建物密度と乗降者数を考慮した歩行者空間の量的水準の分析

C15
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2015
建物密度と乗降者数を考慮した歩行者空間の量的水準の分析
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嚴 先鏞 1,鈴木 勉 2
筑波大学 大学院システム情報工学研究科,2 筑波大学システム情報系
Email: <[email protected] >
(1) 動機: 近年,集約的な都市空間構造が注目され
ている中で,道路空間における歩行者のための空
間づくりが重要視されている.多くの自治体が「歩
いて暮らせるまちづくり」をコンセプトとして掲げ,京
都や大阪,仙台といった大都市の中心部で,歩道
を広げる動きも出始めた.しかし,わが国では,歩
行者空間の現状も明確に把握されておらず,どの
レベルまで歩行者空間の整備が必要かについて
の基準は明確ではない.そこで本研究は,東京区
部を対象とし,道路空間,特に歩行者空間に着目
した分布の特徴を把握し,道路空間量と鉄道駅の
規模,建物密度との関係を分析する.
(2) 方法: 立体的に利用されている道路空間を含め,
土地利用を区分し,東京都心 14 区を対象として道
路区分毎にポリゴンデータとして ArcGIS 上に構築
した上で面積算定を行った.また,歩行者の量と関
係があると考えられる建物密度と乗降者数をメッシ
ュ毎に算出し,歩行者空間量とどのような関係を持
っているかを歩道率とサービスレベルを用いて分析
した.
(3) 結果: 全域の道路率は 21.7%であるが,その中で
歩道は平面歩道 2.7%であり,立体歩道 0.3%であ
る.駅乗降者数により,対象地域内の駅を 3 つのグ
ループに分けで歩道率を比較すると,乗降者が 10
万人以上の駅では駅から 500m 以内の歩道率は
6.1%であり,5 人万以上 10 人万未満の駅では
4.1%,5 万人以下では 3.4%となり,全体の平均値と
8.0
歩道率(%)
7.0
歩道面積
平均歩道率(ピーク)
平均歩道率(ボトム)
6.0
400
350
300
250
5.0
200
4.0
150
3.0
2.0
100
1.0
50
0.0
0
歩道面積(㎡/ha)
9.0
あまり差はなかった.再開発地区と歩道率の関係を
みると分析の対象である 111 地区の事業により,平
均歩道率は 5.4%から 11.2%に増加したが,周辺地
域の歩行者空間の変化は見られなかった.最後に
歩道率,建物密度,乗降者人数の関係について多
重回帰分析を行った結果,容積率が 100%増加す
ると歩道率が 1.1%増加し,乗降者数が 1 万人増加
すると 0.8%増加する関係が分析された.また,歩行
者空間のサービスレベルを見るため,延床面積当
たりの歩道面積を分析したところ,容積率が増加し
ても延床面積当たりの歩道面積にはあまり変化がな
く,高密の建物は歩行者の発生量が多いと考えられ
る商業や業務施設である傾向のため,歩行者空間
が不足している可能性があることが明らかになった.
しかし,現状が適切な歩行者空間量であるとは言え
なく,コンパクトシティにおける道路空間全体の望ま
しい構成を明らかにすることが課題である.
(4) 使用したデータ:
・「ZmapTownII (Shape 版)東京都 データセット
(1997/98,2003/04,2008/09 年度」,ゼンリン
・「交通流動量駅別乗降数データ」,国土数値情報
・「MAPPLE デジタル地図データ 10000」,昭文社
(5) 謝 辞 : 本 研 究 は , JSPS 科 研 費 24241053 ,
26560162 による助成を受けた.分析にあたっては,
東京大学空間情報科学研究センターの研究用空
間データ(研究番号 490)を利用した.ここに感謝の
意を表す.
FAR(%)
図 1: 容積率毎の歩道率と歩行者空間面積
図 2: 延床面積当たり歩道面積の分布(平面+立体)
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