レンズ形状を有するせん断パネルダンパーの開発 その7 不

日本建築学会大会学術講演梗概集
(近畿) 2014 年 9 月
21428
レンズ形状を有するせん断パネルダンパーの開発
その7 不規則波形による設計モデルの検証
制震
履歴型
低降伏点鋼
せん断パネル
正会員
同
同
○三塩 洋一*
名取 祥一**
石山 昌幸***
正会員
同
同
久保田雅春**
阿部 隆英**
山﨑 信宏***
レンズ型ダンパー
復元力特性
1. はじめに
筆者らは,低降伏点鋼を用いたレンズ型せん断パネル
ダンパー(以下,LSPD)を提案している。
LSPD の設計モデルは,変位一定繰返し加力実験および
変位漸増繰返し加力実験により得た結果 1)に基づき,ひず
み硬化型トリリニアモデルの非線形ばね(以下,ひずみ
硬化型モデル)として評価 2)している。変位一定あるいは
変位漸増繰返し加力実験は,正負交番かつ振幅に対称性
を持たせた加力実験であり,ひずみ硬化を有する低降伏
点鋼の材料特性を考えた場合,変形がある一方向のみに
図 1 条件 1 の波形
図 2 条件 2 の波形
図 3 条件 3 の波形
図 4 条件 4 の波形
図 5 条件 5 の波形
図 6 条件 6 の波形
生じる場合や規則性を持たない波形に対する復元力特性
と設計モデルとの検証が必要と考える。
本報では,LSPD に不規則な波形を与えた場合の復元力
特性と設計モデルとの相関を明らかにすることを目的と
し,構造性能確認実験を行ったので報告する。
2. 試験体と入力波形
試験体は,既報 1)に準じ,LY100 type12-6 とした。
3. 構造性能確認実験
不規則波形による構造性能確認実験(以下,不規則波
形実験)は,二軸試験機(鉛直 2MN,水平 1MN,日本鋳
造(株)所有)にて行った。
試験機へのレンズ型せん断パネルの取付けは,既報 1)に
準じ,高力ボルトを用いて締付けた。また,試験体に与
える入力波形は,表 1 および図 1∼図 6 に示す 6 パターン
とした。表中には,片振幅の平均せん断ひずみ(以下,
ε i)の最大,最小値も示しており,変位漸増繰返し加力
実験結果
3)
から,εi の上限値は 22.4%程度とした。なお,
平均せん断ひずみとは,レンズ型せん断パネルに生じる
水平変位をせん断パネルの有効高さ h で除した値である。 4. 実験結果
各実験により得た平均せん断応力度と平均せん断ひず
表 1 不規則波形
条
件
波形名称
みの関係を図 7∼図 12 に示す。ここで示す平均せん断応
εi (%)
最大値
最小値
力度は,実験により得た荷重をレンズ型せん断パネル中
1
変位漸増繰返し加力波形
22.4
-22.4
央部断面積で除した値である。図中には,LSPD の周辺部
2
変位漸減繰返し加力波形
22.4
-22.4
材を設計する際に用いる部材設計平均せん断応力度 2)(図
3
片変位漸増繰返し加力波形 1
22.4
0
中赤線,LY100 の場合に 295N/mm2)ならびに各不規則波
4
片変位漸増繰返し加力波形 2
22.4
0
形に対するひずみ硬化型モデルの数値計算結果も示して
5
変位非対称漸増繰返し加力波形
22.4
-3.2
6
ランダム波形
22.4
-19.2
いる。なお,ひずみ硬化型モデルの数値計算には,参考
文献 4)に示す計算ソフトを使用した。
ひずみ硬化型モデルで評価される LSPD の降伏荷重は,
Study on the shear panel damper in the shape of concave type
lens for seismic response control structure.
Part7: Confirmation of the Dynamic Design Model Using Irregular Wave
― 855 ―
MISHIO Youichi, KUBOTA Masaharu,
NATORI Shouichi, ABE Takahide,
ISHIYAMA Masayuki and YAMAZAKI Nobuhiro
τmax
τmax
η
η
τmax
η
図 7 条件 1 の実験結果
図 8 条件 2 の実験結果
τmax
τmax
τmax
η
η
図 10 条件 4 の実験結果
図 11 条件 5 の実験結果
降伏決定関数(η)の影響を支配的に受ける。ひずみ硬
図 9 条件 3 の実験結果
η
図 12 条件 6 の実験結果
化型モデルの規則性として,平均せん断ひずみの折返し
5. まとめ
本実験により得た結果を以下に示す。
点が原点に近づくほど降伏荷重は低い値を示す。また,
・ひずみ硬化型モデルの規則性として,平均せん断ひず
二次剛性が小さいため,平均せん断応力度も低い値とな
みの折返し点が原点に近づくほど,降伏荷重は低い値
る。そのため,図 7∼図 12 に示す実験結果のうち,条件
となり,二次剛性も小さいため,平均せん断応力度も
3,5,6 におけるひずみ硬化型モデルの平均せん断応力度
低い値となる。そのため,条件 3,5,6 では,ひずみ
は低い傾向を示している。
硬化型モデルの平均せん断応力度は低い傾向を示した。
次に,不規則波形実験により得た平均せん断応力度の
・平均せん断応力度は,いずれの実験においても解析値
最大値(τ max )と最小値(τ min ),総エネルギー吸収量
を上回っているが,部材設計平均せん断応力度は下回
(Esum)を表 2 に示す。表中には,各不規則波形に対する
った。
ひずみ硬化型モデルの平均せん断応力度と総エネルギー
・総エネルギー吸収量は,一例を除き,ひずみ硬化型モ
デルにより算出される量を上回った。
量も示している。
その結果,平均せん断応力度は,いずれの実験におい
・LSPD の設計モデルであるひずみ硬化型トリリニアモデ
ても解析値を上回っているが,部材設計平均せん断応力
ルは,変形がある一方向のみに生じる場合や規則性を持
度は下回っている。また,総エネルギー吸収量は,条件 4
たない波形に対しても安全側の評価と判断できる。
にて若干解析値を下回ったものの,ほかの条件について
【参考文献】
は,いずれも解析値以上の吸収量を示した。
1) 山﨑,石山,久保田,名取,三塩,尻無濱:レンズ形
状を有するせん断パネルダンパーの開発,その 2,日本
表 2 不規則波形実験結果と数値解析結果
2
τmax (N/mm )
2
τmin (N/mm )
建築学会大会学術講演梗概集(北海道),2013.8
Esum (kN・m)
条
件
実験
解析
実験
解析
1
193.3
177.5
-193.7
-177.5
111.3
109.1
2
195.8
177.5
-193.6
-177.5
112.5
106.2
実験
解析
2) 三塩,尻無濱,久保田,阿部,石山,山﨑:レンズ形
状を有するせん断パネルダンパーの開発,その 4,日本
建築学会大会学術講演梗概集(北海道),2013.8
3
176.2
82.2
0.0
0.0
48.7
39.4
3) 石山,山﨑,久保田,名取,阿部,三塩:レンズ形状
4
154.0
175.7
0.0
0.0
24.6
28.2
を有するせん断パネルダンパーの開発,その 6,日本建
5
177.6
76.2
-173.5
-177.5
48.2
38.0
6
189.0
177.5
-182.7
-177.5
61.1
48.1
*
**
***
鉄建建設株式会社
飛島建設株式会社
日本鋳造株式会社
建築本部
建設事業本部
エンジニアリング事業部
築学会大会学術講演梗概集(近畿),2014.9(投稿中)
4) SNAP(Ver.6.0.0.8)
,
(㈱構造システム)
*
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― 856 ―
Architectural Division, TEKKEN CORPORATION
Construction Division, TOBISHIMA CORPORATION
Engineering Division, NIPPON CHUZO