小ロット軟包材印刷にオフセットで挑む!

2015 年 1 月 5 日
PODi ニュースレター
社団法人 PODi
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代表理事 亀井雅彦
小ロット軟包材印刷にオフセットで挑む! 株式会社リンクス様
株式会社リンクス様、岐阜県関市、吉田房生代表取締役
http://www.links-net.co.jp/advantage/totalsupport/index.html
は、紙器・パッケージの
会社として 1950 年に創業され、現在は得意とする厚紙と立体設計を駆使した立体 POP やパッケ
ージを使って、顧客の「理想の売り場環境」を実現してきた。近年には展示会向けソリューシ
ョン、動画ソリューションも加えてトータルサポート力とクロスメディア提案力を充実されて
いる気鋭の会社である。
http://www.podi.or.jp/webinar_free/20141219/20141219-04/
リンクス様外観
今回は同社の新しい挑戦、
「小ロット軟包材印刷にオフセットで挑む」のお話を、同社の挑
戦に非常に興味をもたれたグラビア印刷の会社様数社と伺った。
冒頭で吉田代表が「フィルムに初めて挑戦するにあたって、色々な苦労を想定したが、思っ
たよりスムースに受注を開始することができた。」というご挨拶で始まった。軟包材への挑
戦の始まりは、「当社はもともとお客様の商品であるカミソリの箱を手掛けていて、年中箱
を刷っていた。それらはホテルの部屋に無料で置かれるものであった。ある時、それがフィ
ルムの軟包材に変わり、仕事は消失。それを指をくわえて見ているしかなかった。
」と同社
の根幹を揺さぶる変化について語られた。
「しばらくすると不景気になり、また無駄なコストを省くホテル側の対応もあり、顧客から”
なんとか小ロットでフィルムができないか?
なんとか在庫を減らせないか?”という相
談があった。現在の軟包材の取引先では小ロット対応が出来ないようで、デジタル印刷なら
可能と考え研究を始めた。
」
しかしデジタル印刷での開発は困難を極めたという。曰く、
「遅い」=生産性が低く、
「高い」
=インクコストが高い、「微細文字が打てない」という三重苦から断念した。しかし顧客か
らの要求ははっきりしており、消失した仕事を取り戻す絶好の機会をなんとか活かそうと
研究を続けていた。そんなときに株式会社ミヤコシ、千葉県習志野市、宮腰亨社長、のオフ
セット UV―LED 機と出会った。
「これだ!と思った。
」と吉田代表。テストをしてみればデジタル印刷での課題であった三
重苦は見事に解消している。ただし幅が 13 インチしかなく、顧客と相談するとこれでは足
りない。ミヤコシに頼んで 18 インチで再設計し、JGAS2013 の展示後の導入となった。
商 品 情 報 の リ ン ク 先 ( こ ち ら は
13
イ ン チ の ま ま )
http://www.miyakoshi.co.jp/product/product03/product03_09.html
商品情報 PDF のダウンロードはこちらから(13 インチ、18 インチ共用)⇒
http://www.podi.or.jp/free_cs/MHL13A_18A_presentation.pdf
MHL13A(13 インチ幅)と MHL18A(18 インチ幅)の違いは、幅のみ。
MHL13A
MHL18A
最大印刷幅
330mm
457mm
最大用紙幅
350mm
470mm
これ以外の仕様はすべて共通。
リンクス様工場内での本体の様子(動画)
http://www.podi.or.jp/webinar_free/20141219/20141219-01/
現場の風景
現在では見事に一旦消失した仕事を取り戻したばかりか、新規の顧客からの受注が絶えない。
メリットは、なんといってもオフセット印刷の版にまつわる。グラビア印刷の製版に対して、
版代の安さ、セットアップの短さ、管理の容易さが根本的に異なるという。
このメリットを活かして、小ロット対応、短納期対応、本機校正、サンプル作り、とビジネス
の幅が次々と広がっている。「いま最も顧客から引き合いが強く、新規の顧客でもスーっと入っ
ていける商品」となっている。
もちろんフィルムの取り扱いが初めての同社では、色々な失敗があった。
「恥ずかしい限りで、もうこんな事はないが、最初は表に刷ってしまって、顧客も気付かずに
製袋機に掛けたが、糊が乗らずに接着しない。ここで初めて判って、相当に不信を買った。」
「あるいはフィルムの性格もよくわかっていなくて色々と問題を起こした。」が、これらを超え
てあまりあるメリット、小ロット対応、短納期対応、在庫の削減を顧客に提供できたという。
通常グラビア印刷で採算をとるためには 4000m、少なくとも 2000m の印刷が必要とされている
が、100m から供給ができる。販売価格は現在のグラビア印刷の価格と同等である。
製版のシステムは従来のオフセットの大判の版に面付けをして行い、これを断裁して利用して
いる。版替えは6色をオペレータ1名が約30分で終了。フィルム装填からすべてワンマン・
オペレーションである。版は再利用しないので、在庫も管理も問題にならない。
見当は、セクショナル・ドライブで版胴と圧胴が個別に動くため、圧胴の安定した回転に合わ
せられので、フィルムでも非常に合わせやすい。
極めて重要な点であるが、オフセットは溶剤を使わず、グラビアより環境対応は抜群によい。
オフセット印刷の課題
勿論オフセット印刷にも課題がある。当初は、インクの UV 臭、白インクの濃度、インクの強度
等があった。
インクは UV 臭が当初は気になったが、DIC さんの協力のおかげで、最適の低臭インクを使える
ことができた。またラミネートすればほとんど問題にならない。
白インクもご協力いただいて、2胴で重ねて印刷することで問題を解消した。
強度に関しては、現在は印刷後巻き取っているが、インクは思ったよりも強く、剥離もブロッ
キングも起こさない。ただしインクが硬いため、シュリンク等に使うと割れてしまう可能性は
ある。
http://www.podi.or.jp/webinar_free/20141219/20141219-02/
シリンダー
スリーブ式オフセットは天地の違いによって、サイズ毎にシリンダーを揃える必要がある。1
本あたりのコストがかなりかかるのと、サイズと色数分を揃えるためにコスト負担になる。た
だし、面付け等の工夫でサイズを限定しており、現状では最小のセットでお客様にも納得して
いただいている。
http://www.podi.or.jp/webinar_free/20141219/20141219-03/
内部
今後について
この機械は、ラベル、シール対応も可能であるし、通常の用紙も利用可能である。現在和紙
をテスト準備中である。
現状でラミネート加工は外注しているが、これをインライン・ラミネーターで内製化を検討
している。これができるとさらに付加価値があがるし、納期も短くなる。
胴の組み合わせは自由で、現在 YMCK に WW の6色であるが、特色、さらにはフレキソ胴、イ
ンクジェット胴の追加も可能である。
PODi 総括
紙の印刷の市場縮小の中で、新規の事業開拓を模索している商業印刷会社様は多い。しかし
新しい印刷技術を取り入れるのは壁が厚い。熟練しているオフセット印刷で、かつ現在の製
版設備がそのまま使えるメリットは大きい。
フィルムは初めてでありながら果敢に挑戦され、成功をひきよせた吉田代表の慧眼に敬服
するとともに、広く世に知らしめさせていただける度量に感服申し上げる。
またグラビア印刷会社様にとっては、喫緊の課題である顧客の小ロット対応において、オフ
セット印刷がソリューションになりうる事例として、是非ご参考にしていただければと思
う。株式会社リンクス様においては、試作品、本機校正等の能力にくわえて、高速、低コス
ト、かつ高精細な小ロットの商品供給に前向きであられる。是非ご検討をお願いしたい。
以上