ひばり税理士法人 検索 調査実績から見た相続税 申告の注意点 国税局や税務署で収集した資料情報にもとづいて、相続税の申告額が過少と想定されるものや、 申告義務があるのに無申告となっているものなどに税務調査が実施されています。 1 相続税の税務調査の状況 (1)実地調査件数の8割以上に申告漏れ等 ②申告漏れ財産は現金・預貯金等が多い 「平成 25 事務年度における相続税の調査の状況につい 申告漏れの相続財産の金額は 3,033 億円で、その て」によると、平成 23 年中及び平成 24 年中に発生した 内訳を見ると、現金・預貯金等は 1,189 億円(構成比 相続を中心に行った実地調査の件数は 11,909 件 (前事務 39.2%) と最も多く、 次いで土地 412 億円 (同 13.6%) 、 年度比 301 件減)でした。 有価証券 355 億円(同 11.7%)と続いています(図表 ①申告漏れ等は82.4% 1) 。 この実地調査件数のうち申告漏れ等の「非違」があっ た件数は 9,809 件で、その割合(非違割合)は 82.4%と なっています。つまり実地調査したうちの8割以上に申 告漏れなどがあったことになります。 図表 1 申告漏れ相続財産の金額の構成比(平成 25 事務年度) 土地 13.6% 家屋 2.2% 現金・預貯金等 39.2% その他 33.3% 有価証券 11.7% (2)海外資産の申告漏れが急増 資産運用の国際化に伴って、海外資産の相続が想定さ れる「海外資産関連事案」 (注)などについては 重点的に調査が行われています。 海外資産関連事案の実地調査件数は 753 件(平成 25 事務年度)で、対前事務年度比 104.4%となっています。 (注) : 「海外資産関連事案」とは以下のいずれかに該当する事 案をいいます。 ①相続又は遺贈により取得した財産のうちに海外資産 が存するもの ②相続人、 受遺者又は被相続人が日本国外に居住する者 であるもの ③海外資産等に関する資料情報があるもの ④外資系金融機関との取引のあるもの等 相続税の実地調査件数が減少しているなか、海外資産関 連事案の調査については増加しています。 海外資産に係る申告漏れ等の非違件数は 124 件(対前 事務年度比 109.7%)に増加し、申告漏れ課税価格は 163 億円で前事務年度の26 億円に比べ620%と急増していま す(図表 2)。 図表 2 海外資産関連事案に係る調査事績の推移(申告漏れ課税価格) 200 180 160 140 120 億円 100 80 60 40 20 0 163 91 59 72 26 21 22 23 24 25 事務年度 ひばり税理士法人 事務所ニュース(第285号/通算300号)2015年9月1日発行 ひばり税理士法人 2 事務所ニュース(第285号/通算300号)2015年9月1日発行 相続税の申告漏れがないようにするには? 相続税の申告漏れ等があった場合、追加の税金(加算 今年(平成 27 年)1 月から相続税の基礎控除が縮 税など)を払うことになります。また仮装・隠ぺいの意 小され相続税が課税される人の増加が見込まれていま 図があると判断されると重加算税が課される可能性もあ す。 ります。 加算税などが課されないためにも、以下の注意点を 押さえておきましょう。 注意点 ① 被相続人(亡くなった人)の現金・預貯金や有価証券に漏れがないか確認する 申告漏れ財産の約4割を現金・預貯金等が占め、1割 以上を有価証券が占めています。税務調査では必ず現金 や預貯金、有価証券が丹念に調べられるので、被相続人 の現金・預貯金、有価証券については漏れなく調べ申告 することが必要です。 相続税の申告等をすませた後から、 貸金庫から被相続人名義の預金通帳が出てきたなどとい うことがないようにしましょう。 注意点 ② 名義預金や名義株も相続財産に含める 名義預金あるいは名義株とは、配偶者や子・孫などの 名義になっているが、実際には被相続人がお金を出し、 実質的に被相続人の財産と認定される預金や株式のこ とです。 例えば子・孫名義の通帳を作り、毎年贈与税の基礎 子 孫 「名義預金」→「相続財産」 ひばり銀行 控除額(110 万円)の範囲内で積み立て、贈与してきた つもりであっても相続税の税務調査では被相続人の名 義預金と認定されます(つもり贈与) 。 名義預金や名義株などは相続財産になりますので、 漏れのないように注意しなければなりません。 注意点 ③ 被相続人の海外資産を漏れなく確認する 海外資産についても重点的に税務調査が行われていま 被相続人に海外資産があったり、外資系金融機関と す。特に 100 万円を超える金額を海外に送金したり、海 取引していた場合などは、すべてを漏れなく確認して 外から送金されたときは、銀行から税務署に海外送金等 おく必要があります。 調書が提出され海外とのやり取りが把握されています。 例えば、被相続人が国外不動産を譲渡したときの譲渡 代金を相続税の申告に入れていないと、税務調査で申告 ※相続が発生した場合は、勝手に判断せず、専門家であ る税理士(会計事務所)にしっかりと相談しましょう。 漏れを指摘されることになります。 [今月のことば]上手に勝てなければ、むしろ上手に負けた方がいい 松永安左エ門(元東邦電力社長) 明治から昭和にかけて電力事業に取り組み、 「電力王」と呼ばれた松永だが、その人生は成功と失敗の繰り返しだった。32 歳のころ、株で大 損し無一文となり、読書三昧の日々を過ごして自分を見つめ直した。この時期が転機となり、その後は東邦電力の設立をはじめとして日本 の電力業界に大きな影響力を持つ。戦後は、電力復興の責任者に抜擢され、9 電力体制を築き上げた。 <TKC 事務所通信 平成 27 年 9 月号より> ひばり税理士法人 検索
© Copyright 2024 ExpyDoc