インターライアセスメントによるBPSD変化の一事例

4-第18-D⑮-5 一般演題
9月4日(金) 9:00∼10:00 第18会場 パシフィコ横浜 アネックスホール2階 F203+F204
認知症⑮ [座長]畑下 圭子(介護老人保健施設坂田メディケアセンター)
第1群:102 通所リハビリ
第2群:203 一般的検討(意義・必要性・変化・効果・比較)
第3群:D3315 認知症 その他の認知症ケア関連
インターライアセスメントによるBPSD変化の一事例
通所リハビリテーション いなば幸朋苑
浅木 貴志
2階の窓から出ようとするなどBPSDが顕著であったS氏に対し、インターライ方式によるアセスメントしたこと
で課題の捉え方を変えることができた。脱水、気分、転倒に着目し認知症が改善した一事例を報告する。
【はじめに】
2階の窓から出ようとする、終日帰宅願望があるなどBPSDが顕著であったS氏に対し、インターライ方式によるア
セスメントを実施した。脱水、気分、転倒に着目してケアを実践した結果、BPSDが改善した一事例を報告する。
【事例紹介】
S氏 86歳 女性 要介護5 障害者高齢者自立度:B1 認知症高齢者自立度:IIIa、MMSE:6点
病歴:アルツハイマー型認知症、既往歴:脳梗塞後遺症右不全麻痺、高血圧症
基本情報:歩行が不安定なため移動時付き添う。自宅での飲水量200ml、利用中の平均飲水量450ml。体重28.8kg。
【取り組み】
研究期間:平成26年6月∼平成27年1月
研究方法:インターライ方式
トリガーした11項目から高リスクと判定された、脱水・気分・転倒に着目し、ガイドラインで示されているケアを
カンファレンスで検討・実践した。
Iガイドラインによる着目点
1.脱水
飲水量が不十分であり無気力や混乱がある。
2.気分
2階の窓から出ようとし生命に危険を及ぼしている。生活意欲がなく悲観的な言動がある。
3.転倒
右不全麻痺による身体制約がある。特に歩行時の足取りが不安定。自宅では転倒を繰り返している。
IIケア内容
1.脱水
(1)飲水量の把握
(2)食事形態の見直し
2.気分
(1)ドールセラピー
(2)アロマセラピー
(3)非言語的コミュニケーション
(4)化粧
3.転倒
(1)平行棒訓練
(2)歩行器訓練
【結果】
1.脱水
(1)飲水量の把握
利用当初、平均飲水量は450ml程度であったが、提供する飲み物を嗜好に合わせて変更し700mlに増加。現在も継続
している。
(2)食事形態の見直し
言語聴覚士による嚥下評価を受け、食事形態を変更した。自助具を使用することで、食事量と体重が増加した。(
表1)
2.気分
(1)ドールセラピー
世話や愛情の記憶を呼び起こすことにつながり、「可愛い」と発語、笑顔のきっかけになった。S氏だけでなく、周
りの利用者も穏やかな気持ちになる副次作用があった。
(2)アロマセラピー
身体や精神の不調改善を目的として導入した。「いい香りがする、ありがとう」と感謝の言葉があり、会話のきっ
かけになった。
(3)非言語的コミュニケーション
言語中心のコミュニケーションから、非言語的コミュニケーションを重視した。立ち、見つめて、触れて、語りか
けることで、自ら挨拶されるようになった。他者と積極的に会話する場面も増えた。
(4)化粧
通所での化粧をきっかけに、利用前日から洋服の組み合わせを考えるようになった。髪を整えるなど容姿への気配
りが目立つようになった。
3.転倒
(1)平行棒訓練
専門職による歩行アセスメントを実施した。平行棒での歩行訓練を実践したことで、歩行時の姿勢が改善された。
常時付き添いが必要であったが、訓練中は見守り程度になった。
(2)歩行器訓練
歩行器を使用して短距離歩行が可能になった。開始当初付き添いが必要であったが、現在は見守り程度になった。
【考察】
インターライ方式によるアセスメントの活用は、課題の捉え方を変えるきっかけになった。着目すべき点を知るこ
とでBPSDを改善するケアを実践することができたと考える。
今回の取り組みは、BPSD、ADLの改善だけでなく、家族の介護負担軽減にもつながった。生活の質を根本から変え
ることができた大きな成功体験になった。
【おわりに】
理論に基づいた正確なアセスメントの重要性を再認識することができた。
在宅での水分量、食事量、排便状況、運動量について家族と連携・把握し、普段の体調を整えることが、BPSDの改
善につながる。
また、プライドを大切にして関わり、孤独にしないことが、心理的安定には重要である。
今後もインターライ方式を用いて、根拠に基づいたケアを実践していく。