おりおりの山 第74回

おりおりの山 第74回
2015 年 12 月 1 日
作者プロフィール
柚木 文夫氏 千葉県隊友会会員 習志野支部長 桧町陸幕 平成 2 年退官 1958 年防衛大学卒
元防大山岳部監督 現自衛隊山岳連盟会長
滝子山-冬枯れを一人行く-
初狩駅から仰ぐ滝子山
中央線の初狩駅付近から見て北に聳
え る 堂 々 た る 山 容 の 山 が 、大 菩 薩 連 嶺 最
南 端 の 山 ・ 滝 子 山 ( 1610 ㍍ ) で あ る 。
1 2 月 中 旬 、そ の 真 っ 正 面 を 直 路 頂 上 に
突き上げる寂悄尾根を登った。
移動性高気圧が日本の真上に居座っ
た 晴 天 の 9 時 4 0 分 、笹 子 駅 下 車 。下 車
し た 登 山 客 が 5 ~ 6 人 見 え た が 、滝 子 山
に 向 か う の は 私 だ け ら し い 。国 道 2 0 号
を 初 狩 方 向 に 進 み 、J R 下 の ガ ー ド を 潜
り 、 1 0 時 2 0 分 、 桜 公 園 に 到 着 し 、こ
こで身支度を整えた。
1 0 時 半 、大 鹿 沢 を 左 岸 に 渡 り 、寂 悄
庵 の 横 手 か ら 杉 林 の 中 、い き な り 胸 を 突
く よ う な 急 登 が 始 ま る 。2 0 分 程 で 送 電
線 下 に 出 て 、い く ら か 傾 斜 も 弱 ま り 一 息
入れた。杉林
が雑木に変わ
り、冬枯れの
山はあくまで
も明るい。
間もなく林
道を横断し、
更に一登りし
て寂悄尾根の
主尾根に出た。
逃げようもな
い狭いヤセ尾
根リッジの直
岩尾根の登攀路
登である。腰
を下ろす場所
も な い 。た だ た だ 登 る だ け 。振 り 返 る と
木の間越しの富士山がやたらと大きか
った。
12時半頃から尾根は岩場の連続に
な る 。所 々 に ク サ リ が 垂 ら さ れ 、赤 ペ ン
キ の ル ー ト 標 示 も な さ れ て は い る が 、な
か な か 手 強 い 登 攀 で あ る 。慎 重 に 手 掛 か
り 足 掛 か り を 選 び 、確 実 な 三 点 確 保 を 自
問 自 答 し な が ら 登 る 。時 々 は ち ょ っ と し
た 岩 棚 を 見 つ け て 一 休 み 。そ ん な 時 、岩
棚を埋
め尽く
イワカガミ
さんば
かりに
広がる
イワカ
ガミが、
ある場
所では
チョコ
レ ー ト 色 、ま た あ る 場 所 で は 銀 青 色 に 光
り輝き、疲れを忘れさせてくれた。
1 3 時 2 0 分 頃 、P 3 の 南 面 を 巻 い て
主 稜 線 の 浜 立 尾 根 に 到 達 し 、や っ と 手 足
を 総 動 員 し て の 岩 場 登 攀 が 終 了 し た 。後
は 尾 根 道 に 沿 っ て 、P 2 、P 1 と コ ブ を
乗り越
し、滝
P2から望む山頂
子山頂
上に到
着した
のが1
3時4
0分。
誰一人
いない
山 頂 で 、富 士 山 に 向 か い 思 わ ず 万 歳 を 唱
えた自分が、我ながら可笑しかった。
大休
滝子山山頂からの富士山
止の後
は、一
般ルー
トの南
東尾根
を下山
した。
初狩駅
到 着 は 、日 も と っ ぷ り 暮 れ た 1 7 時 と な
った。