インタビュー記事を読む

[月刊]プロパティマネジメント
2015年8月号 地方特集掲載記事
CASESTUDY |地方投資先行者の戦略と出口
LC パートナーズ
事業安定の秘訣は得意分野への特化
地方生活密着型商業施設に勝機
地方の商業施設などに重点投資
運用資産規模は180 億円超
小山努
氏
代表取締役社長
LC パートナーズは、東証ジャスダック上場の不動
産会社、ロジコムの全額出資により2009 年に設立さ
れた AM 会社である。
親会社のロジコムは本社を東京都東大和市にお
地方、小規模、高難易度も厭わず
き、創業以来、同市や三多摩エリアおよび埼玉県西
REIT をはるかに凌ぐ配当利回りを提供
部で、不動産管理や賃貸、開発、サブリース事業な
どを手がけ、同地域の地主や企業などとは、土地の
LCリテールファンドでは、地方や郊外の商業施設
有効活用提案などで密接なリレーションを築いてい
を中心に組み入れ、安定的かつ J-REIT を凌ぐ比較
る。なかでも商業施設や倉庫などの開発 ・ 管理で実
的高い配当利回りを念頭においている。代表取締役
績をもつ。
社長の小山努氏はこう狙いを話す。
LC パートナーズもまた、こうしたロジコムのネット
「高齢化の進展などにより、消費者の商圏は縮小を
ワークや実績を十分に活用するかたちでファンド事業
続けている。そうしたなか食品を含めた日用の買回
を展開しており、三多摩エリアはもとより、広く郊外や
り品を扱う、商圏距離にして約 3km 以内までのスー
地方都市に目を向け物件を取得している。
パーやコミュニティ型施設の需要が盛り返している。
同社は目下、4 本の私募ファンドを運営しており、
とくにこれは地方や郊外エリアで顕著」。
2015 年 7 月時点の運用資産総額は約 180 億円を超
地方といえば、人口減少が急速に進み、リスクは
える規模となっている。
高いと考えるのが一般的であるが、地方都市といっ
ファンドの内訳をみると、まずは 2011 年から運用
てもまんべんなく人口が減っているわけでない。その
する東北早期復興支援ファンドがある。東日本大震
都市のなかで住宅が集積し強い需要が見込めるエリ
災以降、復興事業などで被災地域周辺にゼネコン
アもある。そうしたエリアのなかから物件を厳選して
関係者などが数多く集まるなかで、不足していた宿
投資を行う方針である。
泊施設を投資家の資金を呼び込み整備したものであ
取得対象のイメージは、例えば食品スーパーを核
る。2 号ファンドまで組成されており、合計で約 47 億
にしてドラッグストアや 100 円ショップが付帯するなど
円の規模。両ファンドで宮城県名取市、同大崎市、
強固な実需に根差した施設である。東京はもとより
東松島市に 3 ホテル ・ 約 1,200 室を開発 ・ 運営して
名古屋、大阪など全国を対象に、金額規模は数億
いる。
円規模∼∼30 億円程度までをターゲットとする。物
東北早期復興支援ファンドを除けば、運用資産
件規模を小さく抑えているのは、ポートフォリオのリス
の大半を占めるのは商業施設関連のファンドであ
ク分散上有利であることと、J-REIT や大手不動産
る。一つは企業のオフバランスを目的としてファンド
投資家との競合も回避できるためである。
化した流動化案件で 15 億円の規模。そしてもう一
さらに小山氏は J-REITとの比較感でもこうした地
本が、2014 年に運用を開始した LCリテールファン
方案件を手がけるメリットがあると指摘する。
ド(1 号)である。資産規模は 8 物件 ・ 120 億円と
「J-REIT マーケットは価格が高くなり過ぎているよう
なっている。
にみえる。NAV(純資産価値)に対するプレミアム
は 50 %あまりにまで達しており、これは不動産のバ
36
PROPERTY MANAGEMENT 2015 Aug.
LC リテールファンドに組入れられ、安定稼働する横浜市郊外の大型複合施設「ヨツバコ」
リューというよりは、流動性に後押しされた金利低下
LC レンディングが利用するのは、インターネット上
によって支えられているのだろう。そして REIT のよう
で不特定多数の投資家から投資資金を集めるソー
に規模が大きくなればなるほど、効率性の観点から
シャルレンディングと呼ばれる仕組みである。2014
手間のかかる案件は手がけにくくなる。都心でも地方
年 5 月には同事業の法的な根拠として「金融商品取
でも、仕上がった案件のみを追いかけるから高値を
引法等の一部を改正する法律」が可決された。クラウ
買わざるを得ない」。
ドファンディングもその一つであり、同分野は今後大
LCリテールファンドが勝機を見出すのはまさにここ
きな成長が見込まれている。
である。小規模な商業案件はもとより、借地や権利
小山氏は狙いをこう話す。
「J-REIT は非常に良い
関係の調整が必要な案件も厭わず取り組む。とくに
仕組みではあるが、不動産への投資商品はそれだ
地方や郊外には証券化など想定もしていないような
けではないはず。日本は投資商品のバラエティ性と
地主の保有案件もある。テナント構成や権利関係が
いう面からみて世界から大きく遅れをとっている。こ
複雑な案件については、親会社のロジコムがマスター
のソーシャルレンディングの仕組みを活用することで、
リースとして入り、クッションの役割を果たすケースも
メザニン投資などさまざまな投資チャンスを広くご紹
ある。
介できる」。
地方に着目し、かつワークアウトを惜しまない取得・
LC レンディングはすでに貸金業登録など関連免
運用戦略により、LCリテールファンドの配当利回りは
許の取得を済ませ、ロジコムセレクトファンドとして、
8%以上を確保。投資家からの需要も拡大しており、
先の LCリテールファンドのメザニン部分に投資する
2 号ファンドも計画中である。さらに将来的には組み
ファンドなどを 7 号まで販売している。運用期間は 6
入れ物件をシードにして J-REITとして上場させるこ
∼36 か月で、利回りは 5∼7 %に設定。2015 年 7 月
とも検討している。
までに5億円の投資を受け入れている。
小山氏は「ローンファンドを含め、地方への不動
「ソーシャルレンディング」にも着目
メザニンローンファンドを一般投資家に提供
産投資はたんに安定的かつ有利な利回りを享受でき
るということにとどまらない。ファンドを通じて、本当
に地元にとって必要な施設を保有 ・ 維持するという
LC パートナーズは私募ファンドの運用に加え、ファ
地域貢献の意味合いもある。当社グループは、今後
イナンス面でも独自の取組みをみせている。それが、
もこれら地方をターゲットにしたファンドの運用に責
メザニンなどの投資商品を広く一般事業会社や個人
任をもって取り組むことで、投資家により有利な投資
投資家に提供することを目的に、ロジコムの 100%出
機会を提供するとともに、地方活性化にも貢献してい
資によって設立された LC レンディングである。
きたい」
と結んでいる。
37