為替市場へのマイナス金利政策の影響

楽読
2016年3月9日
Vol.
1,078
(ラクヨミ)
為替市場へのマイナス金利政策の影響
~先行する欧州の事例を参考に~
日本銀行は、 2月中旬からマイナス金利政策を実施しましたが、世界経済の先行き不透明感などを背景に、
投資家のリスク回避的な動きが強まったことや、同政策の効果について懐疑的な見方が拡がったことで、為
替が円高傾向となるなど、当初の予想とは異なる動きが見られました。
日銀のマイナス金利政策のねらいとして、物価安定目標の実現に向け当局の強いコミットメントを示すことで、
人々の予想物価上昇率を引き上げるとともに、様々な期間の金利を全体的に引き下げて実質金利(物価を
考慮した金利)を低下させ、設備投資や住宅投資などを活発化させることがあります。また、預金からリスク
資産への資金移動を促すことや、内外金利差の拡大などから為替を円安方向へ促す作用が期待されます。
マイナス金利政策で先行する欧州では、2012年にデンマーク、2014年から2015年にかけて、ユーロ圏、スイ
ス、スウェーデンが同政策を導入しました。その目的として、デンマークやスイスは、他国からの資金流入に
よる自国通貨の過度な上昇の防止としています。ユーロ圏やスウェーデンは、景気後退やデフレ懸念対策と
していますが、為替対策の要素が強いとされています。実際、為替市場では、マイナス金利導入決定後に対
ユーロの上限が撤廃されたスイス・フランを除き、欧州の中央銀行がマイナス金利幅を拡大する過程で、各
通貨は下落基調となるなど一定の効果につながりました。ただし、欧州のインフレ率は依然として低い水準に
留まり、物価の押し上げ効果は限定的となっています。
日本でも、物価への効果が表れるまで時間を要するとみられるものの、日銀は状況次第でマイナス幅を拡大
する可能性を示唆しており、欧州同様に、中長期的には通貨安方向へ作用すると考えられます。また、米国
の利上げに対する不透明感が続くなか、足元では米ドルが力強く上昇する環境にはないものの、米国経済
は改善が続いており、いずれ米ドルの上昇圧力も高まるとみられます。こうしたことなどから、今後、金融市
場が落ち着くにつれて、為替市場において円安傾向に向かうことが期待されます。
マイナス金利政策を導入する欧州各国の政策金利等と為替の推移
(2012年1月末~2016年2月末)
デンマーク
(%)
0.5
(クローネ)
CD金利(左軸)
0.0
通貨高
7.44
-0.5
7.46
12/1
13/1
14/1
15/1
ユーロ圏
(%)
7.48
16/1 (年/月)
(米ドル)
0.4
ユーロ(対米
ドル、右軸)
0.2
0.0
-0.2
預金ファシリティ金利(左軸)
-0.4
12/1
13/1
14/1
15/1
1.4
通貨高
(フラン)
0.5
1.0
LIBOR誘導目標(左軸)
0.0
1.1
-0.5
1.2
通貨安
クローネ(対ユーロ、右軸)
-1.0
スイス
(%)
7.42
通貨安
フラン(対ユーロ、右軸)
-1.0
12/1
(%)
2.0
13/1
14/1
1.3
16/1(年/月)
15/1
スウェーデン
(クローナ)
レポレート(左軸)
8.0
1.3
1.0
8.5
1.2
0.0
9.0
1.1
通貨安
-1.0
通貨高
クローナ(対ユーロ、右軸)
9.5
通貨高
通貨安
1.0
-2.0
10.0
16/1 (年/月)
12/1
13/1
14/1
15/1
16/1 (年/月)
(日銀などの信頼できると判断したデータをもとに日興アセットマネジメントが作成)
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