兒玉大使の新年挨拶はこちらから(PDF)

2015年新年懇親会の挨拶
2015年1月16日
兒玉和夫
ご来場の皆様、新年あけましておめでとうございます。
1.(2014年の回顧)
昨年、2014年は、日本と OECD との関係にとって文字通り歴史的な一年になった
と思います。OECD 加盟50周年という年に、日本は、OECD 閣僚理事会において議長国
を務め上げました。安倍総理は閣僚理事会冒頭の基調演説で「日本は復活した、岩盤規
制改革を含む成長戦略を必ず成し遂げる」という力強いメッセージを発信されました。
同会議には岸田外相、甘利内閣府相、茂木経産相、林農水相の 4 閣僚が出席し、見事な
議長采配を行いました。OECD 代表部として、本国から総理及び四名の閣僚を国際会議
の主役として一時にお迎えできたことは誠に誇らしく光栄の極みでした。
昨年、もう一つ忘れることのできない行事がありました。OECD 東北スクールの実施
です。本件は、OECD の全面的支援を得て、2年半という時間をかけて、被災地の中高
生の復興への参画とそのプロセスを通してグローバル人材の育成(リーダーシップ、批
判的思考、
創造的思考)
を目的とする教育プログラムでした。
本プログラムの大団円は、
中高生が自らの力でパリ、シャンドマルス公園において「東北復幸祭<環 WA>in Paris」
を開催したことです。8月30,31日の両日開かれたイベントには2日間で15万人
の来場者がありました。9月2日には、OECD において桜の植樹、2030 年の教育に関す
る生徒大人熟議を英語で実施し、誠に頼もしい、逞しく成長した姿をパリの地で見せて
くれました。OECD 東北スクールの実施に際しては、OECD 事務局を始めとして数多くの
関係者の皆様の支援を頂きました。 本日この場におられる在仏日本商工会議所代表お
よび会員企業の皆様、仏企業関係者、日系メディア関係者のご支援、そして OECD 事務
局関係者の献身的な導きなしにはこの事業の完遂はありえませんでした。
皆様のご支援
に改めてお礼を申し上げます。私のささやかな願いは、OECD の中庭に植樹された山形
出身の「山桜」がいつの日か開花することです。今春は無理かもしれませんが、その日
は必ずくると信じております。
2.
(2015年の展望)
それでは、2015年はいかなる一年とすべきかでしょうか。総理は年頭所感の中で、
「今年は、日本の将来を見据えた改革断行の一年にしたい」と述べておられます。OECD
代表部としては、本年も皆様とより緊密に連絡、連携、協働しつつ、OECD という場を
通じて日本の国際公約実現努力の取り組みをしっかりと発信すること、OECD の知見を
適切に本国に伝えることで、公約実現の少しでもサポートすること、この二つが私ども
にとって今年最大の責務であると考えております。その意味で、本年3月に OECD で行
われる対日経済審査、本年4月に予定するグリア事務総長の訪日、6月4,5日の OECD
1
閣僚理事会、更には、直後の6月7日、8日にはドイツのバイエルン(エルマウ城)で
G7首脳会議までを念頭に、OECD、G7 サミットの場を最大限、戦略的に活用していき
たいと考えております。また今年は、OECD と東南アジア地域との関係が質的に進化す
る一年になります。3月下旬には、インドネシアのジャカルタで OECD 東南アジア地域
プログラム運営グループ会合が開催されます。同会合には、OECD 加盟国及び ASEAN10
カ国の高官が出席し、OECD と ASEAN 各国との互恵理念に基づく実質的な新しい協力関
係が開始します。日本は、同グループ会合の OECD 加盟国側の共同議長として OECD と
ASEAN の架け橋役として知恵も汗もかく覚悟です。
IEA にとっては、今年年央には、事務局長の交代が、11月には2年ぶりに閣僚理事
会が開催されます。昨今の原油価格下落の行方、世界経済全体への影響の見極めなど、
エネルギー安全保障の分野において IEA の役割は益々重要になっており、IEA の議論に
も積極的に参画して参ります。
3.(パリにおけるテロ事件について)
おめでたい席ではありますが、先週パリで発生した2件の同時テロ事件について一言
触れさせて頂きます。今回の事件の対処ぶり、受け止め方をパリの地で間近に目撃して
一番感じたことは、フランスという国は、「自由」、
「寛容」という価値を基礎に成立し
ており、その理念の実行を「世俗主義」の徹底で確保してきているということ、それら
は「フランス人の精神」のおそらく神髄であるということ。そうした価値、理念への有
無を言わせぬ蹂躙であったが故に、仏全土で360万人が、パリだけで160万人もの
市民が「連帯行進」に参加し、国民議会においては黙祷後に国歌、ラ・マルセイエーズ
が斉唱されたのだと思いました。風刺という表現の自由は他者の信仰に対し何らの自制
も求められないのかということについても考えさせられました。改めて犠牲者の冥福を
お祈りするとともに、テロとの戦い、イスラム過激主義との戦い(しかしイスラム教や
同教徒と戦うのではない)に日本も参画していかねばなりません。
4. (終わりに)
最後に、OECD 事務局職員の皆さんへエールを送ります。今年も、OECD における日本
のプレゼンスの質・量両面での増強に向けて代表部は最善を尽くす所存です。できるこ
とは何でもやるつもりです。遠慮なく、我々に声をかけてください。
改めまして、本年が皆様お一人お一人にとって健康で、充実した、すばらしい一年と
なりますことを祈念して、「やってみなはれ」という言葉と共に、私のご挨拶とさせて
頂きます。
(了)
2