ダイオード (原理、作用、いろいろなダイオード) Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 1 n型半導体とp型半導体 純粋Si分子(共有結合) 1.電子が過剰な半導体(n型半導体)と、 電子が不足する言い換えれば、電子の 抜けた正孔(ホール)が過剰な半導体(p 型半導体)とを接合させると、ダイオー ドができる。 最外殻(M殻)は電子2個ず つを共有し計8個として 安定強固な結合を作る -2 -2 2.n型半導体は、4価の原子であるGe(ゲ ルマニウム)や,Si(珪素)に5価のAs(砒素)、 Sb(アンチモン)などを不純物として加え て作る。原子核の束縛の弱い最外殻Mの 電子が余剰で比較的自由に動ける状態に なっている(自由電子という)。 3.p型半導体は、4価の原子に3価のGa(ガ リウム)、In(インジューム)、Al(アルミ) など不純物を加えて作る。 最外殻Mの電子が不足するので正孔(ホー ル)が余剰になっている。 電子 -2 +14 K -1 +4 +4 -2 -2 -1 +4 -2 +4 -2 -2 +4 -2 -2 +5 +4 -1 -1 +5 -1 -1 +イオン -2 Ga(3価) -2 -1 -2 -2 電子 -1 -1 -1 -2 +4 -21 +4 -2 -2 -1 +1 正孔 -1 +3 -1 -1 +3 -1 -1 -2 ーイオン n型半導体(Si+As) p型半導体(Si+Ga) M殻電子が9>8 で余剰 自由電子 M殻電子が7<8 で不足 正孔が余剰 -2 -2 -2 -1 +4 -1 -1 -1 -2 -2 +4 -2 -2 -2 -1 L -2 -2 M殻(電子8個で充足) Si 原子 +4 -2 As(5価) +4 +4 -2 -2 -2 -1 -2 +5 -2 -2 -21 +4 -2 +4 -2 -2 -2 +4 -2 -2 -2 +4 +4 +4 -2 -2 -2 -2 -2 -2 -2 -2 -2 Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 -2 +4 +4 -2 -2 -2 +1 -2 +3 -2 -2 -21 +4 -2 +4 -2 -2 -2 +4 -2 -2 +4 -2 -2 -2 +4 -2 2 -2 pn接合と整流作用 ホール 電子 電圧がない状態では電子やホール(正孔)が広く分布している。 p n 図A 電流 順方向 課電圧 + p p側を正、n側を負として、接合部を超えるのに必要なある 一定値以上の電圧を掛けると、ホールは負極側に、電子は 正極側に接合部を超えて移動する。ホールと電子はさらに 電源から補充され電流が流れ続ける。 下の場合と合せ、整流作用は、p、n どちらかの半導体に金 属を接触させるだけでも起こり得る(点接触整流子、ショッ トキーバリア接合ともいう)。 n 図B - 電流≒0 逆方向 課電圧 図C - p n ------ 空 ++++++ 乏 層 + p側が負、n側が正となるように逆方向電圧を掛けると、ホ ールはpの電極側に、電子はnの電極側に移動し接合面側に は正負イオンが残る。このイオンが対峙する部分は電気抵 抗が極めて高く正負が向かい合う電気二重層を形成する。 直流電流は殆ど流れない。 このとき、接合面付近の電気二重層は等価的にコンデンサ を形成する(接合容量という)。このため高周波が通過で きるので高周波では通電可能となる。 Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 3 VFは、シリコンで約0.7V ゲルマニウムで約0.2V 温度が上がるとVFは低下する。 ダイオード の整流特性 I O 理想的な ダイオード 図D 電 流 実際の ダイオード V IF 逆方向 IF P N VF 通常使用 VR 領域 IF 定電圧 領域 順方向 P N 電圧 VF IR VR IFは、シリコンで数nA程度 ゲルマニウムで数μA程度。 温度が上がるとIFは増加する。 逆方向電圧をさらに高くすると、 急に逆方向電流が増加するブレ ークダウン(降伏)領域がある。 (定電圧ダイオードで利用) Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 図E 4 整流回路 整流器 電流・電圧波形(理想ダイオード) i:電流 単相半波 整流回路 交流 電源 ~ 抵抗 負荷 電圧:v 図F 変圧器 単相全波 整流回路1 交流 電源 i 図G-1 ~ :v 単相全波 整流回路2 三相全波 整流回路 交流 電源 i ~ v 三相 交流 電源 図G-2 図H i v Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 5 ダイオードによる検波 振幅変調(AM)波 q1 図I-1 低周波信号波 検波=(単相交流)半波整流 q2 LPF通過後 図I-3 搬送波 平均値 図I-2 平均値 q3 a b sin pt sin t a ' b' sin pt の+側 LPFの例 q1の振幅部分 LPF: Low Pass Filter, 低周波濾波器 高周波成分を取り除く。 直流分除去後=信号波 図I-4 a b sin pt sin t q4 b' sin pt r c 直流分を除去 Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 6 いろいろなダイオード 1. PINダイオード ダイオードは、順方向、逆方向の抵抗 の差を利用してスイッチング素子とし ても利用されるが、高周波では、逆電 圧時に接合容量により絶縁性がなくな る(P.2、図C)ので、この高周波対策と してPINダイオードが作られた。 A:アノード(正極) P 図J-1 I P型 半導体 K:カソード(負極) N N型 半導体 2. 定電圧ダイオード ダイオードの逆方向電圧を高めると急 に逆方向電流が増大する領域に達する。 (p.3、図E参照)この領域は通常のダイオ ードの動作領域を超えて「ブレークダ ウン(降伏)領域」と呼ばれる。このとき、 電圧はほぼ一定に保たれるので定電圧回 路に利用される。 降伏現象には「ツェナー降伏」と、「ア バラーンシュ(なだれ)降伏」があるが、 定電圧ダイオードを「ツェナーダイオー ド」とも呼んでいる。 記号 又は I型半導体(I:intrinsic 真の、固有の) 不純物がない純粋半導体 I層の存在で欠乏層(電子もホールも無 い層)が大きくなり、結合容量は大幅 に減少する。 電源 入力電圧 電流制限 用抵抗 出力電圧 PIN:ピン、またはピーアイエヌと読む 記号 PIN 又は PIN 図J-2 ツェナーダイオード利用定電圧回路 Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 7 3. 可変容量ダイオード(別名 Varactor, バラクタ variable reactor、 Varicap,バリキャップ variable capacitor) 逆電圧を加えたときの電気二重層に よるコンデンサは、電圧を高めると、 絶縁物に近い空乏層部分が拡大し平均 距離が増加するので容量が減少する。 用途:高周波同調用など 逆方向課電 電圧低い 電圧高い - p ---- n ++++ - 空 乏 層 p ------n ++++ ++++ + 空 乏 層 4. 発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode) N型半導体内の自由電子は、温度で決まるエネ ルギー状態にある。そこに順方向電流を流して エネルギーを与えると自由電子はPN接合部を 超えてP型半導体内に入りホールと再結合する。 このとき熱又は光を放出する。通常の、シリコ ンやゲルマニウムのPN接合では熱しか出ない が、適当な材料を用いるといろいろな色の光が 放出される。熱を伴わないので発光効率高く寿 命が長い。順方向電圧は1.8~2Vと高い。 次の金属間化合物半導体のPN接合を使用。 GaAs(ガリウム砒素): 赤外線 GaAsP(ガリウム砒素燐): 赤から緑まで GaN(ガリウム窒素): 青 Red 白色は青に蛍光体または青と黄色 など p n E c h h : プランクの定数, c : 光速、 : 波長 光の振動数 + 高い 記号 又は など 光 E 再結合 図J-3 可変容量ダイオード Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 伝導帯 フェルミ準位 価電子帯 エネルギ ーレベル 低い 図J-4 発光ダイオード 8 5. フォトダイオード(受光素子) 光を受けて起電力を発生するダイオード である。 PN接合部付近ではN側で豊富な電子はP 側へ、P側で豊富な正孔はN側へ拡散する ことにより、N側が+、P側が-に帯電し ている。半導体に光が当り光のエネルギ ーで、電子と正孔が発生すると、上記帯 電により、電子はN側に、正孔はP側に移 動させられP側を正とする起電力が発生 する。 太陽光電池も同類であるが、エネルギー ではなく、信号を扱うことを目的とする ものをフォトダイオードと呼んでいる。 関連 (1)フォトトランジスタ コレクターベース接合部が受光素子にな っており光を受けるとベース電流が流れ、 それがトランジスタの作用で増幅され大 きな出力が得られる。 光 P N - + 光 i N コレクタ ベース P N エミッタ (2) 光導電セル CdS, PbS, PbSeなどの、光を受けると抵抗値が 下がる現象を利用し、光センサとして用いる ものがある。 (3) フォトカプラー 光の中継器で受光素子と発光ダイオードを結合 させて作る。 6. 定電流ダイオード FET(電界効果トランジスタ)と類似の構造で(ゲ ートはない)、アノード(ドレイン) カソード( ソース)間の電流が定電流になる。 ダイオードに関し参考とした資料 電気学会「電気工学ハンドブック」 時田元昭「トランジスタと半導体」、電波新聞社 奥沢清吉「ビギナー トランジスター読本」誠文堂 新光社 ニュートン別冊「完全図解周期律表」ニュートン社 そのほかインターネット上の諸資料など 図J-5 フォトダイオードとフォトトランジスタ Copyright (c) 2007 宮田明則技術士事務所 9
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