中国の深刻化する水問題

OICE Discussion Paper Series
(ODP)
MKA-04
中国の深刻化する水問題
加藤 美佳
1 . はじめに
中国の差し迫った環境問題の中でも、とりわけ重大なのが水の不足と汚染である。水は、人間の生存と経済
活動にとって不可欠な天然資源である(井村 2007 p101 及び 104)。
前回のレポートでは大気汚染について調べたが、その対策をするにも水不足の解消が必要であることがわか
った。そこで、本レポートでは、大気汚染との繋がりから、中国全体の水問題の原因と北京市の対策について、
現状を把握する。最後に水の重要性を主張したい。
2 . 考えられる原因
(1) 年間降水量
中国の年間降水量は、長江流域にある上海、重慶などでは 1000 ミリメートルを超えるが、海河流域にある
北京では 400 ミリメートル程度、黄河中流域の太原、銀川などでは 400 ミリメートル以下である。日本の全
国平均は 1700 ミリメートルであるので、中国の雨の少なさがわかる(井村 2007 p101,102)。
(2) 灌漑農業
現在、中国の水需要の 70%以上が農業用水である。以前は自然の降雨に頼っていたが、食糧増産のため水
路を敷設した大規模な灌漑が行われるようになった。
灌漑区の面積は 1950 年には 17 万km2であったのが、1980 年には、45 万km2へと増大した。その後も、
増大の速度は鈍化しているものの、2005 年には 55 万km2にまで増大している。
しかし中国の灌漑効率は 30∼40%で、先進国の半分ほどである。灌漑区に引かれた水は必ずしも有効に利
用されず、蒸発により失われてしまう。こうして、上流では豊富にあった水が下流にいくにつれて減少してし
まうという問題も生じている(井村 2007 p105)。
(3) 水の需要増
工業生産と都市人口増加のため、工業用水と都市用水の需要が急増している。工業の発展と都市開発のため
に、限られた水資源を工業と都市に優先配分する政策をとった結果、農業部門が圧迫を受けた。水の消費を極
力少なくする節水農業への転換が課題とされている(井村 2007 p105)。
3 .
北京市での現状
(1) 水不足に悩む北京市
北京は極めて水が不足している海河地域である上に、人口の急増と経済の急速な発展により用水量が増大し
ている。建設ラッシュや、洗車場の増加、町の緑化などがこの原因として挙げられる。また、工業排水と生活
汚水によって、水源であるダムの水質も悪化している(井村 2007 p112)。
(2)北京市の節水対策
北京市は節水型都市の実現を目指していろいろな対策をとっている。
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水を多く使う工場には節水技術を採用させ、重要な水資源である密雲ダムの水を農業用に供給することを止
めた。また、老朽化した二次給水施設や水道管の補修にも力を入れ、水の価格も1tあたり2元から6元に引
き上げた。
これらの対策により、年間 1.7 億トンあまりの節水を実現している(井村 2007 p113,114)。
4 .
おわりに
現在、目覚ましい発展が期待される中国であるが、水は人が生きる上で重要であるのはもちろん、その水が
不足、汚染されているとなると経済発展にも影響がでてくるであろう。
中国での水不足は、自然からの影響もあるが、食糧の増産や工業の発展、都市開発といった、国が発展して
いることまでもが原因になってしまっている。不足だけではなく、水質も悪化しているので、節水を心掛ける
と同時に、工場や生活汚水を垂れ流しにせず、きちんと下水処理をすれば、水を無駄にする量が減り、結果的
に水不足解消に繋がるのではないだろうか。
日本のように水が豊かな国で暮らしていると、水という資源の重要性を忘れてしまいがちだが、この平和な
状況に無頓着になってはいけない。中国では問題が深刻化しているが、なにも中国だけの問題ではなく、日本
もこうならないように一人一人が気をつけるとともに、もっと中国に下水処理などの風習を植え付ける手助け
をしていくべきであろう。
<参考文献>
井村秀文(2007)『中国の環境問題
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今なにが起きているのか』化学同人
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