万一の備え-成年後見制度の現状 ●成年後見制度とは? 成年後見制度は、認知症などで判断能力を喪失した際 の財産管理や療養看護を依頼するものです。 成年後見は法定後見と任意後見の2つに分かれ、法定 後見は家庭裁判所が成年後見人を選任するのに対し、任 意後見は本人が元気なうちに信頼できる人を後見人とし て指定しておくことができます。 2014年末時点での制度利用者は全国で18万5千人、 うち任意後見制度の利用者は2,119人です。ただ、任意 後見契約の作成件数は年々増えており、今後利用者数は 確実に増加していくものと思われます。 成年後⾒制度は2種類に分かれる 法定 後⾒ 任意 後⾒ 判断能⼒に問題が出た後、家庭裁判所へ「成 年後⾒⼈選任」を申⽴てをすると、成年後⾒ ⼈が選任される。 ★元気なうちに本⼈が後⾒⼈を決め、公正 証書にしておく。 ★ 判断能⼒に問題が出たら、家庭裁判所へ 「任意後⾒監督⼈の選任」を申し⽴てると、 監督⼈が選任され任意後⾒契約が開始する。 ●増える親族以外の成年後見人 ●申立てのきっかけは“預金解約” 家族がいても、家庭裁判所が第三者を成年後見人 に選任するケースが増えています。 2014年中の成年後見申立約34,000件のうち3 割が子からの申し立てで、配偶者などを含めると8割 が親族からの申し立てとなっています。 しかし選任された成年後見人はというと、下記グ ラフのように、親族は全体の35%(子は19%)にと どまります。 一方第三者の成年後見人は全体の65%を占め、特 に司法書士(26%)や弁護士(20%)が目立ちます。 成年後見人選任申立ては、家庭裁判所へ申立書、財 産目録等を提出して行います。本人の戸籍謄本や診 断書のほか、申立人についても書類が必要で、後見人 候補者がいれば説明書類などを提出します。その際、 家族を後見人候補として申請できますが、前述の通 り第三者が選任されることがあります。 申立てのきっかけは“預貯金の管理・解約”が最も 多く、ついで“介護保険契約(施設入所等のため)”、 他に不動産の処分、相続手続きなど。 成年後見人は申立ててもすぐに決まりません。地 域によって違いがありますが、例えば東京家庭裁判 所では、申立てから選任まで3ヵ月半かかります。 親族全体で11,937件 ●減らない成年後見人の犯罪 親族以外の成年後見人が選任される背景 には、家族による犯罪が後を絶たないことが あります。 昨年1年間の成年後見人による悪用被害は 831件で、被害額は56億円にのぼりました。9割は 親族の犯罪ですが、1割は司法書士や弁護士といった 第三者後見人による犯罪で(被害件数22件)、こう なると誰を信頼すればいいのか…。 成年後見人の監督責任は家庭裁判所にあります が、年に1回程度の事務報告では犯罪を未然に防ぐ ことができないのが実態です。後見人の監督制度に は抜本的な改革が必要でしょう。 NEWS RELEASE 2015.9 ●成年後見人の仕事は? 勘違いされている方も多いですが、成年後見人の 仕事は実際におむつをかえたり、家事をすることで はなく、本人の生活全体を管理してあげることです。 ■就任時 本人の財産に関する調査と目録、年間収支 予定表を家庭裁判所に提出(1ヵ月以内)。 ■日常業務 【療養看護】医療に関する契約や施設への入所契 約、介護に関する契約などの締結等。 【財産管理】預金引出や支払の管理。収入や支出は 金銭出納帳をつけて管理。贈与や貸付は不可。 ■臨時業務 必要な場合の不動産売却(自宅は、家庭裁判所 の許可が必要)遺産分割協議、税務申告等。 ■最後の業務 本人の死亡で契約は終了。 死後2ヵ月以内に財産状況を家庭裁判所へ報告。 家族の場合無報酬がほとんどですが、第三者の後 見人には家庭裁判所が決めた報酬(相場は月額3-5 万円)を支払うこととなります。報酬支払を避けるた め、家族が成年後見申立てを先送りにする事例も実 際あるようです。 Copyright© EIWA Consulting, Inc. All Rights Reserved
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