行列の固有値、固有ベクトルとその応用

行列の固有値、固有ベクトルとその応用
n 次の正則行列 A に対し、固有方程式 A − λi I = 0
を満たす λi (i = 1, 2, 3.L n ) を A の固有値という。
1 個の固有値に対し、(A − λi I )v i = 0 を満たす固有
ベクトル v i (i = 1, 2, 3.L n ) が得られる。
n 個の固有ベクトルを各 列とする行列 P を作ると
Λ = P −1AP は、 λi を主対角要素とし、他 の要素が
0 である行列になる。(このとき、 A = PΛ P −1 でもある。
なお、 Aが非対称で等根を持つ ときは一部の要素が 1
になる。 p.6 参照)
この応用としては、行 列の多重積、二次形式 の主
軸変換、安定判別など がある。
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1
行列の固有値
ベクトル (縦行列 ) v が座標変換行列 A に
よって、 v ' = Av = λv に変換されたとす
る。ここに、 λはスカラーである。こ の
意味は、 A による座標変換によっ ても方
向の変らないベクトル v (≡ 固有ベクトル )
⎛ v ' = λv とλ 倍される。即ち、伸縮 ( λ ≠ 1)⎞
⎜⎜
⎟⎟
⎝あるいは向きの逆転 (λ < 0 )はあり得る。⎠
があると仮定するとい うことである。
Av = λv = λIv , (I は単位行列 )と書ける。
(A − λI )v = 0,もし、(A − λI )−1 が
すなわち、
存在すれば、v = 0 になるので、 v ≠ 0 の
解があるためには、 (A − λI ) の逆行列が
存在しないことが必要 。そのためには
(A − λI ) の行列式 = 0, すなわち、
L
a11 − λ
a12
a1n −1
a1n
a21
a22 − λ L
a2 n −1
a2 n
L
L
L
L
L =0
an −11
an −12 L an −1n −1 − λ an −1n
an1
an 2
ann −1
ann − λ
L
この方程式を解くと、 n 個の λ が得られる。
n 個の λi (固有値という, i = 1, 2 L , n )を求め、次
にそれを代入して対応 する固有ベクトル v
を求める。 n個の固有ベクトルを列 要素と
して行列 P を作り、 P −1AP を作ると固有値を
対角要素とする対角行 列 Λ (ラムダ )になる。
A が対称行列のとき、 P は直交行列となり、
そのとき、 P −1 = P T である。
⎛ 直交行列とは、 i, j 列の要素を p i , p j と ⎞
⎜
⎟
するとき、
⎜
⎟
⎜
⎧i ≠ j のとき 0 ⎟
(
)
•
=
=
=
θ
δ
δ
p
p
cos
,
⎨ i = j のとき 1 ⎟
j
ij
ij
ij
⎜ i
⎩
⎜⎜
⎟⎟
(
)
p
p
が成り立つ行列である
。
と
が直交
i
j ≠i
⎝
⎠
例
[固有値]
⎡2 1⎤
A=⎢
⎣1 2⎥⎦
2−λ
1
2
= (2 − λ ) − 1 = 0
1
2−λ
λ2 − 4λ + 3 = 0
λ = 2 ± 1 = 1 or 3, λ1 = 1, λ2 = 3
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2
[固有ベクトル]
(1)λ = λ1 = 1のときの固有ベクトルを、
[v11 v21 ]T とすると、
⎡2 − 1 1 ⎤ ⎡ v11 ⎤ ⎡1 1⎤ ⎡ v11 ⎤
=
=0
⎢⎣ 1
2 − 1⎥⎦ ⎢⎣v21 ⎥⎦ ⎢⎣1 1⎥⎦ ⎢⎣v21 ⎥⎦
v11 + v21 = 0, v21 = −v11 , 第二式も同じ。
⎛ A − λI = 0 としているので、解不定 ⎞
⎟⎟
⎜⎜
⎝となり一つは任意に指定できる。 ⎠
v11 = k とすれば、v21 = −k , 絶対値が1
になるように書き直すと、
1
1
−1
1
k=
=
, v11 =
, v21 =
2
2
2
2
12 + (− 1)
(2) λ = λ2 = 3 のとき、同様にして、
1 ⎤ ⎡ v12 ⎤ ⎡− 1 1 ⎤ ⎡ v12 ⎤
⎡2 − 3
=
=0
⎢⎣ 1
2 − 3⎥⎦ ⎢⎣v22 ⎥⎦ ⎢⎣ 1 − 1⎥⎦ ⎢⎣v22 ⎥⎦
1
− v12 + v22 = 0, v12 = v22 =
2
これから、P が直交行列として得られ、
1 ⎤
−1 ⎤
⎡ 1
⎡ 1
⎥
⎥ −1 ⎢ 2
⎢ 2
2
2
P=⎢
⎥
⎥, P = ⎢ 1
1
1
1
−
⎥
⎢
⎥
⎢
2 ⎦⎥
2 ⎦⎥
⎣⎢ 2
⎣⎢ 2
1 ⎤
−1 ⎤
⎡ 1
⎡ 1
⎥
⎥ ⎡2 1 ⎤ ⎢ 2
⎢ 2
−1
2
2
P AP = ⎢
⎥
⎢ −1
⎥⎢
⎥
1
1
1
1
2
⎦⎢
⎥
⎥⎣
⎢
2 ⎦⎥
2 ⎦⎥
⎣⎢ 2
⎣⎢ 2
3 ⎤
−1 ⎤⎡ 1
⎡ 1
⎥
⎢ 2
⎥⎢ 2
2
2
=⎢
⎥
⎥⎢ −1
1
1
3
⎥
⎢
⎥⎢
2 ⎦⎥ ⎣⎢ 2
2 ⎦⎥
⎣⎢ 2
⎡1 0⎤ ⎡λ1 0 ⎤
=⎢
=⎢
=Λ
⎥
⎥
0
λ
0
3
⎣
⎦ ⎣
2⎦
−1
Λ = P AP の両辺に左から P、右から
P −1 を掛けて、A = PΛ P −1も得られる。
以下、座標変換と固有ベクトルについて
考察して見よう。
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⎧ x' = 2 x + y
⎡ x'⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎡ x ⎤
すなわち、
=
⎨ y' = x + 2 y
⎢⎣ y '⎥⎦ ⎢⎣1 2⎥⎦ ⎢⎣ y ⎥⎦
⎩
において、 y ' = 0, x ' = 0 は、座標変換後の
x ' 軸、y ' 軸を表し、それぞれ、元の座標で、
x + 2 y = 0 → y = −x / 2
2 x + y = 0 → y = −2 x
の直線を表す (図1 のx ' 軸、 y ' 軸)。
固有ベクトルの座標変 換は、
p1' p '2 = A[p1 p 2 ], すなわち、
1 ⎤
⎡ 1
⎥
⎡ p11'
p12' ⎤
⎡ p11 p12 ⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎢ 2
2
=⎢
⎢
' ⎥ = A⎢
⎢ p'
⎥
1 ⎥⎥
p
p
p
⎣1 2⎥⎦ ⎢ − 1
22 ⎦
⎣ 21
22 ⎦
⎣ 21
⎢⎣ 2
2 ⎥⎦
3 ⎤
⎡ 1
⎢ 2
⎥
2
=⎢
⎥,
1
3
−
⎢
⎥
⎢⎣ 2
2 ⎥⎦
すなわち、 p1' = 1p1 , p '2 = 3p 2 であり、座標変
換でベクトルの方向は 不変、大きさは λ 倍
になっている。また、 変換後の座標系は直
交座標系ではなくなっ ている。
[
y
y’
y=x
y’= x’
⎛ 1 1 ⎞⎛ 3 3 ⎞
,
,
⎟
⎜
⎟, ⎜
⎝ 2 2⎠ ⎝ 2 2⎠
'
p2
x
o
p1
]
1 ⎞⎛ 1
1 ⎞
⎛ 1
,−
,−
⎜
⎟, ⎜
⎟
2⎠ ⎝ 2
2⎠
⎝ 2
'
x’
y = -x
y’= -x’
図1. A による座標変換と固有ベクトル p1, p2
x − y 座標系から x'− y ' 座標系に変化し
ても、p1 , p 2 を含む直線である
y = x および y = − x の二つの直線は、
y ' = x' および y ' = − x' で変化しないこ
とが次式で分かる。
⎡ x'⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎡ x ⎤ ⎡3 x ⎤
⎢⎣ y '⎥⎦ = ⎢⎣1 2⎥⎦ ⎢⎣ x ⎥⎦ = ⎢⎣3 x ⎥⎦から、y ' = x'
⎡ x'⎤ ⎡2 1 ⎤ ⎡ x ⎤ ⎡ x ⎤
⎢⎣ y '⎥⎦ = ⎢⎣1 2⎥⎦ ⎢⎣− x ⎥⎦ = ⎢⎣− x ⎥⎦ から、y ' = − x'
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⎡2 1 1 ⎤
A = ⎢1 2 1 ⎥ の場合
⎢1 1 2 ⎥
⎦
⎣
2−λ
1
1
A − λI = 1
2−λ
1
1
1
2−λ
2−λ
1
1
1
1 2−λ
= (2 − λ )
−
+
1
2−λ 1 2−λ 1
1
2
= (2 − λ ) (2 − λ ) − 1 − 2(1 − λ )
= (2 − λ )(1 − λ )(3 − λ ) − 2(1 − λ )
= (1 − λ ){(2 − λ )(3 − λ ) − 2}
= (1 − λ ) λ2 − 5λ + 4
2
= (1 − λ ) (4 − λ ) = 0
)
λ = 1, 1, 4 (固有値に等根 1を含む。
λ = 1 のとき、
x11 + x21 + x31 = 0
x11 + x21 + x31 = 0
x11 + x21 + x31 = 0
この 3 式は同じで 3 変数に1つの式なので
2 つの変数は任意に決め られる。
仮に、 x11 = 1, x21 = −1, x31 = 0とし、
絶対値が 1 になるように変更して 、
{
}
(
)
x11 = 1 / 2 , x21 = −1 / 2 , x31 = 0
第 2 列についても、 λ = 1 として、
x12 + x22 + x32 = 0 が 3 つ得られる。
第1列と直交するように定 めるが、
仮に、x12 = x22 = 1 としてみると、 x32 = −2
絶対値が1 になるように決めなお すと、
x13 = x23 = −1 / 6 , x33 = 2 / 6 となる。
λ = 4 のとき、
− 2 x11 + x21 + x31 = 0 L ①
x11 − 2 x21 + x31 = 0 L ②
x11 + x21 − 2 x31 = 0 L ③
① − ② − 3 x11 + 3 x21 = 0
② × 2 + ③ 3 x11 − 3 x21 = 0 L上式と同じ
x11 = 1 として、 x21 = 1, x31 = 1, 絶対値が
になるよう、 x11 = x21 = x31 = 1 / 3 と変更。
結局、
⎡ 1/ 2
1/ 6 1/ 3⎤
P = ⎢− 1 / 2 1 / 6 1 / 3 ⎥
⎢
⎥
0
2
/
6
1
/
3
−
⎢⎣
⎥⎦
が得られる。
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この例のように、
一般に、 A が対称行列で固有方程 式が等
根を含む場合、固有ベ クトルの自由度が
高まるが各列間に直交 性が成り立つよう
に選ぶことができる。
A が非対称で、固有方程 式が等根を含む
場合は、対角行列では なく、それに近い
ジョルダン標準形とい う形に変形できる。
ジョルダン標準形 J は、対角要素の付近
の部分が、ジョルダン 細胞と呼ばれる次
のような形に置き換わ った形である。
⎡λi 1 ⎤
⎢⎣ 0 λi ⎥⎦ , λi が 2 重根の場合、
⎡λi 1 0 ⎤
⎢ 0 λi 1 ⎥, λi が 3 重根の場合、
⎢0 0 λ ⎥
i⎦
⎣
⎡λi 1 0 0 ⎤
⎢ 0 λi 1 L⎥
⎢ 0 0 L 1 ⎥, λi が k 重根の場合、
⎢
⎥
λ
L
0
0
i⎦
⎣
変換行列 P は、AP = PJ から、
P = [p1 p 2 L p n ], J = [j1 j2 L jn ]
(p i ,
ji は、P, J の列要素 )
として、
AP = [Ap1 Ap 2 L Ap n ],
PJ = P[j1 j2 L jn ] なので、
Ap i = Pj i
(詳細省略 )
として求められる。
練習問題Ⅰ
(1) ⎡⎢ 4 − 2 ⎤⎥, (2) ⎡⎢00..64 00..46⎤⎥, (3) ⎡⎢00..73 00..64⎤⎥
1 ⎦
⎦
⎣
⎦
⎣
⎣ 2
0 ⎤
⎡1 2
⎡1 / 2 1 / 4 1 / 4⎤
(4) ⎢2 2
2 ⎥, (5) ⎢1 / 4 1 / 2 1 / 4⎥
⎢0
⎥
⎢1 / 4 1 / 4 1 / 2⎥
2
1
⎣
⎦
⎣
⎦
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応用1 行列の多重積
推移行列の無限回積
0.7
0.4
B
0.6
図2. ストライク S とボール B の推移確率
0.3
S
⎡ ps ,n +1 ⎤ ⎡ 0.3 0.6⎤ ⎡ ps ,n ⎤
⎢ pb ,n +1 ⎥ = ⎢0.7 0.4⎥⎦ ⎢ pb ,n ⎥ → p n +1 = Ap n
⎣
⎦
⎣
⎦ ⎣
固有方程式は、
0.3 − λ
0.6
A=
= 0、これから、
0.7
0.4 − λ
λ2 − 0.7λ − 0.30 = 0
λ = 0.35 ± 0.352 + 0.30
= 0.35 ± 0.65 = −0.3 or 1.0
(1) λ = 1
− 0.7 p11 + 0.6 p21 = 0, p21 / p11 = 7 / 6
p11 = 6, p21 = 7 とする。
(2)λ = −0.3
0.6 p12 + 0.6 p22 = 0, p12 / p22 = −1
p12 = −1, p22 = 1 とする。
⎡6 − 1⎤ −1 1 ⎡ 1 1⎤
,P = ⎢
P=⎢
⎥
7
1
13 ⎣− 7 6⎥⎦
⎦
⎣
p11 p12 + p21 p22 = (− 6 × 1 + 7 ×1) ≠ 0
Aが非対称行列なので P は直交行列
ではない。
Λ = P −1 AP
1 ⎡ 1 1⎤ ⎡ 0.3 0.6⎤ ⎡6 − 1⎤
= ⎢
13 ⎣− 7 6⎥⎦ ⎢⎣0.7 0.4⎥⎦ ⎢⎣7 1 ⎥⎦
1 ⎡ 1 1⎤ ⎡6 0.3 ⎤
= ⎢
13 ⎣− 7 6⎥⎦ ⎢⎣7 − 0.3⎥⎦
1 ⎡13
0 ⎤ ⎡1
0 ⎤ ⎡λ1 0 ⎤
= ⎢
=
=
13 ⎣ 0 − 3.9⎥⎦ ⎢⎣0 − 0.3⎥⎦ ⎢⎣ 0 λ2 ⎥⎦
A = PΛ P −1 ,
A n = PΛ P −1 PΛ P −1 L PΛ P −1
= PΛ IΛ I L IΛ P −1 = PΛ n P −1 = P λi n P −1
0 ⎤ ⎡ 1 / 13 1 / 13 ⎤
⎡6 − 1⎤ ⎡1n
n
A =⎢
n
⎣7 1 ⎥⎦ ⎢⎣ 0 (− 0.3) ⎥⎦ ⎢⎣− 7 / 13 6 / 13⎥⎦
⎡6 − 1⎤ ⎡1 0⎤ ⎡ 1 / 13 1 / 13 ⎤
lim A n = ⎢
n →∞
⎣7 1 ⎥⎦ ⎢⎣0 0⎥⎦ ⎢⎣− 7 / 13 6 / 13⎥⎦
⎡6 0⎤ ⎡ 1 / 13 1 / 13 ⎤ ⎡6 / 13 6 / 13⎤
=⎢
=⎢
⎥
⎢
⎥
7
0
7
/
13
6
/
13
−
⎣
⎦⎣
⎦ ⎣7 / 13 7 / 13⎥⎦
第1球がSのとき、ps1 = 1, pb1 = 0
⎡ p ⎤ ⎡6 / 13 6 / 13⎤ ⎡1⎤ ⎡6 / 13⎤
lim ⎢ s ,n ⎥ = ⎢
=⎢
⎥
⎢
⎥
n →∞ pb , n
7
/
13
7
/
13
0
⎣
⎦
⎣
⎦
⎣7 / 13⎥⎦
⎣
⎦
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( )
7
応用2 二次形式と主軸変換
n 次元ベクトル xとn × n 対称行列 A
とで作るxT Ax を二次形式という。
⎡ x1 ⎤
x = ⎢ x2 ⎥ のとき,
⎢x ⎥
⎣ 3⎦
xT Ax
⎡ a11 a12 a13 ⎤ ⎡ x1 ⎤
= [x1 x2 x3 ]⎢a21 a22 a23 ⎥ ⎢ x2 ⎥
⎢a
⎥⎢x ⎥
a
a
32
33 ⎦ ⎣ 3 ⎦
⎣ 31
2
2
2
= a11 x1 + a22 x2 + a33 x3 + (a12 + a21 )x1 x2
+ (a23 + a32 )x2 x3 + (a31 + a13 )x3 x1
n = 3で A が対称行列のとき、
xT Ax = 1は二次曲面を表す。
(楕円面、一葉~二葉双曲面)
座標変換によって Aを対角行列に
変換すれば、固有値に等しい
'
'
, a33
の項だけになる。
a11' , a22
A の固有値から固有ベクトル行列 P を
求めると、P −1AP = Λ → A = PΛ P −1 ,
(UV )T = V T UT を利用して、
(
) (
T
)
xT Ax = xT PΛ P −1x = P T x Λ P −1x
A が対称で、P T = P −1 が成り立つとき
x ' = P −1xと変換すれば、
xT Ax = x 'T Λx ' = λ1 x1'2 + λ2 x2'2 + λ3 x3'2
となる。
例
⎡3 1 1⎤
A = ⎢1 5 1⎥, xT Ax = 6
⎢1 1 3⎥
⎦
⎣
3−λ
1
1
A − λI = 1
5−λ
1 =0
1
1
3−λ
= (3 − λ ){(5 − λ )(3 − λ ) − 1} + (1 − 3 + λ ) +
(1 − 5 + λ )
= −λ3 + 11λ2 − 36λ + 36
= −(λ − 2 )(λ − 3)(λ − 6 ) = 0
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λ1 = 2, λ2 = 3, λ3 = 6、以下、A が対称
でP は直交行列にできることを利用。
(1) λ = 2
v11 + v21 + v31 = 0 L ①
v11 + 3v21 + v31 = 0 L ②
v11 + v21 + v31 = 0 L ③
② − ① 2v21 = 0 → v21 = 0
∴ v11 + v31 = 0 → v31 = −v21
−1
1
とすれば, v21 = 0, v31 =
v11 =
2
2
(2) λ = 3
0v12 + v22 + v32 = 0 L ④
v12 + 2v22 + v32 = 0 L ⑤
v12 + v22 + 0v32 = 0 L ⑥
⑤ − ④ v12 + v22 = 0 → v12 = −v22
⑥ v22 + v32 = 0 → v32 = −v22
2
2
2
v122 + v22
+ v32
= 3v22
= 1 と置けば、
1
→ v22 =
= −v12 = −v32
3
−1
−1
1
v12 =
, v22 =
, v32 =
3
3
3
(3) λ = 6
− 3v13 + v23 + v33 = 0L ⑦
v13 − v23 + v33 = 0L ⑧
v13 + v23 − 3v33 = 0 L ⑨
⑧ − ⑦ 4v13 − 2v23 = 0 → v13 = v23 / 2
⑧ − ⑨ 2v23 − 4v33 = 0 → v23 = 2v33
2
2
2
v132 + v23
+ v33
= 1 + 2 2 + 1 v33
= 1 と置けば、
1
1
2
, v13 =
, v23 =
→ v33 =
6
6
6
⎡ 1/ 2 −1/ 3 1/ 6 ⎤
1/ 3 2 / 6 ⎥
∴P = ⎢ 0
⎥
⎢
⎢⎣− 1 / 2 − 1 / 3 1 / 6 ⎥⎦
(
)
P −1 = P T , x ' = P −1xと置けば、x = Px ' ,
すなわち、xT Ax = x 'T P T APx ' = x 'T Λ x ' = 6
'
⎡2 0 0⎤ ⎡ x1 ⎤
x 'T Λ x = x1' x2' x3' ⎢0 3 0⎥ ⎢ x2' ⎥
⎢0 0 6 ⎥ ⎢ ' ⎥
⎦ ⎣⎢ x3 ⎦⎥
⎣
= 2 x1'2 + 3 x2'2 + 6 x3'2 = 6
xi'2 の係数が固有値になっている。
[
]
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2
[考察 1ー直交性と右手系であることの説明]
2
2
x3'
∴
+
+ 2 = 1,
2
2
1
3
2
これは楕円面を表す。
x1'
x2'
( ) ( )
x3
x3'
1θ33
2
θ31
θ22
θ11 θ12
x1
x2'
x2
x
( ) (
)
p p = (− 1 / 3 ) + (1 / 3 ) + (− 1 / 3 ) = 1
p p = (1 / 6 ) + (2 / 6 ) + (1 / 6 ) = 1
p p = (1 / 2 )(− 1 / 3 ) + 0 + (− 1 / 2 )(− 1 / 3 ) = 0
p p = (1 / 2 )(1 / 6 )+ 0 + (− 1 / 2 )(1 / 6 ) = 0
p p = (− 1 / 3 )(1 / 6 )+ (1 / 3 )(2 / 6 )+
+ (− 1 / 3 )(1 / 6 ) = 0
2
図 3. 楕円面
x ' = P −1xによる
座標変換 変換後の基準軸
を主軸、その方向を主方向という。
Pの各列は、各対応軸間の角の方向余弦で
ある。次頁考察 2 参照。
p1=(cosθ11, cosθ21, cosθ31)
p2=( cosθ12, cosθ22, cosθ32 )
p3=( cosθ13, cosθ23, cosθ33 )
2
p1T p1 = p1 • p1 = 1 / 2 + 0 + − 1 / 2 = 1,
T
2
3
'
1
⎡ 1/ 2 −1/ 3 1/ 6 ⎤
1 / 3 2 / 6 ⎥ において、
P=⎢ 0
⎢
⎥
1
/
2
1
/
3
1
/
6
−
−
⎢⎣
⎥⎦
⎡1 / 6 ⎤
⎡− 1 / 3 ⎤
⎡ 1/ 2 ⎤
p1 = ⎢ 0 ⎥, p 2 = ⎢ 1 / 3 ⎥, p 3 = ⎢2 / 6 ⎥
⎢
⎥
⎢
⎥
⎥
⎢
1
/
2
−
1
/
3
1
/
6
−
⎥⎦
⎢⎣
⎢⎣
⎥⎦
⎢⎣
⎥⎦
とおけば、
T
3
T
1
T
1
T
2
2
2
2
2
2
2
2
3
2
3
3
すなわち、
P T P = I, ∴ P −1 = P T , 行と列を入れ換えると
逆行列になる。
p1 × p 2 = p 3 , p 2 × p 3 = p1 , p 3 × p1 = p 2
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i
k
p1 × p 2 = 1 / 2
−1/ 2
−1/ 3 1/ 3 −1/ 3
( (
j
0
) (
)( ))
)(
) ( )(
))
)(
) (
)(
))
) ( ) ( )
= i 0 × −1/ 3 − −1/ 2 1/ 3 +
j −1/ 2 −1/ 3 − 1/ 2 −1/ 3 +
k 1/ 2 −1/ 3 − −1/ 2 −1/ 3
= 1 / 6 i + 2 / 6 j + 1 / 6 k = p3
他は省略、これから、右手系であること
も分かる。
[考察 2ーP-1 が方向余弦であることの説明]
x ' = P −1x において、変換前の単位ベクトルを
⎡1⎤
⎡0⎤
⎡0⎤
'
i = ⎢0⎥, j = ⎢1⎥, k = ⎢0⎥, 変換後を、i ' , j' , kとして、
⎢0 ⎥
⎢0⎥
⎢1⎥
⎣ ⎦
⎣ ⎦
⎣ ⎦
⎡ p11 p21 p31 ⎤
T
−1
P = P = ⎢ p12 p22 p32 ⎥ ≡ p1' p '2 p3'
⎢p
⎥
⎣ 13 p23 p33 ⎦
i ' j' k ' = PT [i j k ] = PT I = PT から、
i ' j' k ' = p1' p '2 p 3' → i ' = p1' , j' = p '2 , k ' = p 3'
cosθ11 = i ' • i = p1' • i = p11 , cosθ12 = i ' • j = p1' • j = p12 ,
cosθ13 = i ' • k = p1' • k = p13 , cosθ 21 = j' • i = p '2 • i = p21
cosθ 22 = j' • j = p '2 • j = p22 , cosθ 33 = k ' • k = p 3' • k = p33
((
((
(
[
[
[
]
] [
]
]
2次元では、次のようになる。
⎡0 ⎤
⎡1⎤
'
i = ⎢ ⎥, j = ⎢ ⎥, , 変換後を、i ' , jとして、
⎣1⎦
⎣0⎦
p12 ⎤
⎡p
'
'
P −1 = PT = ⎢ 11
≡
p
p
1
2
⎣ p21 p22 ⎥⎦
i ' j' = PT [i j] = PT I = PT から、
i ' j' = p1' p '2 → i ' = p1' , j' = p '2
cosθ11 = i ' • i = p1' • i = p11 ,
cosθ12 = i ' • j = p1' • j = p12 ,
cosθ 21 = j' • i = p '2 • i = p21 ,
cosθ 22 = j' • j = p '2 • j = p22
p11 = cos θ とすれば、下図から、
p12 = cos(π / 2 − θ ) = sin θ
p21 = cos(3π / 2 + θ ) = − sin θ
p22 = cos θ
[
[
]
] [
[
]
⎡ cos θ sin θ ⎤
P =⎢
⎣− sin θ cos θ ⎥⎦
⎡cos θ − sin θ ⎤
P=⎢
⎣ sin θ cos θ ⎥⎦
T
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]
y’,j’ y,j
π
θ 2 −θ
θ
x’,i’
x,i
3π
+θ
2
11
応用3
安定判別と固有値
( )
例.RLC直列回路
S
i
E
R
L
q
C
微分方程式
di 1
dq
=i
iR + L + q = E ,
dt C
dt
i&, q& の式として書き直すと
1
E
di
R
q+
i& = = − i −
L
dt
L
LC
dq
=i
q& =
dt
⎡ i& ⎤ ⎡− R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ i ⎤ ⎡ E / L ⎤
+
⎢⎣q& ⎥⎦ = ⎢⎣ 1
0 ⎥⎦ ⎢⎣q ⎥⎦ ⎢⎣ 0 ⎥⎦
ラプラス変換して、i → I , q → Q
⎡ sI − i (0 + ) ⎤ ⎡− R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ I ⎤ ⎡ E / L ⎤
+
⎢ sQ − q (0 + )⎥ = ⎢ 1
0 ⎥⎦ ⎢⎣Q ⎥⎦ ⎢⎣ 0 ⎥⎦
⎦ ⎣
⎣
⎡ I ⎤ ⎡− R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ I ⎤ ⎡ E / sL + i (0 + )⎤
+⎢
s⎢ ⎥ = ⎢
+
⎥
⎥
⎢
⎥
1
0
Q
Q
⎣ ⎦ ⎣
⎦ ⎣ ⎦ ⎣ q (0 ) ⎦
( )
i 0 + = i0 , q 0 + = q0 とする。
⎡ E / sL + i0 ⎤
⎡I ⎤
⎡− R / L − 1 / LC ⎤
.
x = ⎢ ⎥, A = ⎢
K
=
⎢⎣ q0
⎥⎦
0 ⎥⎦
⎣Q ⎦
⎣ 1
と書くと、sx = Ax + K となる。
(sI − A )x = Kと変形して、
−1
x = (sI − A ) K
−1
⎡ I ⎤ ⎡ s + R / L 1 / LC ⎤ ⎡ E / sL + i0 ⎤
⎥⎦
⎢⎣Q ⎥⎦ = ⎢⎣ − 1
s ⎥⎦ ⎢⎣ q0
1 ⎡ s − 1 / LC ⎤ ⎡ E / sL + i0 ⎤
= ⎢
⎥⎦
Δ ⎣1 s + R / L ⎥⎦ ⎢⎣ q0
1 ⎡ E / L + si0 − q0 / LC ⎤
= ⎢
Δ ⎣ E / sL + i0 + sq0 + q0 R / L ⎥⎦
s + R / L 1 / LC
Δ=
= s 2 + sR / L + 1 / LC
s
−1
≡ (s − α )(s − β ), α , β は Δ = 0 の解である。
Δ = 0 をこの系の特性方程式と呼ぶ。
α , β = −R / 2L ±
(R / 2 L )2 − 1 / LC
E / L + si0 − q0 / LC
(s − α )(s − β )
E / L + si0
s+R/L
Q=
q0
+
s(s − α )(s − β ) (s − α )(s − β )
I=
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E / L + si0 − q0 / LC
(s − α )(s − β )
E / L + si0
s+ R/L
Q=
q0
+
s (s − α )(s − β ) (s − α )(s − β )
これから、ラプラス逆 変換して、
E / L + αi0 − q0 / LC α t E / L + β i0 − q0 / LC β t
i=
e +
e
α (α − β )
β (β − α )
β +R/L
E/L
E / L + α i0 α t E / L + β i0 β t α + R / L
q=
e +
e +
q 0 eα t +
q0 e β t
+
(− α )(− β ) α (α − β )
(α − β )
(β − α )
β (β − α )
i, q は、 α , β = r ± jω と書けば、 eαt = e (r + jω )t , e βt = e (r − jω )t の項の和になっている 。
i, q が安定であるかどうか は、特性方程式の解 α、β の実数部 r の正負によって
定まる。 eα t = e r t e jω t = e r t (cos ω t + j sin ω t ) なので、実数部 r が負なら振幅 e r t が
t → ∞ のとき e r t → 0 に収斂し安定である。 r > 0 のときは t の増加と共に振幅が
拡大し収斂しないので 不安定である。
α、β は、特性方程式 Δ = 0 の解で、
R / L + s 1 / LC
Δ=
= s 2 + sR / L + 1 / LC = 0 から求められる。
s
−1
⎡ v1 ⎤ ⎡ R / L 1 / LC ⎤ ⎡ v1 ⎤
⎡ s + R / L 1 / LC ⎤ ⎡ v1 ⎤
s
= 0 を考えると、
=
⎢⎣v2 ⎥⎦ + ⎢⎣ − 1
⎢⎣ − 1
0 ⎥⎦ ⎢⎣v2 ⎥⎦
s ⎥⎦ ⎢⎣v2 ⎥⎦
⎡ v1 ⎤
⎡ − R / L − 1 / LC ⎤
⎡ − R / L − 1 / LC ⎤ ⎡ v1 ⎤
となり、行列
s
=
= A の固有値として
⎢⎣v2 ⎥⎦
⎢⎣ 1
⎢⎣ 1
0 ⎥⎦ ⎢⎣v2 ⎥⎦
0 ⎥⎦
s が求められる。
I=
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固有値による安定判別 解析手順 (まとめ )
(1)一次の連立微分方程式 をたてる。
高次の場合は、変数を 必要なだけ追加して
dx
xn = n −1 のようにして新たな変 数 xn と式を
dt
追加して一次連立形に する。
(2 )X i (s ) = L{xi (t )} etc.としてラプラス変換
した式 sX(s ) = AX (s ) + B (s ) を作る。
−1
このとき、 X (s ) = (sI − A ) B (s ) である。
(3) 特性方程式 Δ = sI − A = 0 を解き、
解 s1 , s2 , s3 , L sn を得る。
固有値は、 Ax = λ x から、A − λ I = 0 の解で
λ = s、
特性方程式の解 = 固有値 である。
(4 )すべての固有値 si の実数部が負のとき
安定である。si = ri + jωi と書いたとき、 xk が、
ci e si t = ci e (ri + jωi )t = ci e ri t e jωi t
の和になるが、 e jωi t は cos, sin の振動項、 e ri t
がその振幅なので、 ri < 0 なら e ri t → 0 (t → ∞ )
で、
t に関わる項が消滅し安 定である。
ri > 0 のときは、振幅が拡大 し不安定である。
先の例では、
s + R / L 1 / LC
Δ=
= s 2 + sR / L + 1 / LC
s
−1
≡ (s − s1 )(s − s2 ),
2
2
R
1
1
⎛ R ⎞
⎛ R ⎞
s1 , s2 = −
± ⎜ ⎟ −
, ⎜ ⎟ >
LC
2L
⎝ 2 L ⎠ LC ⎝ 2 L ⎠
2
2
R
1 ⎛ R ⎞
1
⎛ R ⎞
±j
−⎜ ⎟ , ⎜ ⎟ <
or = −
LC ⎝ 2 L ⎠
LC
2L
⎝ 2L ⎠
R
Re( si ) < 0 で安定。
いずれも、 > 0 ならば、
2L
実際、R, L が通常の抵抗、インダクタンス
であれば、これは成立するので、この例は
常に安定となる。
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