金融機関の不良債権噴出の因となった、行きすぎた「不動産担保主義」の

SMGレポート 2310-1 ※ ジャンルごとに、毎回テーマを変えてご案内します。
【金融・財務】 でんさいネット(H24.05月開始予定)とは?
金融機関の不良債権噴出の因となった、行きすぎた「不動産担保主義」の弊害を
軽減しようと経産省が音頭を取り、在庫や売掛金等の動産や債権を担保とする貸
出し‐ABL‐に軸足を移そうという動きの中で生まれたのが「電子記録債権」です。
<全産業合計の運用・調達>
支手 33兆
なるほど、額面通りに売掛金や受手を活用するこ 受手 29兆
とができれば、運転資金は30%減って在庫投資
分のみとなり資金繰りは改善、銀行借入れも減
少し、これにより債務者区分が1ランクアップする
可能性さえ出てくるかもしれません。
買掛金 125兆
売掛金 180兆
棚卸資産 115兆
運転資金 166兆
(財務総合政策研究所/法人企業統計調査2008) むろん、現実はそんなものではなく、流動資産のトリモチ化(デッドストックや債務者
の夜逃げ等)も数多く、資産自体の信用度がモノを云うのは当然です。
社会的信用度の高い相手(債務者)への売掛や、その相手が振り出した手形であ
れば、事は簡単なのですが―
それでも電子記録債権は、中小事業者の資金手当にとって無視
できない存在であることは間違いない事実だろうと思います。
昨年7月にお伝えして以来1年2ケ月余を経過した現況を見ますと、電手決済サー
ビスに参加している金融機関は当初の3倍弱の42に増加、利用契約者数も1万社
を超え、未決済の市場出回り残高も3千億円(23/9現在)を突破する勢いです。
私見ですが、電手の最大のメリットは①自在に分割して譲渡が可能、②印紙税が
掛らない、③譲渡通知※1等が不要―の3点に集約できると思います。
取引先(債務者)から、多額券面の手形を受け取っても、仕入れ先への払いが先行
するため、割り引いて当座に入れるか現金化して支払う等しかなかったのですから
如何様にも分割して手形のまま決済できるのは大変便利な機能といえます。
※1 債務者(支払い義務者)が、複数の債権者に対し、売掛金などの同一の債権を譲渡してしまう
ケースがあり、それを防ぐには譲渡の登記か売掛先への通知或は売掛先の承諾が必須条件。
とは申せ、このサービスに参加している信金は、全国でわずか3機関に過ぎず、事
実上、中堅・大手企業にとって有用なシステム、と化している事をうかがわせます。
債権の電子化は、多数の取引先を抱えていればいるほど、費用対効果の点だけで
も‐印紙税のみで億を超す費用削減等-非常に有利であるからです。
だから、というわけでもないと思いますが、来年5月を目途に、全銀協を母体とする
「でんさいネット」が始動するという発表がなされています。
調べたところこの仕組と機能は、基本的に現JAMCO(日本電子債権機構)と変わらない様
ですが、一応全銀協登録の全金融機関の参加を前提としている模様であり、これ
はつまり、中小企業向け電子債権登録機関ということになるのかも知れません。
元々電子記録債権は、中小企業の資金繰り円滑化の為のもの。順序が逆ではと-