行列の固有値、固有ベクトルとその応用 n 次の正則行列 A に対し、固有方程式 A − λi I = 0 を満たす λi (i = 1, 2, 3.L n ) を A の固有値という。 1 個の固有値に対し、(A − λi I )v i = 0 を満たす固有 ベクトル v i (i = 1, 2, 3.L n ) が得られる。 n 個の固有ベクトルを各 列とする行列 P を作ると Λ = P −1AP は、 λi を主対角要素とし、他 の要素が 0 である行列になる。(このとき、 A = PΛ P −1 でもある。 なお、 Aが非対称で等根を持つ ときは一部の要素が 1 になる。 p.6 参照) この応用としては、行 列の多重積、二次形式 の主 軸変換、安定判別など がある。 Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 1 行列の固有値 ベクトル (縦行列 ) v が座標変換行列 A に よって、 v ' = Av = λv に変換されたとす る。ここに、 λはスカラーである。こ の 意味は、 A による座標変換によっ ても方 向の変らないベクトル v (≡ 固有ベクトル ) ⎛ v ' = λv とλ 倍される。即ち、伸縮 ( λ ≠ 1)⎞ ⎜⎜ ⎟⎟ ⎝あるいは向きの逆転 (λ < 0 )はあり得る。⎠ があると仮定するとい うことである。 Av = λv = λIv , (I は単位行列 )と書ける。 (A − λI )v = 0,もし、(A − λI )−1 が すなわち、 存在すれば、v = 0 になるので、 v ≠ 0 の 解があるためには、 (A − λI ) の逆行列が 存在しないことが必要 。そのためには (A − λI ) の行列式 = 0, すなわち、 L a11 − λ a12 a1n −1 a1n a21 a22 − λ L a2 n −1 a2 n L L L L L =0 an −11 an −12 L an −1n −1 − λ an −1n an1 an 2 ann −1 ann − λ L この方程式を解くと、 n 個の λ が得られる。 n 個の λi (固有値という, i = 1, 2 L , n )を求め、次 にそれを代入して対応 する固有ベクトル v を求める。 n個の固有ベクトルを列 要素と して行列 P を作り、 P −1AP を作ると固有値を 対角要素とする対角行 列 Λ (ラムダ )になる。 A が対称行列のとき、 P は直交行列となり、 そのとき、 P −1 = P T である。 ⎛ 直交行列とは、 i, j 列の要素を p i , p j と ⎞ ⎜ ⎟ するとき、 ⎜ ⎟ ⎜ ⎧i ≠ j のとき 0 ⎟ ( ) • = = = θ δ δ p p cos , ⎨ i = j のとき 1 ⎟ j ij ij ij ⎜ i ⎩ ⎜⎜ ⎟⎟ ( ) p p が成り立つ行列である 。 と が直交 i j ≠i ⎝ ⎠ 例 [固有値] ⎡2 1⎤ A=⎢ ⎣1 2⎥⎦ 2−λ 1 2 = (2 − λ ) − 1 = 0 1 2−λ λ2 − 4λ + 3 = 0 λ = 2 ± 1 = 1 or 3, λ1 = 1, λ2 = 3 Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 2 [固有ベクトル] (1)λ = λ1 = 1のときの固有ベクトルを、 [v11 v21 ]T とすると、 ⎡2 − 1 1 ⎤ ⎡ v11 ⎤ ⎡1 1⎤ ⎡ v11 ⎤ = =0 ⎢⎣ 1 2 − 1⎥⎦ ⎢⎣v21 ⎥⎦ ⎢⎣1 1⎥⎦ ⎢⎣v21 ⎥⎦ v11 + v21 = 0, v21 = −v11 , 第二式も同じ。 ⎛ A − λI = 0 としているので、解不定 ⎞ ⎟⎟ ⎜⎜ ⎝となり一つは任意に指定できる。 ⎠ v11 = k とすれば、v21 = −k , 絶対値が1 になるように書き直すと、 1 1 −1 1 k= = , v11 = , v21 = 2 2 2 2 12 + (− 1) (2) λ = λ2 = 3 のとき、同様にして、 1 ⎤ ⎡ v12 ⎤ ⎡− 1 1 ⎤ ⎡ v12 ⎤ ⎡2 − 3 = =0 ⎢⎣ 1 2 − 3⎥⎦ ⎢⎣v22 ⎥⎦ ⎢⎣ 1 − 1⎥⎦ ⎢⎣v22 ⎥⎦ 1 − v12 + v22 = 0, v12 = v22 = 2 これから、P が直交行列として得られ、 1 ⎤ −1 ⎤ ⎡ 1 ⎡ 1 ⎥ ⎥ −1 ⎢ 2 ⎢ 2 2 2 P=⎢ ⎥ ⎥, P = ⎢ 1 1 1 1 − ⎥ ⎢ ⎥ ⎢ 2 ⎦⎥ 2 ⎦⎥ ⎣⎢ 2 ⎣⎢ 2 1 ⎤ −1 ⎤ ⎡ 1 ⎡ 1 ⎥ ⎥ ⎡2 1 ⎤ ⎢ 2 ⎢ 2 −1 2 2 P AP = ⎢ ⎥ ⎢ −1 ⎥⎢ ⎥ 1 1 1 1 2 ⎦⎢ ⎥ ⎥⎣ ⎢ 2 ⎦⎥ 2 ⎦⎥ ⎣⎢ 2 ⎣⎢ 2 3 ⎤ −1 ⎤⎡ 1 ⎡ 1 ⎥ ⎢ 2 ⎥⎢ 2 2 2 =⎢ ⎥ ⎥⎢ −1 1 1 3 ⎥ ⎢ ⎥⎢ 2 ⎦⎥ ⎣⎢ 2 2 ⎦⎥ ⎣⎢ 2 ⎡1 0⎤ ⎡λ1 0 ⎤ =⎢ =⎢ =Λ ⎥ ⎥ 0 λ 0 3 ⎣ ⎦ ⎣ 2⎦ −1 Λ = P AP の両辺に左から P、右から P −1 を掛けて、A = PΛ P −1も得られる。 以下、座標変換と固有ベクトルについて 考察して見よう。 Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 3 ⎧ x' = 2 x + y ⎡ x'⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎡ x ⎤ すなわち、 = ⎨ y' = x + 2 y ⎢⎣ y '⎥⎦ ⎢⎣1 2⎥⎦ ⎢⎣ y ⎥⎦ ⎩ において、 y ' = 0, x ' = 0 は、座標変換後の x ' 軸、y ' 軸を表し、それぞれ、元の座標で、 x + 2 y = 0 → y = −x / 2 2 x + y = 0 → y = −2 x の直線を表す (図1 のx ' 軸、 y ' 軸)。 固有ベクトルの座標変 換は、 p1' p '2 = A[p1 p 2 ], すなわち、 1 ⎤ ⎡ 1 ⎥ ⎡ p11' p12' ⎤ ⎡ p11 p12 ⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎢ 2 2 =⎢ ⎢ ' ⎥ = A⎢ ⎢ p' ⎥ 1 ⎥⎥ p p p ⎣1 2⎥⎦ ⎢ − 1 22 ⎦ ⎣ 21 22 ⎦ ⎣ 21 ⎢⎣ 2 2 ⎥⎦ 3 ⎤ ⎡ 1 ⎢ 2 ⎥ 2 =⎢ ⎥, 1 3 − ⎢ ⎥ ⎢⎣ 2 2 ⎥⎦ すなわち、 p1' = 1p1 , p '2 = 3p 2 であり、座標変 換でベクトルの方向は 不変、大きさは λ 倍 になっている。また、 変換後の座標系は直 交座標系ではなくなっ ている。 [ y y’ y=x y’= x’ ⎛ 1 1 ⎞⎛ 3 3 ⎞ , , ⎟ ⎜ ⎟, ⎜ ⎝ 2 2⎠ ⎝ 2 2⎠ ' p2 x o p1 ] 1 ⎞⎛ 1 1 ⎞ ⎛ 1 ,− ,− ⎜ ⎟, ⎜ ⎟ 2⎠ ⎝ 2 2⎠ ⎝ 2 ' x’ y = -x y’= -x’ 図1. A による座標変換と固有ベクトル p1, p2 x − y 座標系から x'− y ' 座標系に変化し ても、p1 , p 2 を含む直線である y = x および y = − x の二つの直線は、 y ' = x' および y ' = − x' で変化しないこ とが次式で分かる。 ⎡ x'⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎡ x ⎤ ⎡3 x ⎤ ⎢⎣ y '⎥⎦ = ⎢⎣1 2⎥⎦ ⎢⎣ x ⎥⎦ = ⎢⎣3 x ⎥⎦から、y ' = x' ⎡ x'⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎡ x ⎤ ⎡ x ⎤ ⎢⎣ y '⎥⎦ = ⎢⎣1 2⎥⎦ ⎢⎣− x ⎥⎦ = ⎢⎣− x ⎥⎦ から、y ' = − x' Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 4 ⎡2 1 1 ⎤ A = ⎢1 2 1 ⎥ の場合 ⎢1 1 2 ⎥ ⎦ ⎣ 2−λ 1 1 A − λI = 1 2−λ 1 1 1 2−λ 2−λ 1 1 1 1 2−λ = (2 − λ ) − + 1 2−λ 1 2−λ 1 1 2 = (2 − λ ) (2 − λ ) − 1 − 2(1 − λ ) = (2 − λ )(1 − λ )(3 − λ ) − 2(1 − λ ) = (1 − λ ){(2 − λ )(3 − λ ) − 2} = (1 − λ ) λ2 − 5λ + 4 2 = (1 − λ ) (4 − λ ) = 0 ) λ = 1, 1, 4 (固有値に等根 1を含む。 λ = 1 のとき、 x11 + x21 + x31 = 0 x11 + x21 + x31 = 0 x11 + x21 + x31 = 0 この 3 式は同じで 3 変数に1つの式なので 2 つの変数は任意に決め られる。 仮に、 x11 = 1, x21 = −1, x31 = 0とし、 絶対値が 1 になるように変更して 、 { } ( ) x11 = 1 / 2 , x21 = −1 / 2 , x31 = 0 第 2 列についても、 λ = 1 として、 x12 + x22 + x32 = 0 が 3 つ得られる。 第1列と直交するように定 めるが、 仮に、x12 = x22 = 1 としてみると、 x32 = −2 絶対値が1 になるように決めなお すと、 x13 = x23 = −1 / 6 , x33 = 2 / 6 となる。 λ = 4 のとき、 − 2 x11 + x21 + x31 = 0 L ① x11 − 2 x21 + x31 = 0 L ② x11 + x21 − 2 x31 = 0 L ③ ① − ② − 3 x11 + 3 x21 = 0 ② × 2 + ③ 3 x11 − 3 x21 = 0 L上式と同じ x11 = 1 として、 x21 = 1, x31 = 1, 絶対値が になるよう、 x11 = x21 = x31 = 1 / 3 と変更。 結局、 ⎡ 1/ 2 1/ 6 1/ 3⎤ P = ⎢− 1 / 2 1 / 6 1 / 3 ⎥ ⎢ ⎥ 0 2 / 6 1 / 3 − ⎢⎣ ⎥⎦ が得られる。 Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 5 この例のように、 一般に、 A が対称行列で固有方程 式が等 根を含む場合、固有ベ クトルの自由度が 高まるが各列間に直交 性が成り立つよう に選ぶことができる。 A が非対称で、固有方程 式が等根を含む 場合は、対角行列では なく、それに近い ジョルダン標準形とい う形に変形できる。 ジョルダン標準形 J は、対角要素の付近 の部分が、ジョルダン 細胞と呼ばれる次 のような形に置き換わ った形である。 ⎡λi 1 ⎤ ⎢⎣ 0 λi ⎥⎦ , λi が 2 重根の場合、 ⎡λi 1 0 ⎤ ⎢ 0 λi 1 ⎥, λi が 3 重根の場合、 ⎢0 0 λ ⎥ i⎦ ⎣ ⎡λi 1 0 0 ⎤ ⎢ 0 λi 1 L⎥ ⎢ 0 0 L 1 ⎥, λi が k 重根の場合、 ⎢ ⎥ λ L 0 0 i⎦ ⎣ 変換行列 P は、AP = PJ から、 P = [p1 p 2 L p n ], J = [j1 j2 L jn ] (p i , ji は、P, J の列要素 ) として、 AP = [Ap1 Ap 2 L Ap n ], PJ = P[j1 j2 L jn ] なので、 Ap i = Pj i (詳細省略 ) として求められる。 練習問題Ⅰ (1) ⎡⎢ 4 − 2 ⎤⎥, (2) ⎡⎢00..64 00..46⎤⎥, (3) ⎡⎢00..73 00..64⎤⎥ 1 ⎦ ⎦ ⎣ ⎦ ⎣ ⎣ 2 0 ⎤ ⎡1 2 ⎡1 / 2 1 / 4 1 / 4⎤ (4) ⎢2 2 2 ⎥, (5) ⎢1 / 4 1 / 2 1 / 4⎥ ⎢0 ⎥ ⎢1 / 4 1 / 4 1 / 2⎥ 2 1 ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 6 応用1 行列の多重積 推移行列の無限回積 0.7 0.4 B 0.6 図2. ストライク S とボール B の推移確率 0.3 S ⎡ ps ,n +1 ⎤ ⎡ 0.3 0.6⎤ ⎡ ps ,n ⎤ ⎢ pb ,n +1 ⎥ = ⎢0.7 0.4⎥⎦ ⎢ pb ,n ⎥ → p n +1 = Ap n ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ ⎣ 固有方程式は、 0.3 − λ 0.6 A= = 0、これから、 0.7 0.4 − λ λ2 − 0.7λ − 0.30 = 0 λ = 0.35 ± 0.352 + 0.30 = 0.35 ± 0.65 = −0.3 or 1.0 (1) λ = 1 − 0.7 p11 + 0.6 p21 = 0, p21 / p11 = 7 / 6 p11 = 6, p21 = 7 とする。 (2)λ = −0.3 0.6 p12 + 0.6 p22 = 0, p12 / p22 = −1 p12 = −1, p22 = 1 とする。 ⎡6 − 1⎤ −1 1 ⎡ 1 1⎤ ,P = ⎢ P=⎢ ⎥ 7 1 13 ⎣− 7 6⎥⎦ ⎦ ⎣ p11 p12 + p21 p22 = (− 6 × 1 + 7 ×1) ≠ 0 Aが非対称行列なので P は直交行列 ではない。 Λ = P −1 AP 1 ⎡ 1 1⎤ ⎡ 0.3 0.6⎤ ⎡6 − 1⎤ = ⎢ 13 ⎣− 7 6⎥⎦ ⎢⎣0.7 0.4⎥⎦ ⎢⎣7 1 ⎥⎦ 1 ⎡ 1 1⎤ ⎡6 0.3 ⎤ = ⎢ 13 ⎣− 7 6⎥⎦ ⎢⎣7 − 0.3⎥⎦ 1 ⎡13 0 ⎤ ⎡1 0 ⎤ ⎡λ1 0 ⎤ = ⎢ = = 13 ⎣ 0 − 3.9⎥⎦ ⎢⎣0 − 0.3⎥⎦ ⎢⎣ 0 λ2 ⎥⎦ A = PΛ P −1 , A n = PΛ P −1 PΛ P −1 L PΛ P −1 = PΛ IΛ I L IΛ P −1 = PΛ n P −1 = P λi n P −1 0 ⎤ ⎡ 1 / 13 1 / 13 ⎤ ⎡6 − 1⎤ ⎡1n n A =⎢ n ⎣7 1 ⎥⎦ ⎢⎣ 0 (− 0.3) ⎥⎦ ⎢⎣− 7 / 13 6 / 13⎥⎦ ⎡6 − 1⎤ ⎡1 0⎤ ⎡ 1 / 13 1 / 13 ⎤ lim A n = ⎢ n →∞ ⎣7 1 ⎥⎦ ⎢⎣0 0⎥⎦ ⎢⎣− 7 / 13 6 / 13⎥⎦ ⎡6 0⎤ ⎡ 1 / 13 1 / 13 ⎤ ⎡6 / 13 6 / 13⎤ =⎢ =⎢ ⎥ ⎢ ⎥ 7 0 7 / 13 6 / 13 − ⎣ ⎦⎣ ⎦ ⎣7 / 13 7 / 13⎥⎦ 第1球がSのとき、ps1 = 1, pb1 = 0 ⎡ p ⎤ ⎡6 / 13 6 / 13⎤ ⎡1⎤ ⎡6 / 13⎤ lim ⎢ s ,n ⎥ = ⎢ =⎢ ⎥ ⎢ ⎥ n →∞ pb , n 7 / 13 7 / 13 0 ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ ⎣7 / 13⎥⎦ ⎣ ⎦ Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 ( ) 7 応用2 二次形式と主軸変換 n 次元ベクトル xとn × n 対称行列 A とで作るxT Ax を二次形式という。 ⎡ x1 ⎤ x = ⎢ x2 ⎥ のとき, ⎢x ⎥ ⎣ 3⎦ xT Ax ⎡ a11 a12 a13 ⎤ ⎡ x1 ⎤ = [x1 x2 x3 ]⎢a21 a22 a23 ⎥ ⎢ x2 ⎥ ⎢a ⎥⎢x ⎥ a a 32 33 ⎦ ⎣ 3 ⎦ ⎣ 31 2 2 2 = a11 x1 + a22 x2 + a33 x3 + (a12 + a21 )x1 x2 + (a23 + a32 )x2 x3 + (a31 + a13 )x3 x1 n = 3で A が対称行列のとき、 xT Ax = 1は二次曲面を表す。 (楕円面、一葉~二葉双曲面) 座標変換によって Aを対角行列に 変換すれば、固有値に等しい ' ' , a33 の項だけになる。 a11' , a22 A の固有値から固有ベクトル行列 P を 求めると、P −1AP = Λ → A = PΛ P −1 , (UV )T = V T UT を利用して、 ( ) ( T ) xT Ax = xT PΛ P −1x = P T x Λ P −1x A が対称で、P T = P −1 が成り立つとき x ' = P −1xと変換すれば、 xT Ax = x 'T Λx ' = λ1 x1'2 + λ2 x2'2 + λ3 x3'2 となる。 例 ⎡3 1 1⎤ A = ⎢1 5 1⎥, xT Ax = 6 ⎢1 1 3⎥ ⎦ ⎣ 3−λ 1 1 A − λI = 1 5−λ 1 =0 1 1 3−λ = (3 − λ ){(5 − λ )(3 − λ ) − 1} + (1 − 3 + λ ) + (1 − 5 + λ ) = −λ3 + 11λ2 − 36λ + 36 = −(λ − 2 )(λ − 3)(λ − 6 ) = 0 Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 8 λ1 = 2, λ2 = 3, λ3 = 6、以下、A が対称 でP は直交行列にできることを利用。 (1) λ = 2 v11 + v21 + v31 = 0 L ① v11 + 3v21 + v31 = 0 L ② v11 + v21 + v31 = 0 L ③ ② − ① 2v21 = 0 → v21 = 0 ∴ v11 + v31 = 0 → v31 = −v21 −1 1 とすれば, v21 = 0, v31 = v11 = 2 2 (2) λ = 3 0v12 + v22 + v32 = 0 L ④ v12 + 2v22 + v32 = 0 L ⑤ v12 + v22 + 0v32 = 0 L ⑥ ⑤ − ④ v12 + v22 = 0 → v12 = −v22 ⑥ v22 + v32 = 0 → v32 = −v22 2 2 2 v122 + v22 + v32 = 3v22 = 1 と置けば、 1 → v22 = = −v12 = −v32 3 −1 −1 1 v12 = , v22 = , v32 = 3 3 3 (3) λ = 6 − 3v13 + v23 + v33 = 0L ⑦ v13 − v23 + v33 = 0L ⑧ v13 + v23 − 3v33 = 0 L ⑨ ⑧ − ⑦ 4v13 − 2v23 = 0 → v13 = v23 / 2 ⑧ − ⑨ 2v23 − 4v33 = 0 → v23 = 2v33 2 2 2 v132 + v23 + v33 = 1 + 2 2 + 1 v33 = 1 と置けば、 1 1 2 , v13 = , v23 = → v33 = 6 6 6 ⎡ 1/ 2 −1/ 3 1/ 6 ⎤ 1/ 3 2 / 6 ⎥ ∴P = ⎢ 0 ⎥ ⎢ ⎢⎣− 1 / 2 − 1 / 3 1 / 6 ⎥⎦ ( ) P −1 = P T , x ' = P −1xと置けば、x = Px ' , すなわち、xT Ax = x 'T P T APx ' = x 'T Λ x ' = 6 ' ⎡2 0 0⎤ ⎡ x1 ⎤ x 'T Λ x = x1' x2' x3' ⎢0 3 0⎥ ⎢ x2' ⎥ ⎢0 0 6 ⎥ ⎢ ' ⎥ ⎦ ⎣⎢ x3 ⎦⎥ ⎣ = 2 x1'2 + 3 x2'2 + 6 x3'2 = 6 xi'2 の係数が固有値になっている。 [ ] Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 9 2 [考察 1ー直交性と右手系であることの説明] 2 2 x3' ∴ + + 2 = 1, 2 2 1 3 2 これは楕円面を表す。 x1' x2' ( ) ( ) x3 x3' 1θ33 2 θ31 θ22 θ11 θ12 x1 x2' x2 x ( ) ( ) p p = (− 1 / 3 ) + (1 / 3 ) + (− 1 / 3 ) = 1 p p = (1 / 6 ) + (2 / 6 ) + (1 / 6 ) = 1 p p = (1 / 2 )(− 1 / 3 ) + 0 + (− 1 / 2 )(− 1 / 3 ) = 0 p p = (1 / 2 )(1 / 6 )+ 0 + (− 1 / 2 )(1 / 6 ) = 0 p p = (− 1 / 3 )(1 / 6 )+ (1 / 3 )(2 / 6 )+ + (− 1 / 3 )(1 / 6 ) = 0 2 図 3. 楕円面 x ' = P −1xによる 座標変換 変換後の基準軸 を主軸、その方向を主方向という。 Pの各列は、各対応軸間の角の方向余弦で ある。次頁考察 2 参照。 p1=(cosθ11, cosθ21, cosθ31) p2=( cosθ12, cosθ22, cosθ32 ) p3=( cosθ13, cosθ23, cosθ33 ) 2 p1T p1 = p1 • p1 = 1 / 2 + 0 + − 1 / 2 = 1, T 2 3 ' 1 ⎡ 1/ 2 −1/ 3 1/ 6 ⎤ 1 / 3 2 / 6 ⎥ において、 P=⎢ 0 ⎢ ⎥ 1 / 2 1 / 3 1 / 6 − − ⎢⎣ ⎥⎦ ⎡1 / 6 ⎤ ⎡− 1 / 3 ⎤ ⎡ 1/ 2 ⎤ p1 = ⎢ 0 ⎥, p 2 = ⎢ 1 / 3 ⎥, p 3 = ⎢2 / 6 ⎥ ⎢ ⎥ ⎢ ⎥ ⎥ ⎢ 1 / 2 − 1 / 3 1 / 6 − ⎥⎦ ⎢⎣ ⎢⎣ ⎥⎦ ⎢⎣ ⎥⎦ とおけば、 T 3 T 1 T 1 T 2 2 2 2 2 2 2 2 3 2 3 3 すなわち、 P T P = I, ∴ P −1 = P T , 行と列を入れ換えると 逆行列になる。 p1 × p 2 = p 3 , p 2 × p 3 = p1 , p 3 × p1 = p 2 Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 10 i k p1 × p 2 = 1 / 2 −1/ 2 −1/ 3 1/ 3 −1/ 3 ( ( j 0 ) ( )( )) )( ) ( )( )) )( ) ( )( )) ) ( ) ( ) = i 0 × −1/ 3 − −1/ 2 1/ 3 + j −1/ 2 −1/ 3 − 1/ 2 −1/ 3 + k 1/ 2 −1/ 3 − −1/ 2 −1/ 3 = 1 / 6 i + 2 / 6 j + 1 / 6 k = p3 他は省略、これから、右手系であること も分かる。 [考察 2ーP-1 が方向余弦であることの説明] x ' = P −1x において、変換前の単位ベクトルを ⎡1⎤ ⎡0⎤ ⎡0⎤ ' i = ⎢0⎥, j = ⎢1⎥, k = ⎢0⎥, 変換後を、i ' , j' , kとして、 ⎢0 ⎥ ⎢0⎥ ⎢1⎥ ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ ⎡ p11 p21 p31 ⎤ T −1 P = P = ⎢ p12 p22 p32 ⎥ ≡ p1' p '2 p3' ⎢p ⎥ ⎣ 13 p23 p33 ⎦ i ' j' k ' = PT [i j k ] = PT I = PT から、 i ' j' k ' = p1' p '2 p 3' → i ' = p1' , j' = p '2 , k ' = p 3' cosθ11 = i ' • i = p1' • i = p11 , cosθ12 = i ' • j = p1' • j = p12 , cosθ13 = i ' • k = p1' • k = p13 , cosθ 21 = j' • i = p '2 • i = p21 cosθ 22 = j' • j = p '2 • j = p22 , cosθ 33 = k ' • k = p 3' • k = p33 (( (( ( [ [ [ ] ] [ ] ] 2次元では、次のようになる。 ⎡0 ⎤ ⎡1⎤ ' i = ⎢ ⎥, j = ⎢ ⎥, , 変換後を、i ' , jとして、 ⎣1⎦ ⎣0⎦ p12 ⎤ ⎡p ' ' P −1 = PT = ⎢ 11 ≡ p p 1 2 ⎣ p21 p22 ⎥⎦ i ' j' = PT [i j] = PT I = PT から、 i ' j' = p1' p '2 → i ' = p1' , j' = p '2 cosθ11 = i ' • i = p1' • i = p11 , cosθ12 = i ' • j = p1' • j = p12 , cosθ 21 = j' • i = p '2 • i = p21 , cosθ 22 = j' • j = p '2 • j = p22 p11 = cos θ とすれば、下図から、 p12 = cos(π / 2 − θ ) = sin θ p21 = cos(3π / 2 + θ ) = − sin θ p22 = cos θ [ [ ] ] [ [ ] ⎡ cos θ sin θ ⎤ P =⎢ ⎣− sin θ cos θ ⎥⎦ ⎡cos θ − sin θ ⎤ P=⎢ ⎣ sin θ cos θ ⎥⎦ T Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 ] y’,j’ y,j π θ 2 −θ θ x’,i’ x,i 3π +θ 2 11 応用3 安定判別と固有値 ( ) 例.RLC直列回路 S i E R L q C 微分方程式 di 1 dq =i iR + L + q = E , dt C dt i&, q& の式として書き直すと 1 E di R q+ i& = = − i − L dt L LC dq =i q& = dt ⎡ i& ⎤ ⎡− R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ i ⎤ ⎡ E / L ⎤ + ⎢⎣q& ⎥⎦ = ⎢⎣ 1 0 ⎥⎦ ⎢⎣q ⎥⎦ ⎢⎣ 0 ⎥⎦ ラプラス変換して、i → I , q → Q ⎡ sI − i (0 + ) ⎤ ⎡− R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ I ⎤ ⎡ E / L ⎤ + ⎢ sQ − q (0 + )⎥ = ⎢ 1 0 ⎥⎦ ⎢⎣Q ⎥⎦ ⎢⎣ 0 ⎥⎦ ⎦ ⎣ ⎣ ⎡ I ⎤ ⎡− R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ I ⎤ ⎡ E / sL + i (0 + )⎤ +⎢ s⎢ ⎥ = ⎢ + ⎥ ⎥ ⎢ ⎥ 1 0 Q Q ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ ⎣ ⎦ ⎣ q (0 ) ⎦ ( ) i 0 + = i0 , q 0 + = q0 とする。 ⎡ E / sL + i0 ⎤ ⎡I ⎤ ⎡− R / L − 1 / LC ⎤ . x = ⎢ ⎥, A = ⎢ K = ⎢⎣ q0 ⎥⎦ 0 ⎥⎦ ⎣Q ⎦ ⎣ 1 と書くと、sx = Ax + K となる。 (sI − A )x = Kと変形して、 −1 x = (sI − A ) K −1 ⎡ I ⎤ ⎡ s + R / L 1 / LC ⎤ ⎡ E / sL + i0 ⎤ ⎥⎦ ⎢⎣Q ⎥⎦ = ⎢⎣ − 1 s ⎥⎦ ⎢⎣ q0 1 ⎡ s − 1 / LC ⎤ ⎡ E / sL + i0 ⎤ = ⎢ ⎥⎦ Δ ⎣1 s + R / L ⎥⎦ ⎢⎣ q0 1 ⎡ E / L + si0 − q0 / LC ⎤ = ⎢ Δ ⎣ E / sL + i0 + sq0 + q0 R / L ⎥⎦ s + R / L 1 / LC Δ= = s 2 + sR / L + 1 / LC s −1 ≡ (s − α )(s − β ), α , β は Δ = 0 の解である。 Δ = 0 をこの系の特性方程式と呼ぶ。 α , β = −R / 2L ± (R / 2 L )2 − 1 / LC E / L + si0 − q0 / LC (s − α )(s − β ) E / L + si0 s+R/L Q= q0 + s(s − α )(s − β ) (s − α )(s − β ) I= Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 12 E / L + si0 − q0 / LC (s − α )(s − β ) E / L + si0 s+ R/L Q= q0 + s (s − α )(s − β ) (s − α )(s − β ) これから、ラプラス逆 変換して、 E / L + αi0 − q0 / LC α t E / L + β i0 − q0 / LC β t i= e + e α (α − β ) β (β − α ) β +R/L E/L E / L + α i0 α t E / L + β i0 β t α + R / L q= e + e + q 0 eα t + q0 e β t + (− α )(− β ) α (α − β ) (α − β ) (β − α ) β (β − α ) i, q は、 α , β = r ± jω と書けば、 eαt = e (r + jω )t , e βt = e (r − jω )t の項の和になっている 。 i, q が安定であるかどうか は、特性方程式の解 α、β の実数部 r の正負によって 定まる。 eα t = e r t e jω t = e r t (cos ω t + j sin ω t ) なので、実数部 r が負なら振幅 e r t が t → ∞ のとき e r t → 0 に収斂し安定である。 r > 0 のときは t の増加と共に振幅が 拡大し収斂しないので 不安定である。 α、β は、特性方程式 Δ = 0 の解で、 R / L + s 1 / LC Δ= = s 2 + sR / L + 1 / LC = 0 から求められる。 s −1 ⎡ v1 ⎤ ⎡ R / L 1 / LC ⎤ ⎡ v1 ⎤ ⎡ s + R / L 1 / LC ⎤ ⎡ v1 ⎤ s = 0 を考えると、 = ⎢⎣v2 ⎥⎦ + ⎢⎣ − 1 ⎢⎣ − 1 0 ⎥⎦ ⎢⎣v2 ⎥⎦ s ⎥⎦ ⎢⎣v2 ⎥⎦ ⎡ v1 ⎤ ⎡ − R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ − R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ v1 ⎤ となり、行列 s = = A の固有値として ⎢⎣v2 ⎥⎦ ⎢⎣ 1 ⎢⎣ 1 0 ⎥⎦ ⎢⎣v2 ⎥⎦ 0 ⎥⎦ s が求められる。 I= Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 13 固有値による安定判別 解析手順 (まとめ ) (1)一次の連立微分方程式 をたてる。 高次の場合は、変数を 必要なだけ追加して dx xn = n −1 のようにして新たな変 数 xn と式を dt 追加して一次連立形に する。 (2 )X i (s ) = L{xi (t )} etc.としてラプラス変換 した式 sX(s ) = AX (s ) + B (s ) を作る。 −1 このとき、 X (s ) = (sI − A ) B (s ) である。 (3) 特性方程式 Δ = sI − A = 0 を解き、 解 s1 , s2 , s3 , L sn を得る。 固有値は、 Ax = λ x から、A − λ I = 0 の解で λ = s、 特性方程式の解 = 固有値 である。 (4 )すべての固有値 si の実数部が負のとき 安定である。si = ri + jωi と書いたとき、 xk が、 ci e si t = ci e (ri + jωi )t = ci e ri t e jωi t の和になるが、 e jωi t は cos, sin の振動項、 e ri t がその振幅なので、 ri < 0 なら e ri t → 0 (t → ∞ ) で、 t に関わる項が消滅し安 定である。 ri > 0 のときは、振幅が拡大 し不安定である。 先の例では、 s + R / L 1 / LC Δ= = s 2 + sR / L + 1 / LC s −1 ≡ (s − s1 )(s − s2 ), 2 2 R 1 1 ⎛ R ⎞ ⎛ R ⎞ s1 , s2 = − ± ⎜ ⎟ − , ⎜ ⎟ > LC 2L ⎝ 2 L ⎠ LC ⎝ 2 L ⎠ 2 2 R 1 ⎛ R ⎞ 1 ⎛ R ⎞ ±j −⎜ ⎟ , ⎜ ⎟ < or = − LC ⎝ 2 L ⎠ LC 2L ⎝ 2L ⎠ R Re( si ) < 0 で安定。 いずれも、 > 0 ならば、 2L 実際、R, L が通常の抵抗、インダクタンス であれば、これは成立するので、この例は 常に安定となる。 Copyright (c) 2006 宮田明則技術士事務所 14
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