生協コープかごしまの商品政策と産直事業の現状と課題 渡辺克司 鹿児島国際大学経済学部 問題意識と課題 生協は「食」ではじまり「食」で終わると言われてきた。生協(地域生協+職域生協)の総事 業高に占める雑貨類や衣類等の供給高の割合は高まってきているものの、 「食品」の割合は 73.8% と依然として高い。食料品・「食」がいまだに生協事業の要であり、組合員(=消費者)と生協、 そして生産者とを結ぶ結節点にあることは疑いえない。 しかし、今日の経済のグローバル化は農産物・食料品の海外への調達依存度を高め、 「食」の工 業化、加工による高付加価値化や流通再編とも連鎖し食と農の距離を拡大させている。同時にこ うしたグローバル化は国内農業・食料生産の基盤を蚕食し農業者の高齢化とも相まって生協の組 織・事業、運動発展の原動力である共同購入、地産地消・産直事業をも弱体化、崩壊させかねな い状況になっている。 そのうえ、生協の食の安全・安心への取り組みや地産地消、食農教育など食料・農業問題を真っ 正面にすえた取り組み、事業のあり方も生協独自のものではなくなりつつある。大手スーパーの みならず地元のスーパーでもイン・ショップ方式や「産直」 ・地産地消をうたった、表面的には生 協の取り組みと見間違うような取り組みを行っている。 さらに『全国生協組合員意識調査報告書』 (日本生協連)より組合員の経済的な状況や生協の利 用額、品目別購入先の変化とその理由を見る限り、値頃感・割安感のある商品提供を継続し圧倒 的に優位な地位に大手スーパー等があることがわかる。新たな食料・農業政策、商品政策が今後 の生協の組織、事業展開のうえで大きな鍵を握っていることは明らかである。 本報告ではこうした問題意識のもと、 『意識調査』から得られるスーパー、小売店・専門店、コ ンビニ等の動向を視野に入れて、特に九州における食品スーパーの動向とそこにおける生協陣営 の位置、各単協と九州事業連合との事業連帯の状況について見る。次いでコープ商品(日生協、 コープ九州〈エリア共同開発〉、コープかごしま)のあり方、商品政策について整理し、生協コー プかごしまが草創期から今日まで行っている産直事業・「二者認証制度」(産直二者認証委員会) のあゆみと現状、生協コープかごしまの農畜産物等の生鮮品の市場調達構造と産直との関係(産 直品・CO-OP 商品のウエイトの低さ)についても検討する。また、生産者・農業者サイドから見 た産直事業のあり方について検討し、生産者・生協の双方から見た生協陣営の商品政策、産直事 業の課題を明らかにする。 草創期のコープかごしまにおいて「めんどくさい、わずらわしい、それが生協」だったように、 「出資・利用・参加」という協同組合原則論・生協そもそも論の貫徹の視点がこれまで以上に必要 となっていることを確認する。
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