Gatch up角度を変化させた際のMechanical insufflation-exsufflation

第 49 回日本理学療法学術大会
(横浜)
5 月 30 日
(金)17 : 10∼18 : 00 ポスター会場(展示ホール A・B)【ポスター 内部障害!呼吸 7】
0622
Gatch up 角度を変化させた際の Mechanical insufflation!exsufflation 施行時の
換気量および胸腹部運動の三次元動作解析
堀川 真里1),兵頭
小宮 良太3),柏木
昌樹2),野中
陽子2),花山
拓馬1),立松加寿子1),東福寺規義1),南谷
耕三4),阿部
直5),正門 由久2)
晶1),市川
毅3),
1)
東海大学医学部付属病院リハビリテーション技術科,2)東海大学医学部専門診療学系リハビリテーション科学,
東海大学医学部付属大磯病院リハビリテーション室,4)川崎医科大学リハビリテーション医学教室,
5)
東海大学医学部内科学系呼吸器内科学
3)
key words Gatch up・Mechanical insufflation!exsufflation・三次元動作解析
【はじめに,目的】
Mechanical insufflation!
exsufflation(以下 MI!
E)は,肺・胸郭コンプライアンスの維持や排痰補助を非侵襲的に行う機器とし
て広く普及している。一方,体位排痰法は機器を使用しない呼吸理学療法として簡便に行うことができ,臨床上よく用いられる。
以前我々は Gatch up 0̊(以下 G0̊)において MI!
E 施行時の換気量及び胸腹部運動の三次元動作解析を行い,設定圧±30,40,
50 cmH2O にて肺活量(Vital Capacity:以下 VC)と同等以上の換気量と胸郭コンプライアンスの確保ができる可能性について
報告した。しかし現在 MI!
E 施行時の姿勢による効果の差異を明確に示した報告はみられない。今回我々は MI!
E と Gatch up
の併用効果を検証する目的で,G0̊ と Gatch up 45̊(以下 G45̊)で,MI!
E 施行時の換気量と三次元動作解析による胸腹部運動の
特性を検討した。
【方法】
対象は同意を得た健常成人男性 20 名(平均 31.3±4.6 歳)。G0̊ と G45̊ の条件下で,それぞれ VC の測定と MI!
E(Respironics
社製カフアシスト CA!
3000,設定圧:±20,30,40,50 cmH2O)による強制換気を行った。マスク装着下にミナト医科学社製
呼吸モニタリングシステムエアロモニタを用いて換気量を測定した。また同時に胸骨頚切痕を上端,左右の上前腸骨棘を結ぶ線
を下端として体幹に 35 個のマーカを貼付し,VICON 社製三次元動作解析装置 VICON MX system にて周波数 100Hz にて計測
を行った。計測結果から,全体積(Total Volume:以下 TV)とそれを細分化した上部胸郭体積(Upper Thorax:以下 UT)
,
下部胸郭体積(Lower Thorax:以下 LT)
,腹部体積(Abdomen:以下 AB)を算出し,それぞれ最大値を用いて比較した。検
定は 1 元配置分散分析,2 元配置分散分析,多重比較を行った(SPSS Ver.21。p<0.05)
。
【倫理的配慮,説明と同意】
被験者には本研究の目的・方法を説明の後,書面にて同意を得た。なお本研究は所属機関の倫理委員会の承認を得た。
【結果】
I 換気量:G0̊ と G45̊ 共に,VC に対して±40,50 cmH2O で有意に増加した。Gatch up による換気量の有意な差異は認められな
[G45̊]VC に対して±20,30 cmH2O で有意
かった。II 体積:① TV:[G0̊]VC に対して±40,50 cmH2O で有意に増加した。
に減少し,±20,30 cmH2O に対して±40,50 cmH2O で有意に増加した。Gatch up による最大値の有意な差異が認められ,G
45̊ は全ての設定圧で G0̊ を下回った。この傾向は LT・AB においても同様であった。② UT:
[G0̊]VC に対して±20 cmH2O
[G45̊]
VC に対して±20,30 cmH2O で有意に
で有意に減少し,±20 cmH2O に対して±30,40,50 cmH2O は有意に増加した。
減少し,±20 cmH2O に対して±40,50 cmH2O は有意に増加した。Gatch up による有意な差異は認められなかった。③ LT:
VC に対して±20, 30, 40 cmH2O で有意に減少し,
±20 cmH2O
[G0̊]
VC に対して±40, 50 cmH2O で有意に増加した。[G45̊]
[G0̊]VC に対して±40,50 cmH2O で有意に増加した。
[G45̊]VC に対
に対して±40,50 cmH2O は有意に増加した。④ AB:
して±20,30 cmH2O で有意に減少し,±20 cmH2O に対して±40,50 cmH2O は有意に増加した。⑤減少率:G45̊ で得られた最
(0.5%)
<
大値は,全ての設定圧で VC を下回った。±50 cmH2O 施行時の,VC に対する最大値の減少率を算出したところ,UT
LT(2.5%)<AB(3.3%)となった。
【考察】
I 換気量:Gatch up 角度に関わらず,設定圧±40,50 cmH2O では VC よりも多くの換気量を確保できると考えられる。II 体積:
G45̊ では MI!
E を使用しても VC 最大値を超えることはなかった。換気量は Gatch up による差異を認めないことから,Gatch
up による静脈還流量減少や,MI!
E の陰圧効果による残気量の減少など Chest wall 内での変化に起因するものと考えられる。ま
た G45̊ の TV 最大値は G0̊ と比較して減少した。減少率は下部へ向かうほど増加することから,G45̊ においては姿勢保持のた
めに腹筋群の収縮が生じたことで VC に対して最大値が減少したと考えられる。一方 G45̊ において VC で最も腹部体積最大値
が大きくなったのは,腹筋群が呼吸に同調して弛緩したことによって最大値を確保したと推測される。肋骨は下位の 2 対を除き
胸椎と胸骨に連なっており,可動域の制限を受ける。また肋骨の運動軸と矢状面のなす角は上位ほど直角に近く,上位肋骨は前
後径,下位肋骨は前後径・左右径の増大が主として生じる。よって本研究において UT・LT・AB の順に骨性に可動域を制限す
る要素が少なくなることから,軟部組織の伸縮性により最大値に差が生じたと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
MI!
E を換気量の確保の目的で使用する際 G0̊ と G45̊ に差は生じないが,G45̊ では胸腹部の拡張は小さくなる可能性がある。