2013年8月22日 - エフアンドエム

I n s t i t u t e o f Re s e a r c h f or S m a l l a n d M e d i u m En t e r pr i s e
<FMC104356>
中小総研
電子記録債権の普及(IRSME13012)
平成 25 年 8 月 22 日
三反田
章
電子記録債権とは
手形や売掛債権等の問題点を克服した新たな金銭債権として電子記録債権が注目を集めて
いる。2 月に電子債権処理機関「でんさいネット」が開業したことで今後更なる普及が予想さ
れている。下図のようにこれまで決済手段として主流であった手形の活用は 1990 年度をピー
クに減少しており、2010 年では 3 分の1になっている。一方、電子記録債権による支払いは
月 6,000 億円に達している。債権を比較的容易に現金化できることから中小企業の資金繰りを
助ける効果があるため、政府も普及を後押ししている。今後は電子記録債権がさらに普及して
いくものと見られる。
80 兆
約72兆円
(1990年)
70
60
50
約24兆円
(2010年)
40
30
20
10
0
1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009
(出典)財務総合政策研究所
法人企業統計調査より改編
受取手形や売掛金は、企業のバランスシート上で大きな割合を占めているにもかかわらず、
現金化までに一定の時間を要するという一面がある。中小企業からも取引先の収益悪化で売掛
金の回収が進まないという声を聞くことが少なくない。そこで企業が保有する手形や売掛債権
を電子化し、インターネットで取引できるようする決済手段として債権の流動化を促進し、事
業者の資金調達の円滑化等を図るために 2008 年 12 月から電子記録債権法が施行され電子記
録債権制度が創設された。
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(IRSME13012)電子記録債権の普及~
電子記録債権の特徴
電子記録債権を活用することは
資金調達の円滑化の他にも次のよ
うなメリットがある。
○支払う側の企業
1. 事務負担が軽減される、搬送コ
ストも削減される
手形の発行および振込の準備など、支払いに関する事務負担が軽減される。
2. 印紙税の負担軽減
手形と異なり印紙税は課税されない。
3. 分割譲渡
必要な金額だけ分割して譲渡や割引をすることができる。例えば、1,000 万円の債権を保
有している状況で、別の取引先から 300 万円の請求があり資金調達の必要性が発生したとす
る。仮に 1,000 万円が通常の手形であり、これを割引くのであれば、1,000 万全額を割引
かなければならない。しかし、電子記録債権であれば 300 万円だけ割引くことが可能となる。
○受け取る側の企業
4. 紛失や盗難のリスクがなくなる
ペーパーレス化により紛失や盗難の心配がなくなり無駄な管理コストも削減できる。
5. 取立手続き不要
支払期日には自動的に取引金融機関の口座に入金されるため面倒な取立手続きが不要。
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(IRSME13012)電子記録債権の普及~
でんさいネットとは
2013 年 2 月、電子債権処理機関「でんさいネット」が開業した。
「でんさいネット」は単純
に従来の「紙」の手形を電子化したものではなく、手形・振込などの複数の支払手段を一本化
して行うことができる幅の広い決済方法として注目を集めている。「でんさいネット」は全国
銀行協会が 100%出資している全銀電子債権ネットワークが運営している。そのため全銀行参
加型で行われており全国 124 の銀行と 273 の信用金庫、116 の信用組合が参加を表明してお
り、
「でんさいネット」の導入により売掛金180兆円が流動化するとされている。
「でんさいネット」による商取引の仕組みは下図の通りである。
支払義務を持つ債務者 A 社は事
前に利用申込みを行った取引銀行
に対して発生した債権を登録する。
受取権利を持つ債権者である B 社
は取引している銀行から記録の通
知を受ける。最終的に、でんさいネ
ットを通して資金が決済され B 社
に資金が入金される。
電子記録債権の今後
「でんさいネット」には2月の開業からわずか4カ月間で約 500 の金融機関と 20 万社の
企業が参加している。手形による決済が減少していく中、取引先が大手企業である場合、支払
い手段を「でんさい」に限る、というような取引条件を提示してくることも考えられ、今後の
動向に注意が必要である。
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