高知県地震防災研究会・2015年度技術発表会報告書

高知県地震防災研究会・2015年度技術発表会報告書
7 月1 1日 ( 土曜 日 )に 高知 市 文化 プラ ザ かる ぽ ーと にて 、 恒例 の技 術 発表 会 を下 記の プ ロ
グラ ムで 開催 し まし た 。出 席者 は 、官 公庁 関 係の 方 が7 名、 民 間企 業の 方 が2 2 名、 コン サ ル
タン ト関 係が 4 3名 、 一般 の方 が 14 名、 報 道関 係 5名 、会 員 8名 その 他 当日 参 加や 講師 の 方
を含 める と合 計 10 7 名で した 。
13:20 ∼ 13:25
(5分)
開会挨拶
高知県地震防災研究会 会長
13:25 ∼ 14:55
(90分)
「新想定の津波に備える」 ∼津波からの避難行動は、どうあるべきか!∼
高知工科大学 教授
甲斐 芳郎氏(工学博士)
14:55 ∼ 15:05
(10分)
休憩
15:05 ∼ 15:50
(45分)
高知県の南海トラフ地震対策の取り組み
高知県危機管理部南海トラフ地震対策課 課長 竹 幸博氏
15:50 ∼ 16:00
(10分)
休憩
16:00 ∼ 16:45
(45分)
耐えるか切り離すか、コントロールするか!
高知県地震防災研究会 会長
吉川 正昭(工学博士)
16:45 ∼ 16:50
(5分)
閉会挨拶
高知県地震防災研究会 事務局長
吉川 正昭(工学博士)
小川 修(技術士)
ま ず最 初甲 斐 先生 に 津波 避難 を 中心 とし た 講演 を 行っ て頂 き まし た。 甲 斐先 生 は、 東京 大 学
を卒 業後 清水 建 設に 長 く勤 めら れ 、そ の後 独 立行 政 法人 防災 科 学技 術研 究 所を 経 て、 高知 工 科
大学 で現 在は ご 活躍 さ れて いま す 。後 で聞 い た話 で すが 清水 建 設で は原 子 力関 係 の仕 事に 従 事
され てい たそ う です 。
講 演内 容と し ては 、 東北 地方 太 平洋 沖地 震 や世 界 各地 の過 去 の大 規模 な 地震 か らの 教訓 、 兵
庫県 南部 地震 な どの 犠 牲者 や火 災 被害 原因 の 分析 、 津波 の浸 水 深と 死亡 率 の関 係 など 多岐 に わ
たっ てお 話を し て頂 き まし た。 ま た、 高知 工 科大 学 で行 って い るシ ミュ レ ーシ ョ ンの 中で 高 知
市内 の津 波避 難 ビル へ の避 難行 動 と現 橋の 落 橋の 有 無と の相 関 解析 事例 や 、地 震 に備 える 建 築
物の 耐震 補強 な どに つ いて も講 義 して 頂き ま した 。 個人 的に 最 も印 象に 残 って い るの は、 自 宅
の耐 震補 強は 自 分の た めだ けで は ない 、自 宅 が崩 壊 すれ ば避 難 路を ふさ ぎ 、他 の 人に も迷 惑 を
かけ ると の内 容 です 。 また 、東 北 地方 太平 洋 沖地 震 の際 に、 沖 に向 かっ て 進む 舟 が津 波を 乗 り
越え るビ デオ は 臨場 感 があ り、 津 波の 大き さ を実 体 験し たか の よう でし た 。
1
甲斐 教授 の 講演 内 容の 一部
2
【甲 斐教 授 の講 演 の様 子 】
続 いて 、高 知 県危 機 管理 部南 海 トラ フ地 震 対策 課 の竹
課 長 から 「高 知 県の 南 海ト ラフ 地 震
の取 り組 み」 と 題し て 、最 新の 高 知県 の地 震 対策 の 状況 に関 す る講 演を し て頂 き まし た。
内 容と して は 、1 . 被害 想定 の 現状
策の 取り 組み
4. 地 域本 部の 体 制強 化
2 . 事前 投 資に よる 減 災効 果
3 .南 海 トラ フ地 震 対
の 組み 立 てで した 。
2 .事 前投 資 によ る 減災 効果 で は、 避難 意 識の 向 上・ 避難 空 間の 確保 ・ 建築 物 の耐 震化 を 第
一対 策と して 死 者数 を 減ら し、 続 いて 建築 物 の耐 震 化に よる さ らな る減 災 、そ し て最 終的 に は
限り なく 死者 数 をゼ ロ にす ると い う高 知県 の 力強 い 取り 組み が 示さ れま し た。 3 .南 海ト ラ フ
地震 対策 の取 り 組み で は、 列車 に 見立 てた 全 体イ メ ージ 図で わ かり やす く 説明 し て頂 きま し た。
また 、実 際の 現 地で の 避難 計画 に 対す る点 検 実施 作 業が 順次 行 われ てゆ く こと も 教え て頂 き ま
した 。
【竹
課 長 の講 演 の様 子 】
3
13 事前投資による減災効果(高知県における事前対策の効果)
事前対策による死者数の軽減
津波避難意識の向上
避難空間の確保
建築物の耐震化
【現状】
さらなる取り組み
の充実
建築物の耐震化
【平成27年度末】
【将来】
死 者 数:約 42,000人
負傷者数:約 36,000人
避難者数:約438,000人
死者数:約11,000人
津波早期避難率:20%
住宅耐震化率 :74%
津波避難空間 :24%
津波早期避難率:100%
住宅耐震化率 : 77%
津波避難空間 :100%
死者数
−31,000人
死者数:約1,800人
限りなく
ゼロに!!
津波早期避難率:100%
住宅耐震化率 :100%
津波避難空間 :100%
死者数
−9,200人
対策による被害軽減効果
建物倒壊による死者数の軽減
津波による死者数の軽減
50,000
40,000
36,000
30,000
20,000
6,400
10,000
0
現状
早期避難率
20%
5,200
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
-82%
3年後
3年後
早期避難率
早期避難率
100%
100%
建物倒壊による負傷者数の軽減
40,000
-90%
33,000
30,000
4,900
-80%
31,000
20,000
6,500
10,000
510
0
現状
耐震化率
74%
3年後
耐震化率
77%
現状
耐震化率
74%
対策後
対策後
耐震化率
耐震化率
100%
100%
3年後
耐震化率
77%
対策後
耐震化率
100%
14
14 南海トラフ地震対策の全体イメージ
揺れ対策
震災に
備える
・
・・
サ・
ワ・
ソ・
テ・
ュ・
・
・
ス・
・・
・・
・
高知県耐震改修
促進計画
震災に備える
ことは、
速やかな復興
にもつながる
復興を
イメージ
津波対策
■既存建物の耐震化の促進
・住宅
・学校等の公共施設
・医療施設、社会福祉施設
■室内の安全確保対策
・家具転倒防止
など
・
ス・
・・
ツ・
ネ・
ョ
■避難対策(津波避難路・避難場所、
避難タワー・シェルターの整備)
■津波・浸水被害の軽減
■避難訓練
など
地域津波避難計画
応急対策
■市街地の大規模火災等への対策
(出火防止、延焼防止、避難対策)
■津波火災への対策
(石油基地の津波火災対策、農業用・
漁業用燃料タンクの対策)
(海岸堤防等の耐震化)
津波避難タワー設
計のための手引き
など
災害時における要配慮者の
避難支援ガイドライン
避難所対策
(公共用地等の一時的な利用の競合調整)
■応援部隊・物資等の受入体制
■がれき処理
など
災害時
保健活動
ガイドライン
■前方展開型の医療救護活動の実現(※)
・医療救護所等の整備強化
・医師等の総動員のための研修制度の
創設
など
など
南海トラフ地震時
栄養・食生活支援
活動ガイドライン
災害時の
心のケア
マニュアル
地震火災対策指針
(作成中)
医療救護対策
■避難所・福祉避難所の
確保と運営
■要配慮者への支援
■保健・衛生活動の充実
■総合防災拠点の整備
■活動用燃料の確保
■応急期の機能配置
大規模災害に備えた
避難所運営マニュア
ル作成の手引き
火災対策
広域
火葬
計画
※負傷者を後方搬送が出来ない状況を想定し、前方である
負傷者に近い場所で行う医療救護活動を強化すること
災害廃棄物
処理計画
道路啓
開計画
災害時医療
救護計画
応急救助機
関受援計画
(作成中)
する
復興を
イメージ
することで、
事前の備えの
重要性が明確
になる
・
カ・
・・
・・
ァ・
ソ・
・・
ー・
・
土地利用
復興
■復興の考え方の整理
■産業の復興(BCP策定等)
■高台移転も含めた事前復興
■地籍調査
■復興をにらんだ機能配置
(公共用地等の長期・恒久的な利用)
■生活の拠点となる住宅の確保
(仮設住宅・公営住宅)
など
■生活を支える拠点のあり方(復興マーケット等)
など
応急仮設住宅供給計画
(作成中)
災害公営住宅建設計画
(作成中)
復興都市計画
(作成中)
15
竹
課長 講演 資 料の 一 部
4
最 後に 当会 の 会長 で ある 吉川 よ り「 耐え る か切 り 離す か、 コ ント ロー ル する か !」 と題 し て
今ま での 経験 や 最近 の 知見 など に つい て発 表 があ り まし た。 内 容と して は 、プ レ ート の話 や 四
国地 域の 中央 構 造線 ・ 仏像 構造 線 など の話 、 原発 や 原子 力に 関 する 話、 大 規模 地 震時 には 津 波
だけ でな く崖 崩 れな ど の山 津波 も 危険 であ る こと 、 最近 免震 支 承問 題で 話 題な っ てい る免 震 ビ
ルに 関す る話 な ど多 種 多様 でし た 。ま た、 免 震ビ ル の件 に関 し ては 高知 高 専の 池 田先 生か ら も
飛び 入り の形 で 話を 頂 きま した 。
【発 表 を行 う吉 川 会長 】
ま た、 最後 に 宇佐 町 自主 防災 連 絡協 議会 の 活動 内 容な どに つ いて 、代 表 の中 村 不二 夫さ ん よ
り簡 単に 説明 を して 頂 きま した 。
【宇佐 町 自主 防 災連 絡協 議 会に つい て説 明 する中 村 不二 夫さん】
5
【熱 心に 聴 講する 参加 者 の方 々 】
6
【熱 心に 聴 講する 参加 者 の方 々 】
【甲 斐教 授 を囲 んでの 会員 との懇 談 会? の様 子 】
【受 付の 様 子】
【事 務局 の 司会 進 行の 様 子】
7
「事務 局 の雑 感 」
・今 年も 、例 年 通り 「 かる ぽー と 」を 借り て 実施 し まし た。 場 所の 確保 方 法は 、 昨年 まで の く
じ引 きで はな く 、数 ヶ 月前 から の 電話 申し 込 みで 出 来る スタ イ ルに 変更 に なっ て おり 、比 較 的
楽な 会場 確保 で した 。
・本 年も 昨年 に 引き 続 き、 土木 学 会か ら補 助 金を 頂 くこ とが で き非 常に 助 かり ま した 。い つ も
お世 話に なっ て いる 横 井先 生大 変 あり がと う ござ い ます 。
・講 演を して 頂 いた 工 科大 の甲 斐 教授 、高 知 県の 竹
課 長、 大 変お 世話 に なり ま した 。
・今 年は 、初 め て参 加 者が 10 0 名超 えと な りま し た。 参加 者 の中 には 毎 年の よ うに 来て く だ
さっ てい る方 も 多々 お り、 あり が たい 限り で す。
・今 年も 県外 か らの 参 加者 も有 り 、遠 くか ら の参 加 には 大変 感 謝い たし ま す。 特 に国 交省 の S
事務 所の 所長 さ んは 、 ここ 数年 続 けて 参加 し て頂 き 、ご 自身 の ブロ グに も 発表 会 内容 を載 せ て
頂い てい ます 。 あり が とう ござ い ます 。
・高 知県 の取 り 組み に 関し ては 、 当然 のこ と なが ら 年々 具体 的 に進 んで い るな あ と実 感し ま す。
・今 年も NH K さん に 取材 して 頂 き、 あり が とう ご ざい まし た 。
・7 月は 毎年 台 風が や って くる こ とが 多く 、 今年 も 1週 間開 催 日が ずれ て いた ら 、影 響が 出 て
いた かも しれ ま せん 。 当日 は梅 雨 の最 中で し たが 、 幸い 雨も 降 らず 、打 ち 上げ 場 所へ の移 動 も
濡れ ずに いけ て 、よ か った ・よ か った 。
・国 交省 のプ ロ ポ要 件 にC PD 取 得数 が反 映 され る よう にな っ たり 、建 コ ンの C PD 登録 が 証
明書 を必 要と す るよ う にな った 関 係か ら、 本 年は 昨 年の 倍く ら いC PD 証 明書 を 必要 とす る 方
が増 えま した 。 手数 料 を1 00 0 円頂 いた 関 係か ら 、運 営費 が 楽に なり ま した 。 大事 に使 わ せ
て頂 きま す。
・高 知県 土木 施 工管 理 技士 会の 方 々に も、 当 日の 証 明書 発行 や その 他大 変 お世 話 にな りま し た。
会場 の人 数の 関 係か ら 、受 付を お 断り した 施 工会 社 の方 もか な り出 てき て 、ご 迷 惑を おか け し
まし た。 ただ 、 10 0 名以 上の 会 場は かな り 大が か りに なり 、 費用 も高 く なる た め申 し訳 あ り
ませ ん。
・宇 佐自 主防 災 連絡 協 議会 では 、 宇佐 港内 の 潮位 観 測に よる 警 戒情 報発 信 シス テ ムを 構築 し て
運用 を始 めて い ます 。 ただ し、 そ の費 用は ど こか ら も補 助が な く、 協議 会 でま か なっ てい る ら
しい です 。こ の ため 、 寄付 のお 願 いも ホー ム ペー ジ 内に あり ま すの で、 是 非ホ ー ムペ ージ を ご
覧く ださ い。 ( http://www.usabousai.com)
・我 々は 、実 質 的に は 10 名程 度 の個 人会 員 によ り 構成 され て おり 、細 く 長く 活 動を 続け て お
りま す。 昨年 か らど ち らか と言 う と講 演会 開 催の 会 のよ うに な りま した が 、又 来 年も 開催 す る
よう にな れば 、 頑張 り たい と考 え てい ます の で、 よ ろし くお 願 いい たし ま す。
『事務 局 ・小 川』
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