActionにもつながりません。
こうして、多くの職場でOJTとは名ばかりの放置プレイが行われているのが実情なのです。
あなたのこれまでのOJTはどうでしたか?
「PDCA
PDCA」を実行するだけで、
」を実行するだけで、OJT
を実行するだけ
OJTはほぼうまくいく
は ぼうまく く
はほぼうまくいく
23
OJTの「
OJT
の「PDCA
PDCA」とはどんなもの?
」とはどんなもの?
Plan
OJTの計画を立てる
Do
Action
計画に基づいて、
計画に基づいて
仕事を経験させていく
計画通りに身につかなかった
能力を、身につけさせていく
Check
定期的に、身についた能
力 ついていない能力を
力、ついていない能力を
確認する
まずプランを立てると ろから実行する。
まずプランを立てるところから実行する。
初心にかえって、PDCAを意識しながら進めていこう。
24
OJTのゴールとは?
OJTのゴールとは?
◎新入社員の場合は、「自立」がひとつの目安
「OJTのゴールはどこですか?」このような質問を受けるこ
とがあります。
これに対する私の答えは、「ゴールをどこにしているかに
よってきます」です。
どこまで計画的に部下や後輩の面倒を見ていくかという
のは、最終的には組織やOJTリーダーの判断によります。
ただ、一応の目安を示すとすれば、新入社員のOJTの場
合でいうと、まずは「自立」が最初の目標になるでしょう。
「自立」という言葉はさまざまに解釈でき、人によって意見
が分かれます。
私がここでいう「自立」というのは、現在の業務範囲にお
が
「
務範
いてOJTリーダーの指示のもと、部下や後輩が自身の判
断で業務を支障なく遂行できる状態です。
断で業務を支障なく遂行できる状態です
25
OJTのゴールとは?
OJTのゴールとは?
◎2∼3年の中期計画で進めよう
新入社員が自分の力で仕事を進められるようになるためには、次のようなことができることが最低条件と
なるでしょう。
• ビジネスマナーとビジネスマインドの習得
ミ
ケ ションの基本の習得
• コミュニケーションの基本の習得
• 仕事の進め方の基本の習得
• 専門知識の習得
• 自社について理解すること(強み・弱み、歴史、ルール、競合等)
• 業界知識の習得と、常に最新情報を入手できる情報ル
業界知識の習得と 常に最新情報を入手できる情報ルートの確保
トの確保
• 社内外のキーマンとの人脈
• 協調性、責任感等の基本的なヒューマンスキル
これだけ見ると、新入社員にとってはかなり高いハードルです。だから、数カ月や1年で一人前にしようと
これだけ見ると
新入社員にと てはかなり高いハ ドルです だから 数カ月や1年で 人前にしようと
思ってもムリなのです。
ここまで成長させるには、どのような業務を通じて必要な能力を身につけていくのかを、少なくとも2年か
ら3年という中期的な視点で計画する必要があります。
そして 一つの目標に到達したら その次を目指します
そして、一つの目標に到達したら、その次を目指します。
たとえば、業務範囲を広げ、業務遂行能力を高めてもよいし、現在の職場の問題解決を図りながら、課
題解決力を高めるのもよいし、部分的にでも後輩のOJT担当者としての指導・育成力をつけていくという
のでもよいでしょう。
段上のステップに目標を置くときが、その人にとってのステップアップのときであり、実際には決して
その人にとってのステップアップのときであり 実際には決して
一段上のステップに目標を置くときが
ゴールではないのです。
OJTがPDCAであるというのは、そういう意味です。
新入社員には身につけさせることがたくさんある 根気よくひとつひとつ計画的に指導していくことが必
新入社員には身につけさせることがたくさんある。根気よくひとつひとつ計画的に指導していくことが必
要。
26
OJT計画書をつくろう
OJT計画書をつくろう
◎5W
◎5
W1Hで漏れなくダブりなく
ここからは、いよいよ具体的なOJTプランの立て方の話に入っていきます。
からは
よ よ具体的な プ
立 方 話 入
きます
OJTは意図をもって、計画的、継続的、そして段階的に行わなければ、効果が
出 く と う とは先 お話ししたとおり す
出にくいということは先にお話ししたとおりです。
では、どのように計画を立てるのでしょうか?
基礎的なことですが、計画書作成は5W1Hで行います。
5W1Hとは、「いつ(When)」「どこで(Where)」「だれが(Who)」「何を(What)」
「どうして(Why)」「どのように(How)」のことです。
場合によっては「いくら(HowMuch)」を入れて、5W2Hとすることもあります。
「なーんだ、簡単じゃん」という方も多いと思いますが、そう簡単ではありませ
ん。
たとえば、「計画書をつくって」と上司に言われ、つくってもっていったら、
「期限が書いてないじゃないか!」
「これは誰が担当するんだ?」
れは誰 担当する だ 」
「連絡先が書いていないぞ!」
こんな指摘は日常のなかで珍しくありません。計画書は、漏れなく、ダブりなく
書く
書くのが基本です。
基本 す。
以上を踏まえて、OJT計画書について具体例をあげながらご説明しましょう。
27
OJT計画書をつくろう
OJT計画書をつくろう
◎最低限入れておくべき3つの要素
OJTの計画は、必ず紙(またはデータ)に落とし込んで、「OJT計画書」をつくりま
す。
それによって、OJTリーダー、OJTの対象者である部下や後輩、OJT責任者のな
かで共通認識をつくります。関係者が同じ目的・目標をもつということです。
OJT計画書は、会社の実情に合わせてつくるものですが、次の3つのポイントを
押さえ
押さえていることが必須です。
る とが必須 す
z 「5W1H」が網羅されていること
z OJT責任者、OJTリーダー、OJT対象者が共通認識をもてること
z PDCAが回せるように、結果の振り返りと次のステップがわかること
この計画書をもとに「定期的な面談をし、進捗と成長を確認しあいながら進め、
身についてきたら次の目標をまた立てていく」というOJTのPDCAを回していくの
です。
OJT計画書は、関係者が目的を共有するためのツール。パッと見で概要がわ
かるように、漏れなく簡潔につくろう。
28
OJT計画書の書き込み方
OJT計画書の書き込み方
◎具体的に書くほど実用的
別途、配布したものが、OJT計画書の一般的な書き込み
シートの例です。このシートを使って、大まかな書き込み
方を説明し
方を説明していきます。
きます
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
⑧
⑨
OJT対象者名
OJT実施期間(いつまでに)
OJT目標
能力(求められる能力、現状の能力、目標能力)
能力向上施策
研修計画
能力評価
長期目標
コメント記入欄
29
OJT計画書の書き込み方
OJT計画書の書き込み方
◎具体的に書くほど実用的
①
②
③
OJT対象者名
対象者の名前を書きます。対象者が複数いる場合もありますので、誰の
ための計画書なのか、すぐわかるようにしておきましょう。
計画書は、OJTリーダーからOJT責任者への報告書としても使うことができ
ます。
合わせて、OJTリーダーやOJT責任者の名前も書いておきましょう。
OJT実施期間
実施期間
OJTの期間を設定します。次の「③OJT目標」との兼ね合いで、どれくらい
の期間が必要かを見積もります。ひとつの区切りとして、おおむね、半年
または1年くらいがちょうどよいのではないかと思います。
または1年くらいがちょうどよいのではないかと思います
OJT目標
部下にどのようになってもらいたいかを記載します。OJT期間終了後に、
部下のどのような姿をイメ ジするか、というのがポイントです。
部下のどのような姿をイメージするか、というのがポイントです。
z なんのために
z どのような能力を
z どんなレベルで身につけるか?
営業職で例えるなら、「新規顧客獲得のために、上司のサポートなしでクロージン
グまでできるようになる」というような具合です。
部下の成長のためであることはもちろんですが、最終的には会社への貢献につな
がることを意識して 目標を立てていくことが大切です
がることを意識して、目標を立てていくことが大切です。
30
OJT計画書の書き込み方
OJT計画書の書き込み方
◎具体的に書くほど実用的
④
能力
部下に求める能力は何か?それに対して現状の能力はどのレベルか?
そのギャップが 必然的に身につけるべき能力となります
そのギャップが、必然的に身につけるべき能力となります。
先ほどの例でいえば、新規顧客相手にひとりでクロージングができるため
には、「折衝力」や「企画書作成能力」・・・・・・求める能力はたくさんありま
す。そのなかで、とくに重要な能力や、現状不足している能力などを中心
に決めていきます。
シート例では3つ記入欄をつくりましたが、人によって2つだったり、4つ
だったりしてもよいのです。
重要なのは型にはまらず 実態に合わせて必要なことを行うことです
重要なのは型にはまらず、実態に合わせて必要なことを行うことです。
手順としては、まず求める能力を明確にし、次に現状を把握します。
現状を把握する際には、これまでの業務を客観的に確認したり、部下と
の面談を通じて、双方で共通認識をもつようにします。
先ほどの例なら、これまで新規顧客を獲得したことがないレベルなのか、
クロージングは上司が行っていたというレベルなのか、先輩のサポートを
得ながらクロ ジングをしているレベルなのか 既存顧客に対しては自分
得ながらクロージングをしているレベルなのか、既存顧客に対しては自分
でできるのか・・・・・・といったことです。
そして、求める能力と現状のギャップである。次に身につけるべき能力を
記入 ます。
記入します。
31
OJT計画書の書き込み方
OJT計画書の書き込み方
◎具体的に書くほど実用的
⑤
能力向上施策
たとえば、単純に「企画書作成能力を高める」と言っても、それは段階的とは言え
ません。
企画書作成能力を高めるには ざ と「情報収集力(顧客 競合) 「情報分析力
企画書作成能力を高めるには、ざっと「情報収集力(顧客・競合)」「情報分析力」
「業界知識」「情報を論理的にまとめる力」「自社製品の知識」「課題解決力」「企画
提案力」「原価管理、売価計算(見積り作成のため)」・・・・・・などより具体的な能
力が必要です。
それらをひと ひと 身に ける とが 企画書作成能力を高める とになります
それらをひとつひとつ身につけることが、企画書作成能力を高めることになります。
そこで、これらをどこでどのように指導・育成していくかを決めます。
OJTでは仕事を通じて指導することがメインになりますから、「いつ」、「どのような
業務」を行い、「だれが」指導するかを決めておきます。
仕事の内容によっては現場で学ぶことや、取引先に行くこと、場合によっては、他
社への出向、海外出張などまで範囲が広がる場合もあります。
⑥
研修計画
求める能力を身につける方法として、OJT以外にもOFF‐JT(研修)という方法もあり
ます。
業務の中ではなかなか身につかない能力や、専門性が高い能力の場合などは、
研修などに参加して身につけさせてもよいでしょう。
研修などに参加して身につけさせてもよいでしょう
どのような研修をいつ、どこで受講するかなどを計画しておきます。
なお、通信研修やWeb研修などを利用すると自分のペースで受講できますが、や
らずに終わるということも起こりえます。OJTリーダーは必ず受講したかどうかの終
了確認と 能力変化があ たかどうかの確認をしてください
了確認と、能力変化があったかどうかの確認をしてください。
32
OJT計画書の書き込み方
OJT計画書の書き込み方
◎具体的に書くほど実用的
⑦
能力評価
これは、PDCAでいうところのCheckにあたります。
②で決めた期間がきたら、どこまでできるようになったか、どのような能力を身に
けたか、
で振り返ります。できるようになった とと、ならなかった とを、OJT
つけたか、ここで振り返ります。できるようになったことと、ならなかったことを、OJT
リーダーと後輩双方で確認するのです。
Checkを行ったら、次のステップ(Action)について双方で確認しあい、新たなOJT計
画シートを作成します。
もちろん、このCheckは分割しても構いません。
たとえば、6か月間の目標であれば、1か月ごとに進捗を確認しながら行ってもよ
いのです。計画書を使いやすいように工夫してみましょう。
⑧ 長期目標
OJT計画書は半年 1年といった短期目標を管理するだけでなく 長期的な視点で
OJT計画書は半年、1年といった短期目標を管理するだけでなく、長期的な視点で
目標を指定しておくと、後輩自身、自分の将来像をイメージできます。
OJTを通じさまざまな能力を身につけたら、後輩の仕事の幅も可能性も広がってき
ているはずです。今までできなかったことにもチャレンジできるようになるでしょう。
そこで 後輩自身が「将来どのようなことに取り組みたいか?」「どんな仕事をして
そこで、後輩自身が「将来どのようなことに取り組みたいか?」「どんな仕事をして
みたいか?」「どんな人物像になりたいか?」といったことを考慮し、長期的な視点
での目標(希望)を後輩と確認していきます。
OJT責任者も含めて、将来のキャリアなどを一緒に考えていくと、より能力向上が
加速していきます。
加速していきます
⑨ コメント
OJTにおける反省や、次への対応方法など必要なことを、本人、OJTリーダー、OJT
責任者がそれぞれ記録しておきます。
「いつまでに何をやるのか」を決めておくことで、着実に前進していくことができる。
33
ビジネスパーソンに必須の3つの能力
ビジネスパーソンに
◎カッツが提唱した「優れた管理者のスキル」とは?
では、具体的に、OJTではどのような能力を身につけさせるべ
きか見ていきます。
私は「カ ツの理論 というものを応用すると 必要な能力がバ
私は「カッツの理論」というものを応用すると、必要な能力がバ
ランスよく見えてくると考えています。
カッツの理論とは、アメリカの経営学者ロバ ト カッツが 優れ
カッツの理論とは、アメリカの経営学者ロバート・カッツが「優れ
た管理者のスキル」として提唱したものです。
管理層に必要とされるスキルを「コンセプチュアルスキル」
「ヒ
「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」の3つに分け、管理階
マンスキル」「テクニカルスキル」の3つに分け 管理階
層の高さによって求められるスキルの割合を体系的に表した
ものです。
カッツは管理者向けのスキルとしていますが、私は管理者に
限らず一般のビジネスパーソンにも当てはメルことができると
考えています。
カタカナだとわかりにくいので、私なりの考えを加えたうえで言
葉を置き換えると、それぞれ「「管理
管理能力」「
能力」「対人
対人能力」
能力」「専門能
「専門能
力」となります。
となります
34
ビジネスパーソンに必須の3つの能力
ビジネスパーソンに
◎真っ先に
真っ先に伸ばすべき
伸ばすべきは「
は「対人
対人能力
能力」」
1つ目の「管理能力」は、組織を動かす力です。新入社員のときはそれほど求められる
能力ではありませんが、管理階層が上がるにつれて求められるようになります。
たとえば、リーダーシップ力とか、マネジメント力、課題解決力などがある。
2つ目の「対人能力」は、新入社員でも管理者でも必要な能力です。傾聴力、質問力と
いったコミュニケーション力や、交渉力などがあります。
3つ目の「専門能力」は、実務に必要な知識や能力です。これは実務遂行力と考えると
わかりやすいと思います ものづくりに関する能力 英語などの語学 サ ビス業なら
わかりやすいと思います。ものづくりに関する能力、英語などの語学、サービス業なら
接客力などがあります。
この中で、最も重要なのが「対人能力」です。まわりの人とうまくコミュニケーションが取
れないと、仕事の能率が上がりません。
本人だけの問題ではなく、一緒に仕事をする上司や同僚、取引先にも迷惑をかけるこ
とがあるため、新入社員の場合はとくに、優先的に取り組む必要のある課題と言えるで
しょう。
また 3つの能力はいずれも経験を重ねて身につけていくものですが 管理能力と専門
また、3つの能力はいずれも経験を重ねて身につけていくものですが、管理能力と専門
能力は、まず対人能力を基礎として、その上に積み上げていくものです。
ですから、管理能力や専門能力に先んじて、対人能力を伸ばしておくことが大切です。
対人能力を伸 す要素
対人能力を伸ばす要素には、チームワークや積極性、多角的なモノの見方、感謝の気
、チ
クや積極性、多角的な
見方、感謝 気
持ちを表すこと、ビジネスマナーなど、いろいろ考えられます。
会社や職場の実情に合うものを目標とするといいでしょう。
仕事だけでなく「対人能力 に いても 具体的に目標を く てあげる
仕事だけでなく「対人能力」についても、具体的に目標をつくってあげる。
35
ビジネスマンに必要な、
ビジネスマンに必要
な、3つのスキルと
3つのスキルとは?
は?
〈管理階層のちがいによる、求められる能力の割合〉
高
管理階層
コンセプチュアル
スキル
(管 能 )
(管理能力)
ヒューマン
スキル
(対人能力)
テクニカルスキル
(対人能力)
低
この「対人能力」の重要性は、
管理改装の高さにかかわらず、
常に 定
常に一定
管理階層が低いうちは専門能力、高くなると管理能力がより重要になる。
対人能力は、階層の高さにかかわらず常に重要なものなので、早めに身
につけておきたい。
36
「業務に必要な
業務に必要な能力」
能力」の効率的な洗い出し方
の効率的な洗い出し方
◎必要な専門能力は、仕事内容や職場ごとに違う
「管理能力」「対人能力」「専門能力」のうち、「管理能力」については、
新入社員の間はあまり問われません。そ で次は、 対人能力」に続き、
新入社員の間はあまり問われません。そこで次は、「対人能力」に続き、
どんな「専門能力」を身につけさせればいいのかを考えていきたいと思
います。
すでに、計画書の作成についての概略をご紹介しましたが、「意外に簡
単だな」とか「すぐにできそうだ」と思われた方も多いと思います。
しかし 実際に計画を立てるとなると おそらく「何を教えるか」(どのよ
しかし、実際に計画を立てるとなると、おそらく「何を教えるか」(どのよ
うな能力を身に付けるか)で最初の壁にぶつかるはずです。
すべての仕事に共通する基準はないため、自分で考えてひねり出さざ
るを得ないからです。
るを得ないからです
したがって、私がここでお伝えするのは「何を教えるかについて 考え
方 」です。
それをもとに あなた自身で計画書を作成してください
それをもとに、あなた自身で計画書を作成してください。
結構頭を使いますが、ここで手を抜くと私が初めてOJTリーダーになった
ときのように、OJTが思ったように進まなくなってしまいます。
37
「業務に必要な
業務に必要な能力」
能力」の効率的な洗い出し方
の効率的な洗い出し方
◎基準がない場合は、自分でつくるしかない
さて、先に進む前に、あなたの会社には「能力要件書」とか「職務要件
書」と言われるようなものはあるでしょうか?
これがあれば話は早いです ここには 社員に求められる能力やその
これがあれば話は早いです。ここには、社員に求められる能力やその
レベルが記載されているはずです。
「どのような能力を」「どのような場面で」「どのように発揮しなければな
らないのか」が明確にされているので それを下に計画を立てていけば
らないのか」が明確にされているので、それを下に計画を立てていけば
良いのです。
それでは「そのようなものはない」という場合はどうすればよいのでしょ
うか?
本来ならばこれらを作るのは人事部門の役割ですので、「作ってくださ
い」と頼んでしまえばOKです・・・・・・とはいきません。
能力要件や職務要件というのは 本来人事制度に密着していて 昇
能力要件や職務要件というのは、本来人事制度に密着していて、昇
進・昇格、評価などに関わってくるものですから、慎重な検討が必要に
なります。
それが出来上がるのを待 ていたら 目の前にいる後輩のOJTは いつ
それが出来上がるのを待っていたら、目の前にいる後輩のOJTは、いつ
になっても始まりません。
したがって、こういう場合はあなた自身が、後輩に求める能力の洗い出
しを行うことになります。
しを行うことになります
38
「業務に必要な
業務に必要な能力」
能力」の効率的な洗い出し方
の効率的な洗い出し方
◎仕事の棚卸をしながら、少しずつ増やしていこう
私が最初に会社に入ったときにも、そのようなものはまったく整備されていま
せんでした。ですから、自分たちで自分たちの仕事の棚卸を行い、どのような
能力が必要かということを検証していきました。
能力が必要かということを検証していきました
もちろん、職場のあらゆる業務について、必要な能力を洗い出すのはとても大
変です。
OJTを少しずつ進めていく過程で
OJTを少しずつ進めていく過程で、徐々に増やしていく
OJT
を少しずつ進めていく過程で 徐々に増やしていくというのがお勧めです
を少しずつ進めていく過程で、徐々に増やしていくというのがお勧めです。
徐々に増やしていく
OJTリーダーの役割は、能力要件書を作ることではありませんから、それに時
間をかけても仕方がありません。
100点でなくても良いですから まずは大雑把に作ってOJTをしながらすこしず
100点でなくても良いですから、まずは大雑把に作ってOJTをしながらすこしず
つ書き加えていけばよいでしょう。
あまりにも無計画にならない程度、私は「60点主義」をとっています。
現場で洗い出した必要能力は 人事制度に直結するものではありませんの
現場で洗い出した必要能力は、人事制度に直結するものではありませんの
で、60点でまずは計画的に動くことです。
大変ですが、一度つくってしまえば、それは、毎年の新入社員のOJTに使うこと
ができます。
必要能力の洗い出しに時間をかけなくていい。ステップアップの都度書き加え
て行くほうが効率的。
39
必要能力は、徐々に書き加えて行けばいい
①
自分たちの仕事の棚卸を行い
出来る範囲で必要能力を洗い出す
②
とりあえずOJTをはじめる
③
その過程で、見落としていた
必要能力が見えてくる
(ステップアップごとに、次に何を学ぶか
考えると決めやすい)
60点主義で大雑把に計画を立てたら、
それに沿ってすぐ着手してOK
40
「何ができればいいのか」の目安をつくろう
◎レベル分けで成長の度合いをハッキリさせる
OJTは意図的、計画的、段階的、継続的に行うという話は繰り返しお伝えしていますが、「段階的」につい
てもう少し具体的にお話します。
これから指導する部下や後輩にどのような能力が必要になるのか、ある程度出揃ったら、次にそれぞれ
の能力に対し
の能力に対して、レベルを設定していきます。
ベ を設定し いきます
レベル1「○○ができる」
レベル2「○○ができる」
というように、成長段階が把握できるように能力を細分化していくのです。
わかりやすい例でご紹介しましょう。
たとえば 「交渉力」とか「折衝力」といった能力が必要ならば 次のように成長段階が把握できるように
たとえば、「交渉力」とか「折衝力」といった能力が必要ならば、次のように成長段階が把握できるように
能力のレベルを細分化して行きます。
レベル1 部門内の折衝・交渉により調整ができる
レベル2 社内他部門を含めて折衝
社内他部門を含めて折衝・交渉により調整ができる
交渉により調整ができる
レベル3 取引先等社外を巻き込んだ折衝・交渉により調整ができる
最初は部内調整から経験させ、できるようになったら他部門への調整をまかせてみる、それができたら、
社外との調整を任せるなど 徐々に難易度を上げていきます
社外との調整を任せるなど、徐々に難易度を上げていきます。
入社していきなり、「社外との交渉をしろ」と言ってもそれはムリな話です。
私も、新米OJTリーダーのころは、ここまで極端ではありませんが、教える順番を無視していたことがあり
ます。
今思えば ありえない間違いをしていたと思います
今思えば、ありえない間違いをしていたと思います。
41
「何ができればいいのか」の目安をつくろう
◎余力
余力が
があれば、より細分化する方法も
あれば、より細分化する方法も
レベルについては、もう少し細かく分けるとより具体的になってきます。先ほど
のレベル分けに加え、もう1軸加えた2軸で考えていきます。
ランク1
ランク2
ランク3
ランク4
ランク5
上司にサポートを受けながら調整できる
上司の指示のもと調整できる
上司のサポートがなくとも調整できる
上司のサポ
トがなくとも調整できる
自ら主体的に調整ができる
極めて高度な折衝・交渉ができる
このように、それぞれのレベルにおいてランクを決め、マトリクスで考えると、
能力を細分化でき計画も立てやすくなります。
次の図の例では①がスタートですが
次の図の例では①がスタ
トですが、本人のレベルによっては右に進むもよ
本人のレベルによっては右に進むもよ
し、下に進むもよしです。ここまで細分化できれば、場合によっては2段階程度
のステップアップもあるでしょう。
また、その能力について、後輩の力がどこまでついているかが把握できるよう
にもなります。
後輩にとっても課題がわかりやすい仕組みを作り、具体的な行動レ ルまで
後輩にとっても課題がわかりやすい仕組みを作り、具体的な行動レベルまで
落とし込もう。
42
「何ができればいいのか」の目安をつくろう
◎余力
余力が
があれば、より細分化する方法も
あれば、より細分化する方法も
ランク
レベル
部内調整
上司の
サポート有
サポ
ト有
上司の指示
自分でできる
主体的な
調整
高度な交渉
①
社内調整
社外調整
43
客先に同行するとき
客先に
同行するときの3ステップ
の3ステップ
◎最初は、「なじみの客先」に行くほうがいい
OJTの事例を紹介しましょう。
OJTリーダーから部下や後輩へて、引き継ぐことを前提での「客先訪問」です。
部下とOJTリーダーが お客様や取引先といった社外に同行するのは 次の3
部下とOJTリーダーが、お客様や取引先といった社外に同行するのは、次の3
つのステップで行います。
それぞれどのような点に留意しなければならないのか、一覧にまとめました。
I
I.
部下を紹介しにいく
II. 指導・育成を目的に行く(手本を見せる)
III. フォローにいく(部下のやり方を確認する)
まず 最初の訪問では OJTリ ダ が部下を客先に紹介することになります
まず、最初の訪問では、OJTリーダーが部下を客先に紹介することになります。
その場合、「どこに行くか」というのがポイントです。
無意味に訪問しても先方に迷惑ですから、もちろん業務の一環としていくこと
が基本です。
が基本です
その中でも、最初は比較的なじみの客先に行くほうがよいでしょう。部下が新
入社員であればなおさらです。
逆に 商談がうまくいくかいかないかギリギリの雰囲気だ たり 新規のお客
逆に、商談がうまくいくかいかないかギリギリの雰囲気だったり、新規のお客
様のところへは、連れてはいかないほうがよいでしょう。
OJTも重要ですが、日常の業務も重要です。
引き継ぐということであれば なおさら優先順位を決めて行うことです
引き継ぐということであれば、なおさら優先順位を決めて行うことです。
44
後輩と一緒に客先を訪問するときのコツ
Ⅰ
目的
紹介
タイミング 初回訪問
主体
ポイント
OJTリーダー
ダ
Ⅱ
Ⅲ
育成
確認
初回以降
2回目以降
OJTリーダー・後輩
ダ 後輩
後輩
客先との良好な、関係 準備を整える。任せる
づくりを優先。
ところは任せる。
任せる。OJTリーダー
が責任を持つ。
振り返りをする。
45
客先に同行するとき
客先に
同行するときの3ステップ
の3ステップ
◎当面はサブでも、万全の準備をさせておく
訪問したら、まずは先方に部下を紹介します。
その時のスタンスは「優秀な人材である」という紹介がよいでしょう。
営業担当が新入社員に変わることで お客様に「新人を割り当てられ
営業担当が新入社員に変わることで、お客様に「新人を割り当てられ
た」、「うちとの取引を軽く見ている」と思われてしまうこともあるからです。
そして、当面は2名体制とさせてもらい、フォローはOJTリーダーが取る
という姿勢を OJTリ ダ が主体となって説明します
という姿勢を、OJTリーダーが主体となって説明します。
ここでは、客先との良好な関係をつくることをOJTの第一目的におきま
しょう。
2回目以降は、OJTリーダーとして手本を示すことを目的に、「どのよう
話す
」 自社 製品 商品を
う 紹介す
」
に話すのか」「自社の製品や商品をどのように紹介するのか」といった
ことを、事前準備なども含めて部下に指導していきます。客先で主体と
なるのは、この時点ではOJTリーダーですが、ときどき部下にも話をさせ
られるように準備しておきます。
部下には簡単なことから話させるのが良いのですが、重要な点につい
てもきちんと話ができるように準備をしておくことが必要です。部下に話
すチャンスが巡ってきたときに、落ち着いて対応できれば、客先からの
信頼も早期に得ることができます。
信頼も早期に得ることができます
46
客先を
客先
を後輩
後輩に引き継ぐ
に引き継ぐ手順
手順
I.
後輩を紹介しに行く
OJTリーダー
部下・後輩
新人ですが、
優秀な人材です!
先方の気持ちも考慮して、後輩のことは「優秀な人物」と紹介する。
II. 指導・育成を目的に行く(手本を見せる)
・どのように話をすればいいのか?
・自社の商品を、同説明したらいいのか
自社の商品を 同説明したらいいのか
・・・・・・など、後輩にも万全の準備をさせておこう!
III. フォローにいく(後輩のやり方を確認する)
後輩の仕事に、基本的には手を出さない。
「後輩はミ し 当然 「なにかあ たら責任を持 と う覚悟が必要
「後輩はミスして当然」「なにかあったら責任を持つ」という覚悟が必要
47
客先に同行するとき
客先に
同行するときの3ステップ
の3ステップ
◎主体が部下に移ったら、むやみに口を挟まない
このような同行を繰り返し、徐々に主体をOJTリーダーから部下へシフトしていくと、スムーズに引き継ぐこ
とができます。
とはいえ、OJTは仕事のなかで行うのですから、成長を確かめながらのんびりやっていては仕事も進みま
とはいえ
OJTは仕事のなかで行うのですから 成長を確かめながらのんびりや ていては仕事も進みま
せん。仕事はきちんとやりながら、後輩を育成する。
このさじ加減がOJTリーダーの腕の見せどころでしょう。
やがて後輩が主体的にできるようになったら、そのお客様は後輩にまかせてしまいます。
どうしても困ったときや問題になりそうなときは口を挟むのもやむを得ませんが、基本的にはむやみに手
を出さないようにしてください。
このとき、「当然ミスはある」という前提と、「責任はOJTリーダーがもつ」という覚悟は必要です。
この覚悟ができないリーダーは、いつまでも仕事を抱えてしまい、部下が育ちません。
の覚悟が きないリ ダ は い ま も仕事を抱え しまい 部下が育ちません
そして、やらせたらやらせっぱなしにしてはいけません。
その後の振り返りがOJTには必要なのです。
「どこがよくて、どこが悪かったのか」「次回への課題は何か」・・・・・・。客先との取引内容だけでなく、部
下育成の観点からの振り返りをきちんと行うのです。
育成 観点から 振り返りをきちんと行う
す
なお、Ⅰ∼Ⅲのステップについては、最初は1社から始めたほうがスムーズかもしれません。しかし、OJT
リーダーが抱えている業務量や割ける時間から考えると、現実的には複数社を並行しながら行うことが
ほとんどと思われます。
ほとんどと思われます
たいていは複数社並行でも問題ありませんが、部下や後輩の様子を注意深く見ながら、進めていってく
ださい。
先方の信頼を失わないためにも 徹底した準備が欠かせない
先方の信頼を失わないためにも、徹底した準備が欠かせない。
48
「OJT
OJT計画書」を、うまく活用する方法
計画書」を、うまく活用する方法
◎プランを「立てる」「書く」が面倒だなと感じたら・・・・・・
さて、ここまででOJTプランの立て方について、だいたいご理解いただけ
たのではないでしょうか?あなたは今、おそらくこのように感じているで
しょう。
しょう
「面倒くさいなぁ・・・・・・」
気持ちはよくわかります。私も、その場しのぎのOJTをずってやっていま
したから。
したから
意図をもって計画的に行う」というのは結構大変です。とくにシ トを
「意図をもって計画的に行う」というのは結構大変です。とくにシートを
記入するのは、続けること自体負担に感じます。
続けていくうちに、いつの間にか書く事が作業になって、書くことで満足
してしまい 書く事が目的になり その結果挫折してしまうというのはよ
してしまい、書く事が目的になり、その結果挫折してしまうというのはよ
くある話です。
ただし、ひとつだけ重要なことをお伝えすると、続かないのはシートが
悪いからではないということです シートを変えれば続くかといえば
悪いからではないということです。シ
トを変えれば続くかといえば、変
変
えたら変えたでまたどこかあらを探してしまいます。
ですからシートを変える前に、今のやり方、考え方を変えてみることを
お勧めします。
お勧めします
49
「OJT
OJT計画書」を、うまく活用する方法
計画書」を、うまく活用する方法
◎行動の指針さえしっかりしていれば、完璧でなくていい
シートの運用が続かない理由は、おそらく次の4つではないでしょうか?
① 時間がない
シ トを書くのはとても手間のかかる とです。
シートを書くのはとても手間のかかることです。
仕事に成果を求められるなかで、直接的に成果につながっているのかわ
からないシートに時間をかけるということは、十分な理解と納得がなけれ
ばできないことです。
どうしても手間があるならば 簡潔に書いてもよいし
どうしても手間があるならば、簡潔に書いてもよいし、一部だけでもかま
部だけでもかま
いません。
まずはこのようなシートになるれること、習慣化することから始めましょう。
効果がみえてくればおのずと、手間をかけられるようになってくるはずで
す。
② 書かされているという意識
目標管理制度をはじめとした様々な制度の中で、このようにシートを記入
さ る会社は多 と思 ます それが 骸化 人材育成
させる会社は多いと思います。それが形骸化し、人材育成の目的を果た
的を果た
していないのであれば、組織として制度の運用に成功しているとは言えな
いでしょう。
ただし OJTリーダーが役割を果たすためのツールとしては
ただし、OJTリ
ダ が役割を果たすためのツ ルとしては、シ
シートの記入
トの記入
は十分意味のあることです。周りがどうあれ、個人レベルではソノシートを
活用するべきです。
制度の運用がうまくいっていないと感じるなら、制度をうまく活用する方法
を考えるほうが建設的です。
を考えるほうが建設的です
50
「OJT
OJT計画書」を、うまく活用する方法
計画書」を、うまく活用する方法
◎行動の指針さえしっかりしていれば、完璧でなくていい
③ どういうレベルで書けばよいのかわからない
このようなシートを書く場合、どうも毎回違うことを書かなければな
らないという意識が生まれがちです。しかし、後輩が求める能力に
到達してないのであれば、毎回同じことを書いてもかまわないので
す。
また、どの程度のレベルで書くかにも、特にルールはありません。
たとえば 「プレゼンができるようになる という書き方は アウト
たとえば、「プレゼンができるようになる」という書き方は、アウト
プットはひとつですが、そのために必要な能力には触られていませ
ん。
「効果的なプレゼン資料作成のために論理的思考力をつける」とい
う書き方だと、一弾踏み込んだものですが、どうしたら身につくかま
ではわかりません。
「論理的思考力をつけるために ロジカルシンキングの研修を受講
「論理的思考力をつけるために、ロジカルシンキングの研修を受講
し、文章の構成や表現方法を意識しながらしゅうほうを必ず提出す
る」というところまでくると、かなり具体的になってきますが、論理的
思考を身に ける方法は他にもたくさんあるはずです。
思考を身につける方法は他にもたくさんあるはずです。
どのような書き方をしてもキリがないので、必要以上にこだわるこ
とはないのです。
、
、
動
重要なことは、きちんと計画されていることと、それに向かって行動
が き
ができることです。
す
51
「OJT
OJT計画書」を、うまく活用する方法
計画書」を、うまく活用する方法
◎行動の指針さえしっかりしていれば、完璧でなくていい
④ 書くことが思いつかない
この半年先、1年という期間で、どのような事業
の半年先、 年という期間で、どのような事業
環境が見込まれ、どのような業務を後輩に任せ
ることになるのか、そのために必要な知識や経
験 能力は何か というような視点で考えると
験、能力は何か、というような視点で考えると、
書くことがないということはないはずです。
後輩に足りないものを真剣に考えていくと いつ
後輩に足りないものを真剣に考えていくと、いつ
しか、OJTリーダーである自分自身の成長のため
に必要な能力が見えてくる ともあります。それ
に必要な能力が見えてくることもあります。それ
は後輩にとっても学ばねばならないことのはずで
す。
能力向上の目標に関して書くことが思いつかな
いのは、あらゆることをすべて吸収したスーパー
マンか 成長することを放棄した人です
マンか、成長することを放棄した人です。
52
「OJT
OJT計画書」を、うまく活用する方法
計画書」を、うまく活用する方法
◎OJT
OJT計画書は随時修正が前提
計画書は随時修正が前提
OJTシートの記入頻度は、ケースバイケースでよいでしょう。
これは、会社や職場単位でルール化されているところもあり、やり方はいろいろです。
ただし
ただし、一定の基準はあるべきです。
定の基準はあるべきです
たとえば、年に1回とか、半年に1回というようにルール化しておかなければ、日常の
忙しさの中で忘れ去られてしまうので、定期的に確認することが必要です。
もちろん ルールに縛られて
もちろん、ル
ルに縛られて、運用が実態とかけ離れてしまっては意味がありません。
運用が実態とかけ離れてしまっては意味がありません
育成という目的のためであれば、柔軟に対応してもよいのです。
「環境変化の早いなかで、計画通りにいかないこともある。突発的に仕事の優先度が
変わったとき、計画外の能力が求められることだってあるじゃないか!」
ごもっともです。こういうときには、計画書は随時修正してよいのです。
また、後輩の成長が著しく、目標としていた能力が計画より早く身につく場合もあるで
しょう。その場合は、一定の時期を待たず、新たな目標を設定してもかまいません。
予定が変われば 計画だ て変えてもかまわないのです
予定が変われば、計画だって変えてもかまわないのです。
新しい能力が必要ならその新しい能力を書き加え、段階的に身につけさせていく。
たったそれだけのことです。
そのちょっとした手間を惜しんでいないか あらためて自問してみてください
そのちょっとした手間を惜しんでいないか、あらためて自問してみてください。
OJTの進捗管理にシートは不可欠。現状と比較しながら、今何をするべきか的確に把
握しよう。
53
この「指示の出し方」と
「ホウレンソウ」で
能率が一気に上がる!
気
54
「原理・
原理・原則指示」が自立した人材を育てる
原則指示」が自立した人材を育てる
◎1から10まで面倒みる必要はない
部下や後輩に教えなければならないことは、無限にあると言っても過言ではありません。
かといって、あらゆることが網羅されたマニュアルや、あなたの頭の中に無限の無限の
知識やノウハウがあるかと言えば 非常に言いがたいことですが ありえない話です
知識やノウハウがあるかと言えば、非常に言いがたいことですが、ありえない話です。
しかし、教えなければならないことは無限にある・・・・・・矛盾ですよね?
後輩が疑問をもったりつまづいたりしたとき、マニュアルにもない、あなたの頭の中にも
ない知識やノウハウを、どうやって後輩に指導していくのでしょうか?
その都度あなたが調べて、新しい知識を習得し伝えるのもいいでしょう。しかし、それに
も限界があるはずです。
私も最初は1から10まですべて教えていました。1から10まで教えると次は11から20、
21から50・・・・・・と教えても教えてもキリがないことに気づきました。
私は自分自身がラクになるために 「どうすれば教えなく も済むのだろうか
私は自分自身がラクになるために、「どうすれば教えなくても済むのだろうか?」と考え
と考え
ました。
けっして、OJTを放棄したわけではありません。
自分自身 何でも頭の中に記憶しているわけではないのに 仕事ができているのはな
自分自身、何でも頭の中に記憶しているわけではないのに、仕事ができているのはな
ぜだろうと考えたのです。
1から10まで知らなくたって仕事はできるし、11から20にも対応が出来る方法がある
はずなのです。
55
「原理・
原理・原則指示」が自立した人材を育てる
原則指示」が自立した人材を育てる
◎「何のためにやるのか」を伝えることが先決
その方法を考えると、答えは意外にシンプルでした。
それが、「原理・原則を知る」ということでした。
あらゆる仕事には、原理・原則があります。それを知ることで、応用ができるようになるということです。
小手先のノウハウを覚えれば 一時的に応用レベルの仕事をこなすことはできますが その仕事の原
小手先のノウハウを覚えれば、一時的に応用レベルの仕事をこなすことはできますが、その仕事の原
理・原則、基本ともいうべきところを知らなければ、それ以上の応用はできません。
ここでいう原理・原則とは、
z その仕事はなぜあるのか?
z どうして
どうして必要なの
必要なのか?
か?
z それ
それを
を行うこと
行うことで
で何になるの
何になるのか?
か?
ということです。
たとえば、伝票処理という仕事があったとき、表面的な指導で伝票の書き方を教えれば、とりあえずその
伝票を書くことはできます。
しかし、原理・原則を知らなければ、次に似たような仕事があったとき、前と同じでいいのか、また別のや
り方があるのか どこに注目しなければならないかなど 自分では判断がつかないことがたくさん出てき
り方があるのか、どこに注目しなければならないかなど、自分では判断がつかないことがたくさん出てき
てしまいます。
原理・原則を教えるということは、「なぜその伝票が必要なのか?」「そこに記載する品名や型番はなぜ
必要なのか?」「その情報は何に使われるのか?」「伝票を書いた後工程に誰がいて、どのように使うの
か?」「記載する情報はどこから集めてくるのか?」・・・・・・といった
か?」「記載する情報はどこから集めてくるのか?」
といった、根本的なことをきちんと伝えておくこ
根本的なことをきちんと伝えておくこ
とです。
これによって、その仕事の勘所が分かり、自分がやるべきことが大幅に推測しやすくなるのです。
「何のためにやるのか」は仕事の最大のポイント そこを知っているだけで 自分が何をしたらいいのか
「何のためにやるのか」は仕事の最大のポイント。そこを知っているだけで、自分が何をしたらいいのか
推測しやすくなる。
56
「原理・原則
原理・原則」」を教える
を教えると
と何が変わるの
変わるのか?
か?
作業手順だけを教える
そ 仕事」
きな
→「その仕事」しかできない
→毎回一から教えなければならなくなる
原理・原則と作業手順を教える
→勘所がわかるので、次から自分
勘所がわかるので 次から自分
で判断しやすくなる
→教えなくても自分で推測してこなせる幅が
広がる
「原理・原則」を教えるということは、判断の基準を教え
るということ。
教えたことを無駄にしないためには、ココを丁寧にやる
ことが欠かせない!
57
応用が利くかどうかは支持内容で決まる
◎「一度教えて仕事ができない」のには理由がある
原理原則を知ると、1から10まで教えなくても、1か
ら5まで教えれば、6から10までは後輩が自ら考え、
答えを導き出すことができます。
答えを導き出すことができます
先の伝票の例で言えば、表面的な書き方のみの指
導は その伝票作成はできても別の伝票になると途
導は、その伝票作成はできても別の伝票になると途
端に作成できないということが起こります。
OJTリーダーは「あの伝票を教えたんだから この伝
OJTリーダーは「あの伝票を教えたんだから、この伝
票もできるはず」と思っていても、教え方が表面的だ
と、必ず後輩から この伝票はどのように書けばよい
と、必ず後輩から「この伝票はどのように書けばよい
のですか?」などと聞き返されてしまいます。
「この前教えたのと同じだよ」と言っても「この伝票に
の前教えたのと同じだよ」と言っても の伝票に
ついては教わっていません」などと言われたら、後
輩の未熟さに腹を立てる前に、教え方の未熟さを感
じなければなりません。
じなければなりません
58
確認するべきは、「理解したか」ではなく「理解した内容」
確認するべきは、「理解したか」ではなく「理解した内容」
◎「はい」と言ったからといって理解しているとは限らない
「コミュニケーションはキャッチボール」
この言葉については、いまさら説明をするまでもないでしょう。
この言葉については
いまさら説明をするまでもないでし う
相手が受け取れるような言葉を投げる、そして相手が投げた言葉を受け止め
る。コミュニケーションはその繰り返しということです。
ただし OJTにおいては 部下や後輩に指示をして「はい」と返事があ たから
ただし、OJTにおいては、部下や後輩に指示をして「はい」と返事があったから
と言って、それでキャッチボールが成立しているとは限りません。
著名な経営学者であるP.F.ドラッカー氏は「コミュニケーションは知覚」であると
言いました。
言いました
ここでいう知覚とは、「理解」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。
あなたが発信した情報を、そのまま部下が理解したのであれば問題はありま
せん。
せん
しかし、そこに認識のズレが生じたとき、あなたが発信した情報は無効になり、
部下が理解した情報のみが部下に影響を与えるのです。
「教えたつもり」というのは これが原因で生じます
「教えたつもり」というのは、これが原因で生じます。
「自分はいった、しかし相手は違う理解をしている」という状態です。
指示をしたら、部下が「理解したか」を確認するのではなく、「理解した内容」を
確認するのが 間違いのないコミュニケーションなのです
確認するのが、間違いのないコミュニケ
ションなのです。
59
確認するべきは、「理解したか」ではなく「理解した内容」
確認するべきは、「理解したか」ではなく「理解した内容」
◎指示する側の意図と、まったく違う理解をしていることも
コミュニケーションの研修で、よく行うゲームを紹介しましょう。
2人がペアになって、ある特定の図柄を一方が見ながら口頭で相手に指示をし、もう一方は図柄を見な
いでその指示のみにしたがい図柄を描くというゲ ムです。
いでその指示のみにしたがい図柄を描くというゲームです
指示を受ける側は、指示をする側に描いている絵を見せてはいけませんし、質問も禁止です。
このゲームの様子を客観的にみていると、指示を出す側は正しい情報しか与えていないのにも関わらず、
指示を受ける側が正しい図柄を描けることはほとんどありません。
つまり どんなに正しい情報発信をしても 相手の理解が違っていればまったく意味がないということです
つまり、どんなに正しい情報発信をしても、相手の理解が違っていればまったく意味がないということです。
次に、指示される側に質問を許可して、ゲームを再度行うと、半分ぐらいの人が正しい図柄を描けるよう
になります。この時点で、すでに、「コミュニケーションはキャッチボール」の重要性がよくわかります。
しかし この時点ではまだ 指示する側の意図を 指示を受けた側が確認したのみであるため 半分程
しかし、この時点ではまだ、指示する側の意図を、指示を受けた側が確認したのみであるため、半分程
度の人しか正しく描けないのです。
さらに、指示される側が書いている絵を指示する側に見えるようにしたうえで同じゲームを行うと、ほぼ
100%の人が正解することができます。
指示する側が 「指示される側がどのように自分の指示を理解しているか」を確認しながら進めることが
指示する側が、「指示される側がどのように自分の指示を理解しているか」を確認しながら進めることが
できるからです。
このことからも、なにか指示を出すときは、相手の「理解の内容」を確認しながら行うことが重要なポイン
トとなってきます。
理解の内容」を確認しないまま進めていくと、認識のズレもより大きくなり、結局 伝えたつもり」で伝わっ
「理解の内容」を確認しないまま進めていくと、認識のズレもより大きくなり、結局「伝えたつもり」で伝わっ
ていないということがよく起こるのです。
前提となる知識や経験がない状態では、口頭の指示を正確に理解するのは難しい。必ず「理解の内容」
を確認しよう。
60
一方からで
一方
からでは
はなく、お互いに
なく、お互いに確認すること
確認することが
が重要
ハイ!
○○○を
明日の昼まで
によろしくね
OJTリーダー
部下・後輩
部下・後輩
後輩
×××を明日の
昼までだな!
返事だけだと、理解内容が
あっているかは不安
○○○を
明日の昼まで
によろしくね
違うよ!
そうでは
なくて・・・
×××を明
日の昼まで
だな!
OJTリーダー
部下・後輩
部下・後輩
後輩
理解の内容を確認すると、
認識のズレをその場で解消できる
61
「指示の受け方」を指導しておこう
◎入社段階では、「社会常識」は通用しないと思っていい
あなたが部下に指示をしたときに、部下が思ってもみない行動に出たことはないでしょ
うか?
こういう場合は 部下に問題があることもありますが 指示の仕方に問題がある場合も
こういう場合は、部下に問題があることもありますが、指示の仕方に問題がある場合も
少なくありません。
少々極端な例ですが、ある大手企業の新入社員の事例をご紹介しましょう。
彼の名前は仮にAくんとします。Aくんは、だれもが知っている有名企業の新入社員で、
それなりの学歴もあり、厳しい競争率の就職活動を勝ち抜いてきている有望な人材で
す。
あるとき、上司がそのAくんにこんな指示を出しました。
「 くん これ ピ してきてくれる? ピ したら綴じてきてくれ
「Aくん、これコピーしてきてくれる?コピーしたら綴じてきてくれ」
「はい、わかりました」
よくある職場の風景です。少ししてAくんが戻ってきました。
「できました!」
Aくんが自信満々で差し出したコピーを見て、上司はビックリしました。
「おい!なんだこれは!」
このとき Aくんは「書類を綴じてこい」という指示を受けていました 常識(と言ってもい
このとき、Aくんは「書類を綴じてこい」という指示を受けていました。常識(と言ってもい
いと思うのですが・・・)であれば、ホチキスで綴じることを上司は期待していたはずです。
しかし、驚 た とに、書類は ンソウ ウで綴じられて たのです。
しかし、驚いたことに、書類はバンソウコウで綴じられていたのです。
62
「指示の受け方」を指導しておこう
◎入社段階では、「社会常識」は通用しないと思っていい
私もこの話を聞いたときにはさすがに作り話だろうと思い、
信じられませんでしたが、実際にあった出来事だそうです。
唖然とした上司は起こる気も失せたそうですが、一応理由
を聞いたら、Aくんは、
「ホチキ が見 からなか たので も ていたバ
「ホチキスが見つからなかったので、もっていたバンソウコ
ウ
ウで綴じてきました」
と まったく悪びれる様子もなかったようです まあ 悪び
と、まったく悪びれる様子もなかったようです。まあ、悪び
れるくらいだったらやらないと思いますが・・・・・・。
もち
もちろんAくんの常識レベルに問題はありますが、指示す
く
常識
問題 あります 、指 す
るときに「ホチキスで綴じてきてくれ」と言っていたらどうで
しょう?
さすがにAくんでもバンソウコウはなか たはずです
さすがにAくんでもバンソウコウはなかったはずです。
このような、新入社員のコピーにまつわるエピソードは、い
ろいろとあると思います。
ろいろとあると思います
63
「指示の受け方」を指導しておこう
◎「不足情報を確認するのは自分の仕事」と認識させよう
私は新入社員研修で、「指示の受け方」を教えるために、次のようなロールプレイをします。
「○○さんコピーとってきて」と数枚の書類を渡します。
「はい」
ほとんどの新入社員は、書類を受け取ってコピーに行こうとします。
それを呼び止め、こう聞きます。
「何部コピーをとるつもり?」するとあわてて新入社員は、
「すみません!何部コピーすればよろしいでしょうか?」と聞いてきます。
「50部」
「50部ですね。わかりました」とコピーに行こうとする新入社員をさらに呼び止めます。
「どういう風にコピーするつもり?」
「えーっと・・・・・・」
「両面 ピ で ホチキスで綴じて
「両面コピーで、ホチキスで綴じて」
「わかりました」
「ほかに確認することは」
「えーっと・・・・・・」
「いつまでにやるのか?どこにもって行くのか?確認することはたくさんあるんだよ 50部と言えばかなりの量なんだから
「いつまでにやるのか?どこにもって行くのか?確認することはたくさんあるんだよ。50部と言えばかなりの量なんだから
当然時間がかかるのはわかるよね。
そしたら必ず納期を確認する。そして50部の使い道と言ったら、ちょっと想像したら会議資料だと思うよね。そしたら『会議
室にお持ちしましょうか?』くらいの提案があってもいいよね」
少々意地悪かもしれませんが、こうすることで新入社員にも支持の受け方が身につきます。その一方で、OJTリーダーに
対する研修では 次のような具体的な指示の仕方をしてくださいと説明しています
対する研修では、次のような具体的な指示の仕方をしてくださいと説明しています。
「この書類を両面印刷で、ホチキスで綴じて50部を午後1時の会議に間に合うように会議室にもってきてくれ」
OJTリーダーはあいまいな指示をしないのはもちろんですが、後輩に対しても指示の受け方を指導していくと、お互いにス
ムーズに意思疎通を図ることができ、仕事の質も上がってくるのです。
部下・後輩にぼんやり指示を受けさせてはいけない。足りない情報は自分でたずねるよう習慣をつけさせよう。
64
あいまいなまま、仕事を進ませない
○○さん、
コピー
ピ
とってきて
OJTリーダー
部下・後輩
何部ですか?
何時までですか?
何時
す
部下・後輩
後輩
両面コピーですか?
会議室にもって行きま
会議室にも
て行きま
しょうか?
部下・後輩のほうから、足りない情報を
部下・後輩のほうから
足りない情報を
確認してくるような習慣をつけさせよう
65
「結論だけ」を聞いて指示しない
結論だけ」を聞いて指示しない
◎部下・後輩の「ホウレンソウ」に理不尽な対応をしていませんか?
指示が徹底されない職場には、一つの法則があります。
それは「ホウレンソウ」がうまく機能していないということです。
機
言うまでもないかもしれませんが、「ホウレンソウ」とは、「報告」、「連絡」、「相談」のこと
です。
OJTリーダーは、部下に指示を出しながら、部下がその過程や結果について話そうとし
てもまともに受け止めていないことが少なくありません。
てもまともに受け止めていないことが少なくありません
「報告」したら叱られて、「連絡」したら文句を言われ、「相談」したら無視されたという経
験は、だれでも一度はあるでしょう。
以前、私が指導した新入社員から、配属後しばらくしたときに相談がありました。
「報告というのは 結論が先 というのは研修でも習ったし、それがビジネスにおいてふ
つうであるのはわかってるんですが、これってあらゆる場面で共通するんですか?」
「ん?何かあったの?」
「実は、先日ちょっとしたミスをしてそれを先輩に報告に行ったのですが、やっぱり言い
にくいので最初に経緯などを話そうとしたのですが、先輩は『忙しいんだ!結論を言
え!!』というので、ミスをしたという結論を言いました」
「そしたら?」
「結論をいった時点で怒られました。今回のミスはいろいろな経緯があって避けられな
かった事情があるのですが、そういう経緯はきいてもらえず、怒られた後に対処法を指
示され、『すぐにやれ!』と・・・・・・』
66
「結論だけ」を聞いて指示しない
結論だけ」を聞いて指示しない
◎「相談しやすい環境」をつくっておくことが欠かせない
ビジネスにおいて「結論が先」というのは誰もが知っている
ルールです。しかし、あくまでも「先」であって「結論だけ」では
ないはずです。
もし、OJTリーダーがこういった態度を続けていると、後輩はホ
ウレンソウを避けるようになります。
「叱られるくら なら報告する はやめよう
「叱られるくらいなら報告するのはやめよう」
「どうせ文句を言われるんだから、連絡しないほうがいいや」
「相談しても解決しないからやめておこう」
そうして、わからないことやできないことが放置され、OJTリー
ダ の知らな と ろでトラブルにな たり、最終的に大幅な
ダーの知らないところでトラブルになったり、最終的に大幅な
手直しを余儀なくされることもあります。それに対し、「なんでこ
うなる前に相談しないんだ!」などと言ったところで、後輩は自
信をなくすだけです。
「ホウレンソウ」は、受ける側のOJTリーダーの姿勢によって精
「ホウレンソウ」は、受ける側のOJT
リーダーの姿勢によって精
度が変わる
度が変わる。日ごろから相談しやすい雰囲気をつくっておこう。
ごろから相談 やす 雰囲気を く
お う
67
「ホウレンソウ」を徹底するためのルールとは?
◎押さえておこう、部下にありがちな行動パターン
ホウレンソウを部下に徹底するうえで、OJTリーダーが前提として頭の中に入れて欲し
いことが3つあります。
① 部下はわかったフリをする
部下に指示を出したとき、その場では「はい、わかりました」と言ったものの、後に
なってやっぱりわからないというのはよくあることです。
しかし、一度「わかりました」と言った手前、あとから「やっぱりわかりません」とは
言 にく のです。
言いにくいのです。
OJTリーダーが、「部下とはそういうものだ」という前提をもっていると、部下が「やっ
ぱり・・・・・・」と言ってきたときに、イライラせず丁寧に対応してあげられます。
そうでないと、「さっきはわかったと言ったじゃないか!なんでそのとき言わないん
だ!」とイライラが態度に出てしまい、部下はますます言い出しにくくなって悪循環
です。
② 相談してこないときは何を聞いていいかわからないとき
部下に「何かわからないことはない?」と聞いても、とくに質問をしてこないことが
あります。
あります
これは、「完全にわかったとき」と、「何を聞いてよいかわからない」ときのどちらか
です。
しかし、OJTリーダーの多くは、「完全にわかった」という理解をしてしまい、結果的
に後者であった場合 部下は仕事を進められないといったことが起こります
に後者であった場合、部下は仕事を進められないといったことが起こります。
わからないことを部下に言わせるのではなく、OJTリーダーのほうから「○○は大
丈夫?」というように、心配だと思うことを確認をするだけでずいぶん違います。
ホウレンソウはOJTリーダーにとって待ちの姿勢と思われがちですが、こちらから
攻めていくというのも大事なのです。
攻めていくというのも大事なのです
68
「ホウレンソウ」を徹底するためのルールとは?
◎押さえておこう、部下にありがちな行動パターン
③ 悪先良後
部下は、よい情報は先に言ってきますが、悪い情報は
後回しになりがちです ひどいときには報告すらせず
後回しになりがちです。ひどいときには報告すらせず
にうやむやにしてしまい、後々大きな問題になることも
あります。
しかし OJTリ ダ にと ては 悪い情報ほど早く先
しかし、OJTリーダーにとっては、悪い情報ほど早く先
に知る必要があり、よい情報はあとでもよいのです。
部下が良い情報を早く知らせたい気持ちはわかります
が、OJTリーダーは「悪い情報ほど早く伝える」ことを
ルールしておくことが大切です。
部下がもってくる悪い情報に対し 否定や怒りではな
部下がもってくる悪い情報に対し、否定や怒りではな
く、前向きな対処をするようにすると、部下も報告しや
すくなります。
部下・後輩のホウレンソウを、ただ待っているのはトラブ
ルのもと。自分のほう
ルのもと。自分
のもと 自分のほう
自分のほうから
からフォローすることも忘れない
からフォローすることも
する とも忘れない
とも忘れない。
忘れない。
69
OJTリーダーのほうからもたずねてあげよう
OJT
リーダーのほうからもたずねてあげよう
・・・・・・
何か、
わからない
ことない?
OJTリーダー
部下・後輩
部下・後輩
後輩
後輩は、実際にやってみても
「何がわからないかがわからない」ことが多い
す
すみません・・・
○○○って
なんでしたっけ?
○○○は
大丈夫そう?
OJTリーダー
部下・後輩
部下・後輩
後輩
こちらから質問してあげると、自分が
分かっていなかったことに気づくことができる
分かっていなかった
とに気 く とができる
70
口頭指示のみではなく、マニュアル
口頭指示のみではなく、
マニュアルを
を用意する
◎マニュアルの特長は「時間の節約」と「仕事の品質の維持」
部下や後輩に仕事を教えるとき、口頭で伝えるのは、すぐにできることです。
しかし、教えてもらうほうはとても大変です。言われることをいちいちメモをとり
ながら教えてもらっていたら わずか1分の作業でさえ 数分の時間が必要に
ながら教えてもらっていたら、わずか1分の作業でさえ、数分の時間が必要に
なってしまいます。
時間はとても大切な資源です。限りある資源を有効に活用するためには、極
力省ける部分を省き、効率的に進めなければなりません。
そこで重要な役割を担うのが「マニュアル」です。
マニュアルには、図があり、文字があり、フローがあります。
いちいちノートにメモしていたらかなりの時間が必要なことを
いちいちノ
トにメモしていたらかなりの時間が必要なことを、瞬間的に部下に
瞬間的に部下に
渡すことができる、効果的なOJTツールです。それをもとに説明をしていくだけ
で、大幅に効率が上がります。
また、マニュアルには、仕事の品質を維持するという、もうひとつの大きなメ
リットがあります。
場
場
、
定
あなたが教えた場合とあなた以外の人が教えた場合で、伝える内容を一定に
保つことができるのです。それによって、いつ誰が何をやっても、一定の仕事
の品質を維持することができるのです。
しかも、一度つくったマニュアルは、内容が陳腐化しない限りは何度でも使え
るのですから こんなに便利なものはありません
るのですから、こんなに便利なものはありません。
71
口頭指示のみではなく、マニュアル
口頭指示のみではなく、
マニュアルを
を用意する
◎効率のよいマニュアルの作り方とは?
もしもあなたの職場にマニュアルが一切ないのであれば、すぐにでもつくること
をお勧めします。
しかし、マニュアルづくりに完璧を求めたら、目の前の部下のOJTは進みませ
ん。
そこで、おすすめのマニュアル作成方法を2つご紹介します。
ひとつ目は「徐々によいものに仕上げる」方法です。
OJTのために最低限必要な大雑把なマニュアルをつくって、使いながら進化さ
せていきます。部下に指導することが先決なので 最初から丁寧につくりこむ
せていきます。部下に指導することが先決なので、最初から丁寧につくりこむ
必要はありません。今は不十分でも、OJTの過程でより良いマニュアルに近づ
けていくことが将来の後輩への準備になるのです。
もうひとつの方法は、「部下自信にマニュアルをつくらせる」方法です。
OJTリーダーは、口頭や、まとまっていない資料などをもとに部下に仕事を教え
ます。その際、必要なことは部下がメモを取りますので、少々時間がかかるの
、
、
は覚悟してください。
覚悟
くだ
仕事を咀嚼し、覚えてマニュアルをつくるとなると、部下の仕事の習熟度は格
段に上がります。教わる立場の人間が教える立場になると、成長は早いもの
です。
です
72
マニュアルづくりを
マニュアルづくり
をOJT
OJTに取り入れることもできる
に取り入れることもできる
<マニュアルの特長>
z 教える時間を節約できる
z 誰が教えても仕事の品質を一定に保てる
<マニュアルのつくり方>
<マニ
アルのつくり方>
① OJTを進めながら、少しずつつくっていく
② OJTを進めながら、後輩につくらせる
「人に教える」というスタンスで書くため、仕事
の内容をしっかり整理でき、習熟度が格段に
上がる!
が
73
口頭指示のみではなく、マニュアルを用意する
◎「業務の改善」と「マニュアルの進化」は2つで1つ
仕事に変化はつきものですし、やり方を見直したりすることもありますので、マニュアル
は一度つくればずっと使い続けられるというものではありません。同じマニュアルが何
年も通用するというのは、ルーチンワーク以外では難しいでしょう。
通常は、環境の変化や、社内システムの変化、会社の方針の変化等により、マニュア
常
境 変
社
変
会社 方針 変 等
ルにもその都度改善が必要になります。
先に紹介したように、後輩自身がマニュアルを作る場合は、自発的に改善点を発見で
きるという効果があります。マニュアルが毎年進化すると 業務も改善され 一石二鳥
きるという効果があります。マニュアルが毎年進化すると、業務も改善され、
石二鳥
です。
なお、マニュアルの完成度が高くなると、「OJTリーダーは不要なのか?」ということを聞
かれることがありますが、現実的にマニュアルだけを渡されて仕事ができるということは、
極めて稀であるとお考えいただければいいと思います。
極めて稀であるとお考えいただければいいと思います
たとえば、あなたがしっかり業務をマニュアル化したとして、今日付で退職した場合、明
日から誰も困ることなく業務が進むとはとても思えません。
問題なく業務を続けるには、必ず引継ぎ期間が必要なはずです。
それと同様に、後輩にマニュアルだけ渡して、「自分でやって」と言ってもできるもので
はありません。
技術や知識、ノウハウ・・・・・・すべては人から人へ伝承されるものなのです。
あくまで、直接指導が「主」、マニュアルは「従」です。
マニュアルは、つくる過程も、それ自体もOJTの効率化に役立つ。
マニュアルは、つくる過程も、それ自体もOJT
の効率化に役立つ。
すでに
すで
に職場
職場に
にある場合
ある場合も
ある場合も、
も よりよいものに改善していこう。
も、よりよいものに改善して
よりよいものに改善してい
よりよいものに改善して
い う
いこう。
74
いつまでも「お手伝い」をさせておくことのリスク
いつまでも「お手伝い」をさせておくことのリスク
◎忙しいOJT
◎忙しい
OJTリーダーによくある「指示のミス」とは?
リーダーによくある「指示のミス」とは?
ある知り合いが人事という仕事に移ってからの仕事です。
彼がはじめてOJTリーダーとして後輩指導する立場になったときの話です。
人事の仕事には様々なものがありますが
人事の仕事には様々なものがありますが、一般の方が一番身近でわかりやす
般の方が 番身近でわかりやす
いのは、「人事異動」ではないでしょうか。人事異動というのは、部門長から提
案されてきた異動案件に対し、調整や判断を行い最終的な決裁をする仕事で
す。
あるとき、部門から申請された異動案件を確認し、とくに問題もなく必要な調整
を終えた私は、後輩に「人事異動起案」の作成を指示しました。
書類 作成 以前 も経験さ
書類の作成は以前にも経験させたことがあり、今回も問題なくできたので、続
あり、今回も問題なく
、続
けて人事部長に承認をもらってくる要素の後輩に指示しました。
「承認をもらってくる」というのは、その後輩にとって初めてのことでした。
書類
書類づくりだけでなく、その後のことまで経験させようと思い、意図的に指示を
り
、そ 後
経験
う
、
指 を
したのです。
しかし、人事部長のもとから帰ってきた後輩の起案書には、部長の印鑑は押さ
れておらず、暗い表情で戻ってきてこう言いました。
「
「承認もらえませんでした。人事マン失格だって・・・・・・」
も
事
格だ
ひどいこと言うなぁと思ったのですが、あとからよくよく聞いてみると、人事部長
が「人事マン失格」といったのは、後輩に対してではなく、彼に対してだったの
です。
です
75
いつまでも「お手伝い」をさせておくことのリスク
いつまでも「お手伝い」をさせておくことのリスク
◎「作業だけを任せる」という間違い
このとき、この後輩は、「部長、○○部の○○さんですが、〇〇課から〇〇課への異動
申請が来ておりますので決裁をお願いします」と承認を求めたそうです。すると・・・・・・
「異動の理由は何?」
「後任は必要ないの?」
「〇〇さんはどんな仕事をしていて どんな仕事に変わるの?」
「〇〇さんはどんな仕事をしていて、どんな仕事に変わるの?」
「〇〇さんというのは、昨年異動したばかりだけどなぜ頻繁な異動があるの?」
「モチベーションにも影響するでしょ?どうやって動機づけするの?」
「そもそも本当に必要な異動なの?」
「〇〇さんの評価は高いの?低いの?」
「上司の好き嫌いで動かされていない?」
と部長から質問攻めにあい、その後輩はまったく答えられなかったのです。
さらには、
「現場から言われたことを事務的に作業していたら、何のために人事はいるの?」
「上司の彼からは何の説明もなく、言われてきただけか?まったく人事マン失格だな」
と追い打ちをかけられ、しょんぼりと彼のところに戻ってきたというわけでした。
76
いつまでも「お手伝い」をさせておくことのリスク
いつまでも「お手伝い」をさせておくことのリスク
◎説明するということは「責任をもたせる」ということ
人事異動を検討する際には、「その案件に問題が潜んでいないか」「事業戦略上必要
性はあるのか」といった確認をはじめ、個人の事情、職場の問題や課題解決、モチベー
ションへの配慮、人材育成、人件費・・・・・・等、様々な角度からの判断が求められます。
今回の人事異動の判断理由を、きちんと後輩に伝えないまま人事部長のもとへ行かせ
た私のミスでした。
人事異動の実務面のことばかり教えて、本質的なことに対する後輩への指導が抜け落
ちていたのです。
ちていたのです
部下や後輩は、OJTリーダーのアシスタントや小間使いではありません。遠からず自立
した社員として活躍してもらわなければならない存在です。
OJTリーダーはそのような心構えのもと、業務指示を行うことが必要なのです。
リ ダ
そ
うな心構
も 、業務指示を行う
必要な
す。
また、後輩自身にも「言われたことだけをやる」という姿勢から脱却してもらう必要があ
ります。
前にも述べましたが こちらの指示不足や疑問点があれば 必ずその都度確認するよ
前にも述べましたが、こちらの指示不足や疑問点があれば、必ずその都度確認するよ
うに日常から指導をしていかなければなりません。
そうしなければ、問題が起きたとき「私は言われたことはやりました、だから私の責任で
はないです」というような、「言われたことをやる=仕事」という感覚になってしまい、いつ
な
す」
うような、 言われ
をやる 仕事」
う感覚 な
ま 、
になっても自立できなくなってしまうのです。
「言われたことをやる=仕事」の感覚が定着すると、自立が難しくなる。
本人にも仕事の経緯をきちんと理解させよう。
本人にも仕事の経緯をきちんと理解させよう
77
「自分で答えを出させる」と本人の納得感が大きい
◎「あえて指示を出さない」のも有効
私が以前新入社員を指導していた時の話です。ある新入社員が、入社1ヶ月
でこんな相談をしてきました。
「実は相談があるんですけど」
「おぉ、なんだい?」
「実は会社を辞めたいと思って・・・・・・」
「会社を辞めたいの?」
「そうなんです。実は同期の仲間とうまくやっていけなくて」
「そうか、同期との仲がうまくいかないんだ?」
「私はとくに誰が苦手とかないんですけど 周りから避けられてるような気がす
「私はとくに誰が苦手とかないんですけど、周りから避けられてるような気がす
るんです・・・・・・」
「自分では嫌いな人はいないのに、避けられてる?」
「こ ちから声をかければ話はできるんですけど みんなから声をかけてはき
「こっちから声をかければ話はできるんですけど、みんなから声をかけてはき
てくれないんです」
「そっか、自分では声をかけようと頑張ってはいるんだ?」
だいたいここまでで事情は飲み込めました。そして本人の辞める決意はかなり
固まっていることも伝わってきました。
さて こうい たとき OJTリ ダ はどんな反応をしたらいいのでしょうか
さて、こういったとき、OJTリーダーはどんな反応をしたらいいのでしょうか。
78
「自分で答えを出させる」と本人の納得感が大きい
◎「ただ聴く」のプロセスでホンネを引き出してあげよう
この場面で、私がとった行動は、相手の話を聴くことだけです。
一切こちらの意見を言わず、うなずきや相づち、オウム返しなどで相手が話し
やすい雰囲気をキ プしながら ただ聴く
やすい雰囲気をキープしながら、ただ聴く。
すると・・・・・・相手はドンドンこちらに信頼を寄せてきます。そうするうちに、ホ
ンネが吐き出されてくるのです。そうなってきたら、はじめてこちらから話しかけ
ます それも意見を言うのではなく 質問をするだけです
ます。それも意見を言うのではなく、質問をするだけです。
「じゃあ、周りから自分が受け入れられてないってことかな?」
「受け入れられていないかどうかはわからないんですけど
「受け入れられていないかどうかはわからないんですけど・・・・・・」
」
「それは、自分が感じているだけで、事実かどうかはわからない?」
「たしかにそうですね」
「
「自分としてはまだ改善しようというアクションは起こしてないんだ?」
善
「はい、そうですね。まだ何もしていませんでした。ただ逃げたかったのかも」
「今ここから逃げたら、次のところでうまくいくと思う?」
「もしかしたら同じかもしれませんね」
「だよね?」
「はい」
はい」
79
「自分で答えを出させる」と本人の納得感が大きい
◎「ただ聴く」のプロセスでホンネを引き出してあげよう
この時の新入社員は、ちょっとした質問をするだけで、自分が
今やるべきことを自分で見つけてくれました。私から何か指示
をしたわけではありません。
をしたわけではありません
これは、「ひたすら話を聴く」というプロセスで、二人の間に信
頼関係ができていたからだと思います。信頼関係のないところ
で指示をしても反発しか生まれませんし 本人から解決策を引
で指示をしても反発しか生まれませんし、本人から解決策を引
き出すこともできなかったでしょう。
「実は現状から逃げたかっただけ」というホンネは 自分でさえ
「実は現状から逃げたかっただけ」というホンネは、自分でさえ
気づかなかったり、人には言いたくないことだったと思います。
しかし、彼は自ら気づき、正直に私に打ち明けることですごくラ
クにな たようです
クになったようです。
当然会社を辞めることもなく、少し時間はかかりましたが、同期
の関係も良好なもの な たのです。
との関係も良好なものとなったのです。
話しているうちに、自分の本心が見えてきたり、考えがまとま
ることは多いもの その手伝いをしてあげよう
ることは多いもの。その手伝いをしてあげよう。
80
スムーズに人が育つ
ズ
「モチベーション管理」
の極意
81
「いろいろ吸収して成長したい!」の落とし穴
◎もともと、誰もが成長したいと願っている
採用活動における学生を見ていると、多くの学生は「自己成
長」に対し非常に貪欲であると感じます。
それは単に就活のための ではなく 今の就活生や新入社員
それは単に就活のためのPRではなく、今の就活生や新入社員
世代は、物心着いた時にはバブルが崩壊し、苦しい経済状況
の中で必死に自分たちを育ててくれた親を見て る世代だか
の中で必死に自分たちを育ててくれた親を見ている世代だか
らです。
幼い頃から塾に通わされ、「勉強しなければ将来苦労する」と
教え込まれてきた世代ですから 競争の厳しい中で生き残る
教え込まれてきた世代ですから、競争の厳しい中で生き残る
唯一の手段が自己の成長にあると感じているのです。
したがって、新入社員として入社したときには、基本的に会社
が
がモチベーションを上げる努力をしなくても、高いモチベーショ
げ
ンをもっているのです。あなたの指導する部下や後輩も、きっ
と「いろいろ吸収して、成長したい!」と願っているはずです。
ろ ろ吸収して、成長した
」 願 て るはずです。
しかし、新入社員研修やOJTの中で、そのモチベーションを維
持、もしくはさらに上げる働きかけをしなければ、当然、どんな
新入社員でもモチベーションは落ちてきます。
新入社員でもモチベーションは落ちてきます
82
「いろいろ吸収して成長したい!」の落とし穴
◎会社が望む成長と、本人が望む成長は必ずしも一致しない
当然ながら、新入社員が望む成長の方向性と、会社が後輩に求める成長の
方向性が、大きく異なっていてはいけません。
OJTは本人が望む能力をつけていくのではなく、会社が必要とする能力をいか
に身につけさせ 戦力化し 企業の成長に結びつけるかが重要なのです
に身につけさせ、戦力化し、企業の成長に結びつけるかが重要なのです。
自己の成長に貪欲なことはけっして悪いことではありませんが、会社の求める
能力を理解し、そこに向かって能力向上したいと思うモチベーションが必要で
す。
そのためには、最初に大事なことを伝えておく必要があります。
それは、「会社は学校ではない」ということです。
自らの能力を発揮し、そこから生み出される結果によって企業の利益や成長
につながるから、自分の給与がでるのです。
好きなことを極めても 利益にならなければ 企業で働く以上そこに価値はな
好きなことを極めても、利益にならなければ、企業で働く以上そこに価値はな
いということです。
少々極端かもしれませんが、あなたが後輩に身につけて欲しい能力と、後輩
が身につけたい能力にギャップがあると、モチベ ションは下がっていくばかり
が身につけたい能力にギャップがあると、モチベーションは下がっていくばかり
です。
会社が社員を育てるいちばんの目的は「利益」を出すこと。まずは、稼げる社
員にならなければ意味がないことを伝えよう。
83
「本人の自己実現
本人の自己実現」」と「現実
と「現実」」のギャップをどうする
のギャップをどうするか
か?
◎新入社員ならではの不安や悩み
仕事を始めると、思った以上に大変なことや辛いこと、面倒なこと、いく
つもの壁にぶつかるときがきます。
もの壁にぶ かるときがきます
新入社員の高かったモチベーションが落ちていくのは、そんなときです。
「自分はこんな仕事がしたくて入社したわけではないのに」
「この仕事は自分には向いていないのかもしれない」
「こんなことば かりや ていて 成長できるのだろうか?」
「こんなことばっかりやっていて、成長できるのだろうか?」
あなた自身もこれまで経験してきていると思いますが、仕事をしていれ
あ
自身
経験
す 、仕事を
ば順調なことばかりではありません。むしろ順調ではないことのほうが
多いのではないでしょうか?
、
続
そのたびにモチベーションを落としていたら、仕事は続きません。
ですから最初に、「仕事はラクではない」ということを教え、十分に理解
させておく必要があります。
84
「何のために働くのか」
何のために働くのか」の価値観
の価値観を
を押しつけない
◎モチベーションの源泉は人によっていろいろ
「部下のモチベーションを上げる」と言っても、そのノウハウはひと言ふた言で
終わる話ではありません。
そこで 「モチベ シ ンの源泉がどこにあるのか」を理解すると あなたの部
そこで、「モチベーションの源泉がどこにあるのか」を理解すると、あなたの部
下がどんな言葉に動機づけられるのかが見えやすくなります。
「マズローの5段階欲求」というのを、ご存知の方も多いと思います。人間が生
きていく上で満たしたいと感じる欲求には5段階あるというものです。
きていく上で満たしたいと感じる欲求には5段階あるというものです
それが仕事にどう絡むのかと思われるかもしれませんが、簡単に説明します。
第1段階は、生きる上で最低限必要な「生きたい」という「生存欲求」です。
それが満たされると 第2段階として「生き続けたい」という「安全欲求」がわい
それが満たされると、第2段階として「生き続けたい」という「安全欲求」がわい
てきます。
安全が確保されれば、第3段階として、誰かと一緒にいたいという「所属欲求」
がわいてきます。
がわいてきます
所属することができたら、第4段階としてそのなかで認められたいという「承認
欲求」がわいてきます。
周囲から認められると 最終段階として 自分がやりたいことをやるための「自
周囲から認められると、最終段階として、自分がやりたいことをやるための「自
己実現」を目指したくなるのです。
これがマズロ の5段階欲求です。
これがマズローの5段階欲求です。
85
「何のために働くのか」
何のために働くのか」の価値観
の価値観を
を押しつけない
◎ピントのずれた叱咤・激励はスルーされるだけ
マズローは、生きていくうえでの欲求全般について語っているのですが、私はこの欲求は「何のために働
くのか?」ということに通じると考えています。
働く理由は、その人の欲求がどこにあるかによって変わってきます。
ですから 一律に「従業員は○○のために働くべきだ」と決めつけてしまうと 部下のモチベ ションをあ
ですから、一律に「従業員は○○のために働くべきだ」と決めつけてしまうと、部下のモチベーションをあ
げようと思ってかけた言葉が、まったくヒットしないということもありえるのです。
5段階欲求のどの段階にいるかによって、その人の「働く理由」というのは変わってきます。たとえば、次
のような理由があります。
「生存欲求」
「安全欲求」
「所属欲求」
「承認欲求」
「自己実現」
お金のため、生活のため、食べるため など
生活を維持するため(物欲なども含まれる) など
家族のため、仲間のため、顧客のため など
地位のため 名誉のため 人から感謝されるため など
地位のため、名誉のため、人から感謝されるため
やりたいことをやるため、新しいことに挑戦するため など
たとえば、他人に認められたいと思っている部下に対し、「そんなことじゃ給料あがらないぞ!」などと声
をかけても ま たくモチベ ションにプラスにはなりません
をかけても、まったくモチベーションにプラスにはなりません。
生活が苦しい人に「お客様のために頑張ろう!」と言っても、「その前に自分の生活が心配だ」とピンと来
ないのです。
何のために働くのが正しいのかは、ここでは関係ないのです。
何のために働くのが正しいのかは
ここでは関係ないのです
本人が今どの段階にあり、どのように感じているのか?
それに合わせた声のかけ方があるということです。
働く目的に正義はない。OJT
働く目的に正義はない。
OJTリーダーの励ましに反応がなくても、やる気がないとは限らない。
リーダーの励ましに反応がなくても、やる気がないとは限らない。
86
人によって
人に
よってモチベーションの源泉
モチベーションの源泉は
はさまざま
同期で
いちばんになって
認められたい
頑張って
頑張
て
給与をあげて
もらいたい
お世話になった
○○さんに
喜んでもらいたい
希望の仕事に
チャレンジさせて
もらいたい
早くスキルを
身につけて
独立したい
「認められたいと」思っている人に給料の話をしてもピンとこない。
叱咤・激励は、相手の働く目的を見極めてからのほうが無難。
87
責任回避のための 優しさ は、極力控えよう
責任回避のための
◎部下の「充実感」を軽視していませんか?
働く上でのやりがいや、モチベーションの源泉のひとつに、
「仕事の充実感」が挙げられます。この「充実感」とは、ど
んなときに起こるのでしょうか?
• 自分の仕事の意味を知ったとき
• 自分が社会のなかで必要とされたとき
• 上司やお客様にほめられたとき
• 難しい仕事をやり遂げたとき
• 失敗を取り返したとき
・・・・・・などなど。
ところが多くのOJTリーダーは、この充実感というものを軽
視し、結果的に部下からやりがいを奪い、モチベーション
を落としてしま ています
を落としてしまっています。
88
責任回避のための 優しさ は、極力控えよう
責任回避のための
◎「面倒見がいい」のもほどほどに
たとえば、部下や後輩に、細分化された仕事のひとつについてやり方を教えることは
あっても、その仕事が他にどのような影響をもつのか、お客様に届くときにどのようなメ
リットをもたらすのか、といったことを話さないままになっていないでしょうか。
淡 と作業を なし
淡々と作業をこなしているだけでは、仕事の面白みはわかりません。
るだけ は 仕事 面白みはわかりません
また、少し難しい仕事を与える際、OJTリーダーは効率を重視して、つい1から10まで手
取り足取りし道士がちです。それだと、後輩は苦労することがないため、結果が出てい
ても充実感を感じることはできません。
OJTリーダーは、自分が責任をとらないで済むように、つい後輩に失敗をさせない優しい
指導ばかり行うことがあるものです。
しかし、それは部下や後輩から失敗という貴重な経験を奪い、そこから挽回するという
経験も奪うのです。
経験も奪うのです
このように、OJTリーダーが普段何気なく行っている指導が、部下や後輩から「仕事の充
実感」というモチベーションの源泉を奪ってしまっていることが少なくありません。その結
果、離職していく人が後を絶たないわけです。
「自分の仕事は、社会やお客様にどのように貢献しているんだろう?」
「がんばろうにも、結局組織の歯車の一つという扱いしかしてもらえない」
そんなふうに感じさせないために、OJTリーダーは配慮する必要があるのです。
部下や後輩は、結果さえ出れば満足するわけではない。たとえ失敗しても、「自分の力
でや た経験 を欲している
でやった経験」を欲している。
89
「部下への評価」を本人に納得してもらうコツ
◎勝手に能力を決めつけると反感をかってしまう
部下の能力を把握することは非常に大事です。
部下を成長させたいと考えるならば、現状を把握し、目標とのギャップを明確にし、それ
を埋めていくことが王道です。
を埋めていくことが王道です
ただし、「いま、目の前にいる部下は、何ができて何ができないのか」を、OJTリーダーで
あるあなたや、OJT責任者が一方的に決めるのは避けるべきです。
仮にあなたが できない」と思っていても、本人が できる」と思っているなら、それは事
仮にあなたが「できない」と思っていても、本人が「できる」と思っているなら、それは事
実に関係なく、反発を生みます。
部下の能力を評価するときには、部下自身の納得が必要なのです。
私自身、OJTリーダーとしてAくんという後輩に仕事を任せるときに、次のようなことがあ
りました。
りました
そのときの職場には、Aくんの同期入社のBくんがいました。
Bくんには私とは別のOJTリーダーがいて、当然まったく同じ教え方をするわけではあり
ません 2人は良い意味でライバルで 互いに成長を意識し 競い合うという良い環境
ません。2人は良い意味でライバルで、互いに成長を意識し、競い合うという良い環境
がありました。
あるときBくんは、協力会社に対する作業指導を任されることになり、初めて一人で協力
会社に行くことになりました。協力会社にひとりで作業指導に行くということは、そのこと
に関しては「 人前と認められた」ということです
に関しては「一人前と認められた」ということです。
少なからず何らかの権限が与えられるわけですから、ある意味、会社の代表選手とし
ていくわけです。
それを見たAくんは、 先を越された」という思いでとても悔しがっていました。
それを見たAくんは、「先を越された」という思いでとても悔しがっていました。
90
「部下への評価」を本人に納得してもらうコツ
◎「何ができないとダメか」を具体的に知らせよう
当然、Aくんは悔しそうに私に訴えてきました。
「僕にだってできます!行かせてください!!」
私はその時点で Aくんに任せるには もう少し勉強させなければならないことがあると考えていました
私はその時点で、Aくんに任せるには、もう少し勉強させなければならないことがあると考えていました。
しかし、一方的に「Aくんにはまだムリだよ」と決めつけては、Aくんのモチベーションは下がってしまうで
しょう。なにしろ、ライバルに差をつけられようかというときなのです。
ここは、OJTリーダーとして丁寧に後輩と話し合わなければならないシーンです。
私は、「まずは社内の現場に対し、ひとりで対応できるようになるまで待て」と言いました。そのためには、
具体的に何と何ができないとダメということも話しました。
さらに、「いつまでに○○ができるようになろう」とか、「来月には任せたいと思うから、まず○○と○○を
さら
「
ま
が きる う な う とか 「来
任 た と うから まず
と
を
頑張ろう」というように、期限を区切って動機づけをしました。
その結果、どうにかAくんは納得してくれました。
こういうケースでは、事実も大事ですが、双方が納得しているかどうかがモチベーションに大きく影響しま
す。本人の認識を無視して「できない」と決めつけては、反発を生んでしまうのです。
ちなみにこのときのBくんは、結局ひとりで対応できないことがたくさんあり、宿題をいくつも持ちかえるこ
とにな た ちょ と厳しいデビ
とになった、ちょっと厳しいデビューでした。
でした
それも経験とする考え方もありますが、計画的、段階的なOJTの重要性も、改めて感じた出来事でした。
他者評価
他者
評価と
と自己評価
自己評価は、
は、必ず
必ずしも
しも一致
一致しない。後輩を評価するときは、根拠をハッキリ示すことが大切。
しない。後輩を評価するときは、根拠をハッキリ示すことが大切。
91
OJTリーダーのほうからもたずねてあげよう
OJT
リーダーのほうからもたずねてあげよう
不満
もうひとりで
できるのに
まだ任せる
のは不安だ
OJTリーダー
部下・後輩
部下・後輩
後輩
OJTリーダーと後輩では、後輩の実力についての
OJTリ
ダ と後輩では 後輩の実力についての
認識が食い違っていることが多い
「○○が確実にできるようになろう」
「いつまでに××ができたら、次に進もう」
OJTリーダー
部下・後輩
OJTリーダーは、「何が課題なのか」を具体的に
後輩に伝えておくと 余計なわだかまりを抱えず
後輩に伝えておくと、余計なわだかまりを抱えず
にすむ
92
部下との認識のズレ
部下との
認識のズレを
を最小限に
最小限にする
する秘訣
秘訣
◎普段の会話で、十分認識を一致させられる
前項のお話しで、OJTリーダーと後輩の、互いの意識の整合が大事だということがご理解いただけたので
はないかと思います。
では、どのように意識を合わせていくのでしょうか?
そのためにいちばんよいのは、定期的に面談を行うことです。
面談といっても、かしこまってやる必要はありません。ときどき、2人で話をする機会を設けるということで
す.
こういうと、「そんな時間はとれない!」という方も多いと思います。
う う 、 そ
時間
」
う方 多
す。
もちろん、人材育成に関する時間を「コスト」と考えるか「投資」と考えるかによって、その時間を捻出する
ことに対する評価は大きく異なります。
あなたはどちらのタイプでしょうか?
実際には、あなたがどちらのタイプであるかに関わらず、時間がつくれないこともあるものです。ひとりで
何人ものOJTを担当している場合なら、なおさらです。
それでも、お互いの意識を合わせる方法がありますので、ご安心ください。
それは、日常業務の会話のなかで、 今、後輩がどの段階まできているのか」、OJTリ ダ の認識を後
それは、日常業務の会話のなかで、「今、後輩がどの段階まできているのか」、OJTリーダーの認識を後
輩に伝えることです。
「おっ、○○ができるようになったね。じゃあ次は○○をやってみようか?」
「今回の企画は前回と比べて○○がよくなったね。あとは○○ができればもっとよくなるよ」
今回の企画は前回と比 て○○がよくなったね。あとは○○ができればもっとよくなるよ」
何ができていて、何ができていないのか、その都度、具体的に伝えていくことで、後輩との認識のズレは
最小限にできます。
こういう何気ない会話のなかで 互いの意識を合わせていくこともできるのです。
こういう何気ない会話のなかで、互いの意識を合わせていくこともできるのです。
93
部下との認識のズレ
部下との
認識のズレを
を最小限に
最小限にする
する秘訣
秘訣
◎一方的なダメ出しを避け、次のステップに進む基準を共有する
私たちは、後輩に指導するとき、どうしても「ダメ出し」ばかりになりがちです。
「ここはこうじゃない!」
「こんなレベルじゃだめだ!」
「ここと、ここと、ここが間違っているぞ!」
これはこれで、できていないことを互いに確認できるので0点ではありませんが、言い
方として納得感があるかといえば、おそらく反発のほうが強いはずです。
責めることは誰でもできますが ほめることは意外と難しいのです
責めることは誰でもできますが、ほめることは意外と難しいのです。
しかし、後輩が育っているOJTリーダーは、ほめることを忘れません。
せっかくのフィードバックも、後輩のモチベーションが下がってしまっては意味がないか
らです。
日頃から、できているところとできていないところを適切にフィードバックすること、そし
て時々・・・・・・、少なくとも3ヶ月∼6ヶ月に1回程度は面談をおこない、きちんと後輩の
能力の棚卸をすること。
この2つが、お互い納得のうえで現状のレベルを把握するためには必要です。
が お互 納得 うえ 現状
ベ を把握するため は必要 す
その面談では、すでに身についている能力があれば、次のステップに進むことをお互い
に確認し、「今後どのような業務に取り組んでいくのか」「どのように能力アップをはかっ
ていくのか」といった計画を共有します。
それによって伸ばす能力が明確になり、1段レベルを上げることができるのです。
こまめなフィ ドバックがレ ルアップのカギ。普段のコミュ ケ ションに取り入れて
こまめなフィードバックがレベルアップのカギ。普段のコミュニケーションに取り入れて
いこう。
94
認めるべきことを、公正に認めよう
認めるべきことを、
公正に認めよう
◎成果を出しても関心をもたれないのはツライ
私がCRMの仕事をやっていたときに、中途採用で入社してきた女性が
私の部下になったときのお話です。
彼女は、それまではある有名企業で営業サポートの仕事しており、即
戦力になることを期待されていました。
実際に彼女が入ってきてOJTが始まると、すでに人事の基本知識から
専門知識まで豊富にもっていて、あらためて教えることがないほどでし
た。
そんな彼女でしたから、有名企業で、それなりの処遇を受けてきた と
そんな彼女でしたから、有名企業で、それなりの処遇を受けてきたこと
は容易に想像がつきます。
私は、なぜ彼女が転職をしようと思ったのか聞いてみました。
彼女の話によると 以前の上司は好き嫌いが激しく 同じような仕事を
彼女の話によると、以前の上司は好き嫌いが激しく、同じような仕事を
しても、評価されるのはいつも有名大学を卒業した同期の男性ばかり
だったそうです。
努力してもほとんど顧みられることのなかった彼女は やがて 営業サ
努力してもほとんど顧みられることのなかった彼女は、やがて、営業サ
ポートの仕事というやりたいことをやれる環境にありながらもモチベー
ションを落としてしまい、「このままここにいたら自分はダメになる」と
思って転職を決意したそうです。
95
認めるべきことを、公正に認めよう
認めるべきことを、
公正に認めよう
◎「あなたのために働きたい」と思ってくれる接し方
OJTリーダーにとって、簡単そうでなかなかできないのが「後輩をほめる」ということです。
リ ダ 自身も忙し ので、何かに けてイチイチほめると う発想が出てきにく のもわかりますし、
OJTリーダー自身も忙しいので、何かにつけてイチイチほめるという発想が出てきにくいのもわかりますし、
感情的な問題でほめやすい後輩とそうでない後輩もいると思います。
しかし、後輩のモチベーションを上げるうえでもっとも重要な要素が、「日常の中で小さなことでもほめて
あげること」、そして「成果に対しきちんと評価してあげること」なのです。
ほめたからといって、わかりやすく喜ぶ後輩ばかりではないかもしれませんが、これは真理です。
私はもともと現場経験が長かったため、当時、人事の専門知識については彼女のほうが多く持っていた
と思います。実際に、仕事を通じて彼女に助けられることは、たくさんありました。
ですから、自然に彼女に対し、
「ありがとう、助かったよ」
「〇〇さんのおかげだよ」
「〇〇さんがいてくれてよかった」
というように、日常会話のなかでほめたり、ねぎらったり、感謝を伝えることが多くなりました.
そのせいか彼女はイキイキと働いてくれ、周囲からの評価も高くなり、徐々に社内での信頼も厚くなって、
いろんな部署から頼られる存在へと成長していきました.
いろんな部署から頼られる存在へと成長していきました
人に認められるということは、「その人のために働きたい」とか、「もっと頑張ろう」という、モチベーションに
大きく影響するのです。
認められることは 仕事への最大の報酬 「ほめる」「ねぎらう」「感謝する」をルール化しよう
認められることは、仕事への最大の報酬。「ほめる」「ねぎらう」「感謝する」をル
ル化しよう。
96
組織からの評価
組織からの
評価に、疑問があるときの対処法
に、疑問があるときの対処法
◎「正当に評価してくれる会社かどうか」は気がかりなところ
「認める」という行為がモチベーションに大きく影響するのは、何もOJTリーダーと部下の
間だけの話ではありません。
所属している組織が正当に努力や成果を評価してくれるかどうかは、従業員にとって
最大の関心事です。
最大の関心事です
まして、社会人になりたての新人にとっては、「組織への信頼感」という、仕事の根本に
関わる問題と言っていいでしょう。
これは、私が初めてOJTリーダーとして後輩の育成をしていたときの話です。
その会社では、「原価低減プロジェクト」といって、各部門がそれぞれの役割のなかで、
コストを下げる努力をしていました。
その一つに資材部という部品の調達を行う部門があり、そこでは購入先の部品メー
カーと価格交渉をし、購入価格を下げる活動をしていました。
しかし、先方の部品メーカーも言われるままに価格を下げていては利益が出なくなりま
す。価格を下げるには どこかでコストを下げないといけません。
す。価格を下げるには、どこかでコストを下げないといけません。
そこで、今度は生産技術との協力が必要になってきました。部品調達のコストを下げる
ためのノウハウも資材部よりは豊富にあったのでした。
技術部門へ最良の変更を提案したり、部品を加工しやすい形状に変更する提案をした
り、寸法精度の緩和をしたりと、様々な支援をおこない、部品メーカーと協力してコスト
精度 緩 を
様 な支援を
な
部
協
を下げていくわけです。
もちろんそれらのプロセスを通じ、後輩にコストダウンのためのノウハウを指導していき
ます。この活動を通じ 後輩は確実に知識と経験を積み重ね たくさんのノウハウを身
ます。この活動を通じ、後輩は確実に知識と経験を積み重ね、たくさんのノウハウを身
につけて成長していきました。
97
組織からの評価
組織からの
評価に、疑問があるときの対処法
に、疑問があるときの対処法
◎ときには会社への働きかけが必要なこともある
ところが、このコストダウンを実現したという成果に対し、評価を受けたのは資材部だけでした。
トータルで何百万、何千万のコストダウンの成果は、資材部の価格交渉による成果として、会社から表彰されたのです。
そのことを知った後輩は、当然不満をもち、私こう言ってきました。
「〇〇さん、あの部品価格を下げるたのは、部品メーカーとおれたちじゃないんですか?なぜ、資材部が表彰されている
んですか?」
後輩が言うことはもっともでした。
自分たちが知恵を出し 手間をかけ 部品メーカーと一緒になって達成した成果です
自分たちが知恵を出し、手間をかけ、部品メーカーと一緒になって達成した成果です。
それが第三者の成果とされ、自分たちは誰にも認められないのですから、後輩はもちろん部門のモチベーションは急速
に下がっていきました。
こんなとき、OJTリーダーはどうしたらいいのでしょうか?
私たちの場合は、会社に「誰が何をしたのか」「コストダウンが可能になった経緯」を説明し、正当に評価してもらえるよう
に自分たちのほうから働きかけました。「表彰の基準」を厳密に見直してもらったのです。
この試みはうまくいって、部門の努力も認められ、後輩もやる気を取り戻して以前にまして積極的に改善活動に取り組む
ようになりました。
OJTリ ダ にとって、後輩のモチ
OJTリーダーにとって、後輩のモチベーションを上げることは大切な役割です。
ションを上げることは大切な役割です。
しかし、問題によっては後輩に対する働きかけでは解決しない場合もあります。
この事件で、もし私が、
「これは会社の制度だから仕方がないんだ。それでも自分たちの成果は会社に確実にプラスになっているのだから、〇
〇くんの力は会社に必要とされているのはわかるよね」
などと言 ても 後輩は内心ではま たく納得できないでし う
などと言っても、後輩は内心ではまったく納得できないでしょう。
OJTリーダーは、後輩と組織をつなぐ役割も担っています。
ここぞというときには、後輩のために、上司や会社に対して改善の提案をしたりすることも、OJTの一環として求められる
のです。
会社の認識に納得いかない点や誤解があるときは、早めにスッキリさせたほうがダメージは少ない。
98
社内のローカルルールとの付き合い方
社内のローカルルールとの付き合い方
◎会社の「暗黙のルール」をどう説明するか
会社で働いていると、多くの人がおかしいと思っている「暗黙のルール」
というのが結構あります。
勤務時間中に自由に離籍して何十分もタバコを吸いに行く人がいる
勤務時間中に自由に離籍して何十分もタバコを吸いに行く人がいる一
方、上司の方針や職務の性質上昼休み以外は席を離れられない人が
いる。
誰かが強制しているわけではないが 忘年会はいかないとまずいとい
誰かが強制しているわけではないが、忘年会はいかないとまずいとい
う雰囲気がある。
なぜかお客様にお茶を出すのは女性の役割になっている。
・・・・・・などなど。
・・・・・・などなど
入社時の新入社員教育で学んだことと、実態が全く逆のことがあるの
です。
配属された新入社員は、その現実を知ったら、少なからずショックを受
属された新 社員は そ 現実を知 たら 少なからず
クを受
けるはずです。
こういう不合理なことや不公平なことは、必ず新人の目につきます。間
違いなく、同期の仲間や、学生時代の友人たちとの間で話題になるで
しょう。
、
場
、 場
そして、ほかの職場と比較が始まったとき、職場への不信感が芽生え
るのです。
す
99
社内のローカルルールとの付き合い方
社内のローカルルールとの付き合い方
◎「空気を読め」などと言って適当にごまかさない
こういうときにOJTリーダーが、「おまえも社会人なんだから、空気を読めるようにならないとダメだ」などと
言っては、後輩のモチベーションは上がりません。
OJTリーダーは何が正しいのかを正確に伝えることが重要です。そのうえで実態を見て、なぜそうなのか
をきちんと伝えるのです。
ときには、後輩が先入観から誤った見方をしている場合もあります。
たとえばお客さへのお茶出しなどはよい例です。
「うちの職場ではどうしてお茶出しは女性の仕事なんですか?」
「たしかに実態として女性がいれることが多く見えるかもしれないけど 決して女性の仕事としてお願いし
「たしかに実態として女性がいれることが多く見えるかもしれないけど、決して女性の仕事としてお願いし
ているわけじゃないんだよ。
そのときに手が空いている人や、お茶を入れるのが上手な人・・・・・・そういう理由でその人に頼んでいる
のであって、男性に頼むことだってあるし、私も手が空いていればお茶を入れたりもするんだよ」
これが事実であれば、そのまま伝えるといいでしょう。
しかし、そうでない場合は、素直に事実を認め改善するという動きを、OJTリーダーとしてとる必要があり
ます。
「そうなんだよ。みんな男女平等とはわかっていても、昔からのル
「そうなんだよ
みんな男女平等とはわかっていても 昔からのルールだと思ってる人もいるみたいなん
ルだと思ってる人もいるみたいなん
だ。次回のグループ会議の場で部長に話をしてみようと思う」
それでも改善されない場合は、OJTリーダーとその後輩との間で「自分たちは正しいことをやろう」という約
束をすることです。
ただし、長年の慣習から、女性の後輩が誰かに頼まれることも出てくるでしょう。そのときは、後輩の手が
空いていたら手伝ってもらうということも約束しておきます。
女性だからという理由ではなく、あくまでも「手が空いていたら」という理由で受けてもらうのです。これが
ないと、職場の中の空気を乱すことになりますで。
新人の視点で職場の問題を指摘してもらうのは、いいことでもある。できる限り誠実に対応してあげよう。
100
新人との「経験の
新人との「
経験の差」を
差」をどうやって埋めるか
どうやって埋めるか
◎「今どきの新人」はいつでも理解しがたいもの
「ゆとり世代」という言葉を誰もが聞いたことがあると思います。
ゆとり教育を受けている世代は、すでに何年も前から徐々に社会に出
始めていて 2010年度から いわゆる「完全ゆとり世代」と言われる第
始めていて、2010年度から、いわゆる「完全ゆとり世代」と言われる第
側の新入社員が社会に出てきました。
新入社員が入ってくると、多くの会社や配属先から聞こえてくるのが、
「今年の新人は常識がない」
「最近の若者は何を考えているか理解できない」
という声です。
う声 す。
あなたも一度はきいたり、口にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、よく考えてみると、たとえば私が社会に出た、約25年前も周囲
では「最近の若い者は
では「最近の若い者は・・・・・・」と同じことを言われていました
」と同じことを言われていました。
その後も、毎年耳にしてきました。
もちろん全員を画一的にみることは危険ですが、OJTリーダーであるあ
なたの世代も OJT責任者の世代も みんな新人時代は「今どきの若
なたの世代も、OJT責任者の世代も、みんな新人時代は「今どきの若
者」だったのです。
それではなぜ、毎年毎年「今年の新入社員は・・・・・・」と言われてしまう
のでしょうか?
101
部下はいつも「自分への信頼の度合い」を測っている
部下はいつも「自分への信頼の度合い」を測っている
◎「一体感」を感じられるメッセージがいちばん嬉しい
たとえば職場の上司や先輩、OJTリーダーから、こんな年賀状がきたらどうで
しょう?
「○○くん、今年は頼むよ」
今年は って・・・・・・せめて 今年も にして欲しい・・・・・・。
「○○くん ウ
「○○くん、ウチの職場は君にかかっている。頑張ってくれ」
職場は君にかか
る 頑張
くれ
期待を感じますが、プレッシャーもありますしイヤミっぽくないですか?
「今年もよろしく頼むよ」
ありきたりすぎてイマイチ・・・・・・印刷と変わらない気が・・・・・・せめて名前
を!
「今年も一緒に頑張ろう!」
一体感を感じますねぇ。
そう、メッセージはひとつでも部下は、
そう、
ッ
ジはひ
も部下は、
「去年、自分は上司からどう思われていたのか」
「今年は何を期待されているのか」
といった 信頼の度合いみたいなものを感じ取るのです。
といった、信頼の度合いみたいなものを感じ取るのです。
102
部下はいつも「自分への信頼の度合い」を測っている
部下はいつも「自分への信頼の度合い」を測っている
◎OJT
OJTリーダーのひと言が、モチベーションに直結する
リーダーのひと言が、モチベーションに直結する
「去年は○○くんが頑張ってくれたおかげで、とても助かりました。
今年も楽しくいきましょう!」
どう
どうでしょう?「私の頑張りを上司がどう感じているのか」「自分はきちんと会社や社会
う 「
を
がどう感
「自
き
会社 社会
に貢献できているのか」を実感できるメッセージです。
そして何より最後のひと言、「楽しく」が、やる気を与えてくれるのです。
余計なプレッシャーやイヤミのない よい職場の雰囲気が見えてこないでしょうか?
余計なプレッシャーやイヤミのない、よい職場の雰囲気が見えてこないでしょうか?
年賀状に限らず、部下や後輩というのは、あなたの何気ない言葉から、何かしら自分
への評価を感じ取っているものです。
評価を感 取
るも
す。
ですから日常のコミュニケーションにおいて、意識的に前向きなメッセージを送ることは、
部下との信頼関係を築いていくうえで、とても有効です。
あなたが部下や後輩に送っているメッセージは、その部下や後輩が「会社に行きたい
が
が
なぁ」と思うようなものでしょうか?
「よし頑張ろう!」と思えるものでしょうか?
そして あなたからのメッセージは部下や後輩を勇気づけるものでしょうか?
そして、あなたからのメッセージは部下や後輩を勇気づけるものでしょうか?
日常のコミュニケーションにおいて、意識的に前向きな言葉を投げかけてあげることで、
信頼関係を深めることができる。
信頼関係を深める
とができる。
103
実践!
「信頼MAX」で成果が最大になる心得
104
新人との「経験の
新人との「
経験の差」を
差」をどうやって埋めるか
どうやって埋めるか
◎「今どきの新人」はいつでも理解しがたいもの
「ゆとり世代」という言葉を誰もが聞いたことがあると思います。
ゆとり教育を受けている世代は、すでに何年も前から徐々に社会に出
始めていて 2010年度から いわゆる「完全ゆとり世代」と言われる第
始めていて、2010年度から、いわゆる「完全ゆとり世代」と言われる第
側の新入社員が社会に出てきました。
新入社員が入ってくると、多くの会社や配属先から聞こえてくるのが、
「今年の新人は常識がない」
「最近の若者は何を考えているか理解できない」
という声です。
う声 す。
あなたも一度はきいたり、口にしたことがあるのではないでしょうか?
しかし、よく考えてみると、たとえば私が社会に出た、約25年前も周囲
では「最近の若い者は
では「最近の若い者は・・・・・・」と同じことを言われていました
」と同じことを言われていました。
その後も、毎年耳にしてきました。
もちろん全員を画一的にみることは危険ですが、OJTリーダーであるあ
なたの世代も OJT責任者の世代も みんな新人時代は「今どきの若
なたの世代も、OJT責任者の世代も、みんな新人時代は「今どきの若
者」だったのです。
それではなぜ、毎年毎年「今年の新入社員は・・・・・・」と言われてしまう
のでしょうか?
105
新人との「経験の
新人との「
経験の差」を
差」をどうやって埋めるか
どうやって埋めるか
◎「経験」を伝えることで、新人の脱皮を早められる
それは「経験の差」による違いだと私は考えています。
そもそも、昨日まで学生だった新人と、ベテランの常識は違って当然です。この差について「おかしい」とか「常識がない」
と言っても仕方がありません。
まずはこのことを受け入れて この差を理解することが必要です
まずはこのことを受け入れて、この差を理解することが必要です。
通常、新入社員は時間をかけて経験を積むことによって、自然と社会人としての常識や価値観を獲得していきます。
職場のOJTで、さまざまなことを学んでいても、どうしても差を埋めるのには時間がかかります。
少しでも早く「新人」から脱皮してほしいのであれば、経験者であるOJTリーダーが自分の経験を伝えていくことを試みる
のもひとつの手段です。
私が会社に入ったころは、職場でよく飲みにいったものですが、最近はどこの会社でもそういう機会が減ってきたという声
を聞きます。仕事とプライベートを割り切る個人主義・・・・・・このあたりは時代が変わったなと感じます。
私が20代だったころは、職場の先輩や上司と飲みにいっては、いろんな話をしたものです。
先輩の失敗談を上司が教えてくれたり その上司の失敗談をさらにその上司が暴露したり 苦労を乗り越えた話 大成
先輩の失敗談を上司が教えてくれたり、その上司の失敗談をさらにその上司が暴露したり、苦労を乗り越えた話、大成
功した話、これまでの仕事の中に、ひとりひとりにそれぞれのプロジェクトXがあったのです。
先輩たちの経験談を通して、自分とは違う価値観に触れ、少しずついろんな価値観や常識が変化して、今に至っていま
す。
ただし、一方的な価値観の押し付けは逆効果です。
「そういう考えでは社会人失格だ」というような言い方では、反発を生むか、へこんでしまうかのどちらかです。
「経験の差」を埋めるために伝えるべきは、価値観ではなく経験です。
「先輩や上司から受けた恩は、後輩に返せ」
これは私が会社に入 たころに当時の上司に言われた言葉です
これは私が会社に入ったころに当時の上司に言われた言葉です。
だから、私は後輩や新入社員には、たくさんの経験談を良いことも悪いことも話します。
時には恥をさらすこともありますが、それで何か感じてくれればいいと思っています。
部下・後輩に「経験を語る」ことで、擬似的にでも経験を共有できる。機会があったら、積極的に話してあげよう。
部下
後輩に「経験を語る」ことで、擬似的にでも経験を共有できる。機会があったら、積極的に話してあげよう。
106
成長が遅れ始めた部下にこそ期待を
成長が
遅れ始めた部下にこそ期待をかけよう
◎「伸びないのは無能だから」なのか?
もし、あなたがOJTリーダーとして何人もの後輩の面倒を見ているのであれば、
全員に対して平等にOJTを行うことは困難でしょう。
ひとりひとり、そもそもの基本知識も違えば、成長度合いも違います。まったく
同じ仕事を与えているわけでもないでし うから それは当然です
同じ仕事を与えているわけでもないでしょうから、それは当然です。
結果として、いつのまにか成長している人と、していない人の格差が生まれま
す。成長している後輩に仕事が集まり、成長の遅い後輩が放置されていくので
す。
ここはOJTリーダーが気を配らなければならないところです。
自分自身で成長を実感できない、置いていかれている、放置されている、同期
と差がつきはじめた・・・・・・。
と差がつきはじめた・・・・・・
そう感じ始めた後輩は、「不平・不満の増加」「モラルの低下」「自信の喪失」と
いった状況に陥ります。そして、こういった雰囲気は、すぐに周りに伝染しはじ
めます。
では、こういう後輩が生まれてしまったのはいったい誰が悪いのでしょうか?
後輩が100%悪いのでしょうか?
もしもOJTリーダーが、成長が遅くてもしっかりとみてあげて、放置しなかったら
どうだったでしょうか?結果は同じになったのでしょうか?
OJTリ ダ が、後輩が育たない理由を後輩に転嫁するのは筋違いです。根
OJTリーダーが、後輩が育たない理由を後輩に転嫁するのは筋違いです。根
気よく後輩の成長を願い、地道に指導を続けていくことが必要なのです。
107
成長が遅れ始めた部下にこそ期待を
成長が
遅れ始めた部下にこそ期待をかけよう
◎あなたが期待し続ければ、いずれ期待に応えるようになる
「ピグマリオン効果」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。
これは、 人は期待したとおりに期待に応える」というアメリカの心理学者の実
これは、「人は期待したとおりに期待に応える」というアメリカの心理学者の実
験から出た結果です。
逆にいえば、期待しなかったら、「期待しないという期待」に応えてしまうので、
「ダメなヤツ」と決めてかかると本当にダメになってしまうのです。
不要な色眼鏡で先入観を持つと、正しい指導ができませんので十分注意が必
要です。
「期待は最大の動機付けである」
これは、私がいつもOJTリーダーに伝える大事な言葉です。
れは、私が
も リ ダ に伝える大事な言葉です。
多くのOJTリーダーはこの言葉を自分に当てはめたとき、「自分も上司の期待
があるから頑張れるんだ」ということを必ず思い出します。人は期待されるから
期待に応えようとする。期待されなければ、期待には応えられないのです。
「部下に期待すること」は、OJTリーダーの大事な役割。「ダメなヤツ」という先
「部下に期待すること」は、OJT
リーダーの大事な役割。「ダメなヤツ」という先
入観は捨てよう。
108
人材育成では、スキル
人材育成では、
スキルより「
より「信頼
信頼」」がモノ
がモノを
を言う
◎「何を教わるか」より「誰に教わるか」のほうが重要
OJTを進めるなかで課題が出てきたとき、部下や後輩と必要な話し合い
をきちんと行っているのに、なかなか解決しないことがあります。これに
は OJTリ ダ とOJT対象者である後輩の「信頼関係」が大きく影響し
は、OJTリーダーとOJT対象者である後輩の「信頼関係」が大きく影響し
ています。
人に何かを教わるとき、人間心理として、「何を教えてもらうか」よりも
「誰に教えてもらうのか」が優先されます。
「誰に教えてもらうのか」が優先されます
仮にあなたが先輩から指示を受ける立場だとして、信頼できる人から
の指示と、信頼できない人からの指示、どちらにしたがうでしょうか?
聞くまでもないことかもしれませんが、信頼できない人の指示に従うと
いうことはとても怖いことです。
なにかモノを買うときも、信頼できない人の進めるものを買うのはひじょ
うに勇気がいります。
あなたは、後輩から「○○さん(あなた)の言うことなら間違いがない」と
思われているのか、 ○○さんの言うことはアテにならない」と思われて
思われているのか、「○○さんの言うことはアテにならない」と思われて
いるのか。
OJTをスムーズに進めていくには、OJTリーダーが後輩から信頼を寄せ
られていることが欠かせないのです。
109
人材育成では、スキルより「信頼」がモノを言う
◎OJT
OJTリーダーが信頼を得る方法
リーダーが信頼を得る方法
それでは、OJTリーダーが後輩から信頼を得るための「3つの条件」をご紹介し
ます。
① 当たり前のことを当たり前にできること
私が会社に入社した当時 上司から「社会人の基本はABC と教えてもら
私が会社に入社した当時、上司から「社会人の基本はABC」と教えてもら
いました。
このABCというのは、「A」当たり前のことを、「B」バカみたいに、「C」ちゃん
とやることの頭文字だそうです。そしてこのようにいわれました。
「会社に入ったら人間関係をいかに良好につくれるかが大事なんだ。人
から好かれ、尊敬され、信頼を得なければ、だれもいうことを聞いてくれな
いし、手伝ってもくれない。『○○さんになら安心して任せられます』と言っ
てもらえるようにならないと 仕事はうまくいかないんだ」
てもらえるようにならないと、仕事はうまくいかないんだ」
毎日ちゃんと挨拶をする、ルールを守る、誹謗中傷はしない、ウソをつか
ない、納期を守る
ない、納期を守る・・・・・・。
。
そういう当たり前のことを当たり前にできないと、「○○さんは挨拶もでき
ない」、「○○さんはいつも納期に遅れる」、「○○さんはいつも陰口ばか
りで、信用できない」などと、決して信頼されることはありません。
そして失 た信頼を取り戻すのに 発逆転の魔法はありません 日々の
そして失った信頼を取り戻すのに一発逆転の魔法はありません。日々の
積み重ねしかないから、失った信頼を取り戻すのは時間がかかるのです。
OJTリーダーは後輩に対しても、当たり前のことを当たり前にやり続けるこ
と。これは簡単なようで意外に難しいものです。だからこそ、信頼という大
事なものを手に入れることができるのです。
110
人材育成では、スキルより「信頼」がモノを言う
◎OJT
OJTリーダーが信頼を得る方法
リーダーが信頼を得る方法
②
コミュニケーションを十分にとること
私が企業で新入社員研修を担当するようになった初めのころです。新入社員には
私
企業 新入社員研修を担当するよう な
初
ろ す。新入社員
本当にいろんなタイプがいらっしゃいます。
プ
私も人の子ですから、苦手なタイプというのがありました。口数が少なく表情も読
めない、何を考えているのかわからない、そんなタイプは正直苦手でした。
そうなると、相手も何となく私のことが嫌いなんじゃないかとさえ思えてきて、コミュ
ニケーションも十分にとれません。
そこで、このままではよくないと思い、そういう社員にも意識して声をかけるように
したところ、どんどん相手の表情もほぐれて口数も増えてきました。
数カ月の研修が終わるときには、その社員のアンケ トにこう書かれていました。
数カ月の研修が終わるときには、その社員のアンケートにこう書かれていました。
「入社当時、私は○○さんにあまり声をかけてもらえませんでした。○○さんは私
のことが嫌いなんだと思って、どうしたらよいのかわからず、毎日が不安でした。
でも あるときから声をかけてもらえるようになって 私の勘違いだとわかって安心
でも、あるときから声をかけてもらえるようになって、私の勘違いだとわかって安心
しました。
信頼できる先輩が近くにいないのは、新入社員にとってとても不安なことです。ぜ
ひ、来年以降の新入社員にも同じように接してあげてください」
このとき、コミュニケーションというのは本当に大事なんだと感じました。
コミュニケーションがないと人は不安になり、そこに信頼は生まれません。コミュニ
ケーションの量と質が信頼の強さに比例するのです。
111
人材育成では、スキルより「信頼」がモノを言う
◎OJT
OJTリーダーが信頼を得る方法
リーダーが信頼を得る方法
③
前向きであること
ずいぶん前ですが、私が働いていた職場にとてもネガティブな先輩がいました。
常に何かに対しイラ立ち、愚痴を言い、新しい提案には否定から入る・・・・・・そんなタイプです。
「○○さん、今度こういうの考えてるんですけど」
「○○さん
今度こういうの考えてるんですけど」
「こんなのどうせうまくいかないから、やめたほうがいいよ」
「そんなのやってみなきゃわからないじゃないですか?」
「失敗したらどうすんの?責任とれんの?」
こんな感じです。こうなるとまわりからどんどん人が離れていってしまいます。
上司は当然指導をし改善しようとしますが、性格的なものはなかなか直りません。
あるとき、他部署から私のところにこのような話が来たことがあります。
「○○の件だけど・・・・・・」」
「○○の件だけど
「あっ、それなら担当は○○さんなのでおつなぎしますね」
「待って、○○さんに頼んでもちゃんとできるか信頼できないんだよね・・・・・・。きみ代わりにやって
くれないかな」
「そんなことないですよ。ちゃんとやってくれると思いますが」
「ダメダメ!あの人に頼むとまずノ から入るから 説得するのも面倒だし たとえ受けてもらえて
「ダメダメ!あの人に頼むとまずノーから入るから、説得するのも面倒だし、たとえ受けてもらえて
も安心できないよ」
人は後ろ向きな意見には無意識に拒絶反応を起こしてしまいます。その拒絶反応は必然的に信
頼も奪っていき、自然に前向きな人を求めるようになります。
もしも、OJTリーダーがこんなタイプだったら、後輩は不幸としか言いようがありません。OJTリー
ダ が
プ
後
が
ダーは常に前向きで、建設的な意見が言えるからこそ、後輩からの信頼を得ることができるので
す。
人材育成では、育てる側の
人材育成では
人材育成では、育てる側のOJT
育てる側のOJTリ
育てる側のOJT
OJTリーダー自身が
リーダー自身が
リ
ダ 自身が、まわりに尊敬される人であることが大前提。信頼
まわりに尊敬される人であることが大前提。信頼
を大切に積み上げていこう。
112
みんなで育てるという意識をもとう
◎いつの間にか、部下を囲い込んでいませんか?
OJTリーダーは、後輩を育成する責任と義務があります。
そ 関係は 「上司 部
その関係は、「上司ー部下」の関係である場合と、「先輩ー後輩」の関
関係 ある場合と 「先輩 後輩 関
係がありますが、いずれもあらゆることに対する拘束力があるわけでは
ありません。
ときどき 部下
ときどき、部下のことをまるで自分の所有物のように扱うOJTリーダーを
とをまる 自分 所有物 ように扱う リ ダ を
見かけますが、それは誤った認識です。
たとえば、部下がOJTリーダー以外の先輩社員に仕事の相談をすること
が 問題あるかと言えば 問題はありま ん
が、問題あるかと言えば、問題はありません。
そのような光景を見て、OJTリーダーが「なんで自分ではなく、あいつの
ところに相談に行くんだ」などと腹を立てても仕方がないのです。
それは「自分以外の者と会話をするな」と言っているのと同じです。
ましてや、プライベートなことや飲み会などに自分以外の人と行ったか
らといって、それを問題視する必要もありません。
それも「自分以外の人と飲みに行ってはいけない」と言っているのと同
じで、ナンセンスです。
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みんなで育てるという意識をもとう
◎お互いに遠慮して後輩を遠巻きにするのは非効率
OJTリーダーとして部下の成長を願うならば、社内外の様々な人との接点をも
つことを喜ばしく思うべきでしょう。もっと言えば、部下の人脈づくりのために
OJTリーダーが支援できることは、積極的に支援していくほうがよいのです。
OJTリーダーが部下を囲い込むことは、部下の「自立」を阻む原因にもなりかね
ません。
このような考え方は、ひとりの人がもっていても仕方がありません。職場や会
社のなかでみんなが共通の認識でいるというのが重要です。
そうでないと、部下が誰かに相談したときに、「OJTリーダーを無視して私に相
談にくるなん ダメだよ 「○○さん( リ ダ )に悪 からち
談にくるなんてダメだよ」「○○さん(OJTリーダー)に悪いからちょっと無理だ
と無理だ
よ」ということになってしまいます。
せっかくの成長の機会がそこで失われてしまうのです。
ただし、OJTリーダーにまったく相談もなく、前述のようなことが頻繁にあるよう
だとOJTリーダーとして部下との人間関係に問題がある可能性があります。
自分自身の接し方や 育成方針などをよく振り返る必要はあるかもしれません
自分自身の接し方や、育成方針などをよく振り返る必要はあるかもしれません。
後輩の自立のためには、自分以外の人と積極的に関わらせていくことも大切。
気持ちよく送り出してあげよう。
気持ちよく送り出してあげよう
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どんなときも「見本」としてふさわしい行動をとる
どんなときも「見本」としてふさわしい行動をとる
◎ルールは言葉だけでは徹底されない
コンプライアンスは、どんな企業でも重要な課題になっていると
思います。
なぜかというと 「違法だ!」「ル ルを守れ!」と言 ても 違
なぜかというと、「違法だ!」「ルールを守れ!」と言っても、違
反者が「わかりました」という言葉のウラには「言われなくたっ
てわかってるよ」という感情があり、なかなか徹底することがで
きないからです。
きないからです
あなたの周りでも「小さいことだろう」といって、ルールが無視さ
れていることはないでしょうか?
ルール違反というのは、管理階層の高い人から起きやすいの
が頭 痛 と ろ す
が頭の痛いところです。
たとえば、禁煙の会議室で最初に「灰皿はないのか?」と言い
出すのは ほぼ100%その場で一番偉い人でしょう
出すのは、ほぼ100%その場で
番偉い人でしょう。
下の人間が吸ってしまって、上司がそれをしかるのはたやすい
ことです。しかし、上司が自らルールを破ったら誰が止めるの
でし うか?
でしょうか?
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どんなときも「見本」としてふさわしい行動をとる
どんなときも「見本」としてふさわしい行動をとる
◎簡単に例外をつくらないようにする
以前、新入社員研修の最後に懇親会を行った時の話です。
禁煙の会議室で行われた懇親会の席で、ある部長が私にこう言いました。
「灰皿はどこにあるの?」
すぐそばにいた新入社員が私に気をつかって、「私とってきます」と言って灰皿を探しに
行こうとしました。私は新入社員を呼び止め、その部長にこう言いました。
「ここは禁煙ですよ」
「こういうときぐらいはいいじゃないか」
「上の人がルールを守ってくださらないと、誰がそれを止めるんですか?下の人間が
ルールを破ろうとしたときに、それを止めるのが上の人間じゃないですか?」
他部門とはいえ 相手は部長 私より目上の人間です 私も弱い人間ですから相当な
他部門とはいえ、相手は部長、私より目上の人間です。私も弱い人間ですから相当な
勇気が必要でした。
しかし、新入社員が灰皿をとりに行こうとする姿を見て、「言葉だけでは結局伝わってい
ない、行動で伝えるしかない」と思ったのです。
さすが
さすがに、その時はその部長も納得してくれました。
そ 時はそ 部長も納得
くれま た
こういった小さなことから、企業の倫理やモラルは崩れていきます。「たかが」とか「これ
ぐらい」という思考が、いつのまにか大きな事故につながるのです。
とくに 言葉だけでは伝わらないのがコンプライアンスです 言葉で伝わらなければ行
とくに、言葉だけでは伝わらないのがコンプライアンスです。言葉で伝わらなければ行
動で伝える。OJTリーダーは、常に後輩の良き手本でなければならないのです。
よほどのことがないかぎり、例外を許さない姿勢が大切。 今回だけ」という気のゆるみ
よほどのことがないかぎり、例外を許さない姿勢が大切。「今回だけ」という気のゆるみ
が、ルールを軽んじる雰囲気をつくってしまう。
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OJTのキモは、その目的を明確にしておくこと
OJTのキモは、その目的を明確にしておくこと
◎まず「自分自身
◎まず「
自分自身が
がどうなりたいの
どうなりたいのか」
か」を自覚しよう
を自覚しよう
成長した人材が出すアウトプットこそ、企業の成長力の証であることは言うまでもありません。あなたの
会社が成長するかしないか、それは、あなたが行うOJTにかかっているといってもいいでしょう。
大げさと思うかもしれませんが 人材育成にはそのぐらいの気持ちと志が必要なのです
大げさと思うかもしれませんが、人材育成にはそのぐらいの気持ちと志が必要なのです。
ここまでさまざまなノウハウをお伝えしてきましたが、それは実のところOJTの技術にすぎません。
では、OJTで成果を出す根幹となる、いちばん肝心なこととはなんでしょうか?
それは、「あなた自身がOJTについてどう考えているのか」、そして「あなた自身はどうなりたいのか」とい
うことです。
前にも書きましたが、人を育てるには「成長してほしい」という、あなた自身の思いの強さが必要です。明
前にも書きましたが
人を育てるには「成長してほしい という あなた自身の思いの強さが必要です 明
確な目的をもたないままノウハウだけをなぞっても、結果が出にくいのはいうまでもありません。
まず、あなた自身がこの点を自覚して、上司、リーダーとして成長することです。
それが、部下の成長、ひいては会社の成長につながっていくのです。
これが私からあなたに贈る最後の「OJTリーダーの心得」です。
大変なこともあるでしょう。ときにはツライこともあるかもしれません。
でもここまで、おつきあいくださったあなたならきっとできるはずです。私も陰ながら応援したいと思います。
最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。
あなたが育成者として早く成長することが、部下や会社の成長につながる。さっそく「目的をもつ」ことから
スタートしよう。
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■連絡先
本日のセミナーの内容などで、ご意見、ご質問のある
本
ナ
内容な
、 意見、 質問 ある
方はご連絡をいただきたいと思います。
コンサルティングSunrise 代表 下小薗重人
電話:090−6593−7672
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jp
2015/4/22
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