ダイヤモンドモールド室温硬化ナノインプリントによるアルミニウムマスク

ダイヤモンドモールド室温硬化ナノインプリントによるアルミニウムマスクパターンの形成
足立
和也(6687)
指導教員:清原 修二
1 .はじめに
ナノインプリントリソグラフィ(Nanoimprint Lithography:以
下 NIL と略す)技術は,低コストかつ高スループットでナノパ
ターンを一括転写できる技術として注目されている。一般的な
ダイヤモンドのナノ加工プロセスであるリフトオフ法におい
て用いられる電子ビームリソグラフィは低スループットであ
るため,本研究ではそれに代わるプロセスとして室温硬化
(Room-Temperature Curing:以下 RTC と略す)-NIL を提案し
た。アルミニウム(Al)は酸素イオンビームに対するエッチン
グ耐性が大きく,極めて高い選択比を得ることができる。リフ
トオフ法により Al を酸化マスクに用いて,大きな加工深さを
持つダイヤモンドナノエミッタの開発例がある 1)。ポリシロキ
サンとダイヤモンドとの選択比は 4.7 と低いため,マイクロギ
アなどの作製は難しいと考えられるが,Al を用いることでマイ
クロギアなどの作製に応用することができると思われる。そこ
で,本研究では RTC-NIL による Al マスクパターンの形成を目
的とする。
准教授
クパターンは高さが 100 nm で幅 5 µm と転写パターンと同等
の形状が得られ,酸化マスクに用いることができると考えられ
る。円,四角でも高さ 100 nm で径および幅 5 µm の Al マスク
パターンを作製できた。円,四角形状は一部,パターンの抜け
落ちがあることを確認した。これは Si 基板面にポリシロキサン
の残膜があったため,その上に蒸着された Al はアセトンでポ
リシロキサンを取り除いたときに一緒に流れたと考えられる。
X
Y
X
5μm
5μm
[nm]
500
0
[nm]
500
0
10
20
30
0
[µm] 0
X
ダイヤモンドエミッタの作製を行う場合,酸化マスクとする
Al の膜厚は 100 nm で行われている 2)。そこで,Al の膜厚が 100
nm になるように,蒸着する Al の量と形成される Al の膜厚と
の関係について検討した。シリコン基板を真空蒸着装置
(EBH-6,㈱ アルバック)の蒸着源からの距離を 40 mm に取り
付け,ベルジャ内の真空度を 2.0×10-3 Pa に真空引きして Al を
蒸着した。蒸着する Al の量を 10 mg 刻みで変化させ,形成し
た膜厚を段差測定器(SE1200,㈱ 小坂研究所)で測定した。
5μm
5μm
0
0
10
30 [µm]
500
[nm]
0
Diamond mold
(a)
Spin-coating with
polysiloxane
(b)
Press mold
(d)
Evaporation of
aluminum
Substrate
(e)
Remove polysiloxane
with Acetone
(c)
Release mold
Substrate
図1
Substrate
RTC-NIL による Al マスクパターンの形成プロセス
4 .実験結果および考察
蒸着した Al の膜厚を検討した結果,Al の量が増すにしたが
って Al の膜厚は線形的に増加した。Al の蒸着量は,
膜厚 100 nm
を得られた 40 mg を最適蒸着条件とした。使用したダイヤモン
ドモールドでの転写パターン (a),ポリシロキサン転写パター
ン (b) および作製した Al マスクパターン (c) を図 2 に示す。
RTC-NIL を用いてシリコン基板上にライン,円,四角の Al マ
スクパターンを形成することができた。ライン形状の Al マス
0
20
10
[µm]
500
[nm]
(b)ポリシロキサンの転写パターンの金属顕微鏡写真
X
図 1 に RTC-NIL による Al マスクパターンの形成プロセスを
示す。はじめに,10 mm 角のシリコン基板を,超音波洗浄機を
用いてアセトン,純水の順で各 5 min 洗浄した。洗浄した基板
上に転写材料のポリシロキサンを一滴滴下し,回転数 3000
rpm ,10 sec スピンコートを行い,膜厚を 500 nm にした。イ
ンプリント圧力を 0.5 MPa,保持時間を 5 min の条件でインプ
リントを行った。インプリントにはモールド高さ 500 nm で幅 5
µm のライン,径 5 µm の円、幅 5 µm の四角のパターンのダ
イヤモンドモールドを用いた。その後 Al を蒸着し,アセトン
でポリシロキサンを取り除いた後,Al マスクパターンを金属顕
微鏡(DM2500M,㈱ ライカマイクロシステムズ)で観察した。
Y
5μm
5μm
20
Y
X X
3 .RTC-NIL によるアルミニウムマスクパターンの形成
Substrate
20 [µm]
Y
2 .アルミニウムの膜厚の検討
Diamond mold
10
(a)ダイヤモンドモールドパターンの金属顕微鏡写真
X
Polysiloxan
Substrate
Y
Y
5μm
5μm
5μm
5μm
[nm]
500
0
Y
[nm]
500
0
10
20
30 [µm]
0
0
10
20
[µm]
(c)作製した Al マスクパターンの金属顕微鏡写真
図 2 RTC-NIL による Al マスクパターン形成
5 .おわりに
RTC-NIL を用いて,高さ 100 nm の幅 5µm のライン,四角
形状および径 5 µm の円形状の Al マスクパターンを作製する
ことができた。今後の課題として,RTC-NIL を用いて作製した
Al マスクパターンを用いてダイヤモンドの超微細加工を行い,
ダイヤモンドを用いた機能性デバイスを作製する。
6 .新規性・特許性
転写材料にポリシロキサンを用いた RTC-NIL により Al マス
クパターンを作製したことに新規性があり,RTC-NIL で Al の
マスクパターンを形成し,その Al マスクパターンを用いてダ
イヤモンドの超微細加工を行うことに特許性がある。
参考文献
1) 西林良樹,安藤豊,古田寛,小橋宏司,目黒貴一,今井貴浩,
平尾孝,尾浦憲治郎:ダイヤモンドナノエミッタの開発,SEI
テクニカルレビュー,第 161 号,pp. 80 – 86(2002)
2) M. Bernard, A. Deneuville, L. Ortega, K. Ayadi and P. Muret :
Electron cyclotron resonance oxygen plasma etching of diamond,
Diamond and Related Materials, Vol. 13, pp. 287 - 291(2004)