藤原 寿光氏に聞く - 不動産証券化協会

Special
●トップインタビュー
ラサールロジポート投資法人
ラサール REIT アドバイザーズ株式会社
代表取締役社長
藤原 寿光氏に聞く
ラサールロジポート投資法人(証券コード:3466 )
が 、2016 年 2 月17 日 、東京証券取引所に上場しま
した。本投資法人は物流施設を投資対象とし、東京エリア・大阪エリアの「プライム・ロジスティクス」へ重点
投資します。
資産運用会社である、ラサール REIT アドバイザーズ株式会社 代表取締役社長 藤原寿光氏にお話を
伺いました。
―物流施設特化型の J-REIT ですが 、上場までの
(インタビューは2016 年 5 月に実施 )
を始めています。企業のサプライチェーン効率化の
経緯を教えてください。
ニーズが高まる中で、その受け皿となる先進的な物
ラサールグループは、世界 17 か国に拠点を構え、
流施設が不足している点に注目し、これまでに延床
グローバルに展開する不動産専門の資産運用会社
面積にして約 350 万㎡に及ぶ物流不動産の投資実
です。各国の投資家から約 583 億米ドル( 2015 年
績を積み重ねてきています。
12月末時点 )
の資金をお預かりしており、世界有数の
運用資産規模を誇ります。日本においては、2001 年
この間 、コア適格の投資対象として、物流不動産
に進出して以来 、オポチュニティ・ファンドの運用を中
の認知度が急速に高まり、資金流入が加速しました。
心として、オフィス、商業施設 、レジデンシャル、ホテ
他方で、物流施設特化型の J-REIT は銘柄数がい
ルなどに1 兆円を超える規模の投資実績があります。
まだに限られているのが現状です。ラサールグループ
他方 、グローバルにみると、ラサールグループの運用
として、我々の物流不動産のノウハウをフル活用した
資産の約 8 割は、長期安定的なインカム収益の獲得
J-REITを組成し、新たな選択肢として投資家の皆様
を主目的とするコア型投資です。ローカルマーケット
に提供することを通じて、市場の発展に些かなりとも
に根差した資産運用会社としてビジネスを発展させて
貢献できるのではと考えています。
いく上でも、コア型投資商品である J-REIT の組成は
最優先の経営課題であり、数年をかけて周到に準備
を進めてきたものです。
― IPO の際 、投資家の反応はいかがでしたか。
ラサールの海外での知名度や約1,100億円のオファ
リング規模も踏まえて、グローバル・オファリングとしま
物流施設特化型とした背景についてですが、先
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した。久々の大型 IPOということで注目度も高く、内
ず物流不動産のパイオニアとしてのラサールグループ
外の投資家の方々から高い関心が寄せられました。
のノウハウが挙げられます。日本において物流不動
ローンチ以降 、J-REIT 市場だけでなく、資本市場全
産がまだ黎明期にあった2000 年代前半 、ラサールグ
体のボラティリティが高まる難しい局面もありましたが、
ループでは、その成長可能性にいち早く着目して投資
最終的には内外の機関投資家と個人投資家から約
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.31
トップインタビュー: ラサールロジポート投資法人
ラサール REIT アドバイザーズ株式会社
代表取締役社長 藤原 寿光氏に聞く
ラサール REIT アドバイザーズ株式会社
代表取締役社長 藤原 寿光氏
6 倍の需要が集まり、
「全員参加型 」の結果となりまし
す。①人口稠密な消費地へのアクセス、②幹線道路
た。プライム・ロジスティクスで構成されるポートフォリオ
やその結節点への近接 、③ 24 時間操業が可能であ
のクオリティに加えて、ラサールの運用能力や今後の
ること、そして④公共交通機関による通勤が可能で、
成長戦略を丹念にご説明したことで、エクイティストー
雇用確保が容易であることです。とくに最近は、庫内
リーを高くご評価頂いたものと考えています。お陰
作業の人手不足がテナント各社の悩みの種となって
様で、
トムソン・ロイター・マーケッツ「 DEALWATCH
いるので、
この点は重要性が増しています。
AWARDS 2015 」の不動産投資信託証券部門に
おいて“ J-REIT Deal of the Year ”、キャピタル・
優良物件の基準としては、今日的な物流オペレー
アイ Awards の不動産投資信託証券部門におい
ションを支えうる規模と機能性を備えているかを重視
て“ BEST DEAL OF 2015 ”の双方を受賞しまし
しています。具体的には、規模については、物流施
た。大変名誉なことと感じています。
設の集約統合の受け皿となりうる延床面積 5,000 坪
以上を目安としています。機能面では、床荷重 、有
―プライム・ロジスティクスについて詳しく教えて
効天井高 、柱間隔などが汎用性のあるスペックとなっ
ください。
ているかを基準としています。在庫保管を目的とした
物流適地にある優良物件のことをプライム・ロジス
従来からの保管型施設だけでなく、仕分け・配送効
ティクスと我々は呼んでいます。本投資法人では、中
率性を重視する通過型施設や要冷商品を扱う冷凍
長期的に物件競争力や資産価値の維持・向上が可
冷蔵施設まで、幅広い物流機能を受け入れることが
能なプライム・ロジスティクス物件に重点投資していく
できるためです。
方針です。コア型投資としてバイ&ホールドを前提に
運用していく上で、ポートフォリオのクオリティは、中長
期的に運用成績を左右する要素だと考えています。
―ポートフォリオの特徴及び投資方針について 、
具体的に教えてください。
IPO ポートフォリオは、メガ物流施設 8 物件で構成
物流適地の要素としては、次の4つを重視していま
され、1,614 億円の資産規模です。その何れもがプラ
May-June 2016
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イム・ロジスティクスと呼ぶにふさわしい物件です。首
スク・ハイリターン型のファンドですが、それに対して本
都圏の大消費マーケットを取り囲む物流最前線であ
投資法人は、キャッシュフローの安定成長を運用目標
る国道 16 号線や東京湾岸にすべて立地していること
としていますので、安定稼働物件への投資が基本で
も特徴です。また、8 物件のうち、7 物件がマルチテ
す。この点で両者が競合することはありませんし、む
ナント型物流施設ですので、テナント分散も十分に図
しろ車の両輪として相乗効果を期待しています。
られています。テナント数は90 社にもなり、上位 10テ
ナントの占める比率は全体の48% 程度です。
その一環として、物件売却情報の提供契約をスポ
ンサーと締結しています。私募ファンドの開発する物
今後の投資方針ですが、消費人口が集中してい
件もその対象に含まれます。我々は独立した資産運
る東京エリアと大阪エリアを重点的な投資対象と位
用会社として、本投資法人の投資主利益の最大化
置付けており、ポートフォリオの80% 以上をこの両エリ
を唯一の尺度として投資判断をしていることは言うま
アに投資します。国際貿易港 、空港や高速道路網
でもありませんが、スポンサーとも連携を取りながら、さ
が整備され、地域内物流から広域物流まで幅広い
まざまな投資機会を捉えて外部成長に繋げていきた
物流活動が集中していることもその理由です。また、
いと考えています。中期的な目標として、2020 年に
先ほどから消費地 、消費人口という用語を使ってい
3,000 億円の資産規模を目標としています。もちろん、
ますが、それは我々が消費物流を投資テーマとして
規模のための規模の追求ではなく、外部成長を通じ
重視していることと関わりがあります。消費物流は、
て投資主価値の向上を図っていくことが目標です。ま
安定性と成長性を兼ね備えているという魅力がありま
た、リスク・リターンを慎重に見極める必要はあります
す。消費物流の世界では、チェーンストア業界の再
が、開発案件に少数出資することで、開発利益を取
編・統合、ネット通販の著しい伸長や SPA(製造小売
り込みつつ、将来の外部成長機会を確保するという
業)
の台頭など、ダイナミックな構造変化が続いていま
アイデアも検討しています。
すが、それらが物流施設のスペース需要を大きく牽引
しています。
ラサールグループは物流施設に精通した専属の
リーシングチームを抱えており、本投資法人はリーシン
―スポンサーであるラサールグループのサポート
グのサポートも受けています。テナントリレーションを内
やノウハウの活用について 、具体的に教えてく
製化し、日頃からの信頼関係を構築していることは、
ださい。今後の成長戦略についてもお聞かせく
物件稼働率の維持や賃貸条件の適正化といった内
ださい。
部成長戦略を進めるうえで、強みになると考えていま
ラサールグループでは、本投資法人を旗艦ファンドと
す。
して、その成長を全面的にサポートしていきます。ス
ポンサーが日本の物流施設に特化した私募ファンドも
最後に、外部成長・内部成長の実績を着実に積み
運用していることから、本投資法人の位置付けにつ
重ねることで、中長期の投資対象として、投資家の皆
いて、投資家からも多くの質問を頂きました。ラサー
様からの信頼を得られるよう努力していく所存です。
ルグループの中で、両者の位置付けは明確です。私
募ファンドは、物流施設の開発案件に投資するハイリ
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ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.31