実践事例 小学校5年 道徳の時間で活用する ~善悪の判断、自律、自由と責任~ 下関市立角倉小学校 1 瀧口 稔 本場面におけるポイント ● 導 入 で個 々 の子 ど もが も つ「 自 由」 の 捉え を 交流 す るこ と で、「 自 由」 の もつ 意 味を深く考えようとする子どもの姿を生み出すことができるようにする。 ● 主発問を端的に示すことで、ねらいとする道徳的価値への気付きを促す。 ● 本 時 の め あて を 導 入 で 示 し 終 末 に 確認 す る こ と で 、 日 常 生活 で の 実 践 意 欲 につ な げる。 2 授業の実際 1 主 題 名 自 律的 で責 任あ る 行動 を「 うば われ た自 由 」 私 た ち の 道 徳 P34~ 37 2 ねらい 自由を大切にし、自律的に判断し、責任ある行動をしようとする態度を育てる。 3 展開 (1)導入 これまでの経験について話し合う。 教師:あなたが考える「自由」とは、どのようなものですか。 M児:自分の思い通りにできることが「自由」だと思います。 K児:何をしても怒られないことだと思います。 T児:自分のしたい放題のことができることだと思います。 教師:「自由」は、自分自身をよりよくすることにつながるのでしょうか。 □ 指導上の留意点・支援・「私たちの道徳」活用のポイント等 導入で、個々の子どもが考える自由についての捉えを交流した際、事前アンケー ト で 見 取 っ た 子 ど もの 考 え を 意 図 的 に 紹 介し た 。そ の 上で、「 自由 は 、自 分 自身 を よりよくすることにつながるのか」とのめあてを示し、資料に出合わせた。 (2)展開 資料を読んで、本当の自由とは何かについて話し合う 。 教師:はらはらと涙を流したジェラール王は、何を 考えていたのでしょうか。 R児:もし、あの時ガリューの言うことを聞いてい たら、こんなことにはなっていなかった。 S児:その自由は、間違っていた。 Y児:自分に都合のいい自由だった。 教師:最後の場面でガリューがジェラール王に言っ た「本当の自由」とは、どのようなことなのでしょうか。班で話し合ってみ ましょう。 R児:人のことを考えて、思いやりをもちながら行動することだと思います。 Y児:規則の中で決められた自由だと思います。 K児:誰一人、不幸にならないのが、本当の自由だと思います。 □ 指導上の留意点・支援・「私たちの道徳」活用のポイント等 本資料は、罰せられることを覚悟しながらも、誰であってもきまりを遵守させよ うとする森の番人ガリューと、勝手気ままな振る舞いを繰り返すジェラール王子と ろう のやり取りが語られ、最後には牢で再会することになった二人の場面が描かれてい る 。 そ こ で 、「 は ら は ら と 涙 を 流 し た ジ ェ ラ ー ル 王 は 、 何 を 考 え て い た の か 。」 と 投げかけ、その気持ちを書くよう促した。全体で交流した後、ガリューが言う「本 当 の 自 由 」 と は 何 か を 班 で 話 し 合 っ た 。「 限 ら れ た 中 で の 自 由 」「 誰 一 人 、 不 幸 に ならない。」など、どの班でも活発に考えを伝え合う姿が見られた。 (3)終末 学習したことについて、自分を振り返る。 教師:自由は、自分自身をよりよくすることにつながるのでしょうか。 M児:自分中心ではなく、みんなと合わせることが必要だなと思いました。 H児:広い心をもっていることだと思いました。 D児:自分のことを一番だと思わず、みんなのことを受け入れることができる心で す。 □ 指 導 上 の 留 意 点 ・ 支 援 ・「 私 た ち の 道 徳 」 活 用 の ポ イ ン ト 等 終 末 で は 、「 自 由 は 、 自 分 自 身 を よ り よ く す る こ と に つ な が る の か 。」 と 改 め て 問 い か け た 。 つ ながるとした子どもが8割、つながらないとした 子 ど も が 2 割 だ っ た が 、 い ず れ の 理 由 も 、「 本 当 の自由をつらぬけば、自分をよりよくすることに つ な が る 。」「 人 の こ と を 思 い や れ る 自 由 で あ れ ば つ な が る 。」 な ど の 考 え が 出 さ れ た 。 さ ら に 、 事 前アンケートから明らかになった、高学年になっ て自由度が増したと感じている中から就寝時刻を例に挙げ、どのような心構えでこ れから過ごしていきたいかを問うと、自分のためになるように読書をしたいなどの 思いを語る子どもの姿が見られた。 3 実践を振り返って 自由について、放縦に近い捉えをしている子どもが予想以上に多くいる実態が事前ア ンケートから見受けられた。だからこそ導入で自由について多くの子どもがどう捉えて いるのかを全体で共有した上で資料に出合わせた。そのことで、本当の自由とは何かを より深く考えていこうとする子どもの姿が生み出せたのではないかと考えている。一方 で、自律の心とはどういうことなのかを明確に個々の子どもに意識付けられるよう、 「自 分にとっての本当の自由とは」等の投げかけも必要ではなかったかと反省している。
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