取扱説明書補足 - Medtronic

取扱説明書補足
PAV+ オプション
はじめに
840 ベンチレータ(ベンチレータ 840)用の Proportional Assist™* Ventilation
Plus (PAV™*+) ソフトウェアオプションは新規の自発呼吸タイプ (PA) を
有し、モニタリング機能を追加し、グラフィック表示を強化します。
PA 呼吸タイプは、プレッシャーサポート (PS) 呼吸タイプとは以下が異な
ります。
•
PS呼吸タイプは医師が設定する、患者Yピースでの一定な圧力をター
ゲットとし、患者の吸気仕事量を、予測不可能なフラクション(分
率)で補充します。
•
PA 呼吸タイプは患者 Y ピースでの特定のしかし可変な圧力をター
ゲットとし、医師が設定するパーセンテージで患者吸気仕事量を補
充します。
PAは吸気増幅器として作用し、増幅の程度は% Support設定で定めます。
PAV+ ソフトウェアは継続的に患者の瞬間的な吸気フロー(流量)と瞬間
的な肺容積を監視します。これらは患者の吸気努力の指標です。これら
の信号と、患者の抵抗とコンプライアンスの現行推定値により、ソフト
ウェアは、患者の吸息筋を % Support 設定で選択した程度に補助する Y
部での瞬間圧を計算します。
PAV+ ソフトウェアは、不適合な設定、例えば軽い理想体重 (IBW) と大き
な気道の組み合わせなどの、不注意な入力を防ぎます。
Proportional Assist および PAV は The University of Manitoba, Canada の登録商標です。
ライセンスを取得してください。
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取扱説明書補足
用途
PAV™*+ は、自発呼吸する成人患者でベンチレータの理想体重 (IBW) 設定
が最低 25.0 kg の場合の使用を意図しています。患者には、内径 (I.D.)
6.0 mm ~ 10.0 mm の気管内 (ET) または気管切開 (Trach) チューブを挿管
する必要があります。患者は、十分な神経換気カップリングと、安定し
た持続できる吸気ドライブが必要です。
警告
•
PAV+ は非侵襲的換気には用いないこと。
•
呼吸回路や ET チューブのカフに漏れ(リーク)が無いこと。
漏れがあると過剰補助や患者の不快感を招く場合がありま
す。
概要
吸気作用には、患者の吸息筋が、口と肺胞の間に、呼吸ガスを引き込み
肺を膨張させるのに十分な圧較差を生じることが必要です。この圧較差
の一部はガスが人工気道と患者の下気道 (conducting airways) を通る際
に消失し、また圧較差の一部は肺と胸郭の膨張中に消失します。圧力散
逸の各成分は、測定できる特性で特徴づけられます。人工および患者気
道の抵抗、ならびに肺と胸郭のコンプライアンス(あるいはエラスタン
ス)です。
PAV+ ソフトウェアは人工気道の抵抗、患者気道の抵抗、肺胸郭コンプライ
アンス、瞬間的な吸気フローと肺容積、% Support 設定といった特定の
情報を用いて、Y 部に印加する瞬間圧を計算します。PAV+ ソフトウェア
は、約 4 ~ 10 呼吸ごとに患者の抵抗とコンプライアンスをランダムに推
計します。ソフトウェアは 5 ミリ秒 (ms) ごとに Y 部フローの推計値から
肺フローを、推計 Y 部フローの積分値から肺容積を推計します。
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PAV+ オプション
取扱説明書補足
PA 呼吸はフロー(患者の吸息筋が生じる)が Y ピースに現れると吸気補
助を始めます。患者が吸気を停止すると、補助も停止します。吸気フロー
が開始すると、PAV+ ソフトウェアは瞬間的なフローと容積を 5 ms ごと
にモニターし、人工および患者気道の抵抗ならびに肺胸郭コンプライア
ンスにより散逸する圧力損失を(% Support 設定で決定する)一定の比
率で補充するよう計算した圧力を印加します。
PAV™*+ アルゴリズムには PA 呼吸タイプ選択時に患者の呼吸力学がわ
からないので、ソフトウェアはスタートアップのルーティンを実行して
初期データを得ます。スタートアップ時に、PAV+ ソフトウェアは 4 回連
続の PA 呼吸を送り、各回の吸気終末操作で患者の抵抗とコンプライアン
スを推計します。最初の呼吸は、人工気道の予測抵抗を用い、また患者
IBW に基づく、患者の抵抗とコンプライアンスの保守的な推定値を用い
て送気されます。
次の 3 回の PA 呼吸のそれぞれでは、段階的に減少した生理値と、前回の
呼吸から推計した抵抗とコンプライアンスの値を平均しますが、早期の
推計値は以後の呼吸で重み付けを小さくし、より信頼できる抵抗とコン
プライアンスの推計値を得ます。5 回目の PA 呼吸(最初の非スタート
アップ呼吸)は、最終推計値と医師が定める % Support 設定を用いて送
気されます。スタートアップが完了すると、PAV+ ソフトウェアは、患者
の抵抗とコンプライアンスを再推計するための最後の操作呼吸ののち 4
~ 10 回ごとに操作呼吸をランダムに適用します。新たな値は常に以前の
値と平均されます。
PAV™*+ オプションのグラフィックは、患者の肺内圧(内因性 PEEP)
、患
者コンプライアンス、患者抵抗、総抵抗、総吸気仕事量、患者吸気仕
事量、吸気弾性仕事量(肺胸郭仕事量の指標)、吸気抵抗仕事量の推定
値を表示します。
PAV+ オプション
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取扱説明書補足
% Support 設定の範囲は最小 5%(ベンチレータが吸気仕事量の 5% を行
い患者が 95% を実施)から最大 95%(ベンチレータが仕事量の 95% を
行い患者が 5% を実施)までで、5% 単位で調整できます。
PAV+ オプションにはアラームリミット、安全チェック、論理チェックも
あり、非生理的な患者抵抗とコンプライアンスの値や不適切なデータを
拒絶します。
正確なコンプライアンス補正と呼吸曲線測定を維持し、送気を最適にす
るため、SST 実行後に加湿のタイプと量を調整できます。
警告
呼吸回路内や気管内 (ET) チューブのカフ周辺に多量の漏れが無
いようにしてください。多量の漏れがあると PAV+ オプションの
性能が落ち、抵抗 (R) やエラスタンス (E) の推定値の正確度が下
がる場合があります。
注:
最適な性能を得るため、シリコーン製呼吸回路では PAV+ オプ
ションを用いないこと。呼気開始時のシリコーン回路の弾性挙動
が圧フローの変動を生じ、患者抵抗を過小評価する場合がありま
す。
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PAV+ オプション
取扱説明書補足
PAV™*+ をセットアップする
以下の手順に従って、PAV+ を新患者設定画面または換気中の画面から適
用します(ベンチレータ設定の詳細は、
『840 取扱説明書オペレーターズ
ガイド/テクニカルレファレンス』をご覧ください)
。
PAV™*+ 設定を次の画面から適用する場合:
新患者設定画面
換気中の画面
1. 成人用の回路でショートセルフ
テスト (SST) を実行するか、実行
済 みで ある こ とを 確 認し ます。
SST が完了すると、ベンチレータ
は自動で SST から新患者設定画面
に移行します。
1. 患者が成人サイズの呼吸回
路で換気されているか確か
めます。
2. 新患者設定ボタンに触れます。
2. 下部画面の VENT SETUP(設
定) ボタンに触れます。
3. 使用回路が成人(大人)用である
ことを確かめ、患者体重を入力す
るため IBW ボタンに触れてノブ
を希望の体重設定まで回します。
3. ステップ 5 にお進みくださ
い。
4. CONTINUE(次へ)ボタンに触れ
ます。
5. MODE(モード)ボタンに触れます。
6. ノブを回して SPONT(自発)モードを選択します。
7. SPONTANEOUS TYPE(自発呼吸タイプ)ボタンに触れます。
PAV+ オプション
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取扱説明書補足
PAV™*+ 設定を次の画面から適用する場合:
新患者設定画面
換気中の画面
8. ノブを回して PA(プロポーショナルアシスト=比例補助呼吸タイプ)
を選択します。PA 呼吸タイプは以下の場合に利用できます。
• 患者 IBW は最低 25 kg が必要です
• チューブ内径は最低 6.0 mm が必要です
9. CONTINUE(次へ)ボタンに触れます。SPONT(自発)および PA に適
用できるデフォルト設定が下部画面の Sandbox 部に表示されます。
10. 変更したい各設定のボタンに触れ、次にノブを回して希望の値に設
定します。提起した変更は対照的な色でハイライトされます。PA を
新たに選ぶと、TUBE TYPE および TUBE I.D. ボタンに触れるまでこれ
らのボタンが点滅します。
設定時は、以下を確認します。
• 人工気道のタイプ: ET(気管内)または TRACH(気管切開)
• チューブ I.D.: 6.0 mm ~ 10.0 mm(使用チューブの内径に従いま
す)
• ESENS 値:3 L/min(デフォルト値)。ESENS は 1 L/min ~ 10 L/min まで
調整可能ですが、指示が無い限り変更しないこと。
• 適切な % Support レベル
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PAV+ オプション
取扱説明書補足
PAV™*+ 設定を次の画面から適用する場合:
新患者設定画面
換気中の画面
注:
• 適切な% Supportレベルを選択する際は、初期セットアップと以後
の調整で以下を考慮します。
- 最少 10–15 呼吸待ち、新規の % Support 設定に対する患者の
応答に対してアルゴリズムを安定させてから他の設定を変
更します。
- 高レベルのサポートは患者にとって不快な場合があり、不穏
を増加させる場合があります。選択する % Support 値が 80%
より高い場合は注意すること。
- 呼吸仕事量 (WOB) グラフをガイドとして用いること。詳細
は、23 ページの「PAV™*+ でのグラフィック表示」を参照
また25ページの
「WOB用語と定義」も参照のこと。% Support
設定を調整し、患者 WOB (WOBPT) を「緑」領域内に維持す
ること。WOBPT インジケータが緑領域の左か右にあるとき
は、それぞれ、ベンチレータによる患者サポートが過剰か不
十分です。
• 上記については、堅実な臨床慣行に代わるものではありません。
11. 新規の設定を適用するには ACCEPT(入力)を、変更をキャンセルす
るには VENT SETUP(設定)ボタンを押します。
PAV+ を適用すると、上部波形サブ画面の右上隅にメッセージ「PAV
STARTUP」が点滅し、この間にソフトウェアが患者の抵抗とコンプラ
イアンスを初回判定します。呼吸仕事量 (WOB PT) と内因性 PEEP (PEEPI)
の計算と表示は、PAV スタートアップ完了後に始まります。
PAV+ オプション
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取扱説明書補足
注:
PAV™*+ は % Support 設定のみを使用し、これはいつでも上下に
調整できます。% Support 設定を下げると、新規の設定は次の吸
気時に実行されます。% Support 設定を 10% より大きく上げる
と、変更は呼吸ごとに 10% まで増加して実行されます。この移
行中、呼吸仕事量グラフィックは、実際の % Support が設定値と
等しくなり患者が新規% Support設定に順応するまで続く変化を
示す場合があります。
無呼吸パラメータの調整
PAV+ の各設定を承諾すると、ベンチレータは Apnea Setup(無呼吸設定)
画面を表示します。無呼吸時パラメータを必要に応じて調整してくださ
い。
アラーム設定の調整
PAV+ オプションには、最大吸気自発一回換気量アラーム (2VTI SPONT) と
最小呼気自発一回呼吸量アラーム (4VTE SPONT) の限度設定があります
(12 ページの表 2: 参照)。
注:
PAV+が許容する呼吸変動性のため、
3VTE SPONT アラームはデフォ
ルトでは OFF になり、不快なアラームを最少化します。妥当な換
気をモニターするには、 3VE TOT アラームを代わりにお使いくだ
さい。
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PAV+ オプション
取扱説明書補足
アラーム設定を調整するには、以下の手順に従います。
1. 下部画面の ALARM SETUP(アラーム) ボタンに触れて現在のアラーム設
定を確認します。各バーの右にあるボタンは、アラーム限界値を示しま
す。
2. 変更する各アラーム限界のボタンに触れます。
3. ノブを回してアラーム限界値を調整します。提起した値はハイライ
トされます。複数のアラーム限界を変更した後で全変更を適用でき
ます。
4. 変更を適用するには ACCEPT(入力) を、キャンセルするには ALARM
SETUP(アラーム) ボタンを押します。
チューブのタイプ、チューブ ID、加湿タイプを調整する
以下の手順に従うと、VENT SETUP(設定)に戻ることなくチューブと加湿
器の新規設定を選択できます。
1. 他のスクリーンボタン
定) ボタンに触れます。
に触れ、次に MORE SETTINGS(その他の設
2. 変更する設定のボタンに触れます Humidification
Type(使用加湿器タイ
、Tube I.D.(チューブ内径)、または Tube Type(チューブのタイプ)。
プ)
非 HME 加湿タイプでは、Humidifier Volume(加湿器量) ボタンに触れ、
次にノブを回して加湿器(空)容積を調節します。
3. 新規設定を適用するには ACCEPT(入力)を、キャンセルするには他の
スクリーンボタンを押します。
PAV+ オプション
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取扱説明書補足
注:
PAV+ オプションで加湿タイプと加湿器量の変更に SST 再実行は
必須ではありませんが、PA 呼吸と呼吸曲線測定値の正確度は意
図する回路を用いてSSTを実行しないと保証されません。医師が、
意図する回路を用いて SST を実施するよう、強くお勧めします。
PAV™*+ ベンチレータ設定
表 1: に、PAV+ オプションに適用できるベンチレータ設定をまとめてい
ます。
表 1: PAV™*+ 設定
設定
% Support
機能
範囲、新患者の値、分解
能
ベンチレータが行う PAV+
範囲:
サポートのレベルを設定。
新患者: 50%
95% の設定は、ベンチレー
分解能: 5%
5 ~ 95%
タが吸気仕事量の 95% を
行い、患者が 5% のみ行う
ことを意味します。
呼 気 感 度
(E SENS)
PA 呼吸でベンチレータが
範囲:
吸気から呼気へ移行する
新患者: 3 L/min
フロー値を設定。
Humidifier
volume
(加 湿 器 量)
(HME 選択時を
除く)
10
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使用中の加湿器チャン
バーの空容積を調整。
1 ~ 10 L/min
分解能: 1 L/min
範囲:
100 ~ 1000 mL
新患者: 480 mL(デフォル
ト)
分解能: 10 mL
PAV+ オプション
取扱説明書補足
表 1: PAV™*+ 設定 ( 続き )
Tube type
(チューブタイ
ET(気管内)または Trach(気
範囲:
管切開)チューブを選択。
新患者: ET
Trach または ET
チューブの内径を、IBW に
範囲:
プ)
Tube I.D.
(チ ュ ー ブ 内
径)
基づく推奨サイズ範囲か
ら選択(21 ページの表 6:
に、IBW 範 囲と 対 応す る
チューブ I.D. 範囲を挙げて
6.0 mm ~
10.0 mm
新患者: IBW に基づく
分解能: 0.5 mm
います)。推奨範囲は解除
(オーバーライド)可能で
す。
21 ページの「チューブ内
径」を参照。
Trigger type
(トリガ方式)
PAV+ オプション
吸気の検知方法を決定。
範囲:
フローまたは圧
新患者: フロー
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取扱説明書補足
PAV™*+ アラーム設定
表 2: に、PAV+ オプション使用時に利用できるアラーム設定をまとめてい
ます。
表 2: アラーム設定
設定
機能
範囲、分解能、正確度
最大吸気自発一 ベンチレータが吸気を打切 範囲:
回
35 ~ 6000 mL
り呼気へ移行する最大吸気
(5.0 mL/kg x IBW ~
45.7 mL/kg x IBW)
換気量リミット 量限度を設定。PA または
(2VTI SPONT)
チューブ補正 (TC) の自発 新患者: 15.0 mL/kg x IBW
呼 吸 タ イ プ の み に 適用 可
分解能: 1 mL(35 ~ 99 mL のとき)
能。推奨値は 20.0 mL/kg x
5 mL
(100 ~ 395 mL のとき)
IBW 未満。
10 mL(400 ~ 6000 mL のと
き)
最小呼気自発一 最小呼気自発一回換気量ア 範囲:
回
ラーム閾値を設定。
換気量リミット
(4VTE SPONT)
1 ~ 2500 mL
新患者: OFF
分解能: 1 mL(1 ~ 100 mL のとき)
;
5 mL(100 ~ 400 mL のと
き)
;
10 mL(400 ~ 2500 mL のと
き)
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PAV+ オプション
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監視データ
表 3: に、PAV™*+ オプションに関連する監視データをまとめています。
表 3: PAV™*+ 監視データ
データ
CPAV
(PAV ベースの肺
コンプライアン
ス)*
機能
ゼロフロー条件下で測定
した際の患者気道内圧に
加えた変化に対する肺容
積の変化。PAV+ プラトー
範囲、分解能、正確度
範囲:2.5 ~ 200 mL/cmH2O
分解能:
0.1 mL/cmH2O
操作時に推定。
(値が < 10 mL/cmH2O のとき)
1 mL/cmH2O
PA 選択時に、ベンチレータ
(値が  10 mL/cmH2O のとき)
はそのときのフィルター
された患者コンプライア
ンス値を表示し、表示は推
正確度: ±(1 + 実際の 20%)
mL/cmH2O
計完了するごとに更新さ
れます。値は More Patient
Data(詳細患者データ)お
よび Waveforms(波形)画
面に表示されます。
EPAV
(PAV ベースの肺
エラスタンス)*
EPAV はPAVベースの肺コン
範囲:5.0 ~ 400 cmH2O/L
プライアンスの逆数とし
て計算されます。上記 CPAV
分解能:
0.1 cmH2O/L
機能を参照。
(値が < 10 cmH2O/L のとき)
1 cmH2O/L
(値が  10 cmH2O/L のとき)
正確度: ±(1 + 実際の 20%)
cmH2O/L
*
CPAV、 EPAV、 R PAV、または R TOT の推定値が(IBW ベースの)予測リミットに反する
場合は、値に括弧が付いてその値に疑問があることを示します。推定値が絶対限界を超え
ると、限界値が括弧内で点滅します。
PAV+ オプション
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取扱説明書補足
表 3: PAV™*+ 監視データ ( 続き )
データ
PEEPI
(内因性 PEEP)
機能
範囲、分解能、正確度
呼気終末で肺に残る PEEP
範囲:0 ~ 130 cmH2O
を上回る、陽圧の推計値。
分解能:
0.1 cmH2O
PA 選択時に、ベンチレータ
了するとそのときの内因
(値が < 10 cmH2O のとき)
1 cmH2O
性 PEEP 推計値を表示し、表
( 10 cmH2O のとき)
は PAV+ セットアップが完
示は推計完了に成功する
正確度: 該当なし
ごとに更新されます。More
Patient Data(詳細患者デー
タ)および Waveforms(波
形)画面に表示。
R PAV
(PAV ベースの患
者抵抗)*
推 定し た総 抵抗 (RTOT) と
範囲:0.0 ~ 20 cmH2O/L/s
人工気道の抵抗の差。
分解能:
0.1 cmH2O/L/s
PA 選択時に、ベンチレータ
はそのときのフィルター
された患者抵抗値を表示
(値が < 10 cmH2O/L/s のとき)
1 cmH2O/L/s
し、表示は推計完了に成功
(値が  10 cmH2O/L/s のとき)
するごとに更新されます。
正確度: 該当なし
More Patient Data(詳細患
者 デ ー タ)お よ び
Waveforms(波形)画面に
表示。
*
CPAV、 EPAV、 R PAV、または R TOT の推定値が(IBW ベースの)予測リミットに反する
場合は、値に括弧が付いてその値に疑問があることを示します。推定値が絶対限界を超え
ると、限界値が括弧内で点滅します。
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PAV+ オプション
取扱説明書補足
表 3: PAV™*+ 監視データ ( 続き )
データ
RTOT
(推 定 し た 総 抵
抗)*
機能
範囲、分解能、正確度
ピーク呼気フローで、患者
範囲:1.0 ~ 20 cmH2O/L/s
気道とベンチレータ呼吸
分解能:
0.1 cmH2O/L/s
システムを合わせた圧/
フローの推定した分率。
PA 選択時に、ベンチレータ
(値が < 10 cmH2O/L/s のとき)
1 cmH2O/L/s
はそのときのフィルター
(値が  10 cmH2O/L/s のとき)
された総抵抗値を表示し、
表示は計算の完了に成功
するごとに更新されます。
More Patient Data(詳細患
正確度: ±(3 + 実抵抗の 20%)
cmH20/L/s(5 ~ 80 cmH2O/L/s、
RPAV < 60 cmH2O/L/s のとき)
者データ)画面に表示。
*
CPAV、 EPAV、 R PAV、または R TOT の推定値が(IBW ベースの)予測リミットに反する
場合は、値に括弧が付いてその値に疑問があることを示します。推定値が絶対限界を超え
ると、限界値が括弧内で点滅します。
PAV+ オプション
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取扱説明書補足
表 3: PAV™*+ 監視データ ( 続き )
データ
VTI SPONT
(自発吸気一回換
気量)
機能
範囲、分解能、正確度
吸気一回換気量の BTPS 値
範囲:0 ~ 6000 mL
を
分解能:1 mL(0~6000 mLのとき)
表示。
正確度: TI  200 ms かつ  600 ms
次の呼気相の開始時に更
新。
では ±(10 + 読み値の 10%*
600 ms/TI ms) mL;それ以外は
± (10 + 読み値の 10%)mL
f/VT/kg
呼吸数と吸気量の測定値
[ノーマライズし
の比のノーマライズした
たラピッドシャ
分率を、More Patient Data
ロウブリージン
(詳細患者データ)画面に
グインデックス
表示。PA 呼吸でのみ利用
(RSBI)]
範囲:0 ~ 24 1/min-L/kg
分解能:0.1(f/VT/kg < 10 のとき)
;
1(f/VT/kg  10 のとき)
正確度: 該当なし
可。f/VT をノーマライズす
ることにより、IBW による
VT の変動による RSBI の変
動を最小化します。
*
CPAV、 EPAV、 R PAV、または R TOT の推定値が(IBW ベースの)予測リミットに反する
場合は、値に括弧が付いてその値に疑問があることを示します。推定値が絶対限界を超え
ると、限界値が括弧内で点滅します。
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PAV+ オプション
取扱説明書補足
表 4: に、PAV+ オプション監視データの、IBW ベースの絶対限界をまとめ
ています。
表 4: PAV™*+ 監視データの絶対限界
IBW
(kg/lb)
RPAV
(cmH2O/L/s)
CPAV
(mL/cmH2O)
EPAV
(cmH2O/L)
25 / 55.1
0 ~ 50
2.5 ~ 29
34 ~ 400
35 / 77.1
0 ~ 44
3.5 ~ 41
24 ~ 286
45 / 99.1
0 ~ 31
4.5 ~ 52
19 ~ 222
55 / 121.1
0 ~ 24
5.5 ~ 64
16 ~ 182
65 / 143.2
0 ~ 20
6.4 ~ 75
13 ~ 156
75 / 165.2
0 ~ 18
7.4 ~ 87
11 ~ 135
85 / 187.2
0 ~ 17
8.4 ~ 98
10 ~ 119
95 / 209.3
0 ~ 16
9.4 ~ 110
9.1 ~ 106
105 / 231.3
0 ~ 15
10 ~ 121
8.3 ~ 100
115 / 253.3
0 ~ 15
11 ~ 133
7.5 ~ 91
125 / 275.3
0 ~ 14
12 ~ 144
6.9 ~ 83
135 / 297.4
0 ~ 14
13 ~ 156
6.4 ~ 77
145 / 319.4
0 ~ 14
14 ~ 167
6.0 ~ 71
150 / 330.4
0 ~ 14
15 ~ 173
5.8 ~ 67
PAV+ オプション
10068731 Rev. C
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取扱説明書補足
アラーム
表 5 に、PAV™*+ オプションに関連するアラームをまとめています。
表 5: PAV™*+ アラーム
ベース
(基本)
メッセージ
1PPEAK
緊急度
分析メッセー
ジ
低
最後の1呼吸
患者回路と ET
吸気圧上限値違反:推定気道内圧

チューブをチェッ
 設定した 2P PEAK。検知すると、
設定値。
クしてください。 ベンチレータは現在の呼吸を打
中
高
対策処置メッ
セージ
コメント
最後の3呼吸 
切ります(すでに呼気の場合を除
設定値。
VE TOT 、1fTOT。
最後の 4 呼吸
以
上 設定値。
く)。考えられる従属アラーム:
対処法:
患 者 の 状 態 を 確 認 し て 下 さ い。
リーク、チューブのタイプ/ ID 設
定をチェックして下さい。
% Support
設定 を 下げ る か
2PPEAK を上げることをご検討く
ださい。
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10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
表 5: PAV™*+ アラーム
ベース
(基本)
メッセージ
1PVENT
緊急度
分析メッセー
ジ
低
1 呼吸  設定
患者回路と ET
吸気圧  100 cmH2O。ベンチレー
値。
チューブをチェッ
タは現在の呼吸を打切ります(す
2 呼吸  設定
クしてください。 でに呼気の場合を除く)。このア
中
対策処置メッ
セージ
ラームは PAV+ 使用時にはあまり
値。
高
コメント
出ません。考えられる従属アラー
ム:3VE TOT、 1fTOT 。
対処法:
3 呼 吸以 上 
設定値。
患者が不穏かを確認して下さ
い。不穏な呼吸と高い % Support
の組み合わせは、過度の補助を招
く場合があります。
% Support 設定を下げることをご
検討ください。
PAV スタート
低
アップ時間
超過
中
PAV 開始が
リ ー ク、浅 呼 吸、 PAV+がRとCの妥当な初期値を推
45 s で未完了。
1VTI SPONT、
1PPEAK 設定を確
計不能。考えられる従属アラー
認して下さい。
対処法:
PAV 開始が
90 s で未完了。
高
PAV 開始が
120 s で未 完
了。
ム: 3VTE SPONT 、3VE TOT 、1fTOT。
患者をチェックしてください(患
者の吸気時間が短すぎて抵抗と
コンプライアンスを評価できな
い場合があります)。
選択した加湿タイプと空容積が
正しいかチェックします。
PAV+ オプション
10068731 Rev. C
19
取扱説明書補足
表 5: PAV™*+ アラーム
ベース
(基本)
メッセージ
PAV R & C
緊急度
分析メッセー
ジ
低
R や C が  15
評価なし
中
対策処置メッ
セージ
コメント
リーク、浅呼吸、 スタートアップは成功しました
分前のもので
チューブ ID、
が、以後の評価に失敗しました。
す。
1VTI SPONT、
1PPEAK 設定を確認
対処法:
R や C が  30
分前のもので
して下さい。
す。
患者をチェックしてください(患
者の吸気時間が短すぎて抵抗と
コンプライアンスを評価できな
い場合があります)。
選択した加湿タイプと空容積が
正しいかチェックします。
1VTI SPONT
低
中
高
最後の1自発
リ ー ク、チ ュ ー
高吸気一回換気量。
呼吸  設定値。 ブタイプ/ ID、
到達した吸気量  吸気限界。ベン
% Support 設定、 チレータは呼気へ移行。考えられ
最後の 3 自発
患者不穏を確認 る従属アラーム:1f
TOT 。
呼吸  設定値。
して下さい。
対処法:
最後の 4 自発
患者が不穏でないかチェックし
呼吸以上  設
定値。
てください。R PAV や C PAV の計算
ミスを招く場合があります。
% Support 設定を下げることをご
検討ください。
2VTI をチェックしてください。
20
10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
チューブ内径
表 6: は理想体重と、対応する推定チューブ内径のリストです。IBW 範囲
に合わない内径を選択するときは、OK ボタンに触れて推定範囲の解除
(オーバーライド)を確認することが必要です。
表 6: IBW とチューブ I.D. の範囲
ET/Trach I.D. (mm)
ET/Trach I.D. (mm)
(低)
(高)
54-60
6.0
6.5
28-35
61-77
6.0
7.0
36
78-79
6.0
7.5
37-42
80-93
6.5
7.5
43-49
94-108
6.5
8.0
50
109-117
7.0
8.0
55
118-130
7.0
8.5
60
131-132
7.0
9.0
65
133-152
7.5
9.0
70
153-154
7.5
9.5
75
155-174
8.0
9.5
80-100
175-231
8.0
10.0
110-135
232-296
8.5
10.0
IBW (kg)
IBW (lb)
25-27
PAV+ オプション
10068731 Rev. C
21
取扱説明書補足
表 6: IBW とチューブ I.D. の範囲 ( 続き )
IBW (kg)
IBW (lb)
140-150
297-330
ET/Trach I.D. (mm)
ET/Trach I.D. (mm)
(低)
(高)
9.0
10.0
注:
確実に正しい人工気道 ID サイズを入力すること。PAV™*+ はフロー
を増幅するので、実際の気道 I.D. より小さい値を入力するとフロー
ベースの圧補助が患者を過度にサポートし、% Support 値が高いと
過渡的なフロー過剰補正(runaway)を招く場合があります。逆に、
実際の I.D. より大きい値を入力するとサポート不足を招きます。
PAV+ ソフトウェアは、IBW と人工気道の設定を監視します。設定が
上記範囲と異なるときは、設定が正しいことを確認する必要があり
ます。実際の I.D. サイズを確認または修正すれば、PAV+ によるサ
ポートの過剰や不足の尤度が最小化されます。
ベンチレータの設定/ガイドライン
警告
PAV™*+ の最適動作には、患者に使用中のものと一致する加湿タ
イプ、チューブのタイプ、およびチューブのサイズを選ぶことが
重要です。
吸気時に生じる瞬間的な Y 部圧は、患者努力、% Support 設定、チュー
ブのタイプとサイズ、患者の抵抗とエラスタンス、ならびに瞬間的な測
定ガスフローおよび肺容積の関数です。 2PPEAK を安全な回路圧に設定
し、超過した際の打切りとアラーム通知が適切であるようにしてくださ
い。
22
10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
注:
PAV+ には組み込みの高圧補正 (1PCOMP ) リミットがあり、これは
2PPEAK 設定マイナス5 cmH2Oまたは35 cmH2Oのいずれか低いほ
うで決まります。回路 Y 部の吸気圧 (Piwye) が 1PCOMP リミットに
達すると、吸気は打切られ、ベンチレータは呼気に移行します。
詳細は 31 ページを参照してください。
仕様性能
PAV+ オプション使用時の性能は  0.5 ジュール/リットルです(75% サ
ポートのレベルでの吸気時に課される仕事量)。換気用語では、仕事量は
以下のように表されます。
Work Joules / L 


Joules
  Pressuret cmH 2O  Flowt  Ls  dt s 
0.098 cmH
2 O* L
 Flow   dts
L
t s
PAV™*+ でのグラフィック表示
PAV+ オプション使用時(モードが SPONT =自発で自発呼吸タイプが PA)
では、呼吸仕事量 (WOB) グラフィックが自動表示され
(26 ページの ê}1)、
以下を示します。
•
下記の呼吸仕事量の推定値(正常値、正常値未満の値、正常値の超
過値の相対表示):
 吸気時の推定患者呼吸仕事量(ジュール/ L)(WOBPT) および
 吸気時の患者とベンチレータの推定総呼吸仕事量
(ジュール/ L)(WOBTOT)。
PAV+ オプション
10068731 Rev. C
23
取扱説明書補足
•
システムのエラスタンス (E) と抵抗 (R) を補正するための患者吸気仕
事量の比率を示すインジケータ。
グラフィック画面の付加情報には以下があります。
•
推定肺内圧の「シャドー」トレース。回路圧波形に重ねて表示され
る有色部で示されます。
•
PAV ベースの患者データ推定値。患者抵抗 (R PAV)、肺コンプライアン
ス (CPAV)、内因性 PEEP (PEEPI) があります。
注:
グラフィック表示される肺内圧と患者呼吸仕事量は実測値では
なく、フィルターされた、モデルベースの推定値に由来します。
WOB グラフィックは SPONT(自発)モードと PA 呼吸タイプを選択して
いるときのみ利用でき、Plot 2 ドロップダウンメニュー項目です。シャ
ドートレースの有効/無効は、グラフィック表示の選択時や、表示をフ
リーズ(静止)させた後で切り替えできます。
フリーズは WOB グラフィックに影響しませんが、シャドートレースは
保存されます。フリーズさせると、シャドートレースの有効/無効を切り
替えでき、フリーズした波形をシャドートレース有りまたは無しで再表
示できます。
24
10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
WOB 用語と定義
次の表に呼吸仕事量 (WOB) 用語の定義と説明を示します。
表 7: 呼吸仕事量の定義
WOB 用語
WOB TOTAL
定義
総吸気仕事量
説明
肺を膨張させるのに必要な仕事量。膨張は
患者が自発呼吸で行うか、ベンチレータが
受動的な肺胸郭を膨張させるか、患者とベ
ンチレータが補助自発呼吸で行う
WOBPATIENT
患者の吸気仕事量
WOBPATIENT
吸気弾性仕事量
RESISTIVE
PAV+ オプション
WOB PATIENT のうち患者の弾性肺胸郭の膨
張に起因する部分
ELASTIC
WOBPATIENT
WOB TOTAL のうち患者が行う部分
吸気抵抗仕事量
WOB PATIENT のうち呼吸ガスによるガス経
路内の抵抗成分の通過に起因する部分
10068731 Rev. C
25
取扱説明書補足
患者データ推定値
推定肺内圧のシャドートレース
呼吸仕事量の推定値
図 1. PAV™*+ でのグラフィック表示
26
10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
技術説明
PAV+ オプションを選ぶと、ベンチレータは吸気増幅器として作動し、吸
息筋の圧力発生能力 (PMUS) を比例的に補助します。
PMUS は圧較差を発生させて気道を通して呼吸ガスを弾性肺胸郭へ送り、
次の運動方程式で表されます。
.
PMUS = V L * R + VL * ELUNG-THORAX
(式 1)
ここで、
.
V L = 抵抗成分を通り肺へのフロー
R = 抵抗成分(人工気道プラス患者気道)
VL = 肺の送気量
ELUNG-THORAX = 肺と胸郭のエラスタンス (1/CLUNG-THORAX)
PAV+ ソフトウェアによる患者の抵抗とエラスタンス(RPAV および EPAV)
の推定値が安定しているときは、次式に置換えができます。
.
.
PiMUS = V iL * Riairway + V iL * K1 + ViL * K2
(式 2)
ここで、
i
i
瞬間的な圧、フロー、または気道抵抗の値であることを示します(R airway
がフローの関数であることを認識)
K1 および K2 = それぞれ定数 RPAV および EPAV。
PiMUS は瞬間的な間隔で(840 ベンチレータでは 5 ms ごとに)推計可能
です(ViL、Riairway、ViL も既知の場合)。任意の吸気中の、PMUS を形成す
る個々の圧成分は次のように表されます。
PMUS = PFLOWARTIFICIAL AIRWAY + PFLOWPATIENT + PVOLUMEPATIENT
PAV+ オプション
(式 3)
10068731 Rev. C
27
取扱説明書補足
式 2 および 3 は、PAV+ の動作方法を説明する構造を提示します。医師が
使用人工気道のタイプとサイズを入力し、ソフトウェアはこの情報から、
任意の肺フローでの人工気道の抵抗を推計します。
選択した吸気の終了時に特別なポーズ(休止)操作を適用すると、ソフ
トウェアが患者の抵抗(RPAV)とコンプライアンス(CPAV、エラスタン
ス EPAV に換算)を推計するのに必要な情報が得られます。ポーズ事象の
終了直後に、ソフトウェアは同時に PLUNG、Pwye、VE の値をキャプチャー
し、推定したフローでの RTOT の推定値が得られます。
すべての生データは論理チェックされ、RPAV と CPAV の推定値はさらに生
理学的チェックを受けます。RPAV と CPAV の推定値は、論理または生理学
的チェックで不合格であれば廃棄されます。CPAV が拒絶されると、RPAV
も拒絶されます。
RPAV と CPAV の妥当な推定値は送気に必要で、新規の値と以前の値を平均
して定常的に更新されます。この平均処理はデータを平滑にし、送気へ
の急激な変化を避けます。新しい RPAV と CPAV の値が拒絶されると、妥当
な新規の値が得られるまでは以前の値が使用されます。PAV+ ソフトウェ
アは更新処理を監視し、古い値が刷新されないときは、エスカレートす
るアラーム状況を生み出します。
PAV™*+ では、操作呼吸は前回の操作呼吸後、ランダムに4~ 10 回の
呼吸ごとに実施されます。操作呼吸は通常の PA 吸気であり、吸気終末
にポーズがあります。筋肉活動は神経刺激より約 300 ms 遅延するので、
患者の呼吸中枢はポーズを検知しません。操作呼吸はランダムに送ら
れ、発生を予測できません。
PA 呼吸は、Y 部でのフロー検知で開始します。840 ベンチレータのサン
プルおよびコントロールのサイクルは 5 ms(式 2 の i の値)で、この頻
度は患者吸気の本質的に定常な追跡を可能にします。i回のインターバル
ごとに、ソフトウェアは瞬間肺フロー(ViL 人工気道と患者気道の抵抗
28
10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
により低下)を確認し、フローを積分して瞬間肺容積(ViL 肺と胸郭の弾
性収縮力により低下)を推計します。
瞬間的な肺フローと肺容積の値を用いて、PAV™*+ ソフトウェアは式 2
の各圧力成分を計算し、この式で PMUS の値が i インターバルごとに得ら
れます。
% Support 設定は、i インターバルごとに Y 部に印加する、抵抗および弾
性ベースの圧力量を指定します。次の式は式 2 を書き直して % Support
設定を含めたものです。
.
.
Piwye = S (V iL * Riairway) + S (V iL * K1) + S (ViL * K2)
(式 4)
ここで、
Pi wye = ベンチレータが瞬間的な肺フローと肺容積の値に応じて発生させる
圧。
この値は式 4 の三つの圧力成分(括弧内)の合計です。
S = % Support 設定 /100(範囲は 0.05 ~ 0.95)。
呼吸ガスを患者の肺に送る圧較差はPiwyeと患者の吸気努力の合計で得ら
れます(次式)。
PiGRADIENT = Piwye + Pimus
(式 5)
危険に対する保護
PAV™*+ オプションのソフトウェアは過膨脹の危険を緩和するよう設計
されています。過膨脹の可能性は、ソフトウェアが実際の患者抵抗を過
大評価するか実際の患者肺胸郭コンプライアンスを過小評価する(すな
わち、実際のエラスタンスを過大評価する)ときに生じます。ソフトウェ
アが妥当な RPAV と CPAV の推定値を作成できないと、PAV+ オプションは
開始できません。スタートアップ後に RPAV と CPAV の値を妥当な新規の値
で更新できない場合、以前の値の信頼性が落ちます。
PAV+ オプション
10068731 Rev. C
29
取扱説明書補足
PAV+ の 安 定 性 は 主 に 真 の 肺 エ ラ ス タ ンス
[EL(true)] と真の肺容積
[VL(true)] の関係で決まります。Piwye (resistive) も関与しますが、本論では
弾性成分に注目します。
すべての肺容積で、真の肺と胸郭の状態は下記で表されます。
PiL recoil = ViL (true) * EL(true)
過膨張は Piwye(elastic) < PiL recoil であれば起こりません。これは次の不等式
と等価です。
S [ViL(estimated) * K2] < ViL (true) * EL(true)
ここで、
K2 = EPAV(式 2 と 4 を参照)
EPAV (estimated) = EPAV (true) かつ ViL (estimated) ViL (true) である限り
PiL recoil > Piwye です。これは % Support が高い値 (85% ~ 95%) でも同じ
です。
これは、胸郭と肺に印加される圧力/リットルが EL (true) を超えない場
合、肺容積は Y 部フローが消滅すると虚脱状態になることを意味します。
EPAV (estimated) EL (true)、ViL (estimated) ViL (true)、かつ RPAV (estimated)
RL (true) である限り、PMUS は Piwye の変調因子です。
過膨脹は推定 EPAV が真の EL 値より大きいときに起こりえます。高い
% Support 設定では、Piwye (elastic) が PiL recoil を上回った結果、Y 部で自己
発生フローを生じ、続いて肺の自己発生膨張を生じる場合があります。
これは % Support 設定が 95% までに制限されている理由の一つです。
同様に、推定 RPAV が真の RL 値を上回り、高い % Support 設定の場合、Piwye
(resistive) は人工および患者気道での圧力散逸の補正に要する値を上回
り、肺を早期に過膨脹させる場合があります。ただし、最初の 3 回の吸
気後はフローが低下するので、過膨脹作用はおそらく消えます。
30
10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
PAV™*+ ソフトウェアは以下の方法で肺の過膨脹の可能性を最小化し
ます。
最大 % Support 設定は 95% に制限されます。
•
RPAV と CPAV の生データは論理チェックされ、また推定力学値は IBW
•
ベースの生理的境界に対してチェックされます。これらのチェック
は、過膨張を招く場合がある、患者抵抗の過大評価や患者コンプラ
イアンスの過小評価の可能性を低くします。
高吸気一回換気量上限 (2VTI SPONT) は(リークフローを含む)肺フ
ローの積分(=肺容積)に絶対限界を設定します。VTI 値がこの限界
•
に達すると、ベンチレータは吸気を打切り直ちに呼気へ移ります。
2 VTI SPONT 設定は Piwye の PVOLUMEPATIENT 成分の値に上限を置きます
•
(式 3 と 4 を参照)。新たな吸気の開始ごとに、PAV+ ソフトウェアは
PVOLUMEPATIENT 値を次のように計算します。
P*wye (elastic threshold limit) = 0.75 (2VTI SPONT * EPAV)
ここで P*wye は Piwye の弾性閾値限度の一意の値で、この値で肺容積
が 2VTI SPONT の 75% まで膨張します。Piwye (elastic) = P*wye (elastic
threshold limit) になると、ソフトウェアは Piwye (elastic) の増加を止め
ます。これはさらなる肺容積の増加は患者が行う必要があることを
意味し、吸気努力の終結を促進して、肺容積が 1VTI SPONT 限度に達
したための打切りの回避に役立ちます。
•
吸気圧上限 (2P PEAK) はすべての呼吸に適用され、PAV+ ソフトウェア
はこれを用いて高補正圧状況 (1P COMP) を検知します。
1PCOMP = 2PPEAK - 5 cmH2O または 35 cmH2O のいずれか低いほ
う
ユーザーが調整できる 2PPEAK 限度に達すると、ベンチレータは吸気
を打切り直ちに呼気へ移ります。Piwye(目標とする Y 部圧。式 4 で計
PAV+ オプション
10068731 Rev. C
31
取扱説明書補足
算)が 1P COMP と等しくなり 500 ms が経過すると、吸気は打切られ
呼気が始まります。さらに、Piwye = 1P COMP のとき、Piwye は 1PCOMP
までに制限されます。これは Piwye 値を固定しますが、患者の活動(咳
など)が Piwye を 2PPEAK まで駆動し、吸気を終わらせる場合がありま
す。
Piwye の 1PCOMP 限度への急上昇は最初の 3 回の吸気で起こることが
多く、RPAV が過大評価され % Support 設定が 85% より高いときにの
み起こります。1PCOMP 条件は RPAV の過大評価による過膨張を防止す
るためのものです。
•
% Support 設定の範囲は 5 ~ 95% で 5% 刻みです。サポートのレベル
を下げると過膨張の可能性が低下します。有意な低下はサポート不
足感を生じる場合があり、患者が付加的な吸気仕事量を吸収したり
サポートのレベル増加を要する場合があります。
有意な増加はベンチレータが発生する Pwye 値を急上昇させる場合が
あり、続いて Piwye が 2PCOMP に達して一時的な患者・ベンチレータ
の不調和を招く場合があります。この可能性を最小化するため、PAV+
ソフトウェアは実際のサポート増加を制限し呼吸ごとに10%まで増
やして新規設定に到達させます。
•
呼吸曲線測定は PAV+ 動作時は有効なままです。 2VTI SPONT 設定を高
くして溜息呼吸を可能にでき、このとき 4VE TOT と 2VE TOT は有効な
ままで分時換気の変化を明らかにします。
PAV™*+ は妥当な RPAV と CPAV の推定値なしでは動作できず、これらの値
は PAV+ 開始時は未知なので、スタートアップのルーティン(2 ページの
「概要」を参照)がこれらの値を 4 回の操作呼吸で得ます。これらの呼吸
には吸気終末ポーズがあり、これが生の RPAV と CPAV のデータを提供しま
すが、どちらの推定値も妥当でなければなりません。4 回のスタートアッ
32
10068731 Rev. C
PAV+ オプション
取扱説明書補足
プ呼吸のいずれかでどちらかの値が不適格なら、ソフトウェアは次の呼
吸時に代わりの操作呼吸をスケジュールします。
妥当な RPAV と CPAV の推定値なしで 45 秒が経過すると低緊急度アラーム
が起動します。この状況が 90 秒続くと、アラームは中緊急度になりま
す。この状況が 120 秒続くと、アラームは高緊急度になります。3VE TOT
および 1fTOT アラームもこの状況に関連します。
同様に、RPAV と CPAV が PAV+ スタートアップ成功後に妥当な値で更新で
きない場合、この状況が 15 分続くと低緊急度アラームが起動します。値
がなおも妥当な値で更新できないと、アラームは中緊急度になります。
PAV+ オプション
10068731 Rev. C
33