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救急部カンファレンス
~急性腹症~
研修医1年 露口 和陽
症例 67歳 女性
主訴 腹部の激痛
~急性腹症~ 鑑別は?
消化器疾患
消化器疾患以外
イレウス
消化管ヘルニア
虫垂炎
消化管潰瘍・穿孔
胆嚢炎・胆管炎・胆石発作
膵炎
憩室炎
悪性腫瘍
ウイルス性、細菌性腸炎 etc
血管(瘤、腸間膜動脈塞栓、血管炎等)
腎(結石等)
婦人科(子宮外妊娠、切迫早産等)
虚血性心疾患
血液疾患(溶血クリーゼ、ポルフィリン等)
悪性腫瘍
外傷(肝、腎、脾破裂等)
副腎不全
糖尿病
脊髄疾患
etc
現病歴
1週間前から腹部全体に移動する形で疼痛を
認めていた。本日朝5時より、心窩部~臍周囲
の痛みが増強し、次第に激痛となったためタク
シーにて救急外来受診となった。
ここで。。。
考えられる疾患と、
その可能性を高める/低める 追加の問診は?
身体所見
意識:清明
体温:36.4℃
脈拍:74回/分
血圧:176/88mmHg 呼吸数:18回/分
SpO2:98%(room air)
眼瞼結膜:貧血なし 眼球結膜:黄疸なし
心音:整、雑音なし 呼吸音:清、左右差なし
腹部:平坦・軟、臍周囲~左上腹部に自発痛・圧痛あり、
腸蠕動音正常~やや低下
四肢:冷感なし
浮腫:なし
ここで。。。
本命・・・
対抗・・・
大穴・・・
それぞれ一つずつ挙げてみよう。
また、必要な検査はありますか?
救急外来で行う検査
採血
心電図
腹部単純X-p
腹部エコー
単純/造影CT
検査結果①
腹部単純X-p
心電図
71bpm NSR, NA , no ST-T change
血液検査
WBC
9630 /μL
Seg
RBC
Hb
Ht
Plt
Na
K
Cl
Ca
PT-INR
APTT
D-Dダイマー
77.3 %
386万 /nL
12.5 g/dL
37.4 %
29.7万 /μL
141 mEq/L
4.0
mEq/L
102 mEq/L
9.7
mEq/L
0.91
27.1 秒
1.10 μg/mL
TP
Alb
T.Bil
AST
ALT
LDH
ALP
γ-GTP
BUN
Cr
血糖
CRP
7.8 g/dL
5.0 g/dL
0.7 mg/dL
25 U/L
18 U/L
226 U/L
233 U/L
21 U/L
10.1 mg/dL
0.48 mg/dL
101 mg/dL
0.20 mg/dL
アミラーゼ
3081 U/L
ここで。。。
本命・・・
対抗・・・
穴・・・
それぞれ一つずつ挙げてみよう。
追加の検査は?
また、CTは撮りますか?撮るなら単純or造影?
検査結果②
腹部エコー
検査結果③
造影CT
最終診断は?
診断
膵嚢胞性腫瘍による
閉塞性膵炎
多房性低吸収域像
浸出液貯留
急性膵炎 ~疫学・治療~
【疫学】
頻度:約30/10万 男女比2:1 男:50歳代 女:70歳代
2大要因:酒と胆石(全体の6割)
他:薬、脂質異常、 慢性膵炎増悪、内視鏡的処置(ERCPなど)、膵腫瘍など
死亡率(2007):軽症 0.2% 中等症 0.4% 重症 8.0% 最重症 50%
【治療:重症例】
絶飲食・大量輸液60-160mg/kg/day(肺水腫や心不全に注意し
ながら・最初の6時間で1/2-1/3)
+抗菌薬(イミペネムorオフロキサシンorシプロフロキサシン)
+蛋白分解酵素阻害
+鎮痛(日本ではペンタゾシンが多用)
+PPI
重症度分類
予後因子
造影CT Grade
予後因子3点以上または造影CT Grade2以上で重症
膵炎と診断
膵炎を診断しよう
~横行結腸間膜?前腎傍腔?~
横行結腸間膜
画像で見てみると。。。
前腎傍腔
急性膵炎の画像を見てみよう①
J:空腸 TC:横行結腸 DC:下行結腸
浸出液による濃度上昇
前腎筋膜の肥厚
急性膵炎の画像を見てみよう②
急性膵炎の画像を見てみよう③
腹痛 ~鑑別アプローチ~
病歴聴取の6つのポイント
①発症からの時間・・・いつから?
②場所・・・どこが?
③発症様式・・・突然/じわじわ?
④頻度・・・持続的/間欠的/発作的?
⑤悪心嘔吐、下痢はある?
⑥熱はある?
ポイント
発症様式:
①Sudden(0→MAX!!)
消化管穿孔、AMI、大動脈解離、出血性疾患(動脈瘤破裂・子
宮外妊娠・卵巣出血)、虚血性疾患(腸間膜動脈閉塞・精巣/卵
巣捻転)、尿管結石
etc
②Acute(数分~十数分)
胆嚢炎、膵炎
etc
③Gradually(数十分~数時間)
虫垂炎、胆管炎 腸炎
etc
高アミラーゼ血症の原因
急性/慢性膵炎
消化管穿孔
急性アルコール中毒
膵癌
腹膜炎
アシドーシス
胆嚢炎
腸閉塞
ケトアシドーシス
Vater乳頭部癌
異所性妊娠
卵管炎
ERCP後
アミラーゼ産生腫瘍
神経性食思不振症
急性耳下腺炎
慢性腎不全
肝硬変
唾石症
ショック
Take home message
・膵炎を疑ったら単純より造影CTを(ただし、胆
石性膵炎を疑うなら単純CTも)。
・問診や非侵襲的検査(エコーなど)のスキルを
磨く。
参考文献
ブラッシュアップ急性腹症
急性腹症の早期診断
急性膵炎診療ガイドライン2010
ジェネラリストのための内科診断リファレンス
ご清聴ありがとうございました