排便姿勢といきみ指導

排尿 排便
特 集
障害のアセスメント
排便
背側
腹側
直腸内圧
(cmH2O)
60
N=28
50
p=0.0047
安静座位時
20 cmH2O 上昇
5
排便姿勢と便排出力
いきみ時
腹腔内圧
40
30
20
10
0
側臥位
座位
恥骨
直腸筋長
体位による直腸内圧の変化
図6
図8
B
直腸内圧
100
肛門管静止圧 主に内肛門括約筋の緊張の低下
肛門のしまり 肛門挙筋,外肛門括約筋の弛緩
図5
排便時の直腸内の圧変化
排便時の骨盤と直腸の動き
いきみによって恥骨直腸筋の弛緩,直腸肛門角の鈍角化,会陰下垂が生じる。それに伴い,直腸‐肛門ベクトルの直線化が起こる
120
重力,直腸の収縮,腹腔内圧の上昇
会陰下垂
直腸肛門角
(cmH2O)
140
直腸内圧 骨盤底筋群
A 模式図
80
B 訓練風景
直腸
60
40
A
20
0
図7
側臥位
指導前便座位
指導後便座位
バルーン
排便時の直腸内圧の変化
端座位において,骨盤の傾きによる腹横筋の活
背筋や腹斜筋の活動は,腹腔壁の緊張を高め,腹
動は変化がありませんが,骨盤が後傾した腰椎後
腔内圧や直腸内圧の上昇につながります。
彎の姿勢では背筋や腹斜筋の活動は低下します 11)。
排便姿勢といきみ指導
排便姿勢といきみ方の指導を行う目的は,意図
(
されました 12,13)
的に直腸肛門角を鈍角化させ,直腸内圧を高め,
以上の内容を踏まえ,排便姿勢指導の際には,
肛門圧を弛緩させることによりスムーズな排便を
過度になりすぎないように意識しながら骨盤を後
促すことです。
傾し,腰椎後彎を抑えて体幹を固定させ,軽度前
Defecography で観察すると,安静座位時に比べ
屈する姿勢を保つように指導します。このとき,
ていきみ時には恥骨直腸筋は弛緩し,直腸肛門角
股関節は軽度外旋および 90°以上屈曲し,膝関節
は鈍角化し,会陰部は下垂します。また,恥骨直
は股関節よりやや高位に位置するようにします。
た,必要に応じて足台や円座などを用いて環境を
用いて実際の排便に近い環境で排便訓練を行いま
腸筋長の増大と直腸肛門角の鈍角化,会陰の下垂
さらに両足は肩幅程度に開き,足底は完全に接地
整えたうえで便座に座り,排便姿勢といきみ方の
す(
はそれぞれ相関を示し,安静座位に比べていきみ
させます。この姿勢を保つことができる便座の位
指導を行います。さらに直腸にバルーンを挿入し,
観察しながら,個人に合った排便方法を検討して
時において,直腸 - 肛門ベクトルの直線化が観測
置に座り,両上肢は軽く大腿部に置きます
50 cmH2O の空気や 50 ml の水を入れた疑似便を
います。
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図8
)
。
。ま
14)
肛門
空気 or 水注入
外肛門括約筋
内肛門括約筋
図9
疑似便を用いた排便訓練
図9
)
。その際,肛門の弛緩や全身の反応を
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