繰返し定体積単純せん断試験機の試作

第 35 回地盤工学研究発表会 ,pp. 763∼764, 2000.6
繰返し定体積単純せん断試験機の試作
大阪市立大学工学部 正 ○大島昭彦 高田直俊
同 大学院 学 柳瀬一範
まえがき 砂質土の繰 返し非排水せん断特性 (主として液状化抵抗) を求める試験として, 繰返し非排水三軸試験 が
多用される。しかし,こ の試験は等方応力・軸 対称条件を初期値とし, 軸方向に圧縮・伸張荷 重を繰返し載荷するも の
で,実際の地盤内での応 力・変形状態とはかな り異なるため,あくまで 指標試験として位置付 けられる。一方,通常 の
地盤と同様に一次元圧密 ・平面ひずみ条件を初 期値とし,水平方向にせ ん断力を繰返し載荷す る手法としては,直接 せ
ん断試験法が優れている 。この目的で繰返し定 体積一面せん断試験機を 製作し,それによる試 験結果および繰返し非 排
水三軸試験結果との比較を報告した 1)∼4)。しかし,一面せん断試験では供試体が不均一に変形するため,せん断ひずみの
定義ができず,ひずみ量で液状化強度を定義する現行の考え方からは問題が残った。
これに対して単純せん断試験は,直接せん断試験の利点を有し,せん断ひずみを定義できる理想的な試験法であるが,
これまでの試験機は剛板 による周面摩擦力や柔 構造による曲げ変形の問 題がある。ここでは, 多段式単純せん断試験 機
を踏襲して,繰返し一面せん断試験機を基に試作した繰返し単純せん断試験機の紹介と実験結果の一例を報告する。
繰返し定体積単純せん断試験機 図-1 に試験機の概略を示した。供試体寸法は,直径 120 mm,高さ 40 mm で,繰返
し一面せん断試験機 1)のせん 断箱を単純せん断用に取り替 えたものである。せん断箱は 8 段の剛なせん断箱要素から な
り,各要素の両側 2 ヶ所ずつに取り付けた斜めガイドローラとガイド板(前列は上ヒンジで奇数段の要素を,後列は 下
ヒンジで偶数段の要素を ガイドしている)によ って,せん断箱要素間の 相対水平変位が等しく 保たれる。せん断箱の す
ぐ内側は「七面せん断」 となるが,巨視的には 均一なせん断変形が与え られる。この試験機で は,押し側・引き側の 繰
返しせん断を可能とする ため,斜めガイドロー ラとガイド板を初期には 鉛直になるように設置 している。また,各せ ん
断箱要素間に隙間(0.2 mm)を確保し,かつスムースな水平移動をさせる目的で,せん断箱要素の奇数段の四隅に水平ガ
イドローラを設置してい る。このため,初めか ら各せん断箱要素間に隙 間が開いているので, 隙間からの試料のこぼ れ
を防ぎ,かつ供試体の飽和状態を維持するため,せん断箱の内側にゴムスリーブ(厚み 0.2mm)を設置し,加圧板と最上
段のせん断箱要素に O リングで止めている。ただし,このゴムスリーブによるせん断挙動に与える影響は小さいことを
確認している。単純せん断で は供試体全周に周面摩擦力が 生じるため,反力板側垂直応 力σU ,加圧板側垂直応力σL は そ
れぞれ上,下面の垂直応力となる。そこで,平均垂直応力σM(=(σU + σL )/2)を供試体の垂直応力として扱った。
この試験機の特徴は,文 献 1)に示した繰返し定 体積一面せん断試験と 同様であるが,垂直, せん断載荷装置に直接 駆
動 (DD)モータを取付け,電気的に垂直応力とせん断応力を制御している。また,せん断箱ガイド装置にリニアーガイド・
せん断力載荷装置
(DD Motor)
せん断変位計
A
せん断荷重計
垂直変位計
上部材吊りボルト
反力板側垂直荷重計
すき間設定用ねじ
せん断箱要素(8段)
反力枠
反力支柱
加圧軸
下ガイド
ローラ
A
A
A
加圧板側垂直
荷重計
供試体
(φ120×H40)
垂直力載荷装置
(DD Motor)
反力板側垂直
荷重計
リニアガイド
・レイル
反力板
水平ガイド
ローラ
せん断箱要素(8段)
ゴムスリーブ
加圧板
ガイド板
斜めガイドローラ
上ガイド
ローラ
(1) 試験機の全景
(2) せん断箱周りの詳細
図-1 繰返し定体積単純せん断試験機の概略
Development of cyclic constant volume direct simple shear test apparatus
Akihiko Oshima, Naotoshi Takada and Kazunori Yanase (Osaka City University)
レイルを採用し,その上に反力板側垂直力荷重計を設置し(せん断時に荷重計は移動しない)
,それらを反力枠から吊っ
ている。これによって, 上箱を含む上記部材の 自重は供試体にかからな い。今回はデータの収 録に静ひずみデータロ ガ
ーを用いたため,周波数 f = 0.025Hz(1 波当たり 60 点測定)で行った。試験方法の詳細は文献1)を参照されたい。
図-2,3 に,圧密後の相対
密度 Drc=39%,繰返し応力振
幅比τd / σc ≒ 0.15 におけるそ
0
-5
1
2
3
4
N
れぞれ一面,単純による結果
5
6
7
-10
8
5
σ '/σ c
δ
δ (mm)
0
τ d /σc
10
σ'/σc
0
δ (mm)
δ
15
(1) N−τd /σc, σc/σ', δ 関係
0.5
5
0.5
-0.5
0
1
10
0
τ d /σ c
比較例を以下に示す。
σ'/σc
0.5
面,単 純せん 断試験 (以下 ,
一面,単純と略す)の結果の
15
(1) N−τd /σc, σc/σ', δ 関係
0
0.5
τ d /σ c
にお け る繰 返 し定 体 積 一
1
σ '/σ c
実験 結 果の 一 例 豊 浦 砂
(圧 密応 力σc = 1.5 kgf/cm2 )
-5
0
τ d /σc
-0.5 0
10
20
N
30
-10
40
σ'/σc
径路,(3) 応力比−変位 (ひず
τ d /σ c
み) 関 係を 示し た。 図-3 (2) , 0.5
(3)から ,応力 径路は 押し 側
0
(+),引き側 (−)とも同じ角度
位 (ひずみ) 関係は押し側,引
-0.5
0
き側で対称に生じており,繰
0.4
1
2
3
4
N
返し 試 験と し て の対 称 性 が
排水 三 軸試 験 に おけ る 過 剰
間 隙 水 圧 比 ∆ u/ σc = 95%に 相
δ
0
τ d /σc
-5
5
6
7
-10
8
5
0.5
0
-0.5
0
10
20
δ
0
τ d /σc
-5
30
-10
40
N
0.4
(2) 応力径路
(2) 応力径路
0.2
τ d /σ c
まで減少している(繰返し非
0
0.2
τ d /σ c
保障されている。また,図(1)
から,N = 2 でσ ’/ σc = 5%以 下
σ'/σc
5
δ (mm)
τ d /σ c
0
δ (mm)
の関係 を, 単純 では (2) 応 力
のφ ’線に収束し,応力比−変
σ '/σ c
σ '/σ c
図-2 一面,豊浦砂 Drc = 3 9%, τd / σc = 0 .146 図-4 一面,豊浦砂 Drc = 7 4%, τd / σc = 0 .186
を示し た。一 面,単 純では ,
1
15
1
15
(1) 繰返し回数 N とτd / σc ,せ
(1) N−τd /σc, σc/σ', δ 関係
(1) N−τd /σc, σc/σ', δ 関係
ん断変位δ ,垂直応力比σ ’/ σc
0.5
10
10
0.5
0
0
-0.2
-0.2
当)
。図-2 の一面と比較する
と,単純の方が有効応力の減
-0.4
0
0.2
0.4
少が早く,同じ変位量を生じ
0.4-30
力の減少が早く,同じ変位量
20
30
-0.4
0
0.2
0.4
-30
0.4
-20
-10
0.6
σ'/σc
γ (%)
0
10
0.8
1
20
30
(3) 応力比−変位(ひずみ)関係
0.2
τ d /σ c
た。やはり単純の方が有効応
-10
1
(3) 応力比−変位(ひずみ)関係
≒ 0.19 におけ るそれぞれ 一
面, 単 純の 試 験 結果 を 示 し
-20
0.8
0.2
τ d /σ c
る繰返し回数が少ない。
τd / σc
図-4,
5 に,
Drc≒ 74%,
0.6
σ'/σc
γ (%)
0
10
0
0
を生 じ る繰 返 し 回数 が 少 な
い。さらに,一面では変位が
-0.2
-0.2
発散 的 に生 じ て 破壊 に 至 る
のに対し,単純では変位が収
-0.4
-12
-8
-4
0
4
δ (mm)
8
12
-0.4
-12
-8
-4
0
4
8
12
δ (mm)
束し て 破壊 に 至 って い な い
図-3 単純,豊浦砂 Drc = 3 9%, τd / σc = 0 .149 図-5 単純,豊浦砂 Drc = 7 2%, τd / σc = 0 .185
のが特徴的である。
以上より,繰返し定体積一面,単純せん断試験では,いくつかの相違点があり,液状化強度は単純の方が(見かけ上)
小さい結果が得られるが,それらの詳細については別途報告する予定である。
参考文献 1) 大島, 他:繰返し定体積一面せん断試験機の試作, 第 33 回地盤工学研究発表会, No.357, 1998.2) 大島, 他:砂の繰返し定
体積一面せん断試験と繰返し非排水三軸試験の比較, 第 33 回地盤工学研究発表会, No.358, 1998.3) 住, 他:一面せん断試験による砂質土
の繰返し定体積せん断特性, 土木学会第 53 回年次学術講演会, III-A72, 1998.4) 大島, 他:砂質土の繰返し定体積一面せん断試験と繰返
し非排水三軸試験の比較, 土木学会第 53 回年次学術講演会, III-A73, 1998.